第十四話
「黄蓋の嘆き」
劉備、曹操と続き、孫権もかつての部下、黄蓋と対峙する。
「祭……」
「権殿……」
互いに名を呼び合った後、しばらく沈黙が続く。
このままでは何も進めないと感じた孫権は意を決して黄蓋に問う。
「祭、このまま貴女が敵対を続ければ、時期に建業を治めるシャオの立場が悪くなるだけよ。だから止めて」
しかし、黄蓋を首を振る。
「申し訳ございませぬ。それは分かっておりますが聞けませなんだ」
「!? 分かっていてどうして!?」
黄蓋が、孫尚香が建業を治めるであろう事を既に知っているのは、乱の前に鐘会から聞かされていたからだ。
「権殿、わしがこうしてあやつに協力しているのはそういう問題では無いからです」
「なら何故!?」
黄蓋は目を伏せながら言う。
「晋に攻められたあの時、わしには分かっておりました。権殿が降伏を考えていたのは」
「!?」
孫権は当然驚く。そんな素振りは一切無かった。陸遜でさえも抗戦を希望していると見解したのだから。
「しかしながらわしが穏と如何に皆の者に降伏を解いても間違いなくあやつらは暴走し、結局は戦沙汰になっていたでしょう。あやつ
らの誰もが勝利を疑ってはいませんでしたからな。穏とわしが居る限り」
実は黄蓋は長年の経験と感で陸遜よりも先にその事に気付いていたのだ。
「だからこそ、わしはあえて戦を起こすことにした。あやつらの調子付いた鼻を折る為に。そして」
次の瞬間、孫権は黄蓋から思いもよらぬ言葉を聞く。
「わしが死ぬ為に」
「……え?」
孫権はあまりの事に呆然としてしまう。
「言ったでありましょう? わしと穏が居る限りあやつらは勝利を疑ってはおらぬと。だからこそわしが死ぬ必要がありました。あや
つらの希望を無くす為に……じゃが」
黄蓋は天を仰ぎ、嘆く。
「結局死んだのはわしでは無く、穏の方であった! 何故じゃ!? 何故このような老骨が生き延びなければならない!? あやつに
は未来があったのに! あやつにはまだ生き方を選べると言うのに! 生き方を選ぶ事の出来ないわしがどうして生きなければならな
い!? あの戦でわしは死ななければならなかったのに! そうすればわしは!」
「祭?」
孫権は黄蓋の言葉がいま一つ理解出来ず、首を傾げそうになる。
「やっぱり、そうなんだな」
そんな時、孫権の後ろに控えていた翠が呟いた。
「馬超?」
「何で黄蓋がこの戦を起こしたのか何となく分かった……」
そう、馬超は知っている。目の前の女性と同じ気質を持った者を。
「黄蓋、アタシは知っている……あんたと同じ事を望んだ人を」
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劉備、曹操と続き、孫権にもまた運命の時が訪れる。黄蓋は何故、鐘会と手を組み、何を望んでいるのか。