No.634590

がちゆり~京子×ちなつ~ちなつ誕生日SS

初音軍さん

ちなつの誕生日ということで甘々百合百合にさせていただきました。ちょっとでも楽しんでもらえれば幸いです。

2013-11-06 00:21:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:675   閲覧ユーザー数:675

 

「ちなつちゃん、遊びにいこ~」

 

 話的にも私的にも唐突に、京子先輩が私の家に訪ねてきた。

両親やお姉ちゃんは今は不在で私だけが残されている状況。

 

「ちなつちゃん今日も可愛いね」

「食べられる!」

 

「何を!?」

 

 この状況はどう考えても私の操が危ない、と直感で感じ取っていたが

すぐに抱きつかれてしまい身動きがとれない状態に…!

 

 あぁ、結衣先輩。お姉ちゃんたち…ごめんなさい、私汚れちゃった。

 

「あのね、ちなつちゃんって私のことどう思ってるの?」

 

 我に返ると京子先輩は苦笑しながら人差し指で軽く頬を掻いていた。

空いている手は頭の後ろに回っていた。

 

「いえ、襲われるかと思って」

「おい」

 

 だけど私の中の隅っこでそれも悪くないなと思っていたのを残った私の思考が

全力で拒否した後。別段やることもないので京子先輩に付き合ってあげることにした。

 

 何で私のことを誘いに来たのか全くの不明であったが、普段あまり出向かない

場所へ遊びに連れていってくれるからちょっと楽しみだったりもする。

 

「ちなつちゃん、この間。これ欲しがってたでしょ。あげる」

「ほんと京子先輩ってクレーンゲームが得意ですよね」

 

「でしょでしょ!もっと褒めてくれてもいいんだよ!」

「…」

 

「あ、そんな冷たい目で見ないで!ちょっと感じちゃう」

「ジーッ…」

 

 そんな変なやり取りをしながら食事をしたり、遊んだり、お店を見て回ったり。

ちょっと大雑把でがさつな印象の強い京子先輩もちゃんと女の子してるから

服とかアクセサリーを一緒に見るのが楽しい。

 

 楽しいというのは時間を忘れさせてしまうのか、気づけば相当な時間を費やして

いたことに携帯の時計を見て気づいた。

 

「そろそろ帰らなきゃ…」

 

 誰か帰ってきてるかもしれない。私がそう言おうとした直後に京子先輩が

少しだけ慌てた様子で私に声をかけてきた。

 

「今日、結衣のとこ行かない? もっと楽しいことしようよ」

「結衣先輩のとこ…。それはとても魅力的ですが時間が」

 

「それは私が既に電話しておいたから」

「何て準備のいい…。誰が出たんです?」

 

 私が出た時には誰もいなかったから誰かが帰ってきてることはわかるが

その人物が特定できないから少し気になっていると。

 

「お姉さんだったよ。妹さんを一晩貸してくださってお願いしてきた」

「なんか複雑な言い回しですね…。まぁ、お姉ちゃんだったらいいか」

 

 そう言って私を見つめる京子先輩の前に出て歩き出した。

 

「早く来てくださいよ、結衣先輩のとこへ行くんでしょう?」

「了解了解。あ、せっかくだから手繋いでいこうよ!」

 

「しょうがないですね…」

 

 後ろから追いかけて私の横、正確にはちょっとだけ前に出て手を握り引いてくれる。

これが結衣先輩だったらどれだけよかったかと…思う反面どこか落ち着いてしまう

感覚もあった。

 

 珍しく私と京子先輩の間で会話が少なくなって、気づいたら結衣先輩の家へ

たどり着いていた。横から京子先輩の顔を覗いてみるとどこか緊張を伴った

表情をしていた。

 

 普段明るく振舞ってるだけに、珍しい状況に新鮮さとちょっとした寂しさを

感じながらも私たちは中へと入っていく。

 

 インターホンを押した後に結衣先輩に許可をもらってからドアを開けると

予想だにしなかったことが私の目の前で起こっていた。

 

 パァンッ

 

 破裂音と共に紙でできているであろう、色とりどりのものが飛び出しては

私の頭に乗っかった。若干火薬の匂いがするそれは、クラッカーであることに気づくのに

数秒を要した。

 

「ちなつちゃん誕生日おめでとー!」

 

 頭が真っ白になっていて、誰が何を言ったのかは定かではなかったけれど。

私を祝ってくれていることはわかったから嬉しくてびっくりして少し目が潤んでしまった。

 

「ありがとう…」

 

 そんな顔を見られたくないからすぐに笑顔に変えて改めてお礼を言うと

結衣先輩がこっそり私の耳元に囁いてくれた。

 

「今日のは京子の案で準備してたんだ。今まで連れまわしたちなつちゃんへのお詫びと

心から祝いたかったんじゃないかな」

「えっ…」

 

 結衣先輩の息が耳にかかってこそばゆかったけれど、その言葉を聞いて私は驚いた。

いつもマイペースな京子先輩がそんなことをするとは…。でもこれまでも私や他の子にも

気を利かせることがいくつもあった。

 

 ちょっと強引だけど人の気持ちを察することができるくらい繊細なのかもしれなかった。

結衣先輩がこそこそ喋るということは内緒のことなのかも、と思って私は聞いた話を

胸の内に閉まって後ろにいる京子先輩に振り返ると太陽のような眩しいくらいの笑顔が

咲いていた。

 

 

 

 私のお誕生日を祝ってくれるパーティーも盛り上がり、少しトイレに用事ができて

向かってから用を足して手を洗ってから振り返る。

 

 そこには手が汚れて向かってきた京子先輩の姿があった。

偶然二人きりで同じ場所に立っていて、私は少しドキドキしていた。

 

「ちなつちゃん、ちょっと使わせてもらっていい?」

「あ…はい」

 

 手をタオルで拭いてから先輩と場所を交代して、洗う姿をジッと見ていた。

我侭でマイペースで周りをかき回すけど、可愛くて時々かっこよくて優しい所が…

そんなことを考えていると顔が熱くなって心臓の動きが早くなるのを感じる。

 

「…」

「ちなつちゃん?」

 

 すっかり手を洗い終わった先輩が私の顔を見つめてきた。顔が赤いのを勘違いしたのか京子先輩は自らのおでこと私のおでこを合わせて熱を計りに来た。

 

「赤いけど熱でもあるのかな? それとも風邪?」

「ち、ちが…」

 

「ちゃんと手洗いとうがいはしないとだめだよ。あ、てうがはしっかりね!」

 

 ドヤ顔をしながら笑う先輩に私は少し大きな怒るような声で先輩に言っていた。

 

「違うって言ってるじゃないですか!」

「お、おおう…」

 

 私の言葉に圧される先輩、その間に私は先輩の頬に口付けをして。

逃げるようにその場から去った。

 

 ついにやってしまった。あれだけ文句を垂れておきながら今更こんな…

好きだと自覚してしまうなんて。

 

 今にも逃げて帰りたくなってはいたが、状況を知らない結衣先輩とあかりちゃんに

声をかけられてその場に留まることになってしまった。

 

 いっそ京子先輩が戻って来なければいいとか思っても見たが、こういう場所で

よほどのことが無い限りそんなことは起きないのであって。

 

 起こって欲しくもないことだった。

 

 みんなでゲームタイム。パーティーゲームで盛り上がり今は結衣先輩とあかりちゃんが

対決をしていて、圧倒的にあかりちゃんが不利なのを見守る中。

 

 ぎゅっ。

 

「ねぇ、ちなつちゃん」

「きょ、京子先輩!?」

 

「シーっ」

 

 二人に気づかれないように声をかけてきた先輩はとても嬉しそうな顔をして手を

握ってきた。改めて向かい合ってお互いに言葉を少しずつ投げあう。

 

 それが今までのどんな時よりもそれは暖かくて優しかった。

 

「嬉しいな。ね、ちなつちゃん。ちなつちゃんの気持ちって…そういうことでいいのかな?」

「そういうことって…どういうことです?」

 

「言いにくいなぁ…。その…恋人って意味で…」

 

 真っ赤になって言う先輩が可愛くて仕方なくてまたキスしたくなってくる。

 

「もう、可愛いなぁ…」

「え?」

 

「京子先輩可愛すぎますよ…もっと好きになっちゃうじゃないですか…」

「ちなつちゃん…」

 

 目を合わせると私と京子先輩は吸い込まれるように近づいていって軽くキスをした。

柔らかくていい匂いがする。京子先輩の匂いってこんななんだ…。

 

 好きだと意識したらなんともなかったことが全て魅力的に感じてくる。

これが恋というものなのだろうか。少し、結衣先輩に感じていたものと違う気がした。

 

 長い間していたと思ったキスだったけれど時間にするとわずかに1分ほど。

終わるとちょうど私の番になって慌ててゲームを進めた。

二人には気づかれなかっただろうか。そういう心配はどこかにあった。

だって、同じ部屋で死角になっていたとはいえあんなことをしてしまったのだから。

 

 幸いあかりちゃんには気づかれなかったけど、終わり間際に私と京子先輩の様子を

見て察したのか結衣先輩は何も言わず暖かい眼差しを私にくれた。

 

 それはまるで京子先輩をよろしく頼むと言われてるようで嬉しかった。

 

 それから時が経つ毎に私たちの距離は少しずつ縮まっていって。

 

「今日はちなつちゃんとこお泊りしていい?」

「またですか~。今日はさすがにみんないるんでダメですよ」

 

「いや、ご両親に挨拶にいかないとって思ったから」

「それこそまだダメですよ!ほんと京子先輩は何言い出すかわかったもんじゃない」

 

「あはは、でも【まだ】ってことはいつかはいいってことだよね。楽しみだなぁ」

「もう…」

 

 そんな傍から見て痴話げんかしているように見える私たちの日常。

手を握って相手の存在を確認して、更に求めたい時にはキスをする。

そんな充実した日を私は大切にしていきたい。

 

 素敵なプレゼントをありがとうございます…、京子先輩。

 

お終い


 
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