No.659528

九番目の熾天使・外伝~マーセナリーズ・クリード~

okakaさん

第八話です

2014-02-01 17:55:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:614   閲覧ユーザー数:573

第八話

 

 

「こいつは・・・」

 

「ホワイト・グリント・・・・・・」

 

「ああ、こいつが俺の狙いだ」

 

 

岡島は絶句する船長と船員を尻目に引き上げたホワイト・グリントに歩み寄る。この機体こそ、岡島の狙いでありお目当ての機体だったのだ。

 

「思ったとおりだ、そんなに酷く損傷してるわけじゃない。一緒に引き上げたネクストのパーツを使えば動かすくらいは・・・!船長・・・お客さんみたいだ」

 

「?ここは海上だぞ?客なんて・・・」

 

「それがいるんです。ここに」

 

「「!?」」

 

「手を上げて、それとあなたはホワイト・グリントから離れて下さい」

 

突然の声に振り向くと拳銃を構えた女性が武装した兵士達を連れてあたりを囲んでいた。装備を見るにどうやらここまで海中を泳いで来たらしい。手練、それもそれなりに場数を踏んでいる。相手をするには少々厄介な状況だ。しかもすぐ近くで小型ボートのエンジン音がする。恐らくは増援、さらに人数が増えるようだ。ここは素直に従った方が良さそうだと判断した岡島は軽く両手を上げ、ホワイト・グリントから離れて船長達の元へ行く。それとほぼ同時にボートから数人の兵士に護衛された白衣の男が降りてきてホワイト・グリントに駆け寄った。

 

 

「プロフェッサー!治せますか!?」

 

 

女性の問いかけにプロフェッサーと呼ばれた白衣の男が自信ありげに答える。

 

 

「ああ、問題ないよフィオナ君。フラジールのパーツを使えば稼働状態には持っていける。後は闇市場なり、裏取引なりでパーツと武装を手に入れれば復元可能だ。しかし・・・アスピナの連中はまだこんな設計を推し進めているのか・・・」

 

 

答えるなり自分の世界に入り込んでしまった白衣の男を尻目にフィオナと呼ばれた女性がこちらに向き直る。

 

 

「そういう理由ですので、すみませんがあの機体はこちらで回収させていただきます」

 

 

その女性のあまりに勝手な言葉に岡島が噛み付いた。

 

 

「はぁ!?ふざけんな!人の引き上げたもん全部持ってくきか!?」

 

「アレは元々私達のものです!それにフラジールは修理に必要ですから・・・仕方ないんです・・・私達にはもう・・・後がないんです!」

 

「!あんたら・・・ラインアーク残党か?」

 

 

「「!」」

 

 

岡島と口論になった女性の言葉に思い当たるフシがあった船長が問いかける。船長の問いかけに少しだけ冷静になった女性が答える。

 

 

「ええ、私達はラインアークの者です。ですから我々に機体を回収させていただけませんか?我々にはどうしてもアレが必要なんです・・・」

 

「そうだったのか・・・なぁ・・・兄ちゃん・・・」

 

 

船長が納得してネクストを譲るように岡島を説得しようとした時、唐突に岡島が口を開いた。

 

 

「だが断る、だいたいお前ら自分達で引き上げようともしてねぇだろうが。それが俺達が引き上げた途端に返せだぁ?虫が良すぎるんじゃねぇのか?ええ!?・・・ったく・・・時空管理局みたいなこといいやがって・・・」

 

 

岡島の最後の一言にフィオナがキレた。岡島の胸ぐらを掴んで拳銃を突きつけると叫んだ。

 

 

「!っ・・・あんな・・・あんな奴らと一緒にしないで!」

 

「!?・・・お前・・・知ってるのか?管理局のこと・・・」

 

「!?あなたも・・・知ってるの・・・?」

 

 

岡島は驚いてフィオナに問いかける。管理局が積極的に活動していない管理外世界の住人であるフィオナが管理局を知っている。それだけでなくどうやら恨みを持ってもいるらしい。岡島はそのままフィオナに答える。因みに船長たちはなんのことだか解らず頭上に疑問符を浮かべ黙っている。

 

 

「ああ、俺はこことは別の世界から来た反管理局の傭兵だ。今の管理局の奴らに対抗するためはどうしてもネクストが必要なんだよ」

 

「そう・・・だったの・・・でもごめんなさい・・・アレは譲れません・・・私達にもネクストが必要なんです・・・企業や奴らに対向するために」

 

 

岡島の言葉にフィオナは手を離し拳銃を下ろす。どうやら利害関係は一致しているらしい。

 

 

「なら、彼にリンクスをやってもらうのはどうだい?」

 

「「!?」」

 

 

唐突に白衣の男が口を開いた。

 

「そうだろ?我々の利害は一致している。そこの彼はネクストが必要、我々には新しいリンクスが必要だ。いい加減『彼』だけに負担をかけるわけにはいかないだろう?そうとなればまずは修理だ。船長、船を動かしてくれたまえ。詳しい話は機体をドックに入れてからしよう」

 

「ちょっ・・・ちょっと待てよ!勝手に決めるな!」

 

「そうですプロフェッサー!そんな簡単に・・・」

 

「そんな悠長に話し合いをしている余裕は無いみたいだよ?今しがた連絡があってね。企業連のAFがこちらに向かってきているようだ。とりあえず話は避難してからにしよう」

 

「・・・船長、船を出してくれ。どうやら本当みたいだ」

 

「あ、ああ分かった」

 

 

AFの接近を『鷹の目』で確認した岡島は一瞬だけ黙考すると船長に指示を出した。

 

 

「素早い判断で助かるよ。ああ、そういえば自己紹介がまだだったね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名はアブ・マーシュ。この芸術品、ホワイト・グリントの設計者だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

第八話です。ラインアーク残党とそれを率いるフィオナ・イエルネフェルト、WGの設計者アブ・マーシュとの邂逅シーンになります。因みにアブ・マーシュは新旧両方のWGの設計者として図面に名前が載っています。WGの仕様を考えるにあたり芸術家肌のマッド・サイエンティストではないかと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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