No.634073

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

逃走:蒼vs烈火、助っ人乱入

2013-11-04 12:06:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1530   閲覧ユーザー数:930

「レヴァンテイン!!」

 

≪ja bo≫

 

「ぬぉう…!!」

 

砂漠の戦闘は長引いていた。

 

シグナムの長剣型デバイス“レヴァンテイン”が連結刃形態のシュランゲフォルムへと変化し、鞭のように振るわれ蒼崎を襲う。しかし蒼崎は先程から長剣モードのシュベルを使って振るわれて来る連結刃を弾くだけで、自分からは攻撃を仕掛けない。

 

「どうした!! 何故攻撃を仕掛けて来ない!!」

 

「いや、何故って言われてもねぇ…」

 

全く攻撃の意志を見せない蒼崎にシグナムが憤慨するが、蒼崎は困ったような表情で攻撃を防ぐ。

 

「俺は別に、アンタと争う気は無いんだよねぇ。こっちは色々と用事があってこの世界にいただけで」

 

「なら何故この世界にお前達はいる? キッチリ判明するまで逃がすつもりは無い!!」

 

「うぇぇ~困ったなぁ~…っと」

 

レヴァンテインの連結刃をしゃがんで回避し、蒼崎は一歩一歩後方へと下がっていく。

 

「えぇい、逃げるな!! 男なら逃げずにかかって来い!!」

 

「そりゃ無理でしょう、だって」

 

「ッ!!」

 

蒼崎は素早くシグナムの目の前まで接近し、シグナムと正面から向き合う。

 

「アンタみたいな美人さんに、傷なんて付けられる訳が無いでしょうが。せっかく綺麗なのに」

 

「んな…ッ!?」

 

「顔を赤らめちゃって、可愛いなぁもう」

 

「か、可愛いって…~ッ!!」

 

「ん…ぬぉわっ!?」

 

ストレートに「可愛い」と言われてしまい、シグナムは顔が真っ赤になりつつも蒼崎にレヴァンテインで斬りかかる。

 

「ちょ、危ないってば!?」

 

「えぇいうるさい!! 可愛いとか言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

恥ずかしさのあまり、普段の冷静さを失い蒼崎に怒鳴りながら攻撃し続けるシグナムだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「らっしゃあっ!!」

 

「ぬ…ごわっ!?」

 

「ぎゃあ!?」

 

蒼崎とシグナムが争っている一方で、FalSigは残った魔導師達を相手取っていた。高速移動で撹乱しながら一人ずつ魔導師の首元に蹴りを加えて気絶させていく。

 

「くそ……おい、奴の動きが見えるか!?」

 

「む、無理です!! 速過ぎてとても見えな…グホァッ!?」

 

「お、おい…のがっ!?」

 

「はいはい、ちょこっと寝ててね~」

 

また一人気絶させてから、三本の棒を取り出しそれを一本に繋げて三節棍にする。

 

「あぁもう、何でこんな事になっちゃったかねぇ。手持ちの武器なんて、そんなに多くは持って来ちゃいないんだからさ!!」

 

「う、撃てぇ!!」

 

「遅い!!」

 

魔導師達の繰り出す砲撃を高速移動で回避し、三節棍による一撃で魔導師達を瞬時に沈めてみせる。現時点では高速移動に半分のリミッターをかけているFalSigだったが、それだけでも充分に魔導師達と渡り合える程だった。

 

「く、くそ!!」

 

「…!」

 

魔導師の振るった鞭型デバイスがFalSigの三節棍に絡み付き、FalSigの動きが一瞬だけ鈍る。

 

「捕らえた―――」

 

「とでも思ったかね?」

 

「な…ぐはっ!?」

 

鞭型デバイスの絡まった三節棍を手放し、すかさずベレッタM93Rを抜き取って魔導師の腹部に銃撃を浴びせる。

 

「あらよっとぉ!!」

 

「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」

 

更にもう一丁抜き取り、ベレッタ二丁による銃撃が魔導師達を次々と撃ち落としていく。

 

「この、だったら近付いてしまえば…!!」

 

「はい残念」

 

-ザシュウッ!!-

 

「が、ふ…!?」

 

「悪いね。俺流に改造してんだわ、これ」

 

ベレッタのマガジン部分から仕込み刃が飛び出し、接近して来た魔導師の腹部を斬り裂く。

 

「しかしやたら数は多いな。はてさて、どうするかな…」

 

未だ向かって来る魔導師達を見据えつつ、FalSigがどうしようか考えていたその時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ヒュルルルルルルル…-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んお?」

 

突如聞こえてきた、何かが落ちてくる音。

 

何かと思い、FalSigが上を見上げた次の瞬間―――

 

 

 

-ガァンッ!!-

 

 

 

 

「ほがぁっ!?」

 

「!?」

 

一人の魔導師の頭に、銀色の大きなタライが直撃した。

 

「え…のごっ!?」

 

「げふぅ!?」

 

「みぎゃあ!?」

 

するとそれを皮切りに、他の魔導師達の頭にもタライが落ちてきた。打ち所が悪い所為で、どの魔導師も次々と気絶して落ちていく。

 

「これは…」

 

「忙しそうだねぇ、FalSig」

 

「!」

 

FalSigの後方に現れた人物。その人物の顔を見たFalSigは、溜め息をつく。

 

「やれやれ、やっと来たのかよアンタ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇい!! ちょこまかと逃げるな貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ちょ、やめ、おわっ!? 危ないからやめ、ちょ、ぬぉばぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

赤面のまま斬りかかって来るシグナムから全力で逃げている蒼崎。もはや最初のシリアスな雰囲気は何処かにぶっ飛んでしまい、ただの物騒な鬼ごっこと化してしまっている。

 

「ちょ、落ち着きなって!? 俺はただ、アンタが美人で可愛いって言っただけだよ!!」

 

「えぇい、うるさい!! 美人とか言うな!! 可愛いとか言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「何でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」

 

もはや会話もまともに成立しない状況である。

 

しかし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は~い、そこまでだよ~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その鬼ごっこにも終わりが近付いていた。

 

 

 

 

 

 

-ズボォッ!!-

 

「!?」

 

「え…んなぁっ!?」

 

突如、砂の中から緑色の蔓が出現。蔓が蒼崎を無視し、シグナムの身体に絡み付いて来た。

 

「く、何だこれは…!!」

 

-ビリィッ!!-

 

「え…ひゃあっ!?」

 

なんと、シグナムの身体に絡み付いていた蔓が、彼女の身に纏っているバリアジャケットを少しずつ破き始めたのだ。いきなりの事態に、シグナムは顔を真っ赤にして慌てふためく。

 

「こ、こら、やめろ!? 破くな…くぅ!?」

 

蔓に右頬を撫でられ、シグナムの抵抗が一瞬鈍る。その隙にどんどんバリアジャケットが破かれ、肌の露出が増えていく。

 

「ぶふぅ……こ、これはなかなか…!!」

 

一方で、蒼崎も蒼崎で少し大変そうだった。目の前でシグナムがバリアジャケットを破かれているのを見て盛大に鼻血を噴き出し、今もドバドバと鼻血が止まらないでいた。

 

「あ、いたいた。シャドウさ~ん」

 

「ぬぐぐ…んむ?」

 

鼻を押さえていた蒼崎の下に、FalSigが駆けつけて来た。

 

「さっさとアジトに戻りましょうや。モンスター退治から、随分と時間がかかっちまったんだし」

 

「ま、待て…!! 鼻血が止まってからでも…」

 

「気持ちは分かるけどそれは後!! 逃げるのが先決だっての!!」

 

「待て!!」

 

蒼崎を引き摺って逃げようとするFalSigの前に、再び魔導師達が迫り来る。

 

「あぁもうしつこいなぁ……ん?」

 

FalSigの視線の先に、先程蒼崎によって倒されたニーズホッグの死体があった。これを見て、FalSigはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「これは使えそうだねぇ……ほっ!」

 

「「「!?」」」

 

FalSigは両手から強靭な糸を放出し、ニーズホッグの死体に絡み付かせ…

 

「おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「「「な…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」

 

それを大きく振り回し、魔導師達に向かって投げつけた。魔導師達は回避も出来ないままニーズホッグの巨体に激突し、思い切り吹っ飛ばされる。

 

「さぁて今だ!! 逃げるよシャドウさん!!」

 

「あぁ~まだ鼻が…」

 

鼻血の止まらない蒼崎の首根っこを掴んだままFalSigは高速移動を発動し、その場から猛スピードで逃走する。

 

「ま、待て…ぬぁ!? ちょ、やめ…!!」

 

二人が逃走した後も、シグナムは絡み付かれたままバリアジャケットを破かれ続け、やりたい放題にされるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂漠の世界から少し離れた次元世界にて…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここまで来れば大丈夫かな?」

 

「ふぅ、やっと収まった…」

 

無事、逃走する事に成功したFalSigと蒼崎の二人。FalSigは後ろから追手の魔導師が来てないかどうか確認しており、蒼崎はやっと鼻血の止まった鼻を擦っている。

 

そこへ…

 

 

 

 

 

 

「ご苦労様ってところかな、お二方」

 

 

 

 

 

 

「「!」」

 

身長が低めな黒髪ロングヘアの人物が、二人の前に姿を現す。

 

「…いたのかよ、kaito」

 

「イエス!!」

 

現れた人物―――“kaito”は蒼崎に対し、力強く親指を立てて見せる。

 

「来るのがちょいと遅過ぎやしませんかね、kaitoさんよぉ。旅団の召集がかかってから、だいぶ日にちが過ぎちゃってんだけど」

 

「いやぁ~悪いねぇ♪ こっちもこっちで、武器商人としての仕事が忙しくってさぁ~♪」

 

FalSigがジト目で見るも、kaitoは悪びれない様子で両手を合わせて謝罪しており、あまり反省している様子は見えない。

 

「…もしかして、さっきの蔓も」

 

「そう、自分が召喚した人工植物だ」

 

kaitoは右手に持っていた植物の種を二人に見せる。先程も彼はこれを使って、シグナムの動きを封じていたのだ。

 

「俺の時は何故かタライが降って来たがな。あれもアンタが?」

 

「おぅよ、魔法による砲撃も完璧に防ぐ仕様だぜ?」

 

どうやら、タライの件もkaitoの仕業だったようだ。彼はポンと左手にタライを出現させ、二人にこれでもかと言うくらい見せつける。

 

「相変わらず、よく分からん能力を使うんだなお前は…」

 

「何を言う、自分はお前等みたいな化け物連中とは違うんだ。それに、誰のおかげであの状況から脱出出来たと思ってんのさ。少しはありがたく思いやがれってぇの」

 

「いや、それはそうなんだが…」

 

「それにだ、蒼崎」

 

kaitoが蒼崎の肩に手を回す。

 

「見ていてどうだったよ? あの女の痴態は」

 

「…凄く、エロかったです」

 

「やめんかエロ男共」

 

「「ごふ!?」」

 

いやらしい顔をしている蒼崎とkaitoの二人を、FalSigが突っ込み役として思い切りシバき倒してやるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅団アジト楽園(エデン)、最下層フロア…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-カツン…カツン…-

 

この薄暗いフロアにて、クライシスは螺旋状の長い階段を下り続けていた。彼の手には二本の鍵が握られており、真っ暗な空間の中で小さくキラリと光る。

 

そしてクライシスは最下層へ辿り着き、大きな扉の前に立つ。

 

「…ここに来るのも久しぶりか」

 

そう呟きながらも、扉に二つある鍵穴へ二本の鍵を挿し込み、同時に回す。扉のロックが解除される音が鳴り、クライシスは両手で扉をゆっくりと開けて中へ入っていく。

 

(さて、アイツも少しは頭を冷やしてくれていると良いんだが…)

 

クライシスがやって来たのは、地下牢獄だった。いくつも並んでいる牢屋を通り過ぎ、最奥部にある牢屋の前で立ち止まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぅ、珍しい客が来やがったもんだな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牢屋の中から、ドスの効いた野太い声が聞こえてくる。その声を聞いて、クライシスは溜め息をつく。

 

「…今でも、その飢えは変わらんようだな」

 

「当然だ…ふぁ」

 

牢獄内では、左腕が義手で黒髪に白髪の混ざっている凶暴そうな男が、椅子に座ったまま鎖や拘束器具で厳重に捕らえられていた。男は欠伸をしてから、その両目を真っ暗な空間でギラリと怪しく光らせる。

 

「この俺を、こんな窮屈な場所に閉じ込めてくれやがって……おかげでこっちゃ、空腹で意識がぶっ飛んじまいそうだぜ…!!」

 

「それだけ口を聞けるなら充分だろう……喜べ、釈放だ」

 

「…あん?」

 

「ここから出すと言ったのだ。お前も、久しぶりに食事をしたいだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、ZEROよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凶獣は今、地上へ解き放たれようとしていた。

 


 
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