No.651152

【獣機特警K-9ⅡG】彼女がロボット警官になった理由【交流】

古淵工機さん

タムがどうやってロボットになったか、というお話。

■出演
タム:http://www.tinami.com/view/650958
ミウ:http://www.tinami.com/view/610063

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2014-01-02 21:39:33 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:1134   閲覧ユーザー数:1085

それは今から3年前。

巨大麻薬密売グループ『ブリガンダイン』を阻止するべく、

プラネットポリス本部とラミナ警察署の機動部隊が結集していた。

 

「総員突撃!制圧にかかれ!!」

先頭に立つ特別機動隊長フュア・フランバージュが号令を飛ばすと、

機動隊員たちがブリガンダインのアジトめがけ次々になだれ込む。

 

激しい銃撃戦が続くその現場には、本庁特捜課のミウ・カワグチ、テムナ・ツルハシ、

および特機課所属のタム・カワグチの姿があった。

 

「正面の相手はあたしがやるわ!ミウは右、テムナは左をお願い!!」

「「了解!!」」

タムの指示で愛用の拳銃を抜き放ち、次々に相手を制圧するミウとテムナ。

そんな中、タムは奥まった位置にあるボスの居場所を突き止めたのである!!

「ついに見つけたわドン・アルバート!覚悟しなさい!!」

タムが拳銃を向けた先にいたのは、髭を蓄えた初老のテラナー男性。

彼こそブリガンダインのボス、ドン・アルバートである。

 

「おやおや。まさか警官がこんなところまで来るとは。一体何用かね」

「聞かなくてもわかるでしょ?さあ、おとなしくお縄についてもらうわ」

ドン・アルバートに詰め寄るタムの背後から、次々に襲い来る構成員。

 

「タム姉!!」

「大丈夫か!!」

先ほどの敵をすべて倒してきたミウとテムナが軽い身のこなしで男たちを蹴り伏せる。

「ええ!ありがとミウ、テムナ!」

ミウとテムナの活躍を確認したタムは、再びアルバートめがけて歩き出す。

 

「さぁ、ブリガンダインの野望もここまでよ!大人しく同行なさい!!」

「くっくっく…」

不敵な笑いを浮かべるアルバートに、タムが手錠をかけようとしたその瞬間だった。

「え……?」

何が起こったのかわからないような表情のまま立ち尽くすタム。

その胸からは数個もの穴が開き、そこからは赤い血があふれ出していた…。

そしてアルバートの手には拳銃が握られていた。

「た、タム姉ぇっ!!」

「しっかりしてえなっ!タム姉さん!!」

二人の呼びかけもむなしく、タムの鼓動は緩やかに、しかし今にも止まろうとしていた…。

 

「はっはっは、馬鹿な女だ。その程度でこのワシを捕らえられるとでも…」

と、高らかに笑うアルバートだったが、彼の頬にミウの飛び膝蹴りが炸裂した。

 

「この野郎…この野郎…この野郎ーーーー!!」

「がっ、うぐ…!!」

ミウの瞳からは滝のような涙が溢れ出していた。

「よくもっ!よくもタム姉をーーー!うわあああああああーーーッ!!!」

姉を失った悲しみと怒りのあまり、我を忘れてアルバートに殴りかかるミウ。

「あかんミウ、落ち着け!やりすぎやで!!」

テムナがミウを羽交い絞めにし、傷と痣だらけのアルバートから引き離す。

「だって、だってこいつ、タム姉を、タム…姉…うわ、うああぁぁぁ…」

 

その後ドン・アルバート率いる幹部はまとめて逮捕され、ブリガンダインは壊滅した。

そしてただ一人、凶弾に倒れたタムは、すぐさま警察病院に搬送された…。

「…先生、タム姉は…タム姉は助かるんですか!?」

眼に涙を溜めながら医師に迫るタム。医師はしばらく間を置くと重い口を開く。

「…残念ながら、心臓を直撃しています。生存の可能性はおそらく無いでしょう…」

「そ、そんな…タム姉…タム姉ぇ…ぐす、ぐす…」

泣きじゃくるミウの肩にそっと手を置くテムナ。だが彼女の眼からもとめどない涙が溢れていた。

 

その時、二人のロボットが通りかかると、担当医に語りかけた。

「失礼。ひとつだけ彼女を助ける方法がありますがね」

一人はレオンハルト・マイバッハ、もう一人はテレジア・アウディ。

ともにファンガルドでも名の知れたロボット学者であった。

「博士…ですが彼女はもう生存の見込みが…」

がっくりとうなだれる担当医に、テレジアは答える。

 

「その手術、私たちに任せていただけないかしら?」

「し、しかし仮に義体化を行ったところで、タムさんは脳にも損傷を受けているんです。とても成功するとは…」

その担当医の言葉に、レオンはいったん咳払いをするとこう答えた。

「まあ、方法はひとつだけではないさ。私は以前、似たようなケースの患者の手術を担当したことがあってね。それをこの患者にも試してみようと思うのだよ」

「ほ、本当ですか!?」

その言葉に食いついたのはミウだった。

「お、おいミウ!?」

テムナの制止も聞かず、ミウはレオンとテレジアに懇願する。

「お願いしますレオン博士、テレジア博士!助かる見込みがあるなら、ぜひ姉にその手術をお願いできませんか!?」

テレジアは少々首をかしげる。

「でも、必ずしも成功するとは限らないのよ。それに…」

「成功の可能性が不透明なのはわかってます。でも姉は…あんな惨めな死に方、したくなかったに決まってます!どうかお願いです!!姉を…助けてください…!!」

 

涙ながらの訴えに、レオンは一息つくと、ミウの頭にそっと手を置き答えた。

「わかった。やる以上はベストを尽くそうじゃないか。テレジア、準備にかかろう」

「ええ、そうね。科学者たるもの、まずはやれるだけやってみなければね…手術室お借りするわね」

「は、はぁ…」

担当医が眼を丸くする中、レオンとテレジアは手術室へと入っていった。

数時間後。

「ねえテムナ…」

「何や?」

「あたし、これでよかったのかな…」

「んー、ようわからん…」

手術室の前のベンチで、ミウとテムナは考え込んでいた。

やがて、『NOW OPERATING(手術中)』のランプが消えると、ドアが開きテレジアが顔を出した。

 

「二人とも入っていいわよ」

「「あ、はい…」」

言われるがまま手術室に入るミウとテムナ。

その目の前には、胸に傷跡が残るタムの遺体。

そしてその隣には、タムとそっくりに作られたロボットが横たわっていた。

 

「…博士…これは一体…?」

ミウの質問に、レオンとテレジアが切り返す。

「ああ。タムの身体を調べていてわかったんだが、実は頭部にも一発銃弾が打ち込まれていてね」

「幸いにも記憶と感情をつかさどる部位は無事だったから、その部分をデータ化してそっちのロボットのプログラムを作ったってわけよ」

交互にタムとロボットを見つめるミウとテムナ。

するとテレジアが、ミウに声をかける。

「ミウちゃん…起動スイッチはあなたが押しなさい」

「え!?で、でも…」

「あなたの家族ですもの、決定権はあなたにあるわ」

ミウはしばし困惑していたが、やがて息を飲み込むと、ロボットの首筋に接続された入力端末の赤いボタンを押し込んだ。

 

やがて起動音とともに、そのロボットはゆっくり上体を起こし、そのまぶたを開く。

「(ピピ…)ん…う……」

すかさず、ロボットに呼びかけるミウ。

「タム姉!あたしだよ!わかる!?ミウだよ!?」

「ミ…ウ…」

まだ虚ろな眼のロボットは、ミウの名を呼びながらゆっくりと手を伸ばす。

まだメモリーデータの照合が終わっていないらしく、その動きはぎこちない。

「タム姉、そうだよ!そのままあたしの頬にでも肩にでもいい、そのまま触って!!」

ミウの呼びかけに反応するそのロボットは、やがてミウの頬に手をかける。

「ミウ!?ミウなのね!!」

「タム姉!!」

右手をミウの頬に置きながら、そのロボット…タムは何かを思い出したかのようにしゃべりだした。

「…そうだわ、あたしあの時…何が起こったのかわからないうちに…」

と、タムはすぐにミウから手を離すと、辺りを見回す。

すると目の前に飛び込んできたのは、胸や頭に穴が開いた自分の身体。

タムはそれを見ると、思わずこう漏らした。

 

「そっか…あたし死んじゃったんだ…」

「せやけど、ウチらここにおるで?」

「そうそう!大体死んでたらあたしらに触れないもん!」

「…そういわれてみれば…確かに…でも目の前にはあたしの死体があるし…あれ、あれ?」

状況がよく飲み込めていないタムに、レオンが説明する。

 

「あー、君の身体は生命機能を停止している。今の君は記憶と感情をデータ化されてロボットの身体に移植されたのだよ」

「記憶と感情を…データ化?」

まださっぱり理解ができない様子のタムに、テレジアがフォローを入れる。

「平たく言うとね、あなたはロボットとして生まれ変わったのよ」

「えっ!?ろ、ロボット!?あたしロボットになっちゃったの!?」

驚きを隠せないタムに、ミウとテムナが抱きつく。

「おかえりタム姉!おかえり!!」

「よかったなぁミウ!タム姉さんもよう頑張ったわぁ!!」

「は、ははは…」

まるで子供のようにはしゃぐミウとテムナを見て、ちょっと照れくさい気持ちになったタムの眼には涙が流れていた。

ロボットになってからはじめて流した涙。それはまぎれもなく、喜びの涙だったのかもしれない。

…そして時は現在、ラミナ市内・9 to 10Ⅱの中にある回転寿司屋。

久しぶりに再開したミウとタムが、買い物がてら昼食をとっていたところだった。

「よーっし!次は大トロいっただきー!!」

「ちょ、ちょっとタム姉!いくらなんでも食べすぎなんじゃ…?」

「心配ご無用、今のあたしはロボットだからいくら食べても太る心配ないもんねー!」

回ってくる寿司という寿司を次々と口の中に放り込んでいくタム。

ミウはそんなタムの様子を、ただただ呆れ顔で見つめていたが…。

 

「ふう…ま、いっか…」

と、一息ついてから苦笑いを浮かべたのであった。


 
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