No.635229

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

準備:総員、覚悟を決めよ

2013-11-08 16:38:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2324   閲覧ユーザー数:996

旅団アジト楽園(エデン)、食堂。

 

一同は会議が終わった後、ここで食事を取っていたのだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガツガツガツガツムシャムシャムシャムシャッ!!」

 

一人の人物が、テーブルに並ぶ無数の料理を次々と平らげ続けていた。喰い終わった料理の皿がその人物の後ろで大量に重ねられており、今にも倒れてしまいそうなくらい不安定な感じでグラグラと揺れている。そして当の本人もテーブルマナーというものを完全に無視しており、どれだけ散らかろうが何も気にする事なく料理を喰い続けている。

 

「うっ……見てるこっちも吐き気がしてきた…」

 

「耐えろ、aws」

 

あまりの暴食っぷりに、見ていたawsは口元を押さえ、隣に座っていたロキは特にキツそうにはせずコップの水を飲み干す。

 

「ムグムグ、ゴクン……おい、次おかわり!」

 

「はぁっ!? ちょ、おい!! まだ喰う気なのかよお前は!?」

 

調理場にて、スタッフ達と共に調理中の支配人。支配人が嫌そうな声を上げる辺り、既に何度もおかわりを要求されているようだ。

 

「早くしろ、もうなくなりそうだぁ!!」

 

「畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

支配人は涙を流しながら調理し続ける。当分、彼に休みの時間は来なさそうである。

 

「…全く。相変わらずですね、ZEROさんの大食いっぷりは」

 

料理を平らげている人物―――ZEROの様子を見て、食事を取っていたデルタは溜め息をつかざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は、数時間前に遡る…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうつもりですか、クライシス」

 

No.13、ZEROの釈放。

 

イマイチ納得のいかないデルタが、決定を下したクライシスに問い詰める。

 

「何故ZEROさんなんかを解放する事になったんですか。彼の危険性は、あなたが誰よりも理解している筈でしょうに」

 

「おいおい……そりゃまた随分な物言いだな、デルタさんよぉ…」

 

椅子に座ったまま、テーブルに足をかけているZERO。その行儀の悪さも、彼の凶暴性を分かりやすく表している。

 

「当たり前でしょう、誰があなたみたいな危険人物を好き好んで牢屋から出しますか? よっぽどの死にたがり屋くらいしかいませんって」

 

「はん、手厳しいねぇ」

 

そう言いつつも、特に気にしてる様子は無いZERO。自分がどれだけの危険人物かは、一応自覚しているようだ。

 

「…にしても」

 

ZEROが横目でジロリとげんぶやディアーリーズ達を見据える。

 

「俺が牢屋に閉じ込められてる間に、またメンバーが増えやがったみたいだな。俺の知らねぇ顔が何人かいる」

 

「喧嘩は挑むんじゃねぇぞ」

 

「ほう……どいつもこいつも、結構良い面してんじゃねぇか…」

 

「聞けよ!!」

 

miriの忠告も無視し、ZEROは初めて見るメンバー達をジロジロ眺め始める。

 

「そうだなぁ……そこの眼鏡坊主」

 

「!?」

 

ZEROが注目したのはディアーリーズだった。突然ZEROに呼びかけられ、ディアーリーズも少しだけビクッと反応する。

 

「えっと……僕ですか?」

 

「あぁそうだよ。お前、見た目の割には実力がありそうだ」

 

「は、はぁ…」

 

「どうだ? 一回だけでも良い、俺と殺し合ってみねぇか?」

 

「は…えぇっ!?」

 

「おいコラZERO、仲間を喰い殺そうとするんじゃねぇよ」

 

「…チッ」

 

ZEROからまさかの殺し合いを持ちかけられ、流石のディアーリーズも返答に困った。すかさず支配人が止めに入り、ZEROが舌打ちする。

 

「気をつけろよ、お前等。こいつ下手すりゃ俺達でも止めんのに手間がかかるからな」

 

「ずっと昔、生身のままで管理局の艦隊を何十隻も沈めやがったからな。こっちの艦隊も巻き添えを喰らって、何隻か沈められちまったが」

 

「おかげで、アン娘ちゃんの保有戦力が少しだけだけど減っちゃった時期もあるのよ」

 

「全くだ。私にとっては非常に迷惑な話だぞ」

 

「な、生身のままで…」

 

流石にそれは無理じゃないのか。そう言いたくなったげんぶ達だったが、ZEROを見ている所為だからかそういった言葉が上手く出せなかった。この男ならやりかねないかも知れない、そういう雰囲気がげんぶ達にも感じ取れたのだから。

 

「…話が逸れていったので、もう一度聞きましょうか」

 

デルタが話の軌道を修正し、改めてクライシスに問いかける。

 

「何故、このような男を牢獄から解放する事になったんですか」

 

他のメンバーも静かになり、先程から無言のクライシスに再び視線を向ける。数秒経って、クライシスが口を開く。

 

「…ある準備をする為だ」

 

「準備?」

 

「あぁ」

 

クライシスは閉じていた目を開く。

 

「お前達も、心して聞け……我々OTAKU旅団はいずれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“決戦”を、繰り広げる事になるだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「…!!」」」」」

 

決戦。

 

その言葉を聞いて、一同は言葉には出さずとも話の重大さをすぐに把握出来た。

 

「仕掛けるのね、管理局に…」

 

朱音がボソリと呟く。

 

管理局との全面戦争。互いの存亡を賭けた、最後の戦い。もしそれが始まってしまえば、多くの次元世界が戦火に飲み込まれる事になってしまうだろう。

 

「…それも、団長の“予知”によるものですか?」

 

「その時が、いつやって来るかまでは分からない……何年も先になる可能性もあれば、もしかすればかなり近い時期に行われるかも知れん…」

 

「そして」とクライシスが言葉を続ける。

 

「その戦争の先…………我々旅団の“結末”も、現時点では謎のままだ」

 

「「「「「……」」」」」

 

部屋が静まり返る。

 

これから先、自分達に一体どういった未来が待ち構えているのか。OTAKU旅団が勝つのか、それとも時空管理局が勝つのか、それは誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「面白いじゃねぇか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰も口を開かない中、ZEROが小さく笑みを浮かべる。

 

「勝敗の見えてる戦いなど、俺は面白いとは思わねぇ。どっちが勝つか分からない、規模のでかい全面戦争……俺は非常に興味があるぜ。たらふく“喰い”尽くせる」

 

「…まぁ、確かにそうですね」

 

竜神丸も口を開く。

 

「いずれ決戦の時が来るのは、皆さんも分かり切っていた事でしょう。それがいつであれ、我々はただ迫って来る敵を殲滅してしまえば良いだけの話」

 

「その通りだ。いずれやって来るであろうその時の為に、我々は準備を整えなければならない。ZEROの件も、メンバーの監視を受ける事を条件に牢獄から解放した」

 

クライシスが席から立ち上がる。

 

「OTAKU旅団は、敵対する者達を全て殲滅する。たとえその先に何が待ち構えていようとも、我々は前に進んでいくしかない。狼煙が上がるであろうその時に備え…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総員、覚悟を決めよ。己の運命をその手で掴み取るのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まぁ、やる事はいつもと変わらんだろうけどな」

 

ロキはそう言いつつも、小さく笑みを浮かべる。

 

「うっしゃ、面白くなってきたぁっ!!」

 

「楽しみですねぇ。一体、いつ始まるのやら…」

 

「さて、機体を万全の状態に調整しておかねばな」

 

「私はアン娘ちゃんと一緒なら、何だって構わないわよ~♪」

 

「ふむ。タイラントの調整も、早めに終えておかねばなりませんか」

 

「俺は別に、可愛い妻達に危害さえ無ければそれで良い」

 

「俺だって妻を待たせてるしな……後で連絡入れとこ」

 

「管理局にはちょっぴりどころか、結構な恨みがありますしねぇ~…アイツ等一体どうやって苦しめてやろうか…!!」

 

「あぁ、また胃薬のストックがなくなる気がする…」

 

「諦めるなaws。この旅団、突っ込みを放棄したら何か色々と駄目になる」

 

「どういった戦いになろうが……“アイツ”だけは、俺がこの手で必ず潰す…!!」

 

「はぁ……上の兄貴や妹達にも、連絡しとかないと」

 

「いやまぁ、俺は面白ければ何でも良いけどね~♪」

 

「自分は前線には出ないからな? アンタ等が何と言おうが絶対に出ないからな!?」

 

「俺は果たして、その戦争でどれだけの機体を失う事になるんだろうか…」

 

「まぁ頑張れ、okakaさんよ。たぶん、嫌でも何機か壊れる事になるんだろうけどよ」

 

「滾る、滾るぞ……最高の戦争が俺を待っている…!!」

 

全員が(色々な意味で)意気込んでいる中…

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

二百式だけは、無言のまま静かに考え事をしているのだった。

 

その時…

 

 

 

 

 

 

 

 

-グゥゥゥゥゥ…-

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「……」」」」」

 

腹の虫が鳴る音が聞こえてきた。聞こえた方向に、全員が一斉に振り向く。

 

「…そういや、まだ何も喰ってねぇんだった」

 

腹の虫は、ZEROによるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、現在の食事に至るという訳である。

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、いつまで食べる気なんだか…」

 

デルタの視線の先では、今もなお料理を喰らい続けているZERO。その喰らった量はもはや人智を超えてしまっている。

 

「おいおい、その辺にしといたらどうだ? いい加減食料が無くなるぞ」

 

「ング……何言ってやがる、こっちはまだ腹一分目だぞ」

 

「「「「「まだ食べる気かい!?」」」」」

 

「うわぁ、これ本当に食料がなくなりそうだな…」

 

「それより、まず支配人やスタッフ達が倒れる気がするんだが」

 

未だ料理を喰らう事をやめようとしないZERO。このままだと、本当にアジト内の食料が底をついてしまうかも知れない。

 

「もうやめろ!! これ以上食われたら俺達の分が―――」

 

「えぇい邪魔だっ!!」

 

「ごふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「げんぶぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!?」

 

「おい、しっかりしろげんぶ!!」

 

「駄目だ!! 打ち所が悪くて気絶してる!!」

 

止めようとしたげんぶが、ZEROに思い切り殴り飛ばされる。クリーンヒットしたのか、壁に激突したげんぶは気絶してしまったようだ。

 

「うっへぇ…何処まで食い尽くす気だよ、この怪物野郎…」

 

「何か言ったか」

 

「いえ、自分は何も言っておりません!!」

 

陰口をしていたkaitoも、ZEROに一睨みされただけで思わず敬礼。口調も敬語になっている辺り、彼もZEROの事はおっかなく思っているようだ。

 

「その辺にしておけ、ZERO」

 

「んあ?」

 

そんな時、二百式がZEROの下にやって来た。

 

「二百式……何だ、テメェも俺の食事を邪魔する気か?」

 

「邪魔をする気は無い。ここで食わずとも、お前の食事は別で用意出来るぞ」

 

「…別でだと?」

 

「あぁ。団長からお前に、任務の伝達だ」

 

料理を喰らう動きがピタリと止まる。ZEROは二百式を見据えながら、ニヤリと口を吊り上げる。

 

「ハッハァ……ようやく俺の出番が来たって訳だな」

 

「メンバーの監視の下で動くという条件付きだがな。お前も、それくらいは分かるだろう」

 

「チッ、んな事くらい分かってらぁ」

 

ZEROは喰い終わった料理の皿を押し退け、席から立ち上がって脱いでいた上着を手に持つ。

 

「あぁそうそう、ZEROの任務についてだが……朱音さんにokaka、そしてルカ」

 

「「「!」」」

 

「今回は、三人に同行を頼みたい」

 

監視役として、朱音、okaka、ルカの三人が指名される。

 

「まぁ、監視役を付けるのは当然かしらね」

 

「うぇぇぇぇ…よりによって俺か、面倒臭いなぁ」

 

「…僕も、ですか」

 

「まぁ、誰が付いて来ようと別に構わんがな。先に言っておく……せいぜい、俺の戦いの邪魔だけはしてくれるなよ?」

 

三人に一睨み聞かせてから、ZEROは食堂を立ち去って行く。

 

「相変わらず穏やかじゃないわね……さて、私達も行こうかしら」

 

「へ~い、朱音さ~ん」

 

「……」

 

朱音とokakaも食堂を立ち去って行き、ルカもそれに続こうとする。

 

「ルカ」

 

「!」

 

そんなルカだったが、食堂の出入り口付近にてロキに呼び止められる。

 

「…気をつけていけよ」

 

「兄貴…?」

 

それだけ言って、ロキは何も言わず食堂に戻って行ってしまった。

 

普段はそれほど仲が良い訳ではないロキだったが、この時の彼は真剣に弟を心配するかのような雰囲気で声をかけてきた。

 

(…やっぱり、ZEROさんの事か)

 

彼がここまで真剣になったのには、ZEROが大きく関係しているに違いない。そう思ったルカは渇を入れる目的で自身の頬を両手でパンと叩いてから、食堂を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャァァァァァァァァァァァァ遂に支配人さんやスタッフ達が過労で倒れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「しっかりしろ支配人!! お前に倒れられたら、誰が突っ込み役として機能するんだ!! 私だけではどう考えても突っ込みが足りないんだぞ!!」

 

「そ、そっちの問題、か……よ…」

 

「OK、突っ込む気力はまだあるっぽい!!」

 

「そんな事を言ってる場合かぁ!! 早く厨房からスタミナドリンク持って来い!!」

 

「いや、それだったら私の作った薬草を…」

 

「ちょ、待てアン娘さん!! それ毒薬じゃないだろうな!? 少し前に毒薬と間違えた所為で朱音さんが一回瀕死状態に陥ったのを忘れたか!!」

 

「早くしろって言ってんのが分かんねぇかテメェ等は!! おい、しっかりしろ支配人!! 意識を取り戻せ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うん、聞かなかった事にしよう」

 

ルカは首を振ってから、改めて任務に向かう事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時空管理局、本局…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~♪」

 

一人の男が、鼻歌を歌いながら廊下を歩いていた。その手には、事件等の詳細が書かれた資料が何枚か握られている。

 

男はとある部屋のドアの前に立ち、ドアの電子ロックを解除してから中へと入っていく。

 

「お待たせしました、一佐殿」

 

部屋に入った男は姿勢を正し、席に座っている幹部らしき男に対して敬礼する。

 

「申し訳ありません。書類の整理をしていた結果、ものの見事に遅れてしまいまして…」

 

「何、気にする事はない……それでクリウス、例の物は見つかったか?」

 

「えぇもちろん。整理していた資料の中に、それらしき物が見つかりましたよぉ?」

 

敬礼した男―――クリウスは席に座っている幹部の男に資料を手渡す。

 

「…ほう、やはりな」

 

手渡された資料を見て、幹部の男は何かを確信する。

 

「一佐殿…?」

 

「ククククク……奴め、やはりあの組織に関わっていたのか…」

 

幹部の男が手に持っている資料。

 

その資料の中に、miriの姿が写っている写真もあった。

 

「ジョナサン・オブライエン……お前如きにこの私、マウザーの邪魔はさせんぞ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幹部の男―――エーリッヒ・マウザー一等陸佐は、miriの写真がある資料をグシャリと握るのだった。

 


 
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