No.630933

太守一刀と猫耳軍師 第44話

黒天さん

今回は董卓軍の面々のお話です。

2013-10-24 12:02:23 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6661   閲覧ユーザー数:5303

「泰山か」

 

ようやく忍者隊が拾ってきた話しが泰山の社にそれらしい男が出没するらしい、という話し。

 

「于吉……」

 

「ご主人様ー? 入るで?」

 

その声にどうやら俺は気づかなかったらしい、ドアが開いて霞と華雄が入ってくるまで。

 

「うわ、どないしたん? めっちゃ怖い顔しよるやん」

 

「随分とまた殺気立っているな、来たのが月あたりだったら泣いてしまうぞ?」

 

「霞に華雄? ん、これは2人にも関係あることかな」

 

「ん、白装束の奴らについて何かわかったん?」

 

「どうも泰山が本拠地らしいよ」

 

「やはり、戦うつもりなのか?」

 

「あいつだけは許せなくてさ。

 

でも、その首を取るためだけに戦いを初めてもいいかってちょっと悩んでるんだ。

 

個人的な感情だけで軍を動かしていいものか、ってね」

 

ため息をつく。確かにここは俺の国だが、俺自身がそういうように兵達は道具じゃない。

 

「そやったら、ついてきたい奴だけついてこさしたらええやん。

 

先に私闘やって宣言してな。

 

ウチはもちろんついてくで?」

「将のみんなは、あの于吉に恨みがない人間って、ほとんど居ないからついてくるとおもうけど」

 

「そうだな。私達は月の事があるし、魏の者は戦に水をさされた事がある。呉は周瑜の件があるはずだ。

 

それに、元から主の傍にいたものは、暗殺の件がある。」

 

華雄の言葉に軽く頷く。みんなの共通の敵だからこそ、倒さなければいけないと思っている。

 

「ええやん。みんなで行ったら。相手の規模はどんなもんなん?」

 

「城塞があるのが確認できてるのと、相手の数としては3000ちょっと居ればいいとこって感じかなぁ」

 

「城攻めするんに、余裕を見て4倍つれてって12000ってとこか。

 

それぐらいやったら、行きたい奴だけって言うても来るとおもうで?

 

魏との戦の時のこと考えてもまぁその倍ぐらいは最低でも来るんちゃうかなぁ」

 

「俺はその時のことしらないけど、まぁ来てくれるならありがたい所だけどね」

 

「私も当然ついていくつもりだが、連れて行ってくれるんだろうな?」

 

「うん、そのつもり。霞、華雄、華琳、華歆、桂花、紫青、朱里、紫苑、孫権、あたりはつれてこうとおもってるんだけど」

 

ちなみに、愛紗達が候補から外れているが、紫苑の下で兵卒としてついていくことになるはずだ。

 

「華歆か、あの子も計略の被害者やしなぁ……」

 

「流石に主要な将を全員つれてくわけにもいかないし、これぐらいかなぁ、って思ってる」

 

椅子に深く座り直し一つため息。

 

「これで本当に終わりだといいなぁ……」

 

「きっと終わりやって、そいつ倒したらもう憂いは無いんちゃう?」

 

霞の言葉に少し気が楽になる。

「そうだな。それでだ主、少し頼みがあるんだが」

 

「ん?」

 

「戦の後でいい、少し時間をもらえないか?

 

話したい事がある」

 

「ああ、前にいってた真名の件?」

 

「そう。その件だ。さすがに敵が見つかったとなればのんきに話してなどいられないだろう?

 

しっかりと余裕のある時に話したいしな」

 

「んー、まぁ、うん。大丈夫だよ」

 

でもそれって死亡フラグだよなぁ……。

 

「今のうちに言うといたほうがええんちゃうかなぁ」

 

霞の言葉に華雄が苦笑する。俺もそれには同意するけど、華雄の問題でもあるし。

 

華雄の真名の話しって、他の人より随分と重たいきがするなぁ。

 

「まぁ于吉の話しは横に置いといて……。何か用事があって来たんじゃないの?」

 

「いんや? 休みやしちょっと遊びにきただけやで。ほれ、土産」

 

そういって机に置いたのは、菓子。2人で街にでも出ていたのだろう。

 

「最近なんや疲れが見えるしな。ちょっと頑張りすぎなんちゃう?

 

もうちょいのんびりしたらええと思うんやけど」

 

「疲れてるように見える?」

 

「見える」

 

きっぱりとそう言い切りながらお茶を入れてくれる華雄。

 

意外にもお茶を入れるのがうまい。甘いもの好きだからお茶も好きなのかな?

 

お茶を入れて菓子を広げると机を囲むように座り。

「軍師もよーけおるんやし、領主や太守の経験者もおる。

 

もうちょい仕事任せたらええねん」

 

「少々休んだ所で誰も文句はいわんさ。今までの領主の大半を思えばな。

 

仕事をしない金食い虫がどれだけ多かったかしらないわけでもないだろう?」

 

確かに、俺が来た当初はそういうのは多かったらしい。

 

今はきっちり監視の目を光らせてるしそういうことはほぼ無いけど。

 

「霞や華雄にも世話かけるなぁ……」

 

「別に迷惑やなんておもて無いけど、

 

まぁ本気で倒れられたらちょっと迷惑かな?

 

みんな心配するしな」

 

「もうそんなことがないように気をつけるよ」

 

「それにもうすぐ戦となるなら、なおのこと、疲れを残しているわけにはいかないからな」

 

その言葉に頷いて、お茶をすする。うん、うまい。

 

「そういや、今日はこの後夜まで仕事する気やったん?」

 

「普通にそのつもりだったけど……」

 

「んー、確か白蓮が暇そうにしよったし、仕事なんぼかやってもろたら?

 

なんや、今日は休暇でも無いのに仕事あらへーんって言うてたし。

 

うちらが手伝えたらええんやけど、武官やからなぁ」

 

「でもなんかそれも申し訳ない気が……」

 

「かまへんかまへん、その書簡が今日の仕事やろ? ウチにまかしとき」

 

そういって書簡を抱えて部屋から霞が立ち去っていき……。少したつと手ぶらで戻ってきた。

 

「やってくれる言うてたで」

 

「え、マジで?」

 

「……霞、いったい何をネタに強請ったんだ?」

 

「別にぃ、なんもあらへんで」

 

……まぁ、何かあるんだろうけど深くは聞かない事にして、折角時間をあけてくれた事だし、今日は2人とのんびりすることにした。

───────────────────────

 

「ちょっと北郷! あの白装束を見つけたって本当なの!?」

 

泰山を攻める準備をする、と通達を出してすぐに、詠が月をつれて俺の部屋に駆け込んできた。

 

「本当だよ」

 

「月とボクが留守番ってどういうことなのよ!」

 

俺の目の前まで来てわめくので耳が痛い、あと怖い。

 

「詠ちゃん……、そんなにご主人様に詰め寄ったらだめだよ……」

 

「月はそれでいいの!? 月の両親の仇なのよ?」

 

「私は、ご主人様の帰ってこれる場所を詠ちゃんや恋ちゃんと守るのが役目だと思ってるから……。

 

きっとご主人様は私や詠ちゃんのかわりに仇を討ってくれるって信じてるから。

 

それに、霞さんも華雄さんも一緒だからきっと大丈夫だよ……」

 

「月ぇ~……」

 

まぁいつものパターンだな。

 

「月の言った通り、ここを守ってて欲しいっていうのもあるし、月を危ない所に連れて行きたくないしさ。

 

詠は、できることなら月と一緒にいて欲しいし。

 

でも……、2人がどうしても仇討ちに一緒にいきたいっていうなら止めないよ。

 

もしそうするなら、諸葛でも司馬でもなく、董と賈の旗をあげればいいとおもってる。

 

もう他に敵はいないんだから」

 

月と詠がだまりこみ、しばらく考えるような素振りを見せる。

「私は、ここでご主人様の帰りをお待ちしています……。

 

それが私の役割だから、今までも、これからも……」

 

「……月がそういうなら、私もそれでいいわ。

 

でももし失敗してみなさい、あんた殺すわよ」

 

「大丈夫、今まで共にやってきたみんなと行くんだから、負けるわけないじゃないか」

 

「それに、ちゃんと帰ってきなさいよ?

 

最後の敵っていうあたりがどうにも引っかかってるのよ。

 

これを討ち果たしたら本当に、あんたが天に帰ってしまう、そんな気がしてしょうがないのよ

 

そうなったら月が悲しむわ」

 

多分、これは詠自身にも当てはまる事なんだろうなぁ、月の方に視線を向ければ表情が曇っているのがわかる。

 

やっぱり、この相談は誰にもするべきじゃなかったかもしれない。

 

人づてにもう皆に伝わってるんだろう。

 

「帰ってくるよ。必ず」

 

安心させるようにはっきりと言い切って。

 

「名にかけてでも?」

 

「もちろん。北郷一刀の名にかけてでも」

 

「ご主人様……」

 

それだけでも気が楽になったのか、曇った表情が少し明るくなる。

「俺はここに帰ってくるよ。何があってもね。

 

月と詠のためにね。でもどこで聞いたの? 俺が天に帰るかもしれない、なんていう話し」

 

「あの……、この部屋の掃除をしていた時にご主人様の遺書を見てしまって……」

 

あぁ、あの遺書を見たのか……。

 

「本当に、万一のための遺書だよ。俺は帰る気も、死ぬ気も無いしね。

 

だからそんなに心配しないでいいから」

 

月の髪に触れて軽く撫でて。

 

「へぅ……」

 

「ボクは、姉さんから聞いたのよ。

 

月には言わないでおこうとおもってたんだけど、遺書を見たっていうから……」

 

紫青か。まぁ口止めしたわけでも無いからなぁ。

 

「ごめん、みんなを不安にさせちゃって」

 

推測にすぎない話しで、みんなに不安が伝染しちゃったかとおもうと申し訳ない気持ちになる。

 

桂花にしっかり口止めしておけばよかった……。

「いいわよ、ちゃんと帰ってきてさえくれればそれで。そうだよね、月」

 

こっくりと、月が頷く。この2人のためにも、ちゃんと帰ってこなきゃな……。

 

「さよならなんて、イヤですから……」

 

「ちょっとしんみりしちゃったわね」

 

「そうだなぁ。それじゃあお茶にでもしようか」

 

唐突な俺の提案に、少しの間2人が呆けた顔。詠はどちらかと言えば呆れ顔って感じか。

 

でもそれから、月が小さく笑って

 

「では準備しますね」

 

と、お茶の準備をしに部屋から出て行った。

 

「……なんで急にお茶だなんていったのよ」

 

「空気を変えたいと思ったのもあるし、不安があるからこそ、いつもどおりに過ごすのもいいかとおもってさ」

 

先日、紫青とでかけたときに買ってきた菓子を用意して……。

 

「まぁいいわ、付き合ってあげる。月の事だから3人でって言うでしょうし」

 

「うん、ちゃんと詠の分のお菓子もあるしね」

 

月が帰ってくればいつもどおり、のんびりとお茶とお菓子、それに2人との他愛ない会話を楽しむ事にする。

 

胸の内にある不安は誰も表に出さない。

 

日常のよくある一コマだけど、今の俺にはこれがとても大切に思えて……。

 

「ちゃんと、帰ってきてくださいね……?」

 

お茶を終えて去り際に月がそういったので俺はしっかりと頷く。

 

月と詠が部屋から出て行ったのを確認すると俺は鉄扇を開いてじっとそこに書かれた名を見る。

 

みんなのためにも、絶対に帰ってこなきゃいけない。

 

弱気じゃいけない、そうおもい、天に帰ってしまうかもしれないということは考えず、

 

この戦の後をどうするかと考えることにした。

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回は董卓軍の面々の拠点回と相成りました。

 

おそらく、次回が最終回です。

 

泰山での戦はおそらくあっさり終わります。

 

白装束も数が出ませんし……。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。

 


 
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