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恋姫†無双 関羽千里行 第4章 34話

Red-xさん

恋姫†無双の二次創作、関羽千里行の第4章、34話になります。この作品は、恋姫†無双の二次創作です。設定としては無印の関羽ルートクリア後となっています。
最近暖かくなったり寒くなったり忙しいですね。体調にはくれぐれも起きをつけ下さいませ。
それでは宜しくお願いします。

2013-10-14 00:39:27 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1810   閲覧ユーザー数:1528

第34話 -五斗米道の徒-

 

 

一刀「謁見?」

 

雛里「はい、是非とも一度会ってお話がしたいと...」

 

 執務室で仕事に励む一刀の元に、雛里が訪ねてきたのは、昼飯もいい具合にお腹に収まり眠気も深まってくる午後のことだった。要件は、謁見したいという人物に会うかどうかということ。もちろん他国の使者など一刀が会わなければならない要件ならば、一刀に選択肢などあってないようなものであるが、どうやら今回の相手はそういうものではないらしい。

 

雛里「素性もよく知れないので、必ずしも会う必要はありませんが...」

 

一刀「ふむ。ちなみにその人は自分のことをなんて言ってるの?」

 

雛里「はい、なんでも流れのお医者様だと。」

 

一刀「お医者さんか、心当たりはまるでないな...」

 

 一刀にはその医者の目的が皆目検討つかなかったが、それでもなぜかその人物には会っておいたほうがいい気がした。

 

一刀「わかった、会ってみよう。一応、なにがあるかわからないし、今いる誰かに立ち会ってもらうから呼んできてくれないかな。もちろん、雛里もね。」

 

雛里「御意です。」

 

 華雄と祭は今、南方に山賊の討伐に出ている。霞は西方の異民族に対する警戒に出ているし、思春も風と古くなってしまった地図作製のため、地形調査や情報を集めに出払っている。愛紗と翠あたりは今兵の調練の最中だろうか。となると、

 

星「私が必然的に同行することになりますな。」

 

 窓からこちらに乗り出してきた星に、すっかり考えを読まれていた。

 

一刀「こら、人の頭の中を勝手に覗くなよ。」

 

星「はて?主の頭には覗き穴でもついているのですか?」

 

一刀「そんなわけないだろ、全く。」 

 

 そんな彼女のいつもの調子に呆れつつも、護衛を確保した一刀は椅子にかけていた制服の上着の襟を掴みとり袖を通した。

 

一刀「それじゃ、行こうか。」

 

華陀「お初にお目にかかる。俺は五斗米道の徒、華陀という者だ。以後、よろしく頼む。」

 

一刀「ここを預かってる本郷一刀だ。よろしくするかはまだ判断できないんだけど...」

 

 ゴッドヴェイドー...どこかで聞いたことがある気がするのだが、字面を頭に思い浮かべても、どこかの勇者が使いそうな必殺技の名前にしか思えない。

 

雛里「ごとべいどう...都の近くの山に本山を持つ宗教団体だったと思いますが...」

 

華陀「そんな大それたものじゃない。あそこにあるのも小さなお堂がひとつだしな。それとお嬢さん、『ごとべいどう』じゃない。」

 

雛里「はい?」

 

華陀「五斗”ッ、米道ーッ!だ。」

 

雛里「は、はあ。」

 

 どうやら発音には並々ならぬこだわりがあるらしい。ただ、訂正された雛里もどこか腑に落ちないといった表情をしている。

 

星「そう言えば、私が旅をしていた頃、連れが倒れて世話になったことがあるな。あの時は世話になった。その者に代わって改めて礼を言おう。」

 

華陀「礼には及ばない。困っているものは決して見捨てないのが、我らの教訓だからな。」

 

一刀「それは立派なことだと思うけど...その華陀さんが俺にどんな要件なのかな?」

 

華陀「うむ。それについてなんだが...」

 

 言いかけて何かに気づいたように一度言葉を切ると、改めて口を開く。

 

華陀「先に確認しておきたいのだが...俺の言葉遣いは何かしら...その、不快感を与えてはないか?」

 

 この場にいる三人に問いかける。それに、

 

星「ふむ。本来、主の立場を考えれば、お主は言葉遣いには気を使った方が良いと思うが...」

 

一刀「俺は特に気にしてないけど?むしろ敬語使われない方がこっちとしても気が楽だ。」

 

星「だ、そうだ。」

 

 すると華陀は安心したように胸をなでおろした。

 

華陀「すまんな。あまりこういうことには慣れていなくてな。それが元で前は失敗してしまったようだし、確認をとっておきたかった。では、早速要件なんだが、北郷領内における、我らの活動を容認して欲しいのだ。」

 

一刀「ふむ。その内容というのは?」

 

華陀「主に二つ。布教活動と慈善事業のようなものだ。」

 

 目の前の青年の物腰やらかな雰囲気に反して、その内容はきな臭くなったと感じる。思えば、黄巾党の動乱の原因も、似たような側面があったからだ。それは二人にも感じ取れたのだろう。その後を雛里が引き継ぐ。

 

雛里「その具体的な内容について説明していただけないでしょうか?また、五斗米道...その教義についてもちゃんとお聞かせ願いたいです。」

 

 その質問の意図は、華陀にもしっかりと伝わったようで、

 

華陀「もちろん。誤解を産まぬためにも俺がここに来たのだからな。」

 

 それから華陀は五斗米道とその活動について語り出した。彼らも、乱世で傷つく人の多さを憂いた人たちの間で、軍事的な立場とは異なる形でどうにかしようと組織されたものらしい。その教義も、先ほど彼の語ったように困っている人を助けるといった些細な事から、人間を癒やす研究、つまるところ医術の探求とその内容は到底害を及ぼすようなものではなかった。つまるところ、究極のボランティアサークル。正史に従えば、五斗米道は争いの種になったこともあった気がするが、ここではそういう類のものではないらしい。

 

一刀「なるほどね、雛里はどう思う?」

 

雛里「医療技術の発展は私たちにとっても有益ですし、むしろ保護してもいいくらいかと。」

 

 だが、それを聞いた華陀は、

 

華陀「悪いがそれには及ばない。俺たちはあくまでどこにも属さない集団だ。どこかの勢力に与すれば、他の勢力から妬みを買ったり、活動領域が狭くなったりするからな。」

 

星「ほう?つまりお主は、ここで活動する許可を求めておきながら、例えば他国の者の治療も請け負うというのだな?」

 

華陀「まあそうだ。」

 

 つまり、自分たちが他国と戦い傷ついた兵士が出ても、所属を問わず助けるということだ。それが星には気がかりなのだろう。折角敵を負傷させても、また戦場に戻ってこられてはその意味が無い。だが、まっすぐと星を見据える彼の目には一点の曇もなかった。それを見て、

 

一刀「いいよ、許可しよう。」

 

星「主?」

 

一刀「華陀さんが期待しているのって、要は変に誤解されて、五斗米道の宗徒の人が迫害を受けたりしないようにして欲しいってことだろ?華陀さんが活動してくれれば皆助かるんだからいいじゃないか。」 

 

 どうしても、華陀が何かしら悪巧みをしているようには思えなかったのだ。何より、星の友人が世話になったというのなら、疑う余地はない。

 

星「まあそうですが...」

 

一刀「じゃあなにも問題ないじゃないか。それと例えばなんだけど、こっちから流行り病の出た村とかをそっちに伝えて、そこに行ってもらうようお願いするとかいうのは?」

 

華陀「望むところだ。そういうところで活動することこそ我らの本懐だ。無論、そういうことはない方がいいのだがな。」

 

一刀「なら決まりだ。二人ともいいだろ?」

 

雛里「私は構いません。」

 

星「主がそうおっしゃるなら、私からは異存ありません。」

 

一刀「よし。じゃあこれからよろしく頼むよ。こっちから話は回しておくから。」

 

 華陀に右手を差し出す。少し怪訝そうな表情をするが、意図を汲み取ってくれたのか、その手を掴んでくれた。

 

華陀「ああ、感謝する。黄巾党の一件以来、俺たちみたいな奴は肩身が狭くてな。」

 

一刀「だろうね。名を語る偽物なんかには注意してくれよ?」

 

華陀「ん?なんだか知らんが了解した。」

 

 そこまでで、華陀は再び胸をなでおろした。

 

華陀「しかし、ここの統治者がお前みたいな奴で良かった。これまで色々回ってきたんだが、なんというか、頭の硬い奴が多くてな。特に北の曹操のところなんか...」

 

星「曹操?意外だな、断られたのか?」

 

 曹操の性格からすると、断りそうにはないのだが。どうせ自分が大陸を統一するんだからいいじゃないとか言って。すると、華陀は頬をポリポリとかくと、

 

華陀「いや、途中まではなんだかいい雰囲気だったんだが、曹操自身の...まあ、途中で何故か怒らせてしまったようでな。」

 

一刀「よく命があったな...首をはねるとか言われなかった?」

 

華陀「ああ。危うく死にかけたな。特にあの大剣を携えた...残念だがしばらく魏領では活動できそうにない。」

 

 その時のことを思い出したのか身震いをする華陀。一体彼と曹操の間になにがあったというのだろうか。

 

 その後、せめて飯でもと思って華陀を誘ったのだがそれも断られ、徹底的な中立っぷりを見せつけていった華陀を送り出した後、愛紗と翠が帰ってきた。それまでのことを二人に伝えると、

 

愛紗「私はそれでよかったかと。」

 

翠「そんな奴の話を信じるなんて、ご主人様ってとんだお人好しだよな。」

 

 一方には賛同され、一方には呆れられてしまった。

 

愛紗「ですが、その者達、天和たちの時のようにならなければよいのですが...」

 

一刀「そればっかりはこっちじゃどうしようもないからなぁ。ただ、その華陀さんを始めに大陸を渡り歩いてる人達がいるらしいんだけど、そんなに数はいないらしいよ。基本見返りを要求するわけでもないらしいし、領内にいる間は行き先も教えてくれるらしいから大丈夫だとは思うけど...」

 

 そんなことを話している裏で、星は別のことが気になっていたらしい。

 

星「そう言えば雛里、華陀殿に何を貰ったのだ?」

 

雛里「どうやら、五斗米道の方で出している医術書らしいんですけど...」

 

星「ふむ。少し興味があるな。見せてもらえるか?」

 

雛里「はい、どうぞ。」

 

 そう言うと、渡された書物をペラペラとめくっていく星。それに気づいた翠も何だなんだと後ろから覗きこむ。

 

星「ふむ。風邪の治し方に風土病の解説、本当に医術書のようだな。」

 

翠「そうか?あたしにはなんかの儀式にしか見えないんだけど。」

 

星「全く、お前も勉強が足りんな。ふむ、風邪をひいた時に首に葱を巻くというのは間違いだったのか...」

 

 それは言われなくてもわかると思うんだが。そうしてふんふんと唸りながら興味深そうに読み進めていた星だったが、とあるページでふとそれがとまる。

 

星「ほお、これはなかなか興味深い。」

 

翠「ん?どれどれって...な!」

 

 後ろから覗きこんでいた翠の顔が真っ赤に染まる。

 

翠「な、なんでこんなことまで書いてあるんだよ!」

 

一刀「んん?何が書いてあるんだ?」

 

雛里「ポッ。」

 

翠「ご主人様は絶対に見るな!」

 

愛紗「ここここんな昼間からふ、不謹慎だぞ!」

 

星「そう言いつつ目線はしっかりこちらに向いているではないか。」

 

愛紗「そ、そんなことはないぞっ!」

 

 ここからは、その中身を覗くことはできない。ただ、それを見つめる四人の顔は程度の差はあれ皆赤かった。

 

翠「(ぼ、房中術って...なんでこんなもんがこんなにしっかり書いてあるんだよ?)」

 

星「(ふむ、恐らく、男女の睦言というのも時に病の原因となることがあるらしい。だからこそ、素人の浅知恵で間違って病にかからぬよう、こうも細かく書いてあるのだろう。)」

 

愛紗「(しかし、その...生々しくはないか?)」

 

星「(ほう。これが生々しいとわかるお主はやはり主と経験が?)」

 

愛紗「(うっ...)」

 

雛里「(あわわ、そうだったんですか、愛紗さん?)」

 

 こそこそ話で盛り上がっているらしい四人に完全に置いて行かれる一刀。そろそろその声も大きくなってきて聞こえてきそうだが、そんなものを待つのも野暮というものだろう。

 

一刀「俺、仕事に戻ってるよ。」

 

星「なら、我らはしばらくここで議論を重ねるとしましょう。その前に翠、茶菓子の調達を頼めるか?」

 

翠「ほいきた!」

 

雛里「では、私はお茶を淹れてきますね。」

 

愛紗「では私はこれで...」

 

星「そうはいかん。おとなしくしていろ。」

 

愛紗「は、離せ星ーっ!」

 

 その夜、翠は夜の見回りに参加していた。本来であればこれは彼女の仕事ではないのだが、近頃は物騒な噂も多く聞く。それを加味し、しばらくはこうして一人は何かあった時に事に当たれる体制にしておこうという話になったのだ。

 

翠「しっかし、愛紗のやつ、潔癖そうな顔してあんなことやってるなんてなー。」

 

 翠にしてみれば、生真面目が服を着て歩いているような愛紗が、一刀とそんな仲になっているなんて思いもしなかった。と言っても、他の二人はとっくに知っていたようであったが。根堀葉掘り聞かれた愛紗は憔悴しきって今頃泣き寝入りしているかもしれない。

 

翠「ま、あたしには縁のない話だな。」

 

 男のように育ってきた翠にとって、それはまるで別の世界のお話のようであった。そういう事は今まで縁がなかったし、父の家臣に姫と呼ばれていても、そんな自覚はまるでなかった。それでも、

 

翠「でもあいつ、たしか...」

 

 一瞬、以前厩舎であの人から言われたことを思い出す。彼はまるで、自分を鼻から女の子であるかのように扱っていた。もしかして彼となら...と考え始めたところで、翠は首をぶるんぶるんと振り、それらの思考を切り捨てようとする。

 

翠「いやいやいや!そんなことあるはずないっ!...でも...」

 

 そうしてウジウジと考えているうちに、いつのまにか翠は城の正門までやってきてしまっていた。門を警備する衛兵が、翠に気づいて背筋を伸ばし挨拶をしてくる。翠もその御蔭でスイッチが切り替わったのか、キリッと顔を引き締め答える。

 

衛兵A・B「遅くまでご苦労さまです、馬超様!」

 

翠「お前らもな。ただ威勢がいいのはいいが一応夜中だ、声は静かにな。なんか異常はないか?」

 

衛兵A「特になにも。強いて言えば、先ほどこの近辺に住む老人が通りかかりましたので、送り届けたくらいです。」

 

衛兵B「それ以外は全く平和そのものであります。」

 

翠「そっか。なら交代の時間までもう少し頑張ってくれよな。」

 

衛兵A・B「はっ。」

 

翠「じゃ、あたしは裏の方を見てくるよ。」

 

 そう言ってその場を立ち去ろうとした翠は、突然強い悪寒に襲われた。例えるなら、草食動物が自分を狙う肉食動物に睨まれているような...

 

衛兵A「おい、そこの者、此処から先は立ち入り禁止だ。用があるならまた明日の朝来てくれ。」

 

 それは翠の背後の、門の直ぐ外から感じられた。どこか覚えのあるそれも、今この時だけは触れたくないものであった。

 

衛兵B「おい、聞こえてんのか?ここらは安全とは言え、こんな時間に出歩いてたら...」

 

翠「...おい、お前ら。すぐにそいつから離れろ。」

 

 後ろを向いたまま二人に警告する。正直、翠は武人でありながらも、この時は後ろを振り向くのがとてつもなく怖かった。

 

衛兵A「はい?」

 

翠「いいから、関羽将軍と趙雲将軍をたたき起こしてこい。もちろん、得物も一緒に、大至急だ。」

 

 絞り出すように声を発する翠に、どうしたのかと怪訝そうにする衛兵たち。

 

衛兵B「しかしもうこんな時間で...」

 

翠「早く行けっ!!!」

 

衛兵A・B「は、はいっ!」

 

 わけも分からずかけ出して行く二人をそのまま見送り、見えなくなったのを確認した後、翠はゆっくりと後ろを振り返った。

 

翠「久しぶりだな...恋。」

 

-あとがき-

 いつも読んでくださっている方、有難うございます。

 

 医術王さんの登場です。まあタイトルからしてまるわかりなのですが。どうやら関係者の方が鼻血王さんの面倒を見てくれたみたいですが...あれは医術王さんを持ってしても難しそうですね。それと、ゴッドヴェイドーでも、ごとべいどうでもなく、五斗米道です。...あれ?アニメをご覧になった方ならわかるはず。見てない人にはごめんなさい、そういうものらしいので。そして最後に...

 

 

 

 それでは、次回もお付き合い頂けるという方は、よろしくお願いしますね。


 
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