No.651492

義輝記 伏竜の章 その八

いたさん

義輝記の続編です。 台詞の前に名前を入れていましたが、恋姫キャラだけ名前を真名で統一します。すでに前作から行っていますが…そのように変更します。 また、よろしければ読んで下さい。

2014-01-03 23:06:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3075   閲覧ユーザー数:2734

【交差する思惑の件】

 

〖張三姉妹の部屋〗

 

(時は程遠志達突入前から二十分前に遡る)

 

天和「いい加減、お外で散歩したいよ!!」

 

地和「外で美味しい物食べたい!!」

 

人和「姉さん達…………」

 

親衛隊の人達から、話を聞いた。 

 

官軍が総力を挙げてこの地を攻めるという。 あの時に見た柵は、官軍の軍師が編み出した『野獣狩りの罠』だと苦々しく呟いていた。

 

私の祈りは………届かなかった。 姉さん達も私もここにいる私達を応援してくれた人達も……賊と弾劾されて、全員死ぬんだ。

 

もう、何も考えられない。 いや、考えたくない!

 

考えても浮かぶ事は、『生きたい』、『生きたい』、『生きたい』。

 

あれほど、皆の事を祈っていたのに、全員死ぬ事が分かれば、急に命が惜しくなり、浮かんでくる。

 

だから、何も考えたくない。 このまま思考を停止させればどれだけ幸せだろうか?

 

 

親衛隊「人和様 入ります!」

 

ふと、親衛隊の声が聞こえ、承諾の返事を出す。

 

親衛隊の皆には、真名を預けている。だから、皆、私達に好意的で大変助かっている。 

 

外に出て行くたびに卑猥な目で、私達を舐めまわすように見られるのが怖かったから。 何度、危ない目を救ってくれた事か……。

 

親衛隊「『華蝶仮面』と言う人物が、面会を求めておいでですが?」

 

天和「!」   地和「!」    人和「?」

 

天和「すぐに、ここに通して!」

 

地和「通しなさい!!」

 

人和「姉さん達?」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

華蝶仮面「すまんな、お邪魔する!」

 

部屋に入って来たの、白い動きやすそうな服装、顔に不思議な蝶の仮面を付けた私達と近い年齢の女性だった。

 

天和「久しぶり~~!」  

 

地和「相変わらずの人気の高さね! 噂はここまで上がって来てるわよ? 華蝶仮面」

 

えーーと、どちら様? 変態仮面? 破廉恥仮面?

 

華蝶仮面「コラァ、人をあぶない人物みたいにいうんじゃない!」

 

地和「そう? 流石に我が妹と言いたいんだけど…」

 

華蝶仮面「………気が変わった。 この話は無しに………!!」

 

天和「待って待って待って!! 二人共、早く謝りなさい!!」

 

珍しくあの天和姉さんが、はっきりとした口調で私達を叱りつける。

 

…………何年振りに聞くのかな?

 

天和「ごめんなさ~い! 妹達が不遜な事を! もう~、駄目でしょう! 正直に面と面で言っては~!! 」

 

華蝶仮面「………………帰る………」

 

三人「「「ごめんなさい、ごめんなさい! 帰らないで!」」」

 

その後、なんとか説得して椅子に腰を掛けてもらう。 机の上には『白湯』。 本当はお茶を出したかったけど、私達の貯蔵庫には、そんな高級品はすでに無い………。

 

華蝶仮面「お主達と漫才をしに来たわけではないのだが……」

 

浣腸仮面さんは、白湯を美味しいそうに啜る。

 

この後、姉さんと浣腸仮面との経緯を聞いた。

 

 

★☆ 回想 ☆★

 

私達が旅芸人をしていたときの事らしい。

 

私が用事があり姉さん達から離れていたら、二人の前に傷付いた華蝶仮面が現れた。 ……夜盗退治の途中、不覚にも腕に怪我を負ってここまで逃れて来たとの本人談。

 

そこで、二人で手当てを行い、その晩ご飯のおかず予定だったメンマも、何故か気付かれ所望されたので、上げたという。

 

その別れ際に曰わく、『お主達が危なくなれば、何処となり現れ、その危機に推参しよう!』と。

 

☆★ 回想終了 ★☆

 

華蝶仮面「…………で、来たのだが。後、また不適切な事を思い浮かべなかったか? 具体的に言えば浣腸仮面……とか?」

 

私は、全力で謝り二度と考えないと誓い、やっと許してもらう。

 

地和「それで、どうやって助けてくれるの?! やっぱり、地和ちゃんの可愛い魅力で官軍を降服させるとか?」

 

天和「えぇ~? ここは~お姉ちゃんの魅力と歌声で従えるですよね~~?!」

 

………そんな事出来れば、こんな苦労なんかしない!!!

 

          ドン!

 

華蝶仮面さんが、机の上を少し強く叩いた!!

 

華蝶仮面「………お主達、夢見るのもいい加減にしろ!」

 

姉さん達は、頬を膨らませ抗議するが、華蝶仮面さんが言い放つ。

 

華蝶仮面「お主達の実力は確かにある! こうやって慕って来たものを見ればな! だが、親衛隊の話に聞けば、下の奴らの行動を全く把握していない。放置してあったと聞くではないか? 」

 

…そう。私達は自分達の行動ばかり考え、親衛隊に任せっきり。

 

気が付けば、罪は全て私達に擦り付けられ…、いえ、罪を背負う身となった。 己の怠慢による罪に利息がついたものだ。

 

私は、解決策を親衛隊共々探し、程遠志達に無駄な事と知りながら、一縷の望みを託して送りだした。 ……天水の董仲穎の下へ降り立った『天の御遣い達』の噂を聞いて……。

 

姉さん達は、姉さん達なりに伝があったのは驚いたが……。

 

天和「だって~、お姉ちゃんはただ歌って踊って、有名に成れれば幸せになれるだろうと考えて~! こんな状態になるなんて、考えていなかったんだよ~?」

 

地和「そうよ! 私は歌や踊りで大忙し! そんな組織みたいな事わからないわ! だから、罪はこの組織の頭だった『趙弘』、『韓忠』、『孫仲』が償えばいいのよ!!」

 

私は、怒りで顔が熱くなる!! 

 

三人は、よくやってくれた! 私が何回お礼で頭を下げたか!

 

元々商人の出のため、金の扱いをよく知っていたので、この組織の頭となっていた。 よく、応援団が大きくなって、運営が大変だと愚痴を零しつつ、仕事に励んでくれたは、応援団でよく知られた事実だ!

 

それなのに……………姉さん達は、そんな人達に罪を責任転嫁しようとするのか?!!!!

 

私は、今まで思った事を、姉さん達にぶちまけた!

 

姉さん達は、唖然として私の顔を見る。 

 

だが、理解したというより困惑したというのが正しいのだろう。…ただ黙っているだけだった。

 

華蝶仮面「ふむ、道理を踏まえた者も居るとは、感……誰だ!!」

 

急に華蝶仮面の声が険しくなり、入口を睨むつける!!

 

??「………わたくしの気配を、こうも簡単に捉えるとは、貴女もこの世界の英雄のお一人ですか? フフフ、貴女なら、私の力を計れるかもしれませわね?!」

 

誰! 官軍に囲まれているのに、面会出来る筈が?!

 

華蝶仮面は、神出鬼没だから良いけど…………。

 

地和「誰なの! この場所までは親衛隊が守備しているから、簡単には通れない筈よ!?」

 

??「あら? 親衛隊とは、この愚かな人達の事です?」

 

シュ! シュ! シュ! ドカッドカッ! ドカッ! ドカッ!

 

ドアが急に開くと、多数のヒトのようなモノが投げ込まれる!!

 

??「わたくしの行く先を阻んでくれるので、ほんの少しお相手

てした…だけですわ。 通路に置くのも邪魔ですので、コチラの大きなお部屋に入れて置きます」

 

天和「趙弘さん、韓忠さん、孫仲さん!!!」

 

地和「親衛隊の皆…………!!」

 

わ、私達の家族…同然、あんなに一生懸命動いてくれた皆が!!

 

ドアから移動して、私達の少し傍まで曲者が近寄る。 悔しいけど、悔しいけど…………何も、出来ない!!!

 

順慶「わたくしの名は、『筒井順慶』、愛おしい『天城颯馬』様をわたくしの元へ帰ってきてもらうために動いていますの…」

 

…『天城颯馬』? …天水に降り立った最初の『天の御遣い』?

 

順慶「えぇ、そうです! 颯馬様は、大変聡明でお優しい人柄、しかも容姿も端麗。ですから、貴女達みたいな有名で綺麗な若いおなごが颯馬様に関わると、好意を持ってしまうんです………」 

 

それが何! 皆を殺した曲者が、私達を残す訳無いクセに!!

 

順慶「…その通り、聡明な人は嫌いではありませんよ? 本当は、軍を指揮する腹黒い輩を殺せば、貴女達は死んだも同然。…ですが、黄巾賊殲滅戦で万が一生き残られ、恋敵として現れる前に、わたくしが、今この場で消して差し上げます!!! 」

 

どう考えても勝ち目なんて無い! 親衛隊は、私達を守るために一生懸命に武を鍛えていた武人達。 普通の人が数人掛かりでも相手にならない親衛隊が簡単に撃破される曲者に、武の力が無い私達がどうなるか、すぐわかるだろう……………。

 

??「おいおい、悲観するのは早いぞ!」

 

同じく入り口のドアが開き、若い女の武人が現れた!

 

星「劉備軍の将『趙子龍』見参!!」

 

天和「助けて!!」   

 

地和「早く助けなさい!!」

 

…………華蝶仮面? なんで劉備軍の将なの?

 

天和「華蝶仮面なら、『援軍を呼んで来る』ってドアから出て行ったよ?」

 

地和「あれだけ大口叩いて、結局援軍呼ぶだけなんて……!!」

 

……姉さん達? 気付いてない?

 

順慶「『趙子龍』ですか! こんな早く大物が来てくれるなんてなんて、わたくし感激しておりますわ! 雑魚ばかりでは、折角この『力』を授けてくれた『老師』に申し訳ないですもの!」

 

今まで穏やかに笑っていたのに、子龍さんが現れると、凄みがある笑いに変化した。 …周りの空気が緩やかに動きだす!

 

子龍さんは、目に止まらぬ槍裁きで順慶を狙う! が、素手で動く順慶が槍裁きを上回り、子龍さんに手傷を与えていく!

 

順慶「この世界の英雄、恐るるに足りませんわ! ……さて、用が済んだ主役は、そろそろ退場していただきましょう!」

 

子竜さんの狙った槍を一瞬で避けると、背後に回り手刀を子龍さんの

首筋に手刀を当てる!

 

順慶「さよなら、趙子龍!!」

 

      シュ!!  キン!

 

順慶「………どなたです? こんな悪足掻きをするのは?」

 

子龍さんの方向目掛け、天井より何か投げつけられた。

 

順慶が弾き返した後、子龍さんが順慶の拘束より脱出し距離を取る。

 

       シュン!! タッ!

 

明命「間に合って良かったです!!」

 

星「……申し訳ない、礼を言わせていただく!」

 

明命「お話は、天井で聞いていましたから大丈夫です! 私は孫呉に仕えし『周幼平』と申します! 」

 

星「『趙子龍』と申す。 ……して、孫策様も張角達を奪い取る算段で動いていたのですかな?」

 

明命「違います! 様子だけ伺って欲しいと頼まれたもので…」

 

星「深く詮索は止めておこう。……命の恩人殿の言葉故」

 

明命「はい! 助かります!」

 

順慶「また一人英雄ですか? それなら、もっと確かめが出来ます! スッ…………『瞬歩』!」

 

明命「子龍さん、横です!」  

 

星「ハイ、ハイ、ハイ!!」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

星「やれやれ…。私達はとんでもない事に巻き込まれたようだな?」

 

明命「全くです! 戻ったら御猫様のご飯代、倍請求します!」

 

星「……私は、高級メンマを請求してみるとしようかな?」

 

順慶「余裕がおありです事。ですが、貴女方の体力も尽きる頃ではないですか?」

 

星「フッ、確かにその通りだ。 だが、そろそろ突入してくる頃だな! 私達の役目も一時終わる」

 

順慶「…………!」 

 

        ドン!

 

◆◇◆

 

【程遠志、死す…?の件】

 

星「者共!! 気をつけろ! 奴の強さは化け物だ!」

 

明命「一人では立ち向かわないように! 目を離すと、足下の黄巾賊と同じようになります!!!」

 

程遠志達は、自分達の足下を確認する。

 

知り合い、仲間、知り合い、知り合い、、友人、友人……。

 

程遠志「てめぇぇかぁぁぁ!!! 趙弘や韓忠のオッサン、孫仲の野郎、仲間達を殺しやがった奴は!!!」

 

順慶「そこの邪魔なゴミを処分したのは、わたくしですわよ? …お礼なら後で聞いて上げますから、今はそこをおどきなさ……!」

 

程遠志「俺達の同志を殺した奴に礼を言う?! ふざけんなぁ! てめぇなんかぁ、俺がぁぁ!!!」

 

程遠志は、腰の剣を抜き、一人で果敢に突っ込む! 

 

仲間達は、死んだ仲間を見ていたため一瞬遅れてしまい、程遠志の突破的な行動に付いて行けない!

 

曹操軍も余りの惨状で、指揮官たる真桜も沙和も動けず。

 

劉備軍も軍師の朱里では、武働きは期待する方が無理なため立ち止まり、様子を見ているしか無い。

 

勿論、颯馬達は、まだ到着するには刻がいる。

 

無論、張角三姉妹を守る星や明命も、体力の限界で動く事も及ばず。

 

順慶は、いつもと変わらず、にこやかな笑みを浮かべた。

 

順慶「この現状を見て、まだ分からないとは愚かですね。 ……そこのゴミと同じように、処分致しましょう!」

 

      シュッ!  トッ!

 

程遠志の視界から、順慶の姿が消え、後ろに現れる。

 

順慶「さようなら、お馬鹿さん」  

 

………即座に振り向こうとする前に、笑顔の順慶が手刀を振りかざし、程遠志の首を……………切り落とした…………!

 

 

     ザクッ!!   ………ゴトン!!

 

 

 

……だが、順慶の顔の笑顔は崩れ、怒りの顔になる!! 

 

そして、程遠志の首……だった物………『木の丸太』を見つめる。

 

 

??「………程遠志殿。 無茶にも程がありますよ!」

 

程遠志「?????」

 

斬られたはずの程遠志は、仲間のすぐ傍に立っていた。

 

………風魔 小太郎と共に。

 

今の光景を一部始終見ていた軍勢は、何が起きたのか全く分からない状態。

 

確かに突撃した将は、首を切断された! 

 

あの驚異的な早さを持つ化け物に………。

 

でも、切断されたのは、今までなかった等身大の丸太。 丁度、その将の首の辺りが綺麗に切断され、横にその部分が落ちている。 

 

★★★

 

星「…………周幼平殿、今の動作、見えましたか?」

 

明命「………残念ながら………」

 

星「…………………………」

 

☆☆☆

 

沙和「………なんなの?」

 

真桜「………わかるかい………」

 

★★★

 

朱里「皆さんに見えなくて、私に見えるわけありましぇん!!」

 

☆☆☆

 

程遠志「ア、アンタは、『伏竜の軍勢』の『風魔 小太郎』様!」

 

小太郎「様を付けられる程、偉くはありません! ……でも、良かったですよ。 私の『空蝉の術』が間に合って! 失敗したら颯馬様達が悲しみますから……」

 

忍者装束を身に纏い、目を覆い隠す程伸びた髪を後ろに縛り、程遠志を味方の下へ送り出す。

 

順慶「貴女は………北条早雲の義理の娘、風魔小太郎殿ですね……。 早雲殿の策に利用され、颯馬様を北条家に誘い込むための布石! 貴女に、いえ、どの家中にも颯馬様を渡す訳にはいきません!!」

 

筒井順慶の体から青白い炎が陽炎の如く立ち昇る!!

 

小太郎「……私は、北条早雲の義理の娘でもありますが、正式には颯馬様の配下であるとともに………………お嫁さんです!! ですから主のため、旦那様のため、風魔小太郎! 全力で貴女を阻止致します!!!」

 

小太郎の周りにも、黒い氣が漂い始める!

 

星「全部隊!!! 急ぎこの大天幕より撤退だぁ!!」

 

明命「皆さん、こちらです! 隊列を崩さないように!!」

 

★★★

 

沙和「蛆虫共、曹操軍の兵として、規律を守って退却!!」

 

真桜「沙和~! 凄いやんか! 震えて何も出来んかとばっかり…」

 

沙和「こ、怖すぎて、何時もの口調が、出来ないの………!!」

 

☆☆☆

 

朱里「皆さん、ご主人様と関羽将軍と合流後、柵の外へ向かいます! そして、周辺確認後、流れによって対応を変えます!」

 

★★★

 

程遠志「小太郎様、オイラ達「死にたいのですか?!」ハイ! 直ぐに幕外に脱出しまッス!!!」

 

◆◇◆

 

【助っ人登場!の件】

 

今、俺達は『呉越同舟』となっている。

 

程遠志を追いかけている途中から、董卓軍(程遠志達)、曹操軍、劉備軍の三組が血相を変えて、こちらに戻ってきた。

 

ちなみに、張角達は程遠志達が保護。 張角の仲間が知り合いに行くのは当然なんだけど………なんでか、部屋に入った将兵が複雑な瞳で俺達を見ている…。 畏敬、恐怖、困惑、羨望……等。

 

程遠志達に事情を聞けば、小太郎と『順慶』殿との戦いが繰り広げられている状態………。 『順慶』殿がそんなに強いなんて聞いた事も見たことも無い たまに、特殊な愛情表現を受けたが…………。

 

だが、現状の『順慶』殿は、素手で武人を数人同時に討ち取る事ができる実力を持つ鬼人のような存在! 小太郎の身が案じられる!!

 

それと、抜け掛け行為を犯した曹操軍と劉備軍。

 

法に照らして処罰を大将軍に裁決を願わなくてはならないが…。

 

時間が惜しいので、それぞれの隊に戻らせる! 後に詰問の使者が訪れるとのそれぞれの将軍に伝えておいたが……。

 

すぐさま小太郎の下へ駆けつけたかったが、義清と宗茂に止められた………。

 

理由としては、

 

《壱》 筒井順慶の狙いは、俺自身。 行けば間違いなく攫われる。

 

《弐》 あの二人の戦いに割り入こめれる程、俺達は強くない。

 

《参》 足手纏いになるなら、近くの友軍を呼んで助けに向かった方が効率的だし、勝率も上がる、何より  俺が安全。

 

話を聞いて頭では納得したが、気持ちの方は収まらない!!

 

俺は………何度も、顔を向けて例の部屋の方角を確認する。 

 

颯馬「二人の言い分は分かる。 たが、今回の戦いの元が俺なら行かなくてはならないだろう…。それに、俺を信じ、我が子同様の小太郎を預けた早雲殿達にも、申し訳が立たない……」

 

宗茂「ならば私達も!「却下!」…って、結論早っ?!」

 

義清「………承知した。じゃが、兄者! 少し待たれよ!」

 

義清は、俺にそう言うと、月様の陣地に向かい大声を上げた!

 

義清「助けて~! 華蝶仮面~!!」

    

    シューーーン!   ズゥゥシィィィーーンン!!

 

??「お・ま・た・せ! 華蝶仮面二号 只今、推参!!」

 

な、な、な、なんだぁぁぁーーー!!! なんで、貂蝉が蝶の仮面付けてこの場所に………って、どこから来たんだ? 

 

義清「月様よりの伝言で、『天城様を抑えられない、重大な局面が発生した場合に使って下さい』と仰られた召喚術じゃ!」

 

華蝶仮面二号「愛と正義の使者、華蝶仮面二号! どこかの麗しの踊り子に似ているかもしれないけど、気のせいよん!!」

 

いや、どう見ても、あの見事な頭の照り具合、躍動する筋肉、見たくもない装束………そんな奴二人も……居るか、じゃなくって! 何人も居てたまるかーー!!

 

(略)二号「…文句を言いたいけど、それ所ではないわねん? 颯馬ちゃん! すぐに向かうわよ!!!」

 

颯馬「了解だ! 宗茂は、現状況の報告を道雪殿、紹運殿に!!

 

それと、周囲の残党の掃討をお願いして! こちらに黄巾賊達が来なかったのは、道雪殿達が頑張ってくれたおかげだと思うから、颯馬より礼の言葉を述べていたと伝えて欲しい!」

 

宗茂「わかりました! では、ご武運を!」

 

颯馬「義清は、退路を確保してくれている信廉殿、柵周辺にいる信玄殿や月様に報告! 出来れば援軍を一隊こちらに向かわせて貰いたい! 周辺の警戒を頼みたいから!!」

 

義清「任された! でも……兄者。 必ず、必ず、私達の傍に戻ってきて欲しいのじゃ……………」

 

潤んだ瞳で懇願されては、兄として必ず期待に添えなければ!!

 

二号「大丈夫よん! 私も居るから安心して♡」

 

背中を走る寒気に震えながら、義清に必ず三人で戻るからと約束して向かった!!  待っていろ、小太郎!! と念じながら…。

 

◆◇◆

 

【道雪と紹運の決意の件】

 

〖大天幕より少し離れた地点にて〗

 

道雪「…………妙ですね?」

 

今、兵達に辺りを警戒、偵察させている。張三姉妹がいる大天幕がある付近を見て違和感を覚えたからです。

 

紹運「どうされました? 義姉上?」

 

私が、釈然としない思いを口からふと漏らすと、義姉妹にあたる高橋紹運がすぐに来てくれました。 

 

紹運も私や義理の娘である宗茂と同じ大友家の重臣であり、戦においても、兵から信頼による統率力と日頃の鍛錬からなる武力を持つ自慢の義妹。 相談すれば、必ず良き答えを導いてくれましょう!

 

道雪「敵の数が極端に少ないのです…。颯馬殿の話では黄巾賊は全体で七万人。周辺に散らばっていると考えても、本陣に当たるこの場所が、あまりに閑散としているのですよ?」

 

紹運「はい…。私も気が付いていました。陣営全体の軍氣が知らせれていた人数よりかなり少なく、念のため私の斥候を送り調べましたが敵兵は、およそ一万いるかいないか………。 しかも、その殆どが栄養失調等で動けない状態だようで………」

 

昔読んだ『三国志』の話通り、この黄巾賊も元は罪の無い農民達。

 

今の王朝による圧制のため、食うこともままならず、ただこの組織に入れば生き残れるという事で入ったのでしょう……。 

 

ですが、官軍の包囲網で糧食がままならなくなり、強き者が弱き者の食料を奪い、僅か十日で兵糧攻めのようになってしまいましたか…。

 

道雪「………………………………………………………」

 

紹運「義姉上?」

 

道雪「紹運、相談があります」

 

紹運「………その考えは、月様に報告してから、いえ、颯馬に先に話して月様に申告してもらいましょう。 私からも頼んでみます!」

 

道雪「まだ、私は、何も………」

 

紹運「義姉上に十年以上いるのですから、言いたい事は分かりますよ? 今、この陣営付近にいる黄巾賊達を助けたいと…!」

 

私は、ユックリと頷き、紹運に説明しました。

 

人の命が尊いからとお題目を唱えるつもりは毛頭もありません。 その道を選んだのは、この者達の決断。最後まで尊重しなければならないでしょう。

 

ですが、ここに居る者達は、かような現状においても張三姉妹から離れる事なく、近付く私達に剣を向ける忠義を尽くす者達。

 

ここで、私達が張三姉妹を保護し、この兵達の命を救えば二重の足枷となり、月様に忠誠を尽くすでしょう!

 

紹運「流石、義姉上! そこまでの深謀遠慮とは! これで理論武装は完璧です。 ですが、義姉上がこんな事を言い出すとは、いやはや………。『鬼の目にも涙』じゃないんですよね?」

 

道雪「紹運………!『鬼』と言うのは、止めなさい!!『鬼道雪』と他国より言われるたびに落ち込みのに………。 私だって、まだ若いおなごなのですよ? クスン………(泣き真似)。

 

まぁ…黄巾賊の件ですが、同情する所もありますから…。

 

しかし、先程説明した事もありますし、私達が出来る事など、今はこれで精一杯ですから…もし、駄目なら無駄な努力になりますね……」

 

紹運「大丈夫です! 颯馬もきっと賛成してくれますから!」

 

道雪「ふぇ?! な、なな、何故、颯馬殿の名が出てくるのです?」

 

紹運「え? 違いますか? その考え方、颯馬によく似た考えだからてっきり颯馬の考えを元にした策かと思ったのですが?」

 

と、心底驚く顔を見せる紹運………。

 

私は、貴女が羨ましいですよ………。素直に表情を表すその心に。

 

あら? 向こうから砂煙が………………?

 

??「居たぁぁぁぁぁぁーーー!!!」

 

   タッタッタッタッ ザシュー!!

 

紹運「ゴホッ! ゴホッ! なんだ?! 敵の奇襲か?!」

 

道雪「うっ! ゴホッ! さっきの声は?!?!」

 

袖で口を押さえながら、煙の中から現れる者の言葉に備えます!

 

こんな急ぎ方をするのは、火急の件!! 

 

すぐに行う命令を頭に浮かべ、命じられるように整えておいて…

 

紹運を見ると、咽せながらも、私を見て頷いてくれている! 本当に頼もしい義妹です!

 

宗茂「義母上! 義姉上! 大変です!!!」

 

濛々と達こもる砂煙の中から、予想通り我が娘、立花宗茂が飛び出してきました! …まぁ! 顔を砂埃で、真っ黒にさせて…!!

 

宗茂「…あ、兄様が! パピオン変態仮面に! はわわわわ?!」 

 

道雪「宗茂、少し深呼吸をなさい! それから話を聞きましょう!」

 

紹運「大丈夫だ。私達はすぐに用事を済まして、行動に移るから!」

 

宗茂「…はい! スースー、ハー! スースー、ハー!」

 

…………………?  ま、まぁ、良いでしょう。 

 

焦って喋る宗茂を落ち着かせて、冷静に説明できるようにしてから、

私と紹運は兵に大音声で命じます! 命令に間違わせないように!

 

道雪「道雪隊に告ぐ! この付近に居る命ある黄巾賊達を全て柵外に送り、一カ所に纏めて収容、負傷者等看護、周囲の警戒に当たりなさい! 全ての責任は、この立花道雪が被りますので、早急に! 使いの者は董仲穎様にご報告しなさい!!」

 

紹運「紹運隊も道雪隊の応援に迎え!! 我が隊の責任は高橋紹運が全て受け持つ!! だから何も心配せず実行に移せ!! 後、張角達の籠もる天幕には何人たりも近寄らせるな!! これは厳命である! 近寄れば、命に関わるかもしれんとな!!!」

 

その後、宗茂より理由を聞いた私達は、部下の指揮を宗茂に任せ、大天幕に入り込みました。 愛しき人と大事な仲間を救うために…!!

 

 

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あとがき

 

正月休みを利用しての投稿です。

 

今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

少なからず応援をしていただき、ありがとうございます!

 

 

実は、何人かの方に『この物語は、虎牢関の戦い終わったら終了する予定でしたよ』と、伝えてあった物語です。伏竜の章のその弐に出ます『詩』は、その意味で入れたんです。

 

その時、支援される方も、お一人だけでしたし……。

 

今は、ありがたい事に、4人~5人の方からいただき、感謝しております。  

 

これからも、出来る限り続けて行くつもりですので、宜しくお願いします。

 


 
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