No.658595

義輝記 雷雨の章 その四

いたさん

義輝記の続編です。 少しお休みするつもりが次作が出来たので投稿します。宜しければ、また読んで下さい。

2014-01-29 15:16:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1980   閲覧ユーザー数:1742

【 諸侯到着の件 】

 

〖洛陽 門前にて〗

 

華琳「洛陽に到着したわね。 春蘭! 共をお願い。 後の者達は桂花の指示に従い待機。 ………頼むわね、桂花!」

 

春蘭「はっ!」 桂花「お任せ下さい、華琳様!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺達は、洛陽の外に天幕を張り休憩を取る。 外と言っても、かなり外れ。

 

他にも軍勢が慰問で訪れると聞いていたから、この空いてる広大な空き地も、天幕で満杯になるのだろう……。 

 

そんな事を考え、空き地を見ていると、後ろより声が掛かる。

 

李衣「あっ! 兄ちゃん! お疲れ!!」

 

流琉「兄様! お疲れ様です!」

 

二人は、許仲康と典韋。 真名は助けてくれた御礼で預かった。 俺も名前を名乗り、好きに呼んでいいよと話すと、こう呼んでくれる事になった。

 

一刀「二人共、お疲れ様! 力仕事ばかりで大変だったろう?」

 

俺は、二人の頭を撫でると、二人とも嫌がる事なく笑ってくれた!

 

李衣「そうでもないよ! 村に居る頃より、もっと楽だから驚いている!」

 

流琉「うん! 熊や大猪狩ったり山の中に入るよりずっと安全ですから!」

 

やはり、時代が違うなと苦笑。 

 

俺の居た世界よりも危険は大きいのは当然。 

 

しかし、心は、精神は、遥に、この世界の方が人間らしいと思う。

 

自然の恵みを感謝し、その恩恵を忘れずに働く人々が、俺は大好きだ!

 

改めて、そう思っていると、二人は頭を下げて礼を言い出す!?

 

李衣「兄ちゃん、ありがとう! 春蘭様から話を聞いたよ!」

 

流琉「わ、私は華琳様からです! 何でも、兄様の策が無ければ、私達は盗賊に殺されていたかもしれないと…………」ブルッ

 

一刀「俺だけじゃないよ。 先頭に立って突撃してくれた春蘭、愛紗、鈴々。

 

命じてくれた華琳や俺の未熟な策を補完してくれた軍師、それに、各々の活躍した将達や頑張ってくれた兵の皆のお陰だよ!!」

 

ニッコリ笑って答えると、流琉が兵の皆さんが言っていた通りだと話す。

 

流琉「兄様は、自分の功を全然自慢しない。 もし立てても、全部兵の皆の

お陰だよと感謝の言葉を述べ、失敗すれば兄様の責だと自分を責め立てる。

 

兄様程仕えがいがあって、失敗する事が許されない将は居ない……と」

 

どこの名将の逸話だよ…全く。 入って来たばかりの子達をからかって!

 

後で文句言ってやらないとな? 酒と肴を用意して……

 

俺はそう言って、場所を離れた……………。

 

 

流琉「やはり、皆さんが言っていたような方です!」

 

李衣「そうだね! 僕達も兄ちゃん応援しよう!」

 

★★☆

 

〖洛陽 門前にて〗

 

雪蓮「やっ───と、着いたわね! 冥琳! …って、どうしたの?」

 

冥琳「…………お前が、それを言うのか……!」プルプルプルプル!

 

蓮華「姉様!! あれほど陣営内に居て下さい!!と、お願いしたのに関わらず、どうして姿を眩ますのですか!!」

 

雪蓮「だってぇぇぇ、折角ぅ、洛陽近辺まで来たんだからぁぁ、地理的情報とかぁぁー見ておきたいなあぁぁーと思ってぇぇぇー」ブーブー

 

冥琳「はぁぁ──── (´ヘ`;) 」ガクッ

 

蓮華「姉様!! 張勲よりの使者が来る度に、誤魔化す冥琳の苦労が分からないのですかぁ!!! すまない、冥琳! なんと言えばいいのか……」

 

思春「……蓮華様、お労しい………」

 

雪蓮「ちょっと!? 何で私ばかり悪者にされるのよ!」

 

祭「どう考えても、策殿の行動が冥琳に心労を与えたと、言うしかなかろう? 因みに儂は、今回しっかり仕事を片付けましたからな………」

 

     タッタッタッタッタッ!

 

穏「冥琳様~! 張勲殿よりご命令が~って、どうしたのですぅ~?」

 

冥琳「いや、何でもない…。 ほら! 雪蓮、行ってこい!!」

 

雪蓮「ちょっと!? 冥琳、待ってたら!!」

 

★★★

 

〖洛陽 門前にて〗

 

麗羽「おーほっほっほっ!! どーです! 私が一番早く到着したようですわね! ビリケツ(予定)の華琳さんの顔を、思いっ切り笑って差し上げますわ!! 」

 

斗詩「姫! 到着は私達が最後だそうですよ!! 」

 

猪々子「 白蓮様も到着しているって、宮廷の兵が!!」

 

麗羽「何ですって!! 我が袁家が後塵を拝すなど、許されませんわ!!」

 

 

◇◆◇

 

【 内部抗争の余波の件 】

 

〖宮廷内 謁見の間にて〗

 

謁見の間にて、文武百官が並び立ち、前面に両袁家、後方に曹、孫、公孫が並んで顔を伏せる。 

 

壇上の上にある玉座には皇女が二人、横には張譲が立ち並ぶ。

 

張譲「諸侯、大儀である。 皇帝陛下、何皇后陛下は密葬が既にすんでいる。亡き先帝方も諸侯の志をしかと存じていらしゃるだろう…」

 

諸侯「「「「「  ハッ! 」」」」」

 

張譲「さて、先帝亡き後に続き大事な儀が残されている。 霊帝陛下の後の皇帝陛下を望むのだが、大将軍何進が病気の為、相談が出来ない…」

 

張譲は大袈裟に溜め息を吐く。 この大事に何をしているのか…と言う動作を表しながら。 

 

張譲「そのため、皇帝陛下の代理に辯皇女、協皇女よりお言葉を賜りたく…」

 

張譲が二人に向かい頭を下げる。 

 

金糸「諸侯、大儀亡霊帝! 漢忠義富国人豊!」

 

銀糸「亡き霊帝陛下に替わりに礼を言う。 これからも変わりなき漢への忠誠と各々の定められた土地や人民の慰撫を願う!」

 

諸侯「「「「「  …ハッ! 」」」」」

 

この後、張譲の話が続き終了となる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〖宮廷外の空き地にて〗

 

華琳「麗羽? 皇帝即位の働きかけは、十常侍や大将軍からあった?」

 

麗羽「私のところは、何もありませんわ! それに腐れ十常侍に従う袁家だとお思いですの? 華琳さん?!」

 

美羽「七乃! 妾に働きかけは………」

 

七乃「もう、お嬢様! そんな働きかけあれば、七乃が美羽様のお守りをする時間が減ってしまうじゃないですかぁ!? 勿論、丁重に拒否しますよ!」

 

美羽「その通りじゃ! 流石、七乃じゃ!」

 

雪蓮(チッ! そうすれば、孫家ももう少し動けるのに……!)

 

華琳「そう、誰にも動きは無いよう…」

 

白蓮「おぉ~い! 私も居る! 話を聞いてくれ!」

 

麗羽「あ~ら、白蓮さん! いつの間に、この場所へ?」

 

華琳「聞かなくとも分かるわ。 三公を輩出した両袁家にその動きが無いのなら、他の諸侯に働きかけが無いのは当然。 ある方が疑わしいのだけど…」

 

白蓮「そ、そうか、勿論、私にも届いていない。影が薄いから忘れられていたかと……」

 

麗羽「それが白蓮さんの特色じゃありませんこと!?」

 

白蓮「私は『普通』なんて特色はいらないんだ!!」

 

華琳「……で、アナタにも働きかけは無かった…のでしょう? 孫伯符?」

 

雪蓮「…勿論。 袁公路殿の客将だもの、当然の事よ!」

 

華琳「よろしい。 今の状況から把握して、皇帝陛下擁立は、まだ内部抗争の域を出ない。 でも、これ以上長引けば早期決着のため、味方を求める!」

 

白蓮「それが、私達になるのか?」

 

華琳「そうなるわね。 だけど、私の持っている情報では、早くも董仲穎が何進大将軍側に付いたみたい。 『伏竜の軍勢』を伴い(ともない)ね……」

 

     ザワ………………

 

白蓮「……先の黄巾賊反乱で功を挙げ、摩訶不思議な術で首領達を斬首したと言う妖術士達か…………?」

 

美羽「…………こ、怖い「あ!、美羽様の後ろに…」 ピィ────!!」

 

七乃「麗羽様が……って、聞いてないですよね。 流石、お嬢様! 期待を外さないのは、御立派です!」

 

麗羽「ちょ、ちょっと、美羽さん!? 何ですの、その態度は!!!」

 

雪蓮「……………………」

 

華琳「だから、張譲は私達を取り込みために、近付くと思うから気をつけなさい! 特に麗羽はね…………」 クルッ! カッカッカッ……

 

麗羽「華琳さん! 私が宦官なんか……って、話を聞きなさい!!」ダッ!

 

七乃「さぁー美羽様! 蜂蜜水が待ってますから戻りますよー!」

 

美羽「蜂蜜水じゃ~! うはっはっはっ!」 

 

…………………………………

 

雪蓮「さーて、戻りませんか? 残されてたって良いことないですし!」

 

白蓮「普通の口調で良いよ! 変に畏まられるのは好きじゃないんだ」

 

雪蓮「あっははは! それじゃ、公孫賛殿! 早く戻るわよ!」

 

白蓮「あぁ!」

 

【 何進の後悔の件 】

 

〖何進の屋敷にて〗

 

俺達は、あれから張譲の命令に、どう応えるか思案していた。

 

張譲は、何進大将軍と共に、皇帝陛下を擁立したいと述べていた。

 

だが、史実と同じ一筋縄でいかない人物である事も何進大将軍と傍の軍師お二人より聞いている。 それに、二人の皇女様の身も心配でもある。

 

何進「すまん、董仲穎。 それと、申し訳ない『御遣い』の方々! 」

 

突然謝り出す何進大将軍? それと、敬語は慣れないので何時もの通りで話して下さい! ほら、皆も困った顔しているから!?

 

何進「…では、そちらも敬語は止めてくれれば、止めるぞ?」

 

その言葉を聞いて、一斉に頷いた俺達は悪くないはずだ。

 

その状況を見て何進殿は、素行を崩して『肉屋のオヤジ』になる。

 

何進「さて、話を戻すが、今回は儂の不手際だ! 誠にすまん!!」

 

何進殿は、頭を下げて話だす。

 

何進「張譲のあの場所での命令は、文武百官が聞いていた。 だから、董仲穎達が俺を宮廷内に連れ出さないと、何進派の者だと言われ狙われる…」

 

月「ですが、何進大将軍閣下! 別に不都合な事は成されていないのでしょうに…。 それでもなんですか?」

 

何進「……儂が、皇帝の後見人に成られるのが恐いからさ!」

 

稟「………………………」

 

風「……………………グウ」

 

宝譿「寝るんじゃねぇ!!」 ペシィ! 「おうっ!」

 

 

これは、昔の話だが………と、何進殿が話し出す。

 

今は亡き霊帝陛下が一時危篤常態になり、宦官の蹇碩等が、次の皇帝に協皇女にするため、儂を誅殺しようとしたんだ。 

 

儂が居れば辯皇女の後ろ立ては万全……付け入る隙が無い常態だ。

 

逆に協皇女の後ろ立ては無かったんだよ。 

 

………儂の愚妹が権力に目が眩み、協皇女の母である王美人と育て親の霊帝陛下の母、董太后まで手に掛けたからだ…。

 

だから、操り易い方を………持ち上げた訳だな…。 

 

 

 

計画は事前に漏れ、儂は逆に宮廷内で皆と談笑していた蹇碩だけを殺し、宦官共を見逃して借りを作ってやった。

 

……幼かった二人の皇女は、儂の血だらけの顔や姿を見て、抱き合ったまま泣いていたよ………。 普段、笑いながら近寄ってくれるのに。

 

儂は……それ以来、権力争いに嫌気がさしたんだ! 

 

だから、辯皇女も協皇女も実の娘のように可愛いがった…。 俺の罪滅ぼしも兼ねてなんだが…。 

 

儂としては、二人とも何不自由なく暮らせれば、こんな官職投げ捨て庶民に戻りてえんだが、宦官共はそうは思わなくて………。 

 

宦官十常侍筆頭の張譲が勢力を盛り返し、性懲りもなく協皇女を立てようと動いている。 いくら可愛いがっても、儂の血筋とは無関係だから。

 

そんな訳でだ。 儂は権力なんか要らないか欲しくないが、一番皇帝陛下に近い所に居る。 後見人として皇帝を操る事が………。

 

しかし、宦官勢力いや宮廷内部で一番力のある張譲に目を付けられば、董仲穎達が俺と同じ勢力と思われ、粛正される危険がある。

 

張譲が俺を呼んだのは、確かに皇帝を決めるため。

 

でも、その後は暗殺でもして息を止め、自分の勢力を盤石にしたいのだろう。

 

この責は儂自身が取る! お前達は俺を置いて、そのまま戻れ! そうすれば

手出しはしてこないはずだ!!

 

 

詠「何進大将軍…じゃない何進殿の呼び方でいいんでしょうね!? 」

 

後で違うなんてほざいたら、ぶっ飛ばすわよ!って言いながら、何進殿に怒鳴りつける。 順応早いなぁ……もしかして、何か恨みでもあるのか?

 

詠「アンタねぇ、聞けば黄巾賊の反乱の時に随分仲良くしたようじゃない! 他の諸侯も見ているの! 

 

今更、『私達は何進大将軍とは関係ありません! へう~ 』って言っても、信じて貰えないのよ!

 

だから、アンタを連れて宮廷には行くけど、張譲なんかに渡さない! ちゃんと、またここに戻ってくる!!! いい!? 」

 

俺達も頷くが……なんで、月様の口癖までしているの? 月様、顔を真っ赤にして睨んでるよ、うん。

 

風「そうですよ~、まだ、御給金貰ってないのに、死なねるのは困りますから~! 」

 

稟「風!」

 

風「それに、稟ちゃんばかり頑張って、風は遊んでいたなんて思われたくありません~! ちゃんと生きて戻ってもらい、風の知謀の冴えを見ていただかないと~」

 

稟「…何進大将軍、風はあれで心配しているんですよ。 何進大将軍が何かと構ってくれるものですから……。 ですから、私からも…必ずご無事で!! 」

 

何進「わかった、足掻いてみるわ…。 本気で駄目だった場合は、強制的に追い払うからな!?」

 

軍師の二人は、心配そうに何進大将軍を見詰める。 

 

すると、義輝が三人に約束をしていた。 

 

必ず三人揃って屋敷に帰ってもらうから…と。 

 

『襲撃と脱出の経験はあるから、大船に乗ったように安心するが良い!』

 

うん、結構大掛かりだったようだからね、義輝の受けた襲撃。

 

長慶殿が、申し訳なそうな顔をしていたのが、長慶殿が命じていないのは承知の事実。 ………気にしないようにね、『姉さん』!

 

長慶殿は、顔を真っ赤にさせて、笑顔を浮かべてくれた。

 

◆◇◆

 

【 辯皇女の決意の件 】

 

〖宮廷内 張譲の部屋にて〗

 

一人の文官が、急ぎ張譲の部屋へ飛び込んで来た!

 

文官「張譲様! 張譲様はいらっしゃいますか!!」

 

張譲「どうした! 儂に何のようだ!」

 

張譲は、顔を朱に染めて怒鳴りつける! 何時もの物静かな張譲にしては、珍しい事もあると文官は思いつつ報告を始めた!

 

文官「はい! 何進大将軍が宮廷に来られたと報告がありました!」

 

張譲「ふむ、で? 今どこに?!」

 

文官「董天水太守達と一緒に、皇女様方にお会いになっています!」

 

張譲「…………わかった。 何進大将軍に会談するための準備を…急げ!」

 

文官「はいっ! 失礼致します!」 タッタッタッタッタッ!

 

張譲「さて、どうなることか……………………ククククク、ハハハ!」

 

更に気分が高揚した張譲は、高笑いを始めるのであった。

 

……そう、今日の張譲は御機嫌だった。 この上もなく……

 

それは、張譲の服の下に、久秀特性の『亀甲縛り』が施されていたため。

 

普通の人にとっては恥辱的罰。 

 

しかし、張譲にとっては……未知なる快感に高ぶる気分を到底隠せない程、この『ご褒美』に酔いしれていたのだった…。

 

 

★☆☆

 

〖宮廷内応接の間にて〗

 

        ドン! バタン!

 

銀糸「叔父様!! お久しぶりです!」 クィクィ(袖を引いている)

 

金糸「否! 無私有公、場控!」

 訳(駄目! 今回は私用では無く公用です。 場を弁えなさい!)

 

銀糸「…失礼した。 大将軍何進及び董仲穎以下、対面を許す。面を上げよ」

 

 

………俺達は、何進殿に付いて宮廷に入り、皇女様方に拝謁を願った。

 

 

立派な一室に案内され、そこで待つようにと言われて待機していた。

 

一室と言ってもかなり広く、畳十五畳ぐらいあるのではないかと思える程に。

 

そんな場所で畏まっていたら、急にドアが開いて先の登場…。

 

銀糸「さて、大将軍何進「金糸、銀糸! 大丈夫だ、何時もの調子で話してくれれば良い」…えっ? 」

 

金糸「 是?(いいの?) 」

 

何進「ここに居る方々は信用に値する立派な者達だ。 出来れば俺も、お前達の幸せを見届ければ、この方に仕えたいつもりなんだが…… 」

 

と、義輝を尊敬の眼差しで見ている。 

 

辯皇女は、何やら俺を見ていて呟き、協皇女は、頬を膨らまして不機嫌さを顔全体で表している。 何進殿を心配しているかと思えば、微笑ましい光景だ。

 

金糸「………………………」ボソボソ

 

銀糸「『 天城颯馬! 貴方の目指すモノは何か応えなさい! 』とお姉様が申しておる! 天城颯馬よ、疾くと答えるがいい!」

 

急に協皇女が声を上げて、俺に問いかけてこられた!

 

……俺自身の答えで良ければ……と失礼ながらお断りをして…。

 

 

颯馬「………………一言で表せば『上善如水』!  

 

ある時は、慈雨となり民に恩恵を与え、またある時は、洪水と化し敵を葬り、またある時は、大河となり様々な交流の一助となる!

 

俺は、そのような水のような行動を持って、この世界の争乱を治める為、民に希望を持って生きて貰う為、大陸を導いてみせる!!! 」

 

軍師ならば、義輝『様』の仲間ならば、こう応えるだろうと考えながら、このようにお応えさせていただいた。

 

…日の本から出航した時に、昌景殿が義輝『様』に問うた戦略の問いの答え。

 

俺自身は、『上善如水』の意味を、そう理解している。 

 

 

義輝「颯馬の応えは妾の答え。 それで構わんぞ!」

 

日の本から来た皆は、全員頷く。 月様は首を何度も縦に振り、詠は一回だけ縦に振ると横を向いた。 俺は、(ありがとう)と小さく呟いた。

 

金糸「…………………」ボソボソ   銀糸「えっ!?」

 

辯皇女が何事か協皇女に囁くと、協皇女が驚く?!

 

銀糸「叔父様! お姉様が…皇位に即位すると!!」

 

何進「……本当か?」

 

辯皇女様の驚愕発言に、皆がどよめく! 

 

………………その後、かの張譲が顔を赤らめながら入って来て、辯皇女の発言を聞き驚愕の顔を浮かべる。 ……が、すぐに元の顔に戻り、『それは上々、すぐにでも即位の準備を!!』と、飛び出して行った。

 

 

数日後、辯皇女がこうして『皇帝陛下』と即位される。

 

辯皇女が俺への問い掛けの答えで、即位を決めたのは間違いないのだけど、何故なのかは、全く教えてはいただけなかった…………。

 

 

◇◆◇

 

【 張譲の暗躍の件 】

 

〖宮廷内にて〗

 

        カッカッカッカッカッカッカッカッ

 

麗羽「……全く不愉快ですわ!!」

 

 

 

……………皇帝陛下が即位されて十日程経ちました。

 

始めの二日間は、新しい皇帝陛下のお祝いだと言う事で、洛陽はかなり賑やかな、お祭り騒ぎになりました。 とっても楽しかったです!! 

 

その後、新たに官僚の人事があり色んな方々が移っていたのですが、最も大きく動き最も私が驚いたのは…他でもない私こそ董仲穎が『相国』を任命された事だったのです!!

 

私も詠ちゃんもびっくり! 一度は辞退したのですが、何進大将軍や皇帝陛下が再々御命令をされるので、拝命させていただいたのです。

 

ですが、私がこの人事の拝命を受けて、御自分には昇格人事がなかった袁本初殿は怒って屋敷に戻ってしまいました………。

 

他の諸侯の方々も、何進大将軍に付くかどうか、日和見していたようなんですが、辯皇女様の決断が余りにも急なため、根回しが出来ず報奨は僅かばかりだと、聞いています。

 

それから、一番喜んでもらいたかった天城様は、この人事を聞くと顔を真っ青にして、腕組みをしながら思案してしまいました。 …………残念ですぅ。

 

詠ちゃんは、そんな態度にお冠だったのですが、天城様が一言仰ると口を閉じてしまいました。 『 出る杭は打たれる 』と一言だけで。

 

あっ、そうそう。 協皇女は、皇帝陛下の通訳で二人いつも居られるように配慮をしてもらったそうですよ。 

 

何進大将軍も一安心と微笑んでいました。

 

☆☆★

 

〖洛陽、袁本初屋敷にて〗

 

麗羽「………で、張譲さん、話とは?」

 

張譲「お人払いは出来ていますかの?」

 

麗羽「えぇ、勿論。 早く話をなさい。 私の得になる話とは?」

 

張譲「いやいや、急かされるとこの張譲、物忘れが酷くなりましてな。ゆっくりと筋道立てて、話をさせていただきたいのじゃ……」

 

麗羽「…………ふん!」

 

張譲「まずは、袁本初殿、董仲穎をどう見るかね? 天水太守より急に成り上がった田舎者じゃが。 」

 

麗羽「ふん! 我が袁家に比べれば話にもならない小者ですわ! 皇帝陛下の恩恵を受けて、身分を弁えなない愚か者ですわね!」

 

張譲「おぉ! 流石に袁家歴代で名当主で謳われる袁本初殿、儂より的確な判断じゃ! 儂の思った通りの人物だったのに………全く、残念だぁぁ!!」

 

麗羽「ちょっと張譲さん!? 何を泣いているのですか! 意味が分かりませんわ?」

 

張譲「……おぉ……年寄りは愚痴がついつい出てしまう。 袁本初殿、今の話は聞かなかった事にして貰いたい。 聞いても得にはならない………」

 

麗羽「お待ちなさい! それを決めるのは私です! 一体何があったのですか? 勿論、口外なんて一切しませんわよ!?」

 

張譲「…実はの、今回の人事において儂としては、袁本初殿こそ三公に相応しいと思い、推薦していたのじゃが……何進大将軍が強固に反対され…」 

 

麗羽「………何ですって!!」

 

張譲「それに皇帝陛下も同調されて、賛成してしまわれた………すまぬ、儂の力が及ばぬせいで……」

 

麗羽「……ゆ、許せませんわ! 許せません事ですわ! 

 

……ですが、何進大将軍が、何故私の昇格を阻む必要がありますの? 

 

人身の最高位に近い地位を持ち、姪に当たる皇女様が皇帝陛下に即位したと言えども、まだ政敵は多いはず! 強力な味方が欲しくなりますわね。

 

それなのに、私程の者を敵に回すのは、愚か者と知恵者しかいませんわ。 

 

私を敵に回しても勝てると企てが出来る者…………はっ! まさか…………」

 

張譲「やはり、聡い方だ! 董仲穎が最も頼りにする『伏竜の軍勢』の軍師、天城颯馬なる者が、何進大将軍を動かし企てた結果! 

 

いや、董仲穎も裏で操り、この漢の地を征服する意志があると見ていいでしょう! 袁本初殿、頼む! 漢の忠臣としてお願いする! 

 

董仲穎達を打倒し、今の皇帝陛下には禅譲していただき、協皇女に新たに皇帝陛下に即位を促してもらいたい! さすれば、その身は三公より上の『相国』になる事間違いない!! 

 

袁本初殿! 貴女になら…漢を任せられる。 漢を! 国を! お救い下され!! 張譲からの願い、お聞き届け下さいますように………」

 

麗羽「…………わかりましたわ、張譲さん! 貴方の熱い志、この袁本初がしかと受け止めました。 必ず、漢を救いましょう!!」

 

張譲「あ、ありがとう、ございます……………………!」

 

 

◇◆◇

 

【反董卓連合決起の件】

 

〖宿舎 曹猛徳の部屋にて〗

 

麗羽「─────と言うわけですの! ちょっと聞いているのですか!?」

 

華琳「はいはい、聞いてるわよ……。 まんまと張譲に誑かされたわね…」

 

麗羽「な、何ですって! 話を聞いていらっしゃたのですか! このクルクル小娘は────────!!」

 

華琳「むっ! しっかり聞いていたわよ。 董仲穎や大将軍何進を裏で操る天城颯馬を倒して、麗羽が変わりに漢を牛耳りたいという話よね」

 

麗羽「違いますわ! 漢を思い、国を思う私の高貴な儚くも美しい理想を実現させる為に、ご奉仕するのですわ! 少し褒美を戴ければそれで…」

 

華琳「その褒美が『相国』の地位ね……。 馬鹿馬鹿しくて嫌になるわね」

 

麗羽「それでは、華琳さんは私の敵「それも違うから安心なさい」…はっ?」

 

華琳「麗羽に味方すると言うのよ。 勿論、この企てがわかって乗るのだけどね。 私の配下の関雲長と劉玄徳の反発が凄いのよ…。 皇帝陛下や董仲穎達は、天城颯馬に騙されているってね」

 

麗羽「それでは、私と同じ考えの持ち主がいると言う事──」

 

華琳「考えは同じでも、根は別。 あの子達の元の主は『天の御遣い』と言われる北郷一刀なの。 だから、同じ『天の御遣い』を名乗りながら、この仕打ちが許せないと言うことかしらね。 まだ、根は深そうなんだけど……」

 

麗羽「……………………………………………………」

 

華琳「どうしたの? 急に黙り込んで…?」

 

麗羽「いえ、華琳さんが味方に回ってくれるのであれば、他の諸侯も加わってくれるでしょう! 『華麗なる袁本初に率いられた反董卓連合』に!」

 

華琳「…………そんな名称付けるなら入らないわよ!!」

 

麗羽「わかりましたわ。確かに…華琳さんが不満に思う名称だとは、薄々わかっていましたが、これは仮の名称。 正式名は………!」 

 

華琳「どうせ可笑しな名前になるから、『反董卓連合』だけにしなさい!」

 

麗羽「………………………ふ、ふん! 始めっからその名称でしたわよ!」

 

華琳「それじゃ、私は自分の領地へ戻り手勢を揃えるわ! 貴女が発起人になるのだから、袁公路や公孫賛に使者を送りなさい。 それから、今回羌族達の反乱で此方に向かえれなかった馬寿成にも使者を忘れないように!」

 

麗羽「華琳さんに指図されなくても、華麗に素早く諸侯に連絡を取りますわよ! オーホッホッホッホッ!!」

 

華琳(これで上手くいけば、董仲穎配下の御遣い達を、私の手に入れる事ができるわ。 

 

それに、間者の報告に記載してあった『敵に回せば長城』の言葉、嘘か誠か試させてもらうわよ。 …………天城颯馬!)

 

 

 

…………この後、袁本初より使者が諸侯に送られ、協皇女の即位、黒幕である『天城颯馬』その主である『董仲穎』の討伐、現皇帝一族の処罰を謳い文句に挙げ、『反董卓連合』の狼煙が上がったのである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

構想が浮かばなくて、どうしようもないと思い、前の小説後書きに書いたのですが、視点を変えたら浮かぶ浮かぶ構想が…と言うことで出来ました。

 

次回からは、一部のキャラ除いて(男だけ)全員役割を果たして貰おうとしています。 

 

それと、同時にこの小説書き始めた原点、『こんな策があるから誰か使わないかな!?』と思っていて、ついに読んだ事がなかった策を披露出来るので、とても書くのが楽しみです。

 

勿論、机上の空論ですので、実際使用できるかなんか、わかりませんが…。

 

また、よろしければ、次回作も読んでみて下さい。

 

 

 


 
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