No.642263

島津一刀と猫耳軍師 2週目 第11話

黒天さん

今回は董卓軍の人達がメインになってきます

2013-12-03 00:51:25 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:8224   閲覧ユーザー数:6027

 

「助けて頂いてありがとうございます……。私は董卓といいます、お名前を伺ってもいいですか……?」

 

頭が真っ白になる。覚悟はしてた、でもこうして現実として突きつけられるとそんな覚悟は無かった物のよう。

 

星や天泣、冬華でさえも俺のことを、夢という形ででも覚えていたというのに……。

 

きっとこの2人なら覚えていてくれる。結構大きな期待もしていた。

 

約束を違えてしまったことをいくら非難されたって構わないと思っていた。

 

なまじ深い仲だったから、天梁が覚えていなかった事とは比較にならないほど衝撃が大きい。

 

「何間抜けな顔をしてるの? 私は賈詡よ。何よ、名乗らないつもり?」

 

でもこの2人は欠片も覚えていない……?

 

詠の言葉も耳に入ってくるが、意味を理解できない。

 

ただ呆然とその場に立ち尽くす。そして

 

「ごめん……」

 

月と詠が覚えていなくたっていい、俺は2人を助けたいと、そう思っていた。

 

それでも俺は言葉を続ける事ができず、ぽつりと、それだけ絞り出して俺はそこから逃げだしてしまった。

───────────────────────

 

「ええぇ!? 暴漢に襲われたって!? よーあんたら2人で無事やったなぁ……」

 

ため息、護衛つけなアカンって言うても聞いてくれへんのやよなぁ、この2人。

 

まぁ分からんでも無いけど。

 

「助けてくれた人がいるのよ、名前も言わずにどっかいっちゃったけど。

 

どっかで見たことあるような気がするのよね……」

 

「どんな奴やったん?」

 

「これといって特徴のない男かしら? 何か赤い紐のついた変な短い鉄の棒を2つ持ってたわね」

 

こんな感じの、と身振り手振りでその武器がどんなものだったか教えてくれるんはええんやけど……。

 

それってひょっとしてご主人様ちゃうのん? 口に出してはいわへんけどウチにはそう思えた。

 

傍で聞いとった華雄もそう思うたみたいやし……。

 

「んー、変な武器持っとるみたいやし、警邏の途中で見かけたら声かけて礼の一つでも言うとこか。

 

ほんならまぁ、いってくるで」

 

そない言うてすぐに華雄と2人で街の警邏へ。

 

ちゅうて街に出てみたはええけど街は広い、人一人探すのも結構骨や。

 

華雄と2人で手分けして探しよるけど手がかりらしいもんは無し。

 

結局日ぃ暮れるまでうろついてみたけど見つけられへんかった。

 

「張遼将軍、喧嘩だ!」

 

諦めて帰ろうか思いよるときに、ウチを見た町の衆が言うてくる。

 

「喧嘩ぁ?」

 

「というより、酔っぱらいが3人がかりでボコボコにされてるんだ。このままじゃ殺されちまう」

 

「分かったすぐ行くわ」

 

で、現場に行ってみたら確かに3人がかりでボコられとる男が一人。

すぐに気ぃついた。腰に差しとる鉄扇、間違いない。

 

昼は邪魔やがって、とか悪態つきよるし、多分ご主人様が、のしたのに逆襲されよるってとこか。

 

「あんたら、一人相手に寄って集って何しよんや!」

 

姿勢を低くして一気に距離を詰め、エモノを振りぬく。

 

後ろ向いとったそいつが避けれるハズもあらへんし、狙い通りそいつは地面たたきつけられる。

 

手加減はしとるから死んではおらんやろけど。

 

「今すぐ尻尾巻いて逃げるんやったら逃したる、消えへんのやったら、この飛竜偃月刀の錆になってもらうで?」

 

そういって脅しをかければそいつらはすぐに退散しよった、根性のないこっちゃ。

 

後に残されたのはウチとご主人様。しかしこれ、大分よっぱらっとるなぁ……。

 

「大丈夫か!?」

 

かなり殴られとるけど、死にはせんとおもう。頭から血ぃ流しよるから打ちどころが悪かったら怖いとこやけど……。

「霞……?」

 

名乗ったわけでもないのに、いきなりウチの真名呼んだっちゅうことは……。

 

「ウチの事覚えとるんか!?」

 

これひょっとして、ご主人様はキッチリ前の事おぼえとって、そんで月ちゃんと詠ちゃんに初対面の対応されて、それで酒に逃げよったんか……?

 

「……」

 

あ、気絶した。まぁこんだけボコられたらしゃーないか。

 

そのままご主人様を連れて帰って取り敢えず自分の部屋に連れてって、傷の手当を終わらして。

 

ご主人様が目ぇ覚ましたんは次の日やった。

 

「おはようさん、体の具合はどないや?」

 

「霞……?」

 

起き上がるなり頭抑えて痛そうな素振り。多分まだ傷が痛むんやろ。

 

ほんで一瞬おいて置いて青い顔。多分、ウチも覚えてへんと思うとるんやろなぁ……。

 

多分うっかり真名呼んで焦りよるんやろけど。

 

「気にしな、真名で呼んでくれてかまへんよ、ご主人様?」

 

「覚えてるのか?」

 

「覚えとるで、キッチリな。月ちゃんらは覚えてへんけど、ウチと華雄はおぼえとる。

 

そやな、反董卓連合の事も、その後の魏や呉との戦いも、泰山に于吉をシバキにいったんもな」

 

相当驚いた顔、ご主人様がいうには、夢っちゅう形で見て覚えとる人間にはおうたけど、キッチリ覚えとるもんはおらんかったらしい。

 

ウチにしても驚いた、ウチと華雄の他に覚えとる人間がおるとおもてへんかったし。

 

詳しい話しをご主人様から聞いて、ウチは一つ予測を立ててみた。

「んー……。ウチの勝手な予測なんやけど、覚えとる人間とおぼえてへん人間の違いってや。

 

あの時、銅鏡からどんだけ離れとったか、ってとこぐらいちゃう?」

 

「どういうこと?」

 

「曹操はどやったか覚えてへんけど、ウチと華雄はご主人様の後ろ走りよったやろ?

 

桂花らはご主人様より出口側、星は確かあんとき、建物の中にははいらんと出入口のあたりにおったと思うねん。

 

で、月ちゃんらは泰山から遠い街におった。月ちゃんと詠ちゃんの他に、呂布っちもなんも覚えてへんらしい。

 

呂布っちも月ちゃんらと街におったからおらなんだやろ? 逆に糜芳はたしか、あんときの兵の中におったハズやねん」

 

「そうなのかな……」

 

「しかし、劉備っちゅうんが正体不明で気色悪いなぁ……、それにご主人様は今曹操んとこおるんやろ?」

 

「うん、一応そういうことになってる」

 

「んー、弱ったなぁ。宦官共をさっさと粛清してええようにしとるから反董卓連合は無いおもてたんやけど、

 

どーもなぁ、外の噂やと相変わらずやろ? どっかが帝に近い所におる月ちゃんを妬んで噂流しよるみたいなんや。

 

しゃーないからまたご主人様んとこ頼ろうかおもてたんやけど、あの曹操やろ?

 

まぁ、一応勝つ気で策も練りよるんやけど。前とちごて華雄が挑発に乗ったり、勝手なことしたりっちゅうことは無いやろしな」

 

「そうなのか?」

 

「そや。ほんでもウチとしてはみんなでご主人様んとこに行きたいおもてるし、どうにかならんかなーって思うて考えよるんよ。

 

いっそご主人様が桂花らを連れてコッチに来てくれてもええねんけどな?」

 

「うーん……、流石にそれは難しいんじゃないかなぁ。華歆の娘さんのこともあるしさ」

 

「まぁそやろなぁ……。ほんでも、ウチの気持ちとしてはそうなんよ。

 

取り敢えず、傷がある程度治るまで泊まっていき。月ちゃんらも悪い顔はせんやろし。

 

ただし、曹操んとこの将やっていうのは、月ちゃんと詠ちゃんには黙っときや?」

 

「ん、了解」

 

「華雄もご主人様と話したいっていうてたしな」

 

「そういえば、あの時、華雄の真名は聞けないままだったなぁ……」

 

「華雄はちょっと特殊なんよ」

 

「そうなのか?」

 

「まぁ、詳しいとこは本人から聞いてくれたらええ。取り敢えず飯にしーや」

───────────────────────

 

大分酷く痛めつけられたらしく、あちらこちらが痛い。

 

……その時の事はほとんど覚えて無いんだけど。

 

霞が助けにきてくれなきゃ俺死んでたかもなぁ……。

 

結局あのあと、月達が忘れてた事のショックと、逃げてしまった自分がイヤになり、

 

ヤケ酒を飲んでそこで、どうも月達を助けた時に気絶させそこねてたのがいたみたいで、

 

そいつらに見つけられて因縁つけられたところまでは覚えてる。

 

聞いた話しだと大分殴られてたらしいとか……。

 

しかし、霞があれだけハッキリ覚えてたのは正直予想外だった。せいぜい夢で見たぐらいがいいとこだと思ってたのに。

 

霞の話しじゃ華雄もずいぶんハッキリ覚えてくれてるみたいだし……。

 

「主、具合はどうだ?」

 

霞が立ち去った後に、そういって部屋に入ってきたのは華雄。

 

「ん、ボチボチ、あっちこっち痛いけど」

 

「気持ちは分からないでもない。私もあの2人が何も覚えていなかったのはかなり衝撃だったからな

 

だが酒に逃げるのはどうかと思うぞ?」

 

「ああ、華雄もなのか……。あ、そうだ、華雄に謝らないと……」

 

「ん?」

 

「前の世界の最後の戦いのあと、時間を作って欲しいって言ってたの、結局約束果たせなかったからさ」

 

「なに、私は覚えているのだからこれからでいい。しかし、それは味方になってからのことだな。

 

今は一応敵同士だ。出来れば主を敵とは思いたくないが」

 

「俺も華雄達を敵にしたくはないけど、でも今居る陣営は華琳の所だからなぁ」

 

「まぁ、あの曹操ではな。それはそうと、月達にもう一度会ってやってくれないか?

 

主はこちらでも恩人だからな、嫌な顔はしないだろう。

 

どうせ傷が治るまでは帰れないだろう?」

 

「ん、いいけど、2人とも俺のこと覚えてなかったからなぁ……」

 

「だからこそだ。もしかしたら何か思い出すかもしれない、と思ってな」

 

「まぁそういうなら……」

 

「わかってるとおもうが、曹操の所の将だというのは伏せておくんだぞ?」

 

「それ、霞にも言われたよ。わかってる、大丈夫だよ」

 

そんなわけで俺は改めて月達と話してみることにした。

 

今度はしっかりと覚悟を決めた、もう逃げ出したりしないと心に決めて。

 

華雄に案内され、月達の所に向かった。

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回初期状態でどの程度覚えてるかの法則についての話しがチラと出てきました。

 

ざっくりと。1週目ラストで一刀より銅鏡側に居た人、その外側で泰山に居た人、泰山に居なかった人。

 

の区分が基本で、後は一刀との交流の深さで差が出てくる。

 

という感じで法則をつけてるつもりなのですが

 

実は一つミスってまして……、星は泰山に行ってた予定だったのですが、書き忘れていたという……

 

なのでこっそり居た事になってます!

 

あと、月達には後々思い出していってもらうつもりです。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。

 


 
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