No.631230

魔導師シャ・ノワール月村偏 第三十話 黒猫の給仕と恩返し

ertiさん

神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。

2013-10-25 18:58:50 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2361   閲覧ユーザー数:2204

 

 

 

 

 

 

 

「今日からお手伝いとして入ってもらうノワールくんだ」

 

「おいッ」

 

「みんなも知ってるだろうけど。家の新しい娘・・・息子だ」

 

「おいこらッ」

 

ナチュラルに間違えそうになっていたことも突っ込みたいが...

それよりも声を荒げる事がある。

 

「学校などの手続きが済むまでの秋までの間は、よく喫茶店に入ってもらうと思う。

 しっかりしている子だがまだまだ子供だ。みんなフォローを頼む」

 

「いい加減にしろッ!!」

 

「ん?」

 

喫茶翠屋の開店前ミーティングで俺の紹介が家族以外にお店に入っている店員に説明が行われていた。

 

別段そのことに腹を立てて俺が声を荒げていたのではない。

 

 

「なんなんだ!この服はッ!」

 

「なにって・・・。ああ、もう時間だ。お店を開けよう。ノワールは食器の片付けとか他の店員の手伝いをしてあげて」

 

「いや、だからな?」

 

「いらっしゃいませー」

 

 

とうとう無視されたままお店が始まってしまった。

 

端的に述べると

 

以前来ていた黒地のメイド服にプラスα猫耳に猫のしっぽが増えていた。もちろん黒猫。

 

つまりは黒猫メイド服。

 

「よく似合ってるわよ?私と美由紀の自信作だし手触りもサイコーなんだから」

 

「うっさい!」

 

店長としての仕事がある士郎の代わりに桃子が俺を宥めにやってくる。

 

 

「まあまあ機嫌を直して?これでも客商売だからね?」

 

「うっ・・・。わかった」

 

 

子供とは言え、怒った店員が居ては喫茶店としてダメだろう。

 

自分で頬を軽く叩き。気合を入れ直すが...

 

『あ、可愛い店員さんがいるーッ!』

 

「っ!?」

 

『あっ本当だー!ねぇねぇきみきみぃ?注文いいかな?』

 

若い女性を中心とした常連客と思われる集団がさっそく店に現れ。囲まれてしまった。

 

前から仕事を手伝うと決めていたので始めては見たが。

 

思った以上の苦行が待っているようだ。

 

 

でも、失敗しても成功しても死ぬことがない仕事というのはいい物かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れた・・・」

 

 

あれからお客に呼び止められ注文を聴いたり。いや、それだけなら普通なのだが

 

若い女性客や奥様方がメインのお客である喫茶翠屋。

 

お客は常連客ばかりであり。俺という存在はとても目立っていた。

 

お客の近くに居て捕まって頭を撫でられたり。ギュッと抱きしめられたりしていた。

 

流石に途中でキレた俺は思わず

 

「俺は猫喫茶の猫じゃねぇぞ!」と叫んだが。

 

「あ、それ採用」と桃子に言われ。

 

オプションで黒猫が付いてきます(付きっ切りで給仕をする)というサービスを始めようとしたのをなんとか阻止した。

 

 

 

とは言え、翠屋にやってくる客は固定客ばかりで。

 

親しげに他の店員なども客とお喋りをしたりしている。

 

素養の悪そうな客は一人としてこない。いや、正確には入れない。

 

ランチタイムの昼に一度、柄の悪そうな客が現れたが。

 

店に入った瞬間に士郎から入って来た客に満面の笑みを浮かべながら。

 

お店に入っている客や店員に気づかれることなく殺気を飛ばし。

 

入った客は青い顔をして一瞬で立ち去っていった。

 

それに気づいていた俺は士郎を見つめると。士郎は人差し指を伸ばして唇に当てた。

 

 

どうやら秘密事項らしい。とんでもない喫茶のマスターだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノワールちゃん?はい、おつかれさま」

 

「いただきます。えと・・・?」

 

アイスティを差し出して着たのは紫掛かった長い黒髪に落ち着いた雰囲気のお姉さんだった。

たしか厨房で入っているアルバイトの一人だ。

 

現在はランチタイムも終わって喫茶店の厨房横にある小さな休憩室兼倉庫で休憩中だ。

 

「月村 忍よ。よろしくねノワールちゃん」

 

ちゃん付けされることに少しだけ文句を言いたくなったが差し出されたアイスティーを受け取ってグラスに刺さっているストローを口に含む。

 

甘みのある渋く、冷たいアイスティが喉を潤していく。

 

 

 

「砂糖とかミルクはよかったかな?」

 

「別に入りません」

 

 

俺の性分か。どうにも初対面の人間には冷たく接してしまう。

 

月村 忍は、そんな俺に気を悪くした様子もなく話しかけてくる。

 

「フフッ警戒してるのね?本物の猫ちゃんみたいね。私の家でも猫を沢山飼っているのよ」

 

「猫?」

 

 

ん?猫...沢山?

 

 

「・・・あ」

 

「どうしたの?」

 

「え、あ、いや・・・。」

 

沢山の猫。俺が傷ついて猫に変身してから拾われた屋敷で俺はこの人と会っていた。

 

一、二回程度撫でられたくらいだが。たしか、なのはの友達の姉だ。

 

「この前ね。家の妹が傷ついた子猫を拾って来たんだけど。」

 

「へ、へぇ・・・」

 

「いつの間にか逃げ出してしまってね。その猫に付き添っていた不思議な猫もいなくなって。

 妹が心配して寂しがってるのよね」」

 

もしかして、俺がその子猫だったとばれてる?

 

「どうして俺にその話を?」

 

「え?あ~・・・何と無くノワールちゃんと似てるから。ついつい話したくなっちゃっただけだから気にしないで。

 あ、そうそう。家の妹はなのはちゃんのお友達だから。一緒に遊んであげてね?」

 

「き、機会があれば・・・。あ、そろそろ自分は戻りますね」

 

 

俺は嫌な汗を掻きながら休憩室を後にした。

 

 

 

 

「なんだか怪しいわねあの子・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノワールの物語は進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高町家に引き取られてからさらに数日が経ち。翠屋での仕事も板に付いて来たその日。

 

ちょっとした買出しを頼まれて町が赤く染まる夕方に一人で道を歩いていた。

 

 

すでに買うものは済ませており。ビニール袋を片手に提げて居た時だ。

 

突然、近くの道からクラクションと金属が潰れた衝突音が響き。

 

交通事故かと思い、駆け出して道の角を曲がるとただの交通事故ではなかった。

 

 

やすっぽい黒のバン車が高級そうな小柄なリムジンに横から衝突していて。

 

そのリムジンの扉からはなのはと同じ小学校の制服を着た女の子二人が

 

屈強な男達に黒のバンに無理やり乗せられていた。

 

 

明らかに誘拐・・というか、それしかない、

 

しかも、あの女の子も見覚えがある。なのはの友達で、黒髪の方は借りもある相手だ。

 

そうこう思考している内に、黒のバンは急発進し、タイヤを派手にスリップさせて

 

道路に黒い煙を立てながら走り去ってしまった。とりあえずだが、サーチャー飛ばしてを貼り付ける。

 

残されたリムジンからは白髪のお爺さん・・セバスチャンなどという名前が

 

似合いそうな執事服の男性がヨロヨロと降りてきて。フラフラと倒れそうになっている。

 

 

「お、おい!爺さん!って!重いんだけど!」

 

 

近づいて声を掛けたら力を抜けてしまったのか。俺に倒れこんできて

思わず受け止めるが俺まで倒れそうだ。

 

「うぐぐ・・ああっ・・・・」

 

「大人しくしてろ。呼ばなくてもこの騒ぎだ、直ぐに救急車もくる」

 

「お、お嬢・・様を・・・助けて・・・」

 

「さっきの子か。安心しろ二人とも俺が助けてやる。だから大人しくしてろよ?」

 

「お・・お願いたします・・・」

 

セバスチャン(仮)をリムジンに背を凭れさせて座らせる。

 

脈を診るとしっかりとして居たので。気絶しているようだ。

 

 

「さっきのバンは見失ってないな?」

 

『大丈夫ですニャ!追跡は滞りなくですにゃ!』

 

「上出来だ。まだ人も居ない、クローシュセットアップ」

 

 

光と共にバリアジャケットが展開され。クローシュも鞘に入った状態で腰にホールドされる

 

「一気に飛ぶぞ、ブリッツ!」

『ブリッツアクション!』

 

瞬間加速魔法も使い一気に空に上がって。一般人から見つからないように高度を取る

 

「バンは・・・」

『前方2時方向・・・約300mほどニャ!』

「了解・・・確認した。一気に行ってももいいが、街中では人目につく。

 どこかにアジトがあるはずだ、そこで救出するぞ」

 

『了解ニャ!』

 

 

30分ほど空から尾行していると海鳴市の山側にある資材など倉庫が点々と存在するエリアに入り。

 

その中の平屋のボロイ、コンクリート製の平屋の建物にバンは止まった。

 

どうやら、そこが誘拐犯のアジトらしい。

 

 

「作戦は、正面突破。一人も残さず・・・皆殺しだ・・・」

 

『ご主人さま!?もしかして最近ストレスでもたまってるかにゃ!?』

 

「はははっ・・・まさか・・そんなわけ無いだろ?クローシュ」

 

『あ・・あわわわニャ・・・(最近お店でフリフリメイド服&猫耳尻尾を付けられてご主人さまご立腹にゃ・・)』

 

「さあ!いくぞッ!」

 

『了解にゃ!(それに・・・ご主人様は、犯罪者に容赦しないにゃ。きっと血の雨が降るにゃ・・・)』

 

 

 

そして、ブリッツアクションも使い。着地による衝撃波を派手に立てながら

誘拐犯の立てこもるアジトへと玄関から乗り込んだ.....

 

「ボンジュール、誘拐犯諸君。そして、オールヴォアール(さようなら)だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い照明に照らされた。かび臭い地下室に年端も行かぬ少女が二人、冷たいコンクリートの床に転がされていた。

 

 

「へへへっ。こうも上手く行くなんてなぁ」

 

頬を緩ませて醜悪に笑う男が二人の少女を見下ろす。

 

「んっー!」「んん!」

 

二人の少女は其々、ロープで手足はおろか。口まで布を詰められ喋ることすら出来ない。

 

「ああ、それにオマケも付いてる。少しの間暇だ。楽しむか」

 

「「ッ!?」」

 

紫の入った黒髪の少女の隣に入る。ブロンドの少女に視線が集まる。

 

誘拐した男達の目的は黒髪の少女の一族への復讐であり。

 

ブロンドの少女はおまけに連れてこられただけなのだ。

 

 

「くっくっく・・・ロリコンだねぇ。お前は」

 

「そういうお前こそやるんだろ?」

 

「そりゃ、やらないよりやったほうが楽しいだろうが」

 

「月村の人間が付けて来るかもしれないんだ。そんなことやってていいのかよ」

 

吐き気がするような3人の男の会話を聞き。二人の少女は顔を青ざめた。

 

「んんっー!(誰か助けて!)」「んぁー!(いや!いやいや!近づくなーッ!)」

 

 

そして、男達の手がその少女に手が掛かった時

 

《ドドーンッ》

 

建物に地響きが広がった。

 

男達と少女がいる場所は地下一階であり。音は大きく響く。

 

 

「くそッ!もうばれたのかッ!?」

 

「落ち着け!上には人形共がいる。早々に突破はされん!」

 

「だが、相手は吸血鬼共だッ!なにがあるか分からんぞ!」

 

 

三人の男は懐から拳銃を取り出し。唯一の出入り口である階段に銃口を向ける。

 

 

《ガシャン!バジィーン!》

 

上の階から聞えてくる音から男達は冷や汗を描き。汗が顔に玉ほどになった時、階段から黒い人影が現れる。

 

『撃てぇーッ!』

 

《ダダダダダダダダンッ!!》

 

誰が叫んだかも分からない叫びで。地下への侵入してきた人影は銃弾に撃ちぬかれた。

 

緊張の為か。銃弾に撃ちぬかれた人影が地面に倒れても拳銃のマガジンに入っている弾を全弾、撃ち放ち。

 

弾を撃ちつくし銃のスライドが後ろへストップしても引き金を《カチカチッ》と何度も引いた。

もちろん弾は撃ちつくして発射されることはない。

 

「はははっ中々痛ったそうだ!」

 

『ッ!?』

 

凛とした子供の声が階段から響き。ゆっくりと階段を降り地下室に下りてくる。

 

男立ちは慌てて新たなマガジンを拳銃に差し込もうとするが。緊張で上手く入らない。

 

だが、その下りて来た人物は銃に弾を込めている男立ちを見ても

 

慌てずにゆっくりと階段を下り。階段を降りて、蜂の巣になった人影に近寄る。

 

そして、その人影の頭を掴むと。《ガシャン》という音と共に首が取れる。

 

「随分と蜂の巣にしたな。ロボットがボロボロだ。あんたらの護衛だったのにな。撃たれて可哀相に」

 

人影はよく見ると。普通の人間に見える。だが、皮膚が裂け。腕や首がなくなっているところからは

 

金属が見え。パイプからはオイルが血のように吹き出ていた。

 

「ま、俺が先に腹を抉ったけど。にしてもひどい汗だぜ?おっさん共」

 

男達をあざ笑うような喋る方をする人物は。真っ黒な厚手のジャケットとズボン。

顔を覆い隠すような、服と同色のマフラーを顔に巻き。真っ黒なベレー帽を被っていた。

 

そして、右手には。銃とも剣とも言えてしまう。妙な武器を静かに提げている。

 

「こ、子供!?」

 

現れた人物は背は小さく。誘拐された少女達よりやや大きいかどうかという背丈だった。

 

声も男とも女とも判断付かない。

 

ベレー帽とマフラーから覗く、黒髪と赤い瞳は、普通の子供の目つきとは明らかに違っていた。

 

それは獲物を刈り取る者の目だ。

 

 

「改めて挨拶しよう。誘拐犯諸君、コンニチハ。そして、オールヴォアール(さようなら)だ」

 

『撃ち殺せー!』

 

 

《ダダダダダダダダダダッン!》

 

 

新たな弾が装填された拳銃で、現れた黒い子供へと容赦の無い銃撃が放たれ。

 

次々と銃弾は現れた子供へと着弾し。一歩、二歩と後ずさり。壁へと追いやられ。

銃撃が止むと共に、《ズサリッ》と壁に背を預けて崩れ落ちた。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・死んだか?」

 

「こんな子供が一人で上の戦闘人形をやったってのか?」

 

「まさか。まだ、仲間がいるんじゃないか?」

 

 

二人の男が階段を警戒しながら撃ち殺した子供へと近づいていく。

 

「にしても、こいつはなんなんだ?」

 

「さあな。待て・・・こいつッ!?」

 

《ドゴォンッ!》

 

黒い子供の前に現れた黒い球体が突然、爆発し。男二人は吹き飛んだ。

衝撃で建物が揺れ。吹き飛んだ男達は地下室の壁へと激突し。嗚咽を漏らして蹲る。

 

「な、なにが・・・一体」

 

「魔導師相手に拳銃は効かんよ。まして、対魔導師弾でない拳銃弾程度ではな」

 

ゆっくりと蜂の巣にされたはずの子供が立ち上がり。残った一人を言葉を掛けた。

 

魔力を使い。フェールド系の魔法であるバリアジャケットは

あらゆる外部からの障害に対して防御される。

 

高速で飛行などしていれば。小石などの物体に接触することもある。

その時にバリアジャケットが無ければ。想像は容易いだろう。

 

その為、拳銃弾程度の威力の弾では。魔導師を傷付けることすら出来ない。

 

無論、魔法広まっている世界では。対魔導師用の特殊弾もあるが。

 

この管理外世界第94世界。つまり地球では一般に出回るはずの無い代物だった。

 

 

 

「ば、バケモノ・・・」

 

「バケモノ?ああ、間違っちゃ居ない。まあ、体と言う意味ではこの世界の普通の人間には滅多にない器官が体にあるだけだがな。

 そうさ、体は人間に相違ないさ。唯、魔法が使えるだけの魔導師。ただの人間過ぎない」

 

「ま、魔導士!?に、人間なら話は早い!」

 

男は銃口を下に向け。腕を広げ歓迎するかのように左右に向ける。

 

「なんだ?誘拐犯」

 

「そこに居る黒髪の餓鬼は吸血鬼なんだよ!」

 

「ッ!?」

 

男の奥で縛られている少女がビクリッと震えた。

 

「吸血鬼?」

 

「あ、ああ。あいつは吸血鬼だ。夜の一族って言って人の血を飲み。身体能力は人を大きく越え。

 姿形こそ人間のそれだがバケモノなんだよッ!」

 

「バケモノねぇ・・・」

 

黒い子供が吸血鬼と言われた少女に視線を移す。すると少女は視線を外し俯く。

 

「だから、俺達を「なあ?」な、なにかな?」

 

男が黒い子供に言葉を止められる。

 

「優しい心を持つ人に見えるバケモノと。

 醜悪な心を持つ、人を人と思わないような人と。

 どっちが人間でバケモノなんだろうな?RorikonGentleman?(ロリコン紳士?)」

 

「なっ・・・お前、まさか」

 

「全部聴いてたぜ。屑野郎」

 

「ちくしょうがああああああああああッ!死ねぇええええええ!」

 

「単純だな」

《ガガガガンッ!》

 

床に向けていた拳銃を黒い子供へと向け銃を乱射するが全てが

黒い子供が掲げた手から現れた三角形の黒いシールドに阻まれ。弾は通らない

 

「多少は痛いからな。弾は通らなくても」

 

「くそっ!くそっ!」

 

マガジンを変え、諦めずに発砲するが。弾は何時まで経っても通らない。

 

「こうなったらッ!」

 

突然、発砲をやめると男は後ろへ。後ろで縛られている少女を人質にしようと走る

 

「チッ!ブリッツアクション!」

 

「ガッ!?」

 

だが、瞬間移動したように錯覚するほどの速度で。男の前に黒い子供が現れ。

手に持っていた銃にも剣にも見える武器の剣先を胸の中心に当てられ動けなくなる。

 

「ま、参った!い、命だけは助けてくれッ!」

 

「お前は...」

 

《バシュン!》

そして、子供が構えた武器から赤い薬莢が一発、排莢され。剣の中ごろから上下に分かれる

 

「助けてくれって言った人を助けたのか?」

 

「や、やめッ・・・」

 

さらにもう一発、薬莢が琲莢された。

 

「クズ野郎が・・・豚の様な悲鳴を上げて吹っ飛びやがれ」

 

『カエサル・トナーシュ!』

 

「があああああああああッ!!」

 

《ドガァーン!》

 

その瞬間、黒い光が男を貫き。醜い悲鳴を上げて部屋の端まで吹き飛んだ。

 

「ふう・・・制圧完了か」

 

黒い子供の持っていた武器は光と共に消える。

 

「さてと」

 

「んっ!(こ、怖い!)」「んんっ!(こ、殺される!)」

 

縛られた少女達に黒い子供は近づくが。少女達はその子供を怖がり、逃げようとするが。

 

縛られていて逃げれるはずも無く。すぐに捕まった。

 

「こら、逃げるな。なにもしない」

 

黒い子供は少女達を縛っていたロープを解いていった。

 

だが、少女達はお互いに離れずに座ったまま動こうとしない。

 

「「・・・」」

 

「さてと、荷物には・・・ああ、あったあった。ほらよっ」

 

それを気にしていないようにで、魔導師は少女達の荷物を漁り。その荷物の一つを少女達に投げる。

 

「わっ!ととッ」

 

ブロンドの少女が投げられた携帯電話を手の中でバウンドさせながら受け取った。

 

「ここは地下だから電波が通ればいいが。悪ければ外で掛けろ。GPSも使えるだろうし。外もしばらくは安全だ「あ、あの...」なんだ?」

 

「・・・あなたは一体何者なんですか?」

 

「さっき言ったように魔導師だ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

魔導師はそう言いながら、少女達を縛っていたロープで。

辛うじて死なずにボロキレのようになっている三人の男を手早く縛っていく。

 

「な、なんで、私達を助けてくれたの?」

 

ブロンド少女の言葉を聞いて魔導師は黒髪の少女に視線を向けた。

 

「借りを返しに来たとしか言えないな。それだけの理由だ」

 

「わたし、あなたの事なんて知らないです」

 

「さあ?知らない内に人を助けることもあるんじゃないか?心優しい吸血鬼さん」

 

「う・・・」

 

その言葉を魔導師が口にした瞬間、悲しげな顔をする黒髪の少女。

そして、二人の間に割り込み。ブロンドの少女が魔導師を睨み付ける。

 

「すずかが吸血鬼でも関係ないッ!すずかは、すずかだもん!わたしの大切な友達!」

 

「アリサちゃん・・・」

 

「ああ、別に貶したつもりは無かったんだ。悪かった」

 

魔導師は「しまった」と目を細め訂正した。

 

「でも・・・本当の・・ことですから」

 

「ったく・・・」

 

「「ヒッ!」」

 

魔導師は徐に二人の少女に近づき手を伸ばし。優しく頭に手を置いた。

 

「バケモノってものは心が成る物だと俺は思ってる。ここに気絶してるやつらなんか、最低のクズ野郎どもだ。

 人を人と思わないバケモノだよ。ま、俺も人のことは言えないけどさ。

 それに比べればお嬢さんは俺らよりよっぽど真面な人間だよ」

 

そのまま二、三度頭を撫でると。魔導師はそのまま階段へ向かい。外へと向おうとする。

 

「あ、あの!」「ま、待ってださい!」

 

「なんだ?」

 

魔導師を少女達が呼び止める。

 

「あなたは人間です!とっても優しい人間です!」

 

「すずかを・・・私たちを助けてくれてありがとうございましたッ!」

 

魔導師は顔を隠していたマフラーを口が喋りやすいように右手で少しだけ下げる。

 

「言ったろう?借りを返しに来ただけだと。礼はいらん」

 

「それでも助けてくれました!あんな危険なことまでして」

 

「別にこれくらい平気だ、慣れてる。それより怪我が無くてよかったな二人とも。・・・それじゃあな」

 

階段を飛ぶように地下から魔導師は飛び出してしまった。

マフラーが魔導師の速度による風で負け、一瞬ではあるが完全に顔が露になり。

その時見えた横顔は、優しげに微笑んでいた。

 

その鋭い目付きと優しげに微笑んでる顔立ちをした魔導師の顔を助けられた少女達はしっかりと脳裏に焼き付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、買出しの品を事故現場に置き忘れた・・・」

 

 

 

無論、子供のお使いというだけあって。余分なお金は無く。

 

無くした理由をノワールは上手く誤魔化すこともできずに。高町家の皆の知るところとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブレる事のない亀更新ですが皆様いかがお過ごしでしょうか?

 

作者はトラブルに最近よく見舞われていますが、とりあえず生存しています。

 

さて、一応は無印偏から月村編へとシフトした訳ですが。

実のところこの先の話を結構飛び飛びで書き溜めているので整理や繋ぎに

大分、時間を掛けている状態です。申し訳ない

 

実際、すずかとアリサが誘拐された場面などはもう大分前に執筆した文章で三人称チックです。

 

 

今後の予定としては、月村編(2~4話程度)が終われば日常を少しと作者も忘れていたあの人の話などを投稿する予定です。それが終われば....言わなくても分かりますね?

 

 

季節の変わり目で風邪など惹かぬようゆっくりと次回の更新をお待ちください。

 

 

 

 

※読んでくれてありがとうございます!感想などなどはお気軽に!

 

※誤字脱字などの指摘もどんどんお願いします。

 

※また誤字脱字や妙な言い回しなど見つけ次第修正しますが特に物語りに大きな影響が無い限り報告等は致しませんのであしからず。


 
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