No.653075

本編補足

根曲さん

・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。

2014-01-09 04:44:27 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:256   閲覧ユーザー数:256

届かない声

C1 記念コンサート

C2 かすかな圧力

C3 新型魔脈

C4 救世主

C5 報告

C6 派遣調査部隊

C7 鉱山内

C8 友情

C1 記念コンサート

 

グリーンアイス連邦ブルベド市。ドラゴンチャイルド鍾乳洞カフェ。スイング・ドアが開き、鍛冶屋Aが眉を顰める。音楽が流れ、ミラーボールの光が当たるお立ち台で元アイドルでブルベド市都市国家代表のアイリス・ヴァンガードがマイクを握り、体を左右に動かす。アイリス・ヴァンガードの親衛隊長オータキが率いる親衛隊員達が色とりどりのケミカルライトを振る。

 

人ごみをかき分けカウンターに座る鍛冶屋A。ドラゴンチャイルド鍾乳洞カフェのマスターが鍛冶屋Aを見る。

 

鍛冶屋A『…いつものやつを頼む。』

 

ドラゴンチャイルド鍾乳洞カフェのマスターは頷き、棚の方を向く。

 

鍛冶屋A『ふう。せっかく、いつもの納期収めの一杯をゆっくりとやろうと思ったのに。』

 

鍛冶屋Aは人ごみの方を向き、ため息をつく。

 

鍛冶屋A『今日はやけに繁盛してるじゃねえか。』

 

ドラゴンチャイルド鍾乳洞カフェのマスターはグラスに入ったウィスキーを渡す。

 

アイリス・ヴァンガード『

 

恋 恋 恋

 

愛 愛 愛

 

好きよ 好きよ 好き~よ あなたの ことが

 

 

 

鍛冶屋Aはグラスにつがれたウィスキーを一口飲む。

 

鍛冶屋A『…何だい?この曲は??』

ドラゴンチャイルド鍾乳洞カフェのマスター『あれ、知らないんですか?』

 

鍛冶屋Aはドラゴンチャイルド鍾乳洞カフェのマスターの方を向く。

 

鍛冶屋A『…今の曲はあまり知らねえなあ。』

 

ケミカルライトが左右に振られる。鍛冶屋Aはウィスキーを一口飲み、人ごみの方を向く。

 

アイリス・ヴァンガード『

 

胸を焦がす この思い

 

張り裂けそうな この鼓動

 

好きで 好きで たまらない

 

 

親衛隊一同『アイリスちゃーーーーん!!!』

 

目を見開く鍛冶屋A。

 

鍛冶屋A『…アイリス!!』

 

鍛冶屋Aはドラゴンチャイルド鍾乳洞カフェのマスターの方を向く。

 

鍛冶屋A『アイリスっていや…あのアイリス・ヴァンガードのことか!!?』

 

頷くドラゴンチャイルド鍾乳洞カフェのマスター。

 

ドラゴンチャイルド鍾乳洞カフェのマスター『ええ、そうですよ。』

 

ドラゴンチャイルド鍾乳洞カフェのマスターは店内に貼ってあるアイリス・ヴァンガードの記念コンサートのポスターを指さす。アイリス・ヴァンガードの記念コンサートのポスターを見て、頭に手を当てて笑う鍛冶屋A。

 

鍛冶屋A『たはは、道理で人が多いわけだ。』

 

アイリス・ヴァンガード『

 

でもね でもね アイドルは

 

恋愛 御法度

 

 

鍛冶屋Aはウィスキーを一口飲み、人ごみの方を見る。

 

C1 記念コンサート END

C2 かすかな圧力

 

グリーンアイス連邦グリア都市国家。巨大高層ビル群の中央、グリア都市国家議事堂の上空に滞空する超巨大飛行船空母アーケロン。その飛行板の上に止まるブルベド都市国家政府専用機の舷梯より降りるアイリス・ヴァンガード及びアイリス・ヴァンガードの元マネージャーで秘書長を務める女性コーをはじめとするブルベド都市国家上級官僚達。周りを見回すアイリス・ヴァンガード。アーケロンの飛行板にはマルケルディア市をはじめとする様々な都市国家の政府専用機が止まる。アイリス・ヴァンガードはコーの方を向く。

 

アイリス・ヴァンガード『ここって、あの飛行船の上なんですよね。』

 

頷くコー。周りを見回すアイリス・ヴァンガード。アーケロンの飛行板にはマルケルディア市をはじめとする様々な都市国家の政府専用機が止まる。

 

アイリス・ヴァンガード『マルケルディア市もダルク市もいる…。すご~い!こんなに飛行機がいるなんて!』

コー『この臨時空港といい、今回の議題の件といい書記長には驚かされることばかりだ。』

 

アイリス・ヴァンガード達が舷梯を降りると、超巨大飛行船空母アーケロンの船長でアーケロン人のアセムノンのホログラムが現れる。

一礼するアセムノンのホログラム。

 

アセムノンのホログラム『この度は、お忙しい中、遠路はるばる当船にご乗船頂きありがとうございます。グリアのワインと共に優雅な一時をお過ごし頂きたかったのですが、残念ながら…』

 

アセムノンのホログラムはグリア都市国家議事堂の屋上に続くアーケロンの舷梯に手を向ける。

 

アセムノンのホログラム『あのタラップまでの短い旅行となります。退屈しのぎにくだらないおしゃべりををお楽しみください。』

 

アセムノンのホログラムは一礼する。

 

アセムノン『ではこちらへ。』

 

アセムノンのホログラムの後に続くアイリス・ヴァンガード達。

 

アセムノン『この飛行船の名はアーケロン。今は、残念ながら見られない生物の名を冠しています。今は見られないというのも、この生物なんとすでに絶滅してしまった生物だからです。形は巨大な亀、この船もその巨大さにあやかりアーケロンと命名された訳です。』

 

舷梯まで来るアセムノンのホログラムとアイリス・ヴァンガード達。

 

アセムノン『おやおや、どうやら時間のようです。』

 

アセムノンのホログラムはアイリス・ヴァンガードの方を向く。

 

アセムノンのホログラム『お降りの際は、サインをお忘れなきよう。』

 

目を見開くアイリス・ヴァンガード。

 

アセムノンのホログラム『…部下が喜びます。』

 

アイリス・ヴァンガードは口に手を当て微笑む。超巨大飛行船空母アーケロンから降ろされた舷梯を渡り、グリア都市国家の議事堂の最上階に降りるアイリス・ヴァンガード達。

 

 

グリア都市国家の議事堂の最上階。グリーンアイス連邦新興財閥の面々が居、ガラス張りの屋根からは超巨大飛行船空母アーケロンの竜骨が見える。ソファに座るフォース魔脈流通公社の取締役ボロゾキーニンがアイリス・ヴァンガード達の方を向き、ソファに座る資源開発局所長アレフセフとグリーンアイス鉱山連盟会長グラヴィッチに向け、口を動かし、再びアイリス・ヴァンガード達の方を向いた後、立ち上がる。両手を広げるボロゾキーニン。

 

ボロゾキーニン『これはこれは。アイリス様ではありませんか。』

 

テラプメディアグループ総帥で宝石をちりばめた服を着るラディッシュの精の壮年男性カハバコがアイリス・ヴァンガード達に近づく。

 

カハバコ『誰かと思えばアイドルのアイリスちゃんじゃねえか。』

 

カハバコを見て、片眉を上げるボロゾキーニン。

 

ボロゾキーニン『先に話しかけたのは私だ。重要な案件がある。』

カハバコ『おう、アイドル捕まえてポン引きか?』

 

舌打ちをし、コーの方を向くボロゾキーニン。

 

ボロゾキーニン『例の案件。お願いしますよ。』

カハバコ『んっ??枕のか?』

 

眉を顰めカハバコの方を向くボロゾキーニン。

 

ボロゾキーニン『所詮、大根の煮物崩れの役者崩れ。』

カハバコ『民衆の生活に乗っかり者が。』

 

アレフセフとグラヴィッチがボロゾキーニンの方を向く。ボロゾキーニンは彼らの方を一瞬向いた後、咳払いして軌道エレベーターの完成予想図を見つめる

 

ボロゾキーニン『…ともかく、我々にはこの様なワイングラスは必要ない。』

カハバコ『可決されれば、旅番組、どろり二人旅のいいロケ地にもなるだろうて。』

 

カハバコを睨み付けるボロゾキーニン。

 

ボロゾキーニン『…あなたは分かっていない。これが我々にとってどれだけの意味を持つかを。』

カハバコ『なんだそんなどうでもいいことか。』

 

アイリス・ヴァンガード達の前に現れる女型アンドロイドのバシカ・キヨー。バシカ・キヨーはアイリス・ヴァンガードを見つめる。

 

バシカ・キヨー『ブルベド都市国家代表アイリス・ヴァンガード認識。認識。ドウゾコチラヘ。』

 

その場から去るアイリス・ヴァンガード達。

 

ボロゾキーニン『…糞尿入り混じった産廃電波を民衆の上に垂れ流してるだけのあんたには分からんさ。』

カハバコ『ククク、糞尿入り混じったとな。ははははは。俺は視聴率さえとれればどうでもいいんだよ。数さえとれりゃな。どうだい、いい話題はないか?いい値で買い取るぜ。くくくくく。』

 

 

アイリス・ヴァンガードはコーの方を向く。

 

アイリス・ヴァンガード『…コーさん。』

 

アイリス・ヴァンガードは胸に手を当ててコーを見つめる。

 

アイリス・ヴァンガード『わたし…。』

 

コーはアイリス・ヴァンガードを見つめる。

 

コー『アイリスが思った通りにすればいいんだよ。』

アイリス・ヴァンガード『はい。』

 

頷くアイリス・ヴァンガード。

 

 

グリア都市国家議事堂。暗がりの中、席に座る都市国家代表多数。台座にはテッラ博士が指示棒で、スクリーンに映し出された設計図を指し示す。

 

テッラ博士『宇宙空間に出た軌道エレベーターの先にメガソーラーを施設します。持続可能でクリーンなエナジーを生成の為、私はこのグリーンアイス連邦にて軌道エレベーターを提案するものであります。』

 

まばらな感嘆の声が響き渡る。

 

テッラ博士『更に言わせてもらえば、我々は未来に消費される資材を今、まさに無駄に消費しています!その資源があれば、我々の未来は明るいものになるでしょう。しかし、我々の技術は未熟で発展途上であります。よって、無駄なエナジーを消費するしかないのです。しかし、居住施設の設計により省エネを強化することができるのです。実例も腐るほどあります!!この軌道エレベーター城下を省エネ・エコエナジー開発特区居住城下町とすることで、このグリーンアイス連邦に更なる繁栄をもたらすこととなるでしょう!』

 

まばらな拍手が巻き起こる。グリーンアイス連邦書記長のバルコフ・スターリングが都市国家代表達を見回す。

 

バルコフ・スターリング『では、このテッラ博士の提案について賛成の方はお手元の青ボタンを反対の方は赤ボタンを押してください。』

 

喉を鳴らすアイリス・ヴァンガード。アイリス・ヴァンガードは周りを見回し、画面に映し出された起動エレベーターの完成予想図を見つめ、青ボタンを押す。

 

暫し沈黙。

 

バルコフ・スターリング『賛成392、反対51。この提案は可決されました。』

 

テッラ博士は壇上から上を向き、祈りを捧げる。

 

テッラ博士『おお、神よ!!!』

 

咳払いするバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『では、次に建設地について議論していきましょう。』

 

C2 かすかな圧力 END

C3 新型魔脈

 

ブルベド都市国家政府専用機内。執務室。椅子に座るアイリス・ヴァンガード。隣にはコーがいる。

 

アイリス・ヴァンガード『今回は早かったですね。案が可決されたと思ったらトントン拍子に建設予定地まできまちゃって。』

コー『初めからあらかた手をまわしていたのだと思うよ。』

 

頷くアイリス・ヴァンガード。

 

ノックの音。

 

アイリス・ヴァンガードは扉の方を向く。

 

アイリス・ヴァンガード『どうぞ。』

 

扉が開き、秘書官Aが入ってくる。

 

秘書官A『我が国より通信です。』

コー『我が国から?』

 

アイリス・ヴァンガードはコーの方を向く。

 

秘書官A『資源官イッシェンバッハより、至急お知らせしたいことがあると。』

コー『資源官が…。』

 

コーはアイリス・ヴァンガードの方を向く。頷き、立ち上がるアイリス・ヴァンガード。コーの後ろにつき、扉から出ていくアイリス・ヴァンガード。ブルベド都市国家政府専用機通信室。巨大モニターに映る資源官イッシェンバッハ。

 

イシェンバッハ『おお、これはアイリス様。』

 

アイリス・ヴァンガードはイッシェンバッハの方を向く。

 

アイリス・ヴァンガード『何かあったのですか?』

 

イッシェンバッハは頷き、満面の笑みを浮かべる。

 

イッシェンバッハ『お喜び下さい。ブルベド鉱山にて新型の魔脈の発見に成功しました。まだ詳しくは調査していないのですが…今までの魔脈とは段違い、格が違うといった方がよろしいのでしょうか。ともかく膨大なエネルギーを有しております。おそらく…無限、いやそれに近いと思われます。』

 

顔を見合わす一同。感嘆の声が上がる。

 

 

ブルベド市ワーシップオクトブ空港に着陸するブルベド都市国家政府専用機。舷梯から降りるアイリス・ヴァンガード達。リムジンが止まり、青ざめたイッシェンバッハが彼女たちに近づく。イッシェンバッハの方を向くアイリス・ヴァンガード。コーがイッシェンバッハの方へ歩む。

 

コー『どうしたのです?新魔脈の…。』

イッシェンバッハ『いえ、それが…。』

 

眉を顰めるコー。

 

イッシェンバッハ『ともかく車にお乗りください。話はそれから。』

 

イッシェンバッハは舷梯で立ち尽くすアイリス・ヴァンガード達を見る。

 

イッシェンバッハ『さ、早く。』

 

リムジンに乗り込むアイリス・ヴァンガード達。リムジンの中には眉を顰めるブルベド都市国家軍最高司令アレクセイ・レイフが乗っている。

 

アイリス・ヴァンガード『…将軍!!?』

 

アイリス・ヴァンガードを見て頷くアレクセイ・レイフ。コーはアレクセイ・レイフを見つめる。

 

コー『…将軍!これはいったい…。』

 

アレクセイ・レイフはリムジンに乗る人々を見回す。

 

アレクセイ・レイフ『緊急事態の発生だ。』

秘書官B『は?』

 

アレクセイ・レイフを見つめる一同。イッシェンバッハがアレクセイ・レイフを見た後、周りを見回す。

 

イッシェンバッハ『…ブルベド鉱山内にてハザードが発生しました。』

 

目を見開く一同。

 

アレクセイ・レイフ『現状、鉱山一帯を我が軍が封鎖している。』

 

アイリス・ヴァンガードは立ち上がりリムジンの天井に頭をぶつける。

 

アイリス・ヴァンガード『痛!』

 

頭を抱えて座り込んだ後、アレクセイ・レイフを見つめるアイリス・ヴァンガード。

 

アイリス・ヴァンガード『それはどういうことなんですか?』

コー『軍を…我々に断りもなく!』

 

顔を上げるアレクセイ・レイフ。アレクセイ・レイフはドアを叩く。

 

アレクセイ・レイフ『これは緊急事態だ!我々は現状を何も把握していない!ただ異常事態が発生したことしか分かっていないのだ。』

 

暫し沈黙。ため息をつき、眉間に手を当てるアレクセイ・レイフ。

 

アレクセイ・レイフ『…ともかく、軍はグリアス病院を本拠地にしている。そこに初期段階の生存者が何名か居る。』

 

喉を鳴らすアイリス・ヴァンガード。

 

C3 新型魔脈 END

C4 救世主

 

軍事車両、DBx-1177級人型機構が大多数居るグリアス病院のロータリーに止まるリムジン。降りるアレクセイ・レイフ、アイリスヴァンガードにコー、及び秘書官達とエッシェンバッハ。扉の前で待機する医者A。アレクセイ・レイフが医者Aの方を向く。頷き、首を横に振る医者A。

 

医者A『残念ながらまともな生存者はおりません。』

 

眉を顰めるアレクセイ・レイフ。アイリス・ヴァンガードはコーの方を向く。

 

医者A『ただ…。』

アレクセイ・レイフ『ただ、なんだ。』

 

医者Aは下を向いた後、アレクセイ・レイフを見る。

 

医者A『正常…とはいいがたいですが、通常会話のできる生還者なら一人だけおります。』

 

頷くアレクセイ・レイフ。

 

アレクセイ・レイフ『分かった。』

 

アレクセイ・レイフはアイリス・ヴァンガード達の方を向く。頷くアイリス・ヴァンガード。医者Aは背を向ける。

 

医者A『では、どうぞ。』

 

グリアス病院に入っていく一同。

 

 

グリアス病院内、ガラス越しに防護服を来た医者と看護士達。及び、ブルベド都市国家軍兵士達が警備をしている。

拘束具で椅子に縛り付けられるブルベド鉱山の生存者たち。

 

アイリス・ヴァンガード『これは!』

 

アイリス・ヴァンガードは医者Aの前に出る。

 

アイリス・ヴァンガード『これでは人権侵害ではありませんか!』

 

医者Aはため息をついて、簡易遺体収容所に横たわる血まみれの兵士の死体を指さす。血まみれの兵士の死体の方を向き、目を見開くアイリス・ヴァンガード。

 

医者A『では、殺されてからどうぞ天国で人権を謳ってください。こうでもしないと彼らは我々を襲ってきます。』

 

崩れるアイリス・ヴァンガード。コーがアイリス・ヴァンガードの体を支える。

 

コー『アイリス、アイリス、大丈夫?』

 

俯くアイリス・ヴァンガード。

 

コーは医者Aを睨み付ける。

 

コー『あなた!なんていうことを!』

医者A『戯言で戯れるより、目で見た方がよろしいでしょう。今はそんな余裕などないのですよ。』

 

医者Aは背を向ける。続くアレクセイ・レイフ。アイリス・ヴァンガードはよろめきながら立ち上がり、彼らに続く。

 

 

隔離病棟の13番目の個室の前で止まる医者A。後ろにはアレクセイ・レイフ、アイリス・ヴァンガード達。

 

医者A『ここです。』

 

ガラス張りの個室の中で座るブルベド鉱山作業員でドラゴニュートのデュダ。ガラスを叩く医者A。デュダは顔を上げる。

 

デュダ『我に何用か?』

 

医者AはデュダのIDカードを見る。

 

医者A『我とは酔狂ですね。』

 

鼻で笑うデュダ。

 

デュダ『フン、それは昨日までの何も知らぬ我。しかし、今日、我は神の声を宿した。根から分かれ、紡ぎし、祖先より受け継いだ体内に宿す魔竜の紐を絡め重ねあい、そして、向かえと。我は旧種の救世主として選ばれたのだ。』

 

眉を顰める一同。アレクセイ・レイフは窓を叩く。

 

アレクセイ・レイフ『御託はいい。鉱山で何が起こっている。』

 

口角を上げるデュダ。

 

デュダ『あれは神の啓示だ。下らんものを打ち立てて本来の目的を達せぬ我々に対して神は怒りをあらわしているのだ。だから我々の前に姿を現した。そして、種をその御手によって進化させたのだ。我は旧種の救世主、そして伝道者としての任を与えられた為、残念ながらその進化より外された。しかし、神は寛大だ。あれだけの造形物を創っておきながら、我々にも生存の権利と可能性を残すとは。うふふふふふ。』

 

眉を顰める一同。

 

 

グリアス病院会議室。ホワイトボードの前を歩くコー。椅子に座るアイリス・ヴァンガードと秘書官達及びアレクセイ・レイフ。

 

コー『結局何も分からなかったわ。あのキチガイ!』

アイリス・ヴァンガード『コーさん。落ち着いて。』

 

コーはアイリス・ヴァンガードを見てため息をつく。

 

コー『そうね。ごめんねアイリス。』

 

会議室に入ってくる青ざめたブルベド都市国家軍兵士A。

 

ブルベド都市国家軍兵士A『ほ、報告します。現在、調査救出に向かった我が軍の全部隊…音信不通です。繰り返します。繰り返します。あれ、と、ともかく我が軍の全部隊…音信不通です。』

 

ため息をつくコー。

 

コー『ともかく、鉱山連盟と本国にこの事をつたえなくてはいけませんね。』

 

C4 救世主 END

C5 報告

 

グリアス病院会議室。モニターに映るグリーンアイス鉱山連盟副会長チェシスクとグリーンアイス連邦総代表でレッサーパンダ獣人のラス、そしてバルコフ・スターリング。

 

アイリス・ヴァンガード『今、ブルベド鉱山でハザードが発生し、緊急体制がしかれております。』

 

眉を顰めるラス。

 

ラス『フン、アイドル風情が下手に政界にでるからこうなる。』

 

俯くアイリス・ヴァンガード。歯を食いしばるコー。

 

チェシスク『しかし、起きてしまったものはしょうがないでしょう。』

バルコフ・スターリング『それで、現状は?』

 

顔を上げるアイリス・ヴァンガード。

 

アイリス・ヴァンガード『…わ、分かりません。』

 

ラスはアイリス・ヴァンガードを睨み付ける。

 

ラス『は?とんだ小娘だな。ハザードの現状さえ掴めてないのとは。』

 

アイリスは拳を震わす。

 

アイリス・ヴァンガード『…た。』

ラス『た?』

アイリス・ヴァンガード『ただ、生存者が救出者をころ…ころ…殺した…。』

 

立ち上がるコー。

 

コー『失礼ながら我が代表の代わりに言わせてもらいます。我々が見た生存者の全員が発狂しておりました。

無論、救出した我が軍の兵士を殺す者もでるありさまです。』

 

そっぽを向くラス。頭を抱えるチェシスク。頷くバルコフ・スターリング。

 

チェシスク『ともかく、まずは会長に我々は報告するとします。』

 

消えるチェシスクの映るモニター。

 

バルコフ・スターリング『動こうにも情報が少なすぎる。ユグドラシル大陸王国の動向も気になりますからね。』

 

頷くラス。

 

バルコフ・スターリング『…ハザードが起こる前に何か変わったことはありませんでしたか?』

 

コーは瞳を上に上げる。アイリス・ヴァンガードが口を開く。

 

アイリス・ヴァンガード『変わったこと。変わったことと言ったら…。』

 

アイリス・ヴァンガードはコーの方を向く。頷くコー。アイリス・ヴァンガードはモニターの方を向く。

 

アイリス・ヴァンガード『…新型の魔脈を発見しました。それも、今まで我々が見てきたものとは桁違いのものです。それも無限に近いエネルギーを持つと…イッシェンバッハさん、いえ、我が国の資源官が言っていました。』

 

目を見開くバルコフ・スターリングとラス。

 

ラス『無限に近い!』

 

ラスは机を叩く。

 

ラス『なぜ、それを本国にすぐに連絡せん!』

アイリス・ヴァンガード『いえ、それはまだ調査の段階でしたから。』

バルコフ・スターリング『それで調査の方はどうなんですか?』

アイリス・ヴァンガード『それは…。』

 

アイリス・ヴァンガードの傍によるコー。

 

コー『残念ながら現状、調査救出に向かった部隊は全部隊音信不通です。』

バルコフ・スターリング『そうですか。』

 

目を細め、ラスの方を向くバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『どうでしょう。こちらからまず、調査部隊を手配しては。』

 

バルコフ・スターリングの方を向き、頷くラス。

 

ラス『うむ。いいだろう。』

 

ラスはアイリス・ヴァンガードの方を向く。

 

ラス『ブルベド市はそのままブルベド鉱山を封鎖するように。』

 

一礼するアイリス・ヴァンガード。

 

C5 報告 END

C6 派遣調査部隊

 

グリアス病院会議室。ホワイトボードの前を歩くコー。椅子に座るアイリス・ヴァンガードと秘書官達及びアレクセイ・レイフ。

 

プロペラの音。

 

窓から外を見る一同。上空を飛ぶテラプメディアグループのヘリコプター。眉を顰めるコー。

 

コー『…あれはテラプの。』

アレクセイ・レイフ『…蛆虫め。』

 

アレクセイ・レイフは無線を取り出す。

 

アレクセイ・レイフ『あ、全軍につぐ、全軍につぐ。鉱山内にテラプのヘリを入れるな。全軍につぐ全軍につぐ、鉱山内に鉱山内にテラプのヘリを入れるな。』

コー『こんなに早く察知されるなんて。』

秘書官女A『これではすぐに全都市国家に鉱山事故のことが知れ渡ってしまいます。』

 

会議室に入ってくるブルベド都市国家軍兵士A。

 

ブルベド都市国家軍兵士A『報告します。キンドゥル傭兵団と名乗る者達が来ています。』

コー『傭兵団?傭兵団がいったいなんの…。』

ブルベド都市国家軍兵士A『は、それがこのようなものを。』

 

ブルベド都市国家軍兵士Aはコーに契約書の写しを差し出す。コーとアレクセイ・レイフは契約書を見て、ブルベド都市国家軍兵士Aを見る。

 

アレクセイ・レイフ『すぐにお通ししろ!本国からの増援だ。』

 

頷き、駆けていくブルベド都市国家軍兵士A。

 

 

グリアス病院会議室に機材を運ぶ傭兵団長キンドゥルとキンドゥルとキンドゥルの妻ミシェンコ、女性団員のエレルバと他団員達。

キンドゥルはアレクセイ・レイフの方を向く。

 

キンドゥル『あんたがここの軍の責任者か。』

 

頷くアレクセイ・レイフ。

 

キンドゥル『俺達用にここを改造してもいいか?』

 

頷くアレクセイ・レイフ。

 

アレクセイ・レイフ『好きに使って構わない。しかし…。』

 

キンドゥル用兵団を見回すアレクセイ・レイフ。

 

アレクセイ・レイフ『随分と少ないな。』

 

笑みを浮かべるキンドゥル。

 

キンドゥル『ああ、それか。まあ、よく言われるが、俺達は無人機を操作する傭兵団だ。だから少人数でも別に構わねえ。』

 

キンドゥルが胸を叩く。

 

キンドゥル『兵員はこれだけ十分。』

 

キンドゥルはキンドゥル級小型人型機構を叩く。

 

キンドゥル『戦いはこいつらがやってくれるのさ。』

 

キンドゥル級小型人型機構を座り込んで見つめるアイリス・ヴァンガード。』

 

アイリス・ヴァンガード『へえ、すごいですね。』

 

アイリス・ヴァンガードはキンドゥル級小型人型機構を撫でる。

 

キンドゥル『だろ、制作は俺。』

 

胸を叩くキンドゥル。

 

キンドゥル『どうだい。かわい子…あ、あんた。』

 

首を傾げ、キンドゥルを見つめるアイリス・ヴァンガード。

 

キンドゥル『どっかで見たことあるぞ。』

 

ミシェンコがキンドゥルの方を向く。

 

ミシェンコ『あんた、ほんとに世間知らずなんだから。ブルベド都市国家代表はアイドルのアイリス・ヴァンガード。』

キンドゥル『まじか!』

 

キンドゥルはアイリス・ヴァンガードを見つめる。

 

キンドゥル『うわ、ほんものだ。実物をはじめてみた。』

エレルバ『団長、アイドルをUMAみたいにいうなよ。』

 

笑い出す一同。

 

キンドゥルはアイリス・ヴァンガードの方を向く。

 

キンドゥル『では、アイリスさん。我々には鉱山の道案内人が必要です。至急手配してください。』

アイリス・ヴァンガード『は、はい。』

 

 

グリアス病院会議室。円形の卓上に繋げたモニターに向かって座るキンドゥル傭兵団の面々。グリアス病院会議室の巨大モニターにはそれぞれの操作する視界が映る。ブルベド都市国家軍兵士に両脇を抱えられ、会議室に入るブルベド鉱山の鉱山作業員兼技師のポポロゾフ。

 

ポポロゾフ『お前ら、こっちは長期休暇の最中だぞ。』

マルケルディア都市国家軍兵士A『これは都市国家命令だ。』

ポポロゾフ『フン、これは権力の横暴…。』

 

ポポロゾフはキンドゥル傭兵団の操作する機械を見つめ、目を見開く。

 

ポポロゾフ『おお、これは!』

 

ポポロゾフはキンドゥル傭兵団の元へ駆けていく。

 

ポポロゾフ『これは無人機の操作機か!』

 

ポポロゾフの方を向いて頷くキンドゥル。

 

キンドゥル『ああ。俺ら傭兵団はこれで金を稼いでるわけさ。まあ、最も戦争が主なビジネスじゃないがね。』

 

頷き、顎に手を当てるポポロゾフ。

 

ポポロゾフ『ほっほう。』

 

ポポロゾフの方を見て眉を顰めるコー。コーはアレクセイ・レイフの傍による。

 

コー『あのような者しかいなかったのですか?』

アレクセイ・レイフ『しかたあるまい。他の奴らは海外旅行の最中で呼び戻そうにも時間がかかる。』

 

手を叩くポポロゾフ『すばらしいな。後で、俺も操作、分解してもいいか。』

 

苦笑いを浮かべるキンドゥル。

 

キンドゥル『操作はいいが分解は勘弁してくれよ。』

 

C6 派遣調査部隊 END

C7 鉱山内

 

グリアス病院会議室。円形の卓上に繋げたモニターに向かって座るキンドゥル傭兵団の面々。

横に待機するポポロゾフ。グリアス病院会議室の巨大モニターにはそれぞれの操作する視界が映る。

 

キンドゥル『キンドゥル傭兵団只今より、鉱山内に入る。』

ポポロゾフ『これが入口だ。』

エレルバ『見ればわかるよ。』

ポポロゾフ『第二ゲートだ。』

ミシェンコ『書いてあるわ。』

キンドゥル『開けるぞ。』

 

キンドゥルのモニターの画面に扉の横のキーに文字を打ち込むキンドゥル級小型人型機構が映る。見守るアイリス・ヴァンガード及びコーにアレクセイ・レイノフと秘書官達。

 

ゲートが開き、中に入っていくキンドゥル級小型人型機構。閉まるゲート。

 

キンドゥル傭兵団員A『ふう。何度も思うが、俺の代わりに小型ちゃんが行ってくれて助かるわ。』

エレルバ『はは、下手なホラー映画よね。』

 

ポポロゾフ『右手が医務室、左手が事務所だ。』

 

頷くキンドゥル。

 

キンドゥル『では二手に分かれるか。』

 

頷くキンドゥル傭兵団員達。

 

キンドゥル『…事務所には何もないな。ん、コーヒーが置いてある。』

 

事務所の机に置かれたコーヒーの中に手を入れるキンドゥル級小型人型機構。

 

キンドゥル『温度は…ぬるめだな。』

エレルバ『医務室にも誰も居ないわ。』

ポポロゾフ『事務所を通り過ぎれば更衣室。男性用と女性用がある。』

 

頷くキンドゥル。

 

キンドゥル『では男は男性用、女は女性用で。』

 

巨大モニターを見るミシェンコ。

 

ミシェンコ『どうせモニターに映るでしょ。』

 

笑うキンドゥル傭兵団員B。モニターに映る男子更衣室と女子更衣室。

 

エレルバ『へー、こんな風になってるんだ。』

ミシェンコ『…ここも何もないわね。』

キンドゥル傭兵団員B『あらそった形跡も無いしね。』

キンドゥル傭兵団員A『入口付近は異常ねえな。』

 

キンドゥル傭兵団員Aはボタンを押す。

 

キンドゥル傭兵団員A『ヘイ!聞いてる?隣の部屋の下着ベイビーちゃん!今夜俺と火照らないかい?』

ミシェンコ『あんたね。もっといい言い回しはないわけ。』

キンドゥル傭兵団員A『まあ、ともかく入口付近は異常ねえな。』

 

かすかな音。

 

エレルバが周りを見回す。

 

エレルバ『今、何か言った?』

 

首を横に振るキンドゥル傭兵団団員達。

 

エレルバ『そ、そう。気のせいよね。』

ポポロゾフ『奥はレクリエーション施設に会議室、工務室に備品室があるぜ。』

キンドゥル『ではそれぞれに進もう。』

 

頷く団員達。

 

モニターに映るそれぞれの部屋。中央の広間に戻る一同。

 

キンドゥル『何もないようだ。よし、奥に進もう。』

 

モニターに映る特殊作業着の並ぶ部屋。

 

ポポロゾフ『その先は坑道だ。』

 

巨大モニターは鉱山の道を映す。沈黙の時間が過ぎる。

 

ミシェンコ『…何もないし、何もおきないわね。』

キンドゥル傭兵団員A『でも、人気がまったくないな。』

 

頷くキンドゥル。

 

キンドゥル傭兵団員B『いっちょ試してみますか。』

 

キンドゥル傭兵団員Bはボタンを押す。

 

キンドゥル傭兵団員B『あーあー誰かいませんか。できればかわい子ちゃんがいいです。メアド教えてください!』

 

会議室内に響く声。

 

キンドゥル傭兵団員Bは両手を広げ、キンドゥルの方を向く。

 

かすかな音。

 

キンドゥル『おい、誰だ。変な返事した奴は。』

 

周りを見回す一同。眉を顰めるキンドゥル。

 

キンドゥル『ではこれより奥に進む。』

 

暫し沈黙の時間が過ぎる。坑道に張り巡らされるピンク色の物体の映るモニター。

 

ミシェンコ『へ~。鉱山っていったことなかったけど、中はこんな風に…。』

 

立ち上がるポポロゾフ。

 

ポポロゾフ『何だこれは!』

 

ポポロゾフの方を向く一同。

 

ポポロゾフ『俺はこの鉱山でこのかた働いているが、こんなもん見たことねえぞ。』

 

ポポロゾフはモニターに映るピンク色の物体を撫でた後、自分の指を見つめる。一歩前に出るアイリス・ヴァンガード。

 

アイリス・ヴァンガード『…まるで血管みたい。』

 

コーはモニターに映るピンク色の物体を見つめる。

 

コー『私は根に見えたが…よく見ると脈打ってるな。』

キンドゥル『まるで肉片だな。』

ミシェンコ『グロいわ。』

キンドゥル『一応サンプルをとっておこう。』

ミシェンコ『やるの?オエー。』

 

吐く真似をするミシェンコ。

 

キンドゥル『では進もう。』

 

巨大モニターは周りをピンク色の物体に覆われた鉱山の道を映す。沈黙の時間が過ぎる。

ため息をつくキンドゥル傭兵団員B。

 

キンドゥル傭兵団員B『しかし、本当に人がいないな。人の気配が全くしない。』

キンドゥル傭兵団員A『そうだな。』

 

キンドゥル傭兵団員Aはボタンを押す。

 

キンドゥル傭兵団員A『あーあーどなたか居ませんか。居たら返事ください。』

 

舌打ちをするキンドゥル傭兵団A。

 

キンドゥル傭兵団員A『肉食系女子でも大歓迎!一緒にランチでも。』

 

激しい靴音。

 

声『ふぁああい!ふぁああい!ふぁああい!!』

キンドゥル傭兵団員A『お、誰かいるらしいぞ。』

 

モニターに映る人影。

 

声『ふぁああいい!ふぁああいいいい!!』

キンドゥル傭兵団員A『大丈夫ですか。』

 

モニターに映し出される、ヘルメットを持ち首を180°に傾け、手を伸ばしながら白目を向いて駆けてくるブルベド都市国家軍の女性制服を来た物体、手足からは小さな浅黒い触手が無数に飛び出ている。

 

キンドゥル傭兵団員A『な、何だこいつは!』

コー『ブルベド都市国家軍の制服を着ているわ!』

キンドゥル傭兵団員A『こいつはまじもんでやばいぞ!』

 

巨大モニターの画像が揺れる。

 

キンドゥル『逃げろ!とりあえず逃げろ!』

声『きしゃー!!きしゃー!!!』

 

モニターに映る人型の物体達。

 

逃げ出すキンドゥル級小型人型機構達。

モニターの画面が採掘場へと移動する。

 

キンドゥル傭兵団員A『何なんだあいつらは。』

キンドゥル傭兵団員B『…もし無人機でなかったら俺らの何人かはあの世に行っていたぜ。』

 

コーと抱き合って震えるアイリス・ヴァンガード。息を切らすアレクセイ・レイフ。唖然とする秘書官達。頭に手を当てるポポロゾフ。胸をなでおろすキンドゥル傭兵団員達。

 

アレクセイ・レイフ『いったい何が。いや何なんだ?あれは…。』

 

エレルバが両手で頭を抱える。

 

エレルバ『う…っ。』

 

エレルバの方を向くキンドゥル。

 

キンドゥル『どうした?』

エレルバ『あ、頭が痛い。あああ。頭が。』

 

キンドゥルはエレルバの方を向いた後、ミシェンコの方を向く。

 

キンドゥル『エレルバを頼む。』

 

頷き、エレルバを抱えて出ていくミシェンコ。コーが指示をし、秘書官が二人ついていく。顔を見合わせるキンドゥル傭兵団員達。モニターに映る採掘場と自身の指を何回も見るポポロゾフ。

 

キンドゥル『ともかく進もう。』

ポポロゾフ『その先は最近のエリアだ。』

キンドゥル『最近の?』

 

ポポロゾフは指を見つめながら眉を顰める。巨大モニターに映る血の海、四散した肢体。コーはアイリス・ヴァンガードを抱き寄せ、目を覆う。

 

キンドゥル傭兵団員B『こりゃひどいな。』

キンドゥル『さっきの化け物にやられたのか?』

キンドゥル傭兵団員A『おや、これは…。』

 

モニターに映る蠢く巨大魔脈。

 

銃声。

 

顔を見合わせる一同。アイリス達は会議室を出る。ミシェンコの上に乗り、首を絞めるエレルバ。腰を抜かす秘書官達。

 

エレルバ『ふふひひひ。このどろどろどろどろぼーねこねこねこねこ!にゃにゃにゃにゃ!どろどろどろぼぼぼ…。』

ブルベド都市国家軍兵士A『やめろ!何をやっている。その手を離さんか!!』

 

エレルバは白目を向く。

 

エレルバ『きしゃー!!きしゃー!!!』

アイリス・ヴァンガード『何?何が??』

 

舌打ちするブルベド都市国家軍兵士A。

 

ブルベド都市国家軍兵士A『ちっ、あいつらと同じじゃないか!』

 

窒息死するミシェンコ。エレルバは秘書官Aの方へ飛び乗る。

 

銃声。

 

エレルバの胸に穴が開き崩れる。首を横に振るアイリス・ヴァンガード。

 

アイリス・ヴァンガード『いや…いや…いや…。』

ポポロゾフの声『止めろ!今すぐ回線を切れ!いいから切れ!電源はどこだ?』

キンドゥルの声『何を言っている。これは調査。それにこの無人機が壊れても大丈夫だ。』

ポポロゾフの声『違う違う!あれは誘導していたんだ!その奈落から出るために!』

キンドゥル傭兵団員A『はぁ?』

キンドゥル傭兵団員B『さっきのショックでいかれたか?』

ポポロゾフ『おい!こいつはやばい!早く回路を切れ!あれはお前らのネットワークに侵入、こちらに向かってきている!早く切れ!』

キンドゥル傭兵団員Aの声『何をいぎっ!』

キンドゥル傭兵団員Bの声『だ、団長何を!』

ブルベド都市国家軍兵士A『ち、今度はこっちか!』

 

会議室の扉を開くブルベド都市国家軍兵士A。頭から血を流して倒れるキンドゥル傭兵団員A、機材でキンドゥル傭兵団員Bの頭部をつぶすキンドゥル。

 

ポポロゾフ『これだ!こいつだ!!』

 

配線を切る最中のポポロゾフの後ろで機材を振り上げるキンドゥル。

 

銃声。

 

崩れ落ちるキンドゥル。配線を切り、息を切らすポポロゾフ。ポポロゾフに銃口を向けるブルベド都市国家軍兵士達。

手をかざすポポロゾフ。

 

ポポロゾフ『落ち着け!落ち着け!俺は正常だ!』

 

首を横に振るアイリス・ヴァンガード。

 

アイリス・ヴァンガード『いや…いや…いや…いやーーーーー。』

 

頭を抱えて崩れるアイリス・ヴァンガード。

 

C7 鉱山内 END

C8 友情

 

ブルベド都市国家議事堂。執務室に座るアイリス・ヴァンガード。正面にコー。机の上には手紙の山。

 

アイリス・ヴァンガード『ブルベド鉱山爆破からもう一か月になりますね。』

 

頷くコー。アイリス・ヴァンガードはコーに背を向け、窓から外を見る。外ではアイリス・ヴァンガードのCDが叩き割られ、キャラグッズが燃やされる。

 

アイリス・ヴァンガード『なのに…何でこんな日がずっと続くの。』

 

俯くアイリス・ヴァンガード。コーが窓を開ける。

 

アイリス・ヴァンガード『開かないで。』

群衆女A『私の息子を返せ!このろくでなし!』

群衆男B『あいつは、生きたまま鉱山内に埋めたんだなんて残忍な!』

群衆男C『何がアイドルだよ。見損なったよ!助かるかもしれないのあった奴らを見捨てたんだ!』

群衆女B『辞めろ辞めろ!都市国家代表なんてやめちまえ!』

 

窓を素早く閉じるコー。

 

アイリス・ヴァンガード『…どうしたらよかったの。私どうしたらよかったの?』

 

顔に両手を当てて泣くアイリス・ヴァンガード。アイリス・ヴァンガードを見つめる。

 

アイリス・ヴァンガード『私が悪いの。私のせいなの。』

 

コーはアイリスを引き寄せる。

 

コー『そんじゃないよ。あれは仕方のない事だったんだから。』

アイリス・ヴァンガード『しかたないって、人がいっぱいいっぱい死んじゃって…私の命令で鉱山を爆破して…。』

 

アイリス・ヴァンガードはコーを払う。

 

アイリス・ヴァンガード『もういや。都市国家代表なんて嫌!私、辞めたい!!』

 

目を見開くコー。コーはアイリスの両手を握る。

 

コー『辞めるなんて考えちゃ駄目!絶対に続けるの!いい。』

 

首を横に振るアイリス・ヴァンガード。コーはアイリス・ヴァンガードを見つめる。

 

コー『私がついているから、ね。』

 

頷くアイリス・ヴァンガード。

 

コー『良かった。』

 

コーは立ち上がる。

 

コー『待ってて、今アイリスの好きな紅茶を入れるからね。』

 

コーは執務室から出ていく。アイリス・ヴァンガードは椅子に座り直し、俯き、手紙の封を開ける。手紙を見つめ、震え青ざめるアイリス・ヴァンガード。彼女はその手紙を開封されていないオータキの手紙の上に置き、引き出しを開け、カッターナイフを取り出す。

 

アイリス・ヴァンガードは立ち上がり、自分の手首を見つめ、カッターナイフの刃を見つめる。アイリス・ヴァンガードは目を閉じ、深呼吸したのち目を開けて手首を切る。倒れるアイリス・ヴァンガード。血が床を染める。紅茶を落とし、執務室に駆けこむコー。コーはアイリス・ヴァンガードを抱きかかえ揺する。

 

コー『アイリス!アイリス!!』

アイリス・ヴァンガード『ごめんコーさん。私もう耐えられないの…。』

コー『なんてことを!なんてことをおおおおおお!!!!』

 

コーは頭を掻きむしる。目を閉じるアイリス・ヴァンガード。

 

コー『ちくしょう!あたしはこんな所では終われない!終われないのよーーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

立ち上がるコー。女秘書官Aが執務室に入る。

 

女秘書官A『あの何かありました…。ひっ!た、大変。』

 

執務室に集まる秘書官達。

 

秘書官B『きゅ、救急車を。早く…。』

 

立ち上がるコー。

 

コー『待って、その必要はないわ。』

 

首を傾げる秘書官達。

 

コー『…ブルベド鉱山爆破の件。…全部、この子のせいにしましょう。』

秘書官A『あんた何を。』

秘書官B『人が死にかけてるんだぞ!』

コー『では、このまま暴動が続くのが良いとでも。』

女秘書官A『良くはないですけど…。』

コー『あなたはもうすぐ子供が生まれるんだってね。お金が必要でしょう。』

女秘書官A『は、はい。』

コー『それとも、この子と一蓮托生して、職と名誉を失い子々孫々まであの群衆の餌食となりたいの?』

 

喉を鳴らす音。

 

コー『では、この子が強権的に爆破を指示した。我々はこの子の独裁に抑圧された被害者。それでいいですね。』

 

C8 友情 END

 

END


 
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