No.627395

ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY11 ぶつかり合う思い

やぎすけさん

大変遅くなりました。

2013-10-12 17:06:53 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1978   閲覧ユーザー数:1949

STORYⅪ ぶつかり合う思い

 

 

 

 

デュオ視点

街から出た俺たちは、海岸に出るべく林の獣道を歩く。

途中で何度かモンスターとエンカウントしたが、その全てがキリトの鬼神の如き猛攻で無残に斬り倒された。

その後も走るような早足でつかつかと歩いていくキリトを、数歩下がった位置で追いかける。

俺は、置いて行かれないように歩きながらマップで場所を確認して言った。

 

デュオ「あと数分も歩けば、開けた場所に出るはずだから、そこで休もう」

 

キリト「ああ・・・」

 

キリトは振り向きもせずに短く答えると、そのままの歩調で歩くキリト。

街を出発してからというもの、キリトは会話にまともな答えを返さない。

俺はため息をついてから、再度声を掛ける。

 

デュオ「アスナのことが心配なのはわかるが、少し落ち着いたらどうだ?」

 

アスナの名前を聞いた瞬間、今までほとんど無反応だったキリトが足を止めた。

チャンスと見た俺は、さらに言葉を続ける。

 

デュオ「今お前が焦っても、状況は何も変わらない。もっと冷静になれ」

 

俺がここまで言うと、キリトが動いた。

そして、振り返ったキリトと目が合う。

そこに浮かんでいたのは、深い悔恨と失望感、怒りの色だった。

すると、こちらに向かって歩いてきたキリトが俺の襟元を掴んだ。

 

キリト「お前に何がわかる!?」

 

そのまま力任せに俺を押して、後方の木に叩き付ける。

 

デュオ「何!?」

 

首元を掴まれたままの俺は、抵抗する代わりにキリトの顔を睨み付けた。

それに怯むことも無く、キリトは喚き続ける。

 

キリト「やっと再会できたアスナは記憶喪失で、もう2度と会えないかもしれないんだぞ!!」

 

デュオ「アスナはまだ生きてるし、教団が記憶を取り戻そうとしてるって言ってただろ!」

 

キリト「それでも記憶が戻る保証はないだろ!!」

 

デュオ「お前が戻ることを信じなくてどうする!」

 

キリト「この状況でどう信じろって言うんだ!!」

 

林に響き渡り木霊した声が一旦静寂し、その静寂をキリトが再び破る。

 

キリト「お前は大切な人を失ったことが無いから、そんなに落ち着いていられるんだ!!」

 

キリトが放ったその言葉は、俺の激情を爆発させるには十分だった。

何か抑えられないものが、体の中から湧き上がってくる。

次の瞬間、無意識に伸びた右手がキリトの頬を殴り飛ばし、ぐらりとよろめいたキリトの頭を左手で掴んで近くの木に叩き付けた。

 

キリト「が・・・はっ・・・!?」

 

叩き付けた反動で戻ってきたキリトの襟首を掴んで、そのまま後ろの木に押し付ける。

 

デュオ「いい加減にしろ!!」

 

俺はキリトの額に自分の額を当てると、あくまで静かに、それでいて威圧的な口調でキリトに言う。

 

デュオ「いいかキリト?今のまま進めば、確実にお前はゲームオーバーになる。それはお前が死ぬということだ!もしそんなことになったらアスナはどうなる?アスナが正気に戻った時にお前がいなかったら、彼女はお前を追って死ぬぞ!!」

 

俺の言葉にキリトは眼を見開くと、ふっと力が抜けた。

俺はキリトから手を放すと、へたり込むキリトに哀れみと後悔の念を乗せた視線を向ける。

 

デュオ「アスナはまだ生きてるんだ。お前が諦めてどうする」

 

キリト「ごめん・・・」

 

視線を落としたキリトは、先程の言い合いが嘘のように感じられるほど落ち着いた声で、申し訳無さそうに口を開いた。

 

キリト「ALOの時と同じだ。アスナのことになると、冷静になれない。何も成長してないな・・・」

 

自嘲気味な笑みを浮かべるキリト。

その姿は、どこか昔の自分を見ているように感じられる。

相棒のそんな姿を見た俺は、無意識の内に小声呟いていた。

 

デュオ「俺はもう二度と、自分の大切な人を失いたくないんだ」

 

思わず声に出してしまったことに気づいて焦るが、幸いキリトには聞かれていなかったようで、キリトは俯いたまま動かない。

俺は雑念を振り払い、未だ俯いたままの相棒に言った。

 

デュオ「ここで一度休んで、心の整理がついたら出発するとしよう」

 

俯いたままの相棒は、顔を上げることなく頷いた。


 
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