No.63764

【一刀の】望みたくない外史02

つよしさん

続いちゃいましたよ…。
勢いでやっただけなのに…。

どうしよう…。

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2009-03-17 12:42:21 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:12110   閲覧ユーザー数:9646

────これはなんだ?これは誰だ?

 

 

 

一刀の頭に浮かぶのはこの言葉。

 

桂花「…兄様?どうされたんですか?」

 

桂花は言う。

 

『兄様』と。

 

彼の知る限り、一刀のことを『兄様』と呼ぶ人物は一人しかいない。

 

 

──そう、流琉だ。

 

 

季衣が一刀を兄貴分とし、『兄ちゃん』と呼んでいるので、流琉もそれに倣い『兄様』と呼ぶこととなった。

 

季衣と流琉は分かる。まだ、親が恋しく、また兄を欲しがる気持ちも分かる。

 

だが、桂花はどうだろうか。

 

桂花は華琳に恋慕の情、延いては『絶対服従』を誓っている。

 

だが、北郷一刀──いや、男に対して『絶対忌避』とも言うべき態度をとる。

 

ましてや、北郷一刀は華琳に愛されし男。桂花はそれを認めていない。華琳が男を愛するなど、ある筈がない、と。

 

だが、分かっているのだ。それは、願望だということに。

 

寵愛を受ける身としては、認めることはできない。だからこそ、彼を嫌う。

 

ここでもう一度聞こう。今の桂花はどうだろうか。

 

今の桂花は、一刀を避けぬ一人の『女の子』。

 

そう、一刀に接近し、顔を見上げてくる無防備な、『女の子』。

 

城の……いや、この国の誰が想像できようか、彼女の今の態度を。

 

誰も想像できないだろう。

 

──そう、一人、『天の御使い』と称される北郷一刀以外は。

 

天の知識を持つ彼ならば分かるかも知れないのだ。

 

──彼女の身に何が起こっているのかを…。

 

 

桂花「もう!兄様!聞いてますか!」

 

頬を膨らまし、彼女はさらに詰め寄る。

 

一刀「!!……あ、ああ!聞いてるよ!うん、聞いてる!」

 

おそらく違うだろう。正確には『聞こえていた』。『声』ではなく、『音』として。

 

一刀は今の状況により混乱し、放心していたから…

 

桂花の問により、今、彼は正気に戻った。だが、落ち着いている訳ではない。

 

今の彼は、桂花を今すぐにでも寝台へと手を引き、押し倒し、『彼女を貪りたい』。そう考えている。

 

ろくな考えではないだろう。

 

しかしだ。普段の彼女と今の彼女とのギャップを見て、そう考えるのを止められる男がいるだろうか?

 

 

 

 

──────否、無理だ。

 

彼も男だ。止められる筈がない。

 

それでも行動に移さないのは、女の子を思いやる男としての優しさだろう。

 

この優しさが『魏の種馬』と称され、女性に慕われる所以か。

 

 

だが、このままではいけない。まずは聞かなくてはならない。

 

──彼女の態度の理由を。

 

一刀「な、なあ。ちょっと聞いてもいいか?」

 

桂花「はい?」

 

返事をした彼女の碧眼の大きな瞳が、一刀の姿を映す。

 

その姿に理性を失いかねる。

 

計算された行動ではない。だが、彼女は何度、一刀を狂いかけさせたことだろう。

 

 

それでも彼は耐える。問うために。

 

一刀「…っ。えっとなぁ…。なんで兄様なのかな…?」

 

そう問うた瞬間、一刀を映した碧眼の瞳に怯え。顔には疑問。

 

桂花「……え。あ…。駄目…ですか?」

 

彼に拒否されたと思ったのだろう。瞳の中だけだった怯えは、全身へと変わる。

 

その彼女の姿に一刀は罪悪感を覚える。そのような彼女を見たことがないものだから、余計に。

 

だからこそ────

 

一刀「い、いや!ダメじゃない!全然ダメじゃない!むしろ、嬉しいよ!」

 

本来不必要な、種馬としての最後の言葉が、自然と出てくる。

 

桂花「本当ですか!?ありがとうございます!兄様♪」

 

パァ♪ と、擬音まで聞こえてきそうな、とびっきりの笑顔。

 

 

ガクッ!

 

 

これは、擬音ではない。実際の音。一刀の膝が崩れる音。

 

桂花「兄様!?」

 

一刀「…ふふっ」

 

桂花は驚く。

 

そして一刀は片膝をつきながら笑う。なぜか?

 

理由は三つだ。

 

一つ目は桂花の笑顔にやられたため。二つ目は今の自分の姿。三つ目はこの状況の過酷さにだ。

 

一人の女の子の笑顔で膝をつくなど、生涯で一度もない。だからこそ、滑稽で自嘲する。

 

もう一つの過酷さと何か?─────それはもちろん桂花の態度。

 

彼女を抱いたことは過去に一度。しかも、華琳の命によって。

 

華琳の命令ではなく、一刀が自分の意思で桂花を「抱きたい」といっても、桂花は了承しないだろう。

 

それは分かっている。

 

だが、それなのに今の彼女の態度。

 

今すぐに抱きしめたい。しかし、それは出来ない。女の子の嫌がることはしたくない。

 

これでは生殺しだ。

 

目の前の女の子は天使のような笑顔をしているのに、この場は地獄だ。辛すぎる。むしろ彼女は悪魔かもしれない。

 

地獄に、天使で悪魔な女のコ。この矛盾に耐えなければならない。だからこの過酷さに彼は笑う。

だが、桂花はそれに気づかない。だからこそ追い打ちをかける。

 

桂花「に、兄様!?だ、大丈夫ですか!?どこか、具合でも悪いのですか?ど、どうしよう!あ!熱があるのかも…」

 

そう言って、彼女は自分の額を一刀の額に合わせる。

 

一刀「!!!!!!!!!」

 

一刀は驚く。顔の近さに。すぐ目の前にある唇に。

 

桂花「んー。熱はないみたい…。ねえ、兄様?どこか痛いんで…ひゃあ!」

 

一刀はたまらず抱きしめた。

 

一刀「な、なあ…。」

 

桂花「は、はい!?なんですか!?」

 

桂花は焦る。急に抱きしめられればそうだろう。顔を真っ赤にしている。だが、抵抗はしない。声を上げるわけでも、突き飛ばしたりもしない。

 

一刀「きょ、今日の夜さ、部屋に来てくれないか?」

 

桂花「へ…?へ、へう!?そ、それって、あの、つまり…」

 

一刀「うん。そういうこと…」

 

桂花「はう!」

 

桂花は驚きで奇声をあげる。

 

一刀は、断れるだろうと思っている。それでも聞いたのは、彼女を抱きたいという気持ちが強いから。

 

そして、彼女の返答は一刀が予想出来ない言葉だった。

 

桂花「……わ、わかりました……」

 

一刀「やっぱりそうだよな…って、え!?いいの!?」

 

一刀はまた驚く。彼女の言葉があり得なかったから。

 

桂花「な、なんで驚くんですか!」

 

一刀「い、いや、断られると思ってたからさ…」

 

桂花「断りませんよ!私が断るわけないじゃないですか…私だって…兄様が……好き……なんですから…」

 

今の台詞は普段の一刀ならば聞こえないだろう。そう、いつもなら、このような発言が『都合よく』聞こえない一刀ならば、今の『好き』は聞こえない。

 

だが、今は桂花を抱きしめている。顔はすぐそばにある。桂花の口も耳のすぐそばだ。

 

そして、彼女の顔が真っ赤なのもよく分かる。

 

一刀「そ、そっか。俺も大好きだよ…」

 

桂花「兄様…」

 

そのまま彼は、桂花を真正面に見据え、どちらからともなくキスをする。

 

桂花「ん……」

 

一刀「……ん」

 

触れるだけのキス。

 

しばらくして二人は顔を離す。どちらも顔が赤い。

 

一刀「えっと、ごめんな。俺、今日警備隊の仕事があるんだ。もっとキスしたら、もう抑えがきかなさそうなんだ…」

 

桂花「もう、兄様卑怯ですよぅ…。そんな言い方されたら私だって耐えきれませんよぉ…」

 

桂花はもじもじと両手の指を絡ませ、悶える。

 

一刀「っ!ご、ごめんな!とにかく、夜まで我慢しような?」

 

その姿にまた焦る。そして、今日非番で無かったことに憎しみを覚えた。

 

桂花「は、はい…。我慢します…。じゃあ、私も仕事があるので失礼しますね…」

 

彼女は少し残念そうだが、仕事だからしょうがない、といった感じで踵を返す。

 

一刀「あ……うん。楽しみにしているよ」

 

一刀は少し寂しく思ったが、すぐに笑顔で返す。

 

その一刀の言葉を聞いて、また桂花は俯きながら顔を真っ赤にし、返事をする。

 

桂花「はい…。わ、私も楽しみにしてます…」

 

そういって、小走りに部屋を出ていく桂花。

 

一刀「なんなんだあの桂花は…。可愛過ぎるだろ……。ん?ていうか…」

 

桂花の態度に呆けつつも、あることに気づく

 

一刀「このまま、夜までおあずけかよ!また、生殺し!?……あー、地獄を上乗せしちまった!」

 

どうしよう、と一刀は呟く。

 

だが、彼はまだ知らない。いや、気付いていないというべきか。

 

先程までの地獄は変化を遂げ、また別の地獄がまっていることに………。

 

 

 

 

 

完?

 

あとがき

 

いや、このナレーター口調疲れるんですけど。

勢いで書いてあそこまで支援をいただけるとは思いませんでした。

だから、がんばって書いてみました。

 

で、会話が少ないという罠。

失敗だったかもとか思わなくもないです。

これは難しい!

 

最後に一言

 

 

 

 

 

パト○ッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ。 何だかとても眠いんだ ...


 
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