No.657645

真恋姫†夢想 弓史に一生 第九章 第十五話

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

最近は忙しくて投稿が進まない事態ですが、何とか二週に一話は投稿したいものです……。

そのため皆さんには大変な迷惑をかける事とは思いますが、首を長くして待っていただければ幸いです。

2014-01-26 00:00:01 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1362   閲覧ユーザー数:1240

 

 

~聖side~

 

 

 

劉備軍の進行は止めた。

 

戦場を見渡せば、音流は既に華雄と合流し、汜水関の門のほうへと帰ってきている。

 

ならば合図が鳴るのももう直ぐのことだろう。

 

 

「さて…………。」

 

 

パシッ!!!! 

 

 

飛来してきた矢を捕まえ、飛んできた方を見ればそこには、よく見知った顔が並んでいた。

 

 

「…………久しぶりだな、孫策、黄蓋。」

 

「………えぇ、久しぶりね。」

 

「………しばらくじゃな。」

 

 

何気ない挨拶を交わす間にも、彼女達二人の闘志は燃え上がっているように感じる。

 

…………それほどまで俺を憎んでくれるなら良かった…。

 

 

 

「いきなり顔面目掛けて弓を引くってのは、少し卑怯じゃないか?」

 

「それを平気な顔で捕まえれる人に卑怯なんて言われたくないわ…。」

 

「ワシも策殿に同感じゃな。」

 

「まぁ、端からこれで仕留めれるとは思ってないわ。あなたは私の手できちんとかたをつける。」

 

「まさか、俺とやろうって言うのか??」

 

「あらっ?? 何かおかしい??」

 

「これは稽古と違って実戦だぜ?? 稽古で勝てない奴に挑んだって無駄なことだとは思わないのか??」

 

「ご生憎さま。実戦の方が力を発揮できるのよね、私。」

 

「……………つくづく、似てる………。」

 

「何か言ったかしら??」

 

「いやっ………。まぁ、良い。身の程って奴を分からせてやるよ!!!」

 

「そう来なくっちゃ…。祭、援護して。」

 

「了解した。」

 

「行くわよ!!!! はぁぁぁああああああ!!!!!!!」

 

 

確かに、言うだけあって前よりも踏み込みの速度、キレ、共に段違いに良い。

 

きっとあの後からも必死に稽古を続けたのであろう。

 

だが、見切れないほどの速さでない。

 

 

「っ!!??」

 

 

ヒュッヒュッ!!!!!

 

 

すんでのところでかわせば、先ほどまで居たところに二本の弓矢が刺さっている。

 

崩れた体勢を戻す暇なく、目の前には雪蓮が肉薄している。

 

 

「はぁぁあああ!!!!!」

 

「ふっ!!!!!」

 

 

ガキンッ!!!!!!!

 

 

お互いに武器を振りぬきあうが、突進力の乗った雪蓮の一撃を相殺できるわけが無く、後方に三メートルほど吹き飛ばされる。

 

 

「くっ……。 弓と剣の連携攻撃は見事だな……。反撃の隙が見当たらない。」

 

「そう?? 褒めてくれてありがと。観念したなら素直に私たちに捕まりなさい。」

 

「観念?? まさか、これくらいのことで俺が諦めるとでも思っているのか??」

 

「思ってないわ。あなたの口から参ったって聞くまで何度でも倒してみせる。」

 

「何度でも……か……。俺としても、君たちの相手をしたいと思うのは山々だが……それは叶わないみたいだな…。」

 

 

ガァーーン!!!!!! ガァーーーン!!!!!!!!!!!

 

 

戦場全体に響き渡るその銅鑼の音は撤退の合図。

 

勝負はここまでだ。

 

 

「じゃあな、孫策、黄蓋!!!!  ピィィィーーー!!!!!!!」

 

 

指笛を鳴らせば、我が愛馬、陽華が姿を見せる。

 

俺は走り来るその背に飛び乗って戦場から離脱しようとする。

 

 

「待て!!!!! まだ決着はついていない!!!!」

 

 

雪蓮は手を伸ばすが、その手は俺の服を掠めて何も無い空間を掴む。

 

すんでのところで逃げられた雪蓮は走り去る馬の背の男を悔しそうな瞳で見つめるしか出来なかった。

 

こうして何とか雪蓮たちのところから脱出した俺は、自軍に撤退の指示を出しつつ、汜水関へと戻るのだった。

 

 

そして残された雪蓮たちは、

 

 

「ちっ!! 逃がしたか……。」

 

「………しかし、逃げてくれて良かったと思うワシがおる。」

 

「……同感ね。今になって体が震えてきたわ……。」

 

「まだまだ実力の半分も出してないじゃろうな……。」

 

「えぇ。それなのにあの威圧的で強烈な存在感……。」

 

「……とんでもない奴じゃ……。」

 

「でも、何時か必ず決着をつける。それまでは首を洗って待っておいてもらいましょうか。」

 

「そうじゃな。その時はワシも力を貸そう。」

 

「さぁ、そろそろ戻りましょうか。早くしないと冥琳の頭の血管が切れちゃうわ。」

 

「ふっ。そうじゃな、帰るとするか。」

 

 

ふと汜水関へと振り返れば、彼が他の仲間達と一緒に汜水関の門をくぐり、その堅固な関の扉が再び閉まっていくのが見える。

 

ゆっくりゆっくりと閉まっていくその姿に、もう二度とその門が開くことは無いのではないかと言う不安を覚える時点で、まさに鉄壁と呼ぶに相応しい堅牢な関である。

 

関の攻略が上手くいかず、目的の男を捕らえることも出来なかった彼女達だが、どこかその表情は明るかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんちゃ~ん!!!!! ただいま~!!!!!!!」

 

 

笑顔で抱きついてくる音流を受け止め、頭を撫でてやる。

 

 

「お帰り、音流。大丈夫か?怪我とかしてないか??」

 

「よかよかばい!!! 怪我どころか誰一人欠けんで戻っちきよった!!! ねっ…うち偉い??」

 

「あぁ。良くやったな、音流。偉いぞ!!!!」

 

「えへへ…あんちゃんに褒められた…。」

 

「それから、ダダさんもお疲れ様。大変だったろ??」

 

「いえいえ…。徳種様の言った通り、自分達のことしか見ていない奴らでしたので、扱いやすかったですよ。」

 

「それでも、ここまで上手くいったのはダダさんの力あってこそ。本当に感謝しているよ。」

 

「私などには勿体無きお言葉ですが、素直に受け取っておきます。」

 

「そうしてくれ。それから皆もご苦労だった!!! 今後は当初の予定通りに事を運ぶ故、指示が出るまでは待機していてくれて構わない。ただし、緊急の出来事に対処できるように最低限の準備だけは怠らないでくれ。」

 

「「「「「応っ!!!!!!!!!!!!!!」」」」」

 

 

その後部隊を解散させると俺は汜水関の作戦本部のある天幕に足を向ける。

 

天幕内には、華雄、張遼、一刀、奏と虎牢関より伝令として来た朱熹と紫熹がいた。

 

 

「皆お疲れ。とりあえず作戦は今のところまで順調に進んでいる。朱熹、紫熹、伝令の内容は?」

 

「はい。此方の作戦の進行状況の確認と。」

 

「向こうの準備が出来たから何時でも次の段階に進めても良いって芽衣さんが言ってたよ。」

 

「分かった。では、作戦はこれより第二段階に移る。ここからは各自生き残ることに尽力せよ。………奏、この作戦は君にかかっているといっても過言ではない。やってくれるな??」

 

「へっ!!! あたいに任せときなって!!!!!」

 

 

自信満々に答える奏を見て、安心してこの作戦を託せると確信する。

 

後は、明日を迎えるだけだ。

 

日が沈み、暗がりに佇む汜水関は、日没直前の喧騒が嘘のように静寂な気配に包まれていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。

 

 

天気も良く、視界が良好な汜水関の地にあって、連合軍の前には異様な光景が浮かんでいた。

 

その異様さは類を見ず、連合軍の将軍から一兵卒までその全員を震撼させた。

 

中でも、主要な軍の大将、軍師に与えた影響は大きい。

 

……彼女達は考えた。

 

何故、どうして、何の目的が……考え出したらきりがない思考のループを始めてしまったのだ。

 

そうすれば自ずと軍の指揮を取ることは出来ず、連合軍は進軍を停止せざる終えなくなる。

 

そう、それがこの作戦の肝であることを知らずに………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、三日間硬く閉ざされていた汜水関の門は、なにがあったのか開け放たれ、立っていた董卓軍、徳種軍の旗も全て無くなっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~曹操side~

 

 

……おかしい。

 

彼ほどの人間が、この三日間での此方とあちらのどちらが現状有利であるかを読み間違えるとは思わない。

 

ならば何故、今この段階で汜水関を放棄して撤退する必要があるというのだろうか。

 

もし仮に、洛陽方面で問題が起こりそれに対処しなければならないために、汜水関を放棄して救援に向かったと言うならば問題は無い。

 

我が軍で空いている汜水関を制圧し、次の虎牢関を攻めるための拠点として扱えば良いだけだ。

 

だがしかし、特に問題などの発生が無く、それでも下がったと言うのなら………。

 

 

「桂花。あなたはアレを見てどう思うかしら。」

 

「………恐らく罠の類だと思われます。」

 

「根拠は?」

 

「今この場において、董卓軍、徳種軍が同時に軍を退く理由がありません。あの男の軍略は悔しいですが認めます。だからこそ、軍を退くと言うのはこの先に罠が待っているぞと言っているようなものだと考えられます。」

 

「私も同感よ…。しかして、どうする??」

 

「細作を既に放ってありますので、直ぐにでも情報が集まることかと……。」

 

「分かったわ。細作が帰ってきたところで軍議を始めましょう。」

 

「御意!!!!」

 

 

桂花の言う通り、あれは罠だと考えるのが常考。

 

しかし、これぐらいのことなら私たちや周瑜有する孫策軍、諸葛亮有する劉備軍は直ぐに気づき、罠になどかかるはずは無い。

 

かかるとしたら袁紹軍と袁術軍であろうが、昨日の時点で多くの被害を出しているのだから積極的に前に出るとは考えにくい……。

 

……………いや、動く。

 

動くことは確定している。

 

ならば、狙いは袁紹軍袁術軍の兵士で、この策は戦力差を埋めることにある。

 

その先の先、この戦全体の決着点は…………。

 

 

「………ふふっ。悪くない考えね……。」

 

「…華琳様? どうなされましたか??」

 

「秋蘭、私たちはこの戦、こと汜水関に関しては手出ししない。」

 

「っ!? それでは、我が軍の勇名が……。」

 

「汜水関に関しては別の人に譲りましょう。私たちは虎牢関を戴くわ。」

 

「……そう上手く行きますかね。」

 

「行くわ。彼程の男の計画なら、きっと。だから今は様子を見る。ただし、状況に応じた対応が出来るように、準備だけは怠らないように。」

 

「御意。」

 

 

この戦の行く末が見えたわ。

 

彼の策に乗るのは癪ではあるけれど、私たちへの見返りは十分。

 

ならば、彼の提案に乗るのも悪くは無いだろう。

 

しかし、ただ単純に彼の策に乗るだけでは面白くない。

 

 

「さぁ、私とあなたの知恵比べを始めましょう。」

 

 

 

 

 

 

~雪蓮side~

 

 

昨日までその鉄壁さをまざまざと見せ付けてくれたあの汜水関が、今日は扉が開いている。

 

明らかに罠臭いし、私の勘も今は行くなといっている。

 

ならば今は、あの関の中の情報を手に入れることが先決だ。

 

 

「冥琳。明命を偵察に出しましょう。」

 

「……うむ…。そうだな、それが良かろう。明命!!!!」

 

「はっ!!!!! お呼びでしょうか!!」

 

 

突如として現れた黒髪の少女は、元気な声で返事をすると傾聴の姿勢をとる。

 

 

「汜水関に潜入し、内情を探って欲しい。また、機会を見て汜水関の門を開けろ。」

 

「えっ!? あの……お言葉ですが……汜水関の門は既に……。」

 

「あぁ。今は空いているが、直ぐにあの門は閉まる。その時に、内側からあけて欲しいのだ。出来るか??」

 

「分かりました。では、行ってきます!!!」

 

 

ふと目を放した隙に彼女はどこかに消え、気配も絶たれている。

 

流石、我が孫呉が誇る優秀な隠密である。

 

 

「それにしても冥琳。門なんて本当に閉じるの??」

 

「あぁ。空城の計を用いたのであろう…。しばらくしたら連合軍に動きがあるだろう。それがきっかけとなって罠が発動し、あの門は再び閉じられる。そこで、潜入した明命に内側から門を開けてもらい、我が軍が流れ込むことであの汜水関を一気に落としてしまおうと言う狙いだ。」

 

「あらっ…。完全に読みきっているのね。」

 

「………いや、読まされていると言うのが正しいだろう。」

 

「どういうこと??」

 

「この汜水関を私たちが一番乗りで取ることまで奴は読んでいるということだ。つまり、我等は奴の手のひらの上で踊っているだけに過ぎない。」

 

「…………敵の策に態々乗ると言うの…?」

 

「確かに敵の策に乗るのは良い事とは言えんが、この策の上手いところは、私たちや他の諸侯数名に対して確実に利益が出るようになっていることだ…。それであるならば、この話に乗ることも悪くは無いだろう。」

 

「……そう。分かったわ。釈然とはしないけど、私たちの利益となるならば、道化師だって演じて見せようじゃない。」

 

 

何故彼は私たちや他の諸侯数名に利益が出るような策を講じたのか…。それだけが疑問に残る雪蓮であった。

 

 

 

 

そして冥琳の予想通り、しばらくして袁紹軍、袁術軍の両軍が明らかに罠だと思われる汜水関へと進軍を開始する。

 

 

この時、両軍にもあれが罠だと分かっているものはいた。

 

しかし、進軍は止まることは無い。

 

何故なら彼らの目には、あるものしか映っていないからだ。

 

 

 

両軍は昨日輜重隊を焼かれ、持ってきた糧食は全て失っていた。

 

そんな中、汜水関の扉の中には、山済みに詰まれた糧食が置いてあるのだった。

 

そう、彼等は食欲と言う人間の三大欲求の一つを満たすために、罠だと分かっているものの汜水関へと足を運ばざるおえないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弓史に一生 第九章 第十五話    空城の計  END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

九章第十五話の投稿が終わりました。

 

 

 

流石は華琳様と冥琳ですね……。

 

全てを読みきった上で、その策に乗っかろうとは……。

 

 

 

輜重隊を壊滅させられた両袁家は、食糧難のため罠だと分かっていても食いついてしまいます。

 

まぁ、あのお馬鹿さんはもしかしたら罠だと分かっていないかもしれませんが…。

 

 

 

 

次話の投稿はまた日曜日に……出来ると良いな……。

 

出来なければ次の日曜日と言うことでお願いします…。本当にすいません…。


 
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