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真・恋姫†無双 ~孫呉千年の大計~ 第2章 21話

雪月さん

常連の皆様&お初の方もこんばんは いつもお世話になっております

この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております
※猶、一刀君はチート仕様の為、嫌いな方はご注意を! ※オリキャラ紹介は本文下記参照のこと

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2013-10-02 21:58:18 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5776   閲覧ユーザー数:4261

第2章 反董卓連合編 21話 『 反董卓連合終幕 其の5 未来への鍵 』

 

 

 

 

一刀達が建業へと帰還した数週間後、華琳が治めている陳留から突如ある情報が飛び込んできた

 

行方不明であった筈の次期皇帝と目されていた劉協を庇護し奉り、献帝として漢王朝第14代皇帝の座に就く事となったというもので

献帝の世話役には、劉協殿下を救ったと目されている司馬懿が就任したとの報も、孫呉は魯家の情報網を通じて同時に掴んでいたのだった

 

上記の情報に関して、孫呉の参謀達の間ではすでに規定事実と捉えられていた為、別段驚くような事実として捉えていなかったのである

そして献帝が無事であった事と、帝に就任された事に安堵する民衆、喜び湧きたつ諸侯達が次々と使者を送る中・・・

 

孫呉は外交担当である紅ですら、誰一人として一切陳留へと派遣せずに、ずっと不気味にも沈黙を守り続けていたのだった・・・

 

そうした中、次に華琳は新たな一手を打ち出した 自らの勢力を『 魏 』と名乗り、人々の心に『 曹魏 』と強く印象付けたのだった

そして同時に、焼けた宮中を洛陽に新たに造営するのではなく、”許昌”という新たな都を建設造営する事を宣言し

早くもすでに工事に着手していたのだった・・・

 

華琳が一刀達を洛陽から水軍を使って、ご親切にも建業まで送り届けた背景の一端が、この事情にあったとみるべきで

恐らく新たに都を造営していた様子を一刀達に知られ、帝を隠していたのでは?

・・・という痛い点を突かれたくなかったからと推測できたのである

 

華琳の華北を制する準備が着々と進む中

孫呉は未だに、誰一人として祝いの使者を派遣して来ない事に、少し苛立ちを隠せないでいた華琳である

 

司馬懿にその点をそれとなく問いかけるものの・・・心当たりがないとの一点張りで

稟、桂花、風といった軍師の面々も斥候を放つものの・・・

平時と変わらぬ様子で日々を送っているとの情報ばかりで、この時になっても何も掴めていなかったようである

 

 

そして華琳が都の造営を宣言してから一ヶ月が経ったある日、華琳の下へと孫呉の情報が飛び込んできたきたのである

その事実は華琳達、魏の重鎮達の度肝を抜き驚愕せしめた・・・

 

 

それはそう・・・孫呉が取った”行為”そのものが・・・ 漢帝国からの脱却、叛意を意味する事に他ならなかったからであった・・・

なぜ、華琳へ一切使者を送ってこなかったのか? その理由が明かされた瞬間であった

 

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その当日早朝、内容に関しては何も書かれておらず、巳の正刻(午前10時)に建業城に集るべし

と書かれた立て札が、建業の街のあちらこちらに一斉に立てられたのである

 

民衆達は何事かと思いつつも、また雪蓮が主催するお祭りか何かと思い込み、暇をみつけて広場へと駆けつけるのであった

辰の正刻(午前8時)の刻限には、早くも建業城の扉は開け放たれ

期待に胸が膨らむ民衆が押しかけた広場が一杯となるのに、それほど時間はかからなかった

 

建業城にある広場には、このイベントの為に招かれていたのであろう、魯家を始めとした孫呉の後援者の人々

並びに民衆や警備を含めた軍事関係者等、錚々たる顔ぶれがこのイベントに参加していたのであった

 

「皆の衆 忙しい処ご足労戴き、誠に感謝致します 先ず始めに我らが王、孫策様よりお言葉がございます」

広場中央に設けられた壇上に、巳の正刻の刻限になった冥琳はいつもと変わりなく、ざわつく民衆を制すると皆へ向けて声を張り上げた

 

冥琳に促された雪蓮は、冥琳と入れ替わりに壇上に立つと・・・静かに広場に集った者達へ向け言葉を紡ぎ出した

 

「世は大いに乱れ、漸く新たな帝が奉られたという しかし、その甲斐なく未だ争いの種は尽きそうにない!

 この争いの根本原因は一体・・・何処にあると皆はお考えであられるか?

 

 それは漢王朝の衰退が争いの火種となっている!と言っても過言ではないだろう!

 

 ・・・ならば我らが取るべき道は唯一つ! 

 

 今この時より我々は『 漢王朝からの独立 』をここに宣言し、国号を『 呉 』とする!」

 

 

関係者及び民衆も最初は雪蓮の演説に不安になった 漢王朝の批判まで飛び出したからだ

しかし最後の宣言に皆度肝を抜かれ、呆気に取られるが・・・

一人の叫び声が静けさに佇む辺りに木霊するや、一斉に辺り一面、歓喜の声が広場に渦巻いた

 

 

歓喜に沸く広場をしばらく見つめ、頃合を見計らった雪蓮は静かに手の平をを上げ歓喜の声を制した

 

 

「私は正式に『 呉の王 』となった訳であるが、王は妹の孫権 仲謀へと引き継ぐ事もここに宣言する」

との雪蓮の言葉に1番驚いたのは、引き継ぐ事になった蓮華であった・・・

 

姉の暴言を思いなおさせようとするが、それを冥琳が首を横に振って制する 動いてはならないという冥琳の意であったからだ

仕方無しに蓮華は、頭の中がごちゃごちゃで整理できない状態で・・・

この後の雪蓮の言葉を聞く事で更に、しっちゃかめっちゃかになるのであった・・・   ※しっちゃかめっちゃか=めちゃくちゃの意味

 

蓮華の頭が整理できないのは当然と言えよう

広場に集った皆もまた、次々と推移する出来事に整理できずに、固唾を呑んで雪蓮の言葉に耳を傾けるしかなかったのだから・・・

 

そして尚も壇上にいる雪蓮は演説を続ける

 

「『 呉の王 』を退いた私は、これからは過去の王達と同列の尊号と一線を画した『 皇 』を用いようと思う」

 

これはどういう事なのだろうか? 平安時代にあったとされる院政や今でいう処の会長職に近いモノと捉えて戴ければよろしかろう

政事の中心を蓮華に譲り、軍権に関しては雪蓮が受け持つ二元体制を敷いたのであった

 

「 一刀! ほら こちらへ早く 私の隣に・・・」

 

雪蓮は自身の話を続けたかったのだが、今や集まった民衆の視線は一刀に集中しているものの・・・

何度呼んでも一刀が移動するのを躊躇しており、益々次の言葉に胸を膨らませる民衆からの視線を

知らず知らずの内に集めてしまうのであった・・・

 

「しかし・・・だな? まだ演説の途中だろう? さすがにそれはマズいだろう?」

と一刀は声を潜めて雪蓮に語りかけ・・・冥琳と紅さんに何度と視線を投げかけ助けを求めるものの・・・ 

 

冥琳や紅さんにすら知らされていない事らしく、冥琳は瞳を閉じて首をゆっくり横に振り、紅さんは笑顔で手を振ってくる始末で・・・

要はこうなったら降参して素直になれと言われているようなものであった

 

「皆を待たせても悪いのだから早く・・・」

「うっ・・・ わかったよ」

と雪蓮に急かされ、仕方無しに壇上で演説する雪蓮の横へと移動する一刀であった

 

一刀が雪蓮の横に移動してきた事もあり、何が起こるのかと広場にいる皆は

雪蓮から飛び出す次の言葉に興味津々のようで、つい我慢しきれずにざわつき始めた

 

「姉様・・・兄様を呼び寄せてなにを・・・」

と蓮華は未だに自分が王となることに頭で整理しきれずにいたのだが・・・姉が兄様を呼び寄せた事に少し胸騒ぎがしていたのだった

 

準備を整え終えた雪蓮は、ざわつく民衆を制すると、静かに自身の考えを語り始めた

 

「これからの孫呉は、『天』の御遣いである北郷 一刀の”仁愛”と大陸の和平の実現を目指す『皇』である私という・・・

 

 二人が『 婚姻 』し両輪として治める『 天皇制 』という”新たな政治体制”を採用し

 執政は孫呉の王である孫権 仲謀を中心とし執ることとする!

 

 これ以後、北郷 一刀は我が夫として孫家の一族となり

 孫呉の皆の子々孫々に至る時代まで、孫呉に繁栄をもたらす礎となることであろう!」

 

「「オオオォォォォーーーーーーー」」

「「ハハッーーーーーーッ」」

「「やったぁぁぁーーーーーー」」

 

「「孫策様、北郷様 万歳ーーーーーーーーーーーーー」」

 

驚きの声と了解するような声とが辺りを埋め尽くすと

その後は広場にいた皆から、お祝いの言葉のライスシャワーが、広場一面に高く高く舞いあがり轟き渡るのであった

 

孫呉の王? 天皇制? ・・・冥琳や紅まで唖然としている様を、あの驚きよう慌てぶりを見る限り・・・

この事を知っていたのは今笑っている母様だけかしら?

それにしても・・・兄様と姉様が婚姻? 何の冗談? アハハ

 

フフフ・・・何を馬鹿な事を言っているのかしら・・・ それともこれは夢なのかしら? そう・・・きっと夢なんだわ

と現実逃避しそうになる蓮華を、思春がしっかりしてくださいませ!蓮華様!と肩を掴み激しく揺らしてくる

 

・・・いえ 違うわね これが兄様の身体の異変の詳細を知ったあの時の姉様の覚悟だったんだわ・・・ 

 

「後は私・・・そうねぇ~♪ 私達のがんばり次第よねぇ? 貴方もそう思うでしょ蓮華?」          ※第2章 14話参照

 

あの時すでに今日この日の事を?

姉様に・・・してやられた・・・ 私はてっきりいつもの兄様の気の引き合いの延長かと思い

付っきりで看病していたのに・・・ もしかしてそこに私の油断があったというの?

 

あの言葉にそんな意味が隠されていたなんて・・・ 本当に悔しい・・・ 

 

壇上で全ての演説を終えた雪蓮は、一刀が聞いていないと抗議する言葉を一蹴し、一直線に蓮華へと向かって帰ってくる

肩を揺らしていた思春を制し、姉と正面から対峙する蓮華

 

「蓮華 全て聞いたわよね?」

姉の勝ち誇ったような視線が、蓮華の心を深々と抉る

 

「はい 姉様・・・」

敗北感で一杯の蓮華は、そう姉に答えることしか出来なかったのだ

 

「どう? 私の”覚悟”を聞いた感想は?」

「悔しい・・・の一言です」

雪蓮は妹の答えを聞いて、静かに瞳を閉じて頷くのであった

 

「そう・・・ 冷静に聞けたのは少し成長した証・・・かしらねぇ? 

 でも私は切欠を作ったに過ぎない 気になる将の皆は、明日夜 玉座へと集って! 詳しい話はそこでするわ」

 

蓮華だけでなく、雪蓮や蓮華の遣り取りを静かに見守っていた冥琳、紅等の皆に向けての言葉を発し終えた雪蓮は

静かにその場を立ち去っていった

 

雪蓮の言葉の意味を噛み締める蓮華を始めとした女性達であったが

この時雪蓮が残した言葉の意味を推測することは可能であったが

所詮、推測の域を出ないことを覚り、皆それぞれに胸の内に想いを抱え、無言で会場を後にするのであった・・・

 

その日は招待された者達が集い、建業城の玉座の間を使って終日宴が催されたのであった

 

 

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当日宴の夜、建業城にてーーーーーーーーーーーーーー

 

気分転換も兼ねて、強引に事を運んだ張本人を探して

玉座の間を歩きまわる一刀であったが、そこへ冥琳がゆっくりと近づいてきた

 

「北郷 今日の事に関しても、雪蓮はお前を思って最後まで悩んでいたんだろう

 雪蓮をここまで変えたのはお前の存在があってこそだ

 

 お前や雪蓮はそのままでいいんだ この世の中、奇麗事だけでは動かせない事もある

 そして牽制し停滞した世界は死んだも同然と言える 誰かが牽制し停滞した世界を動かす必要があるんだ

 それはお前の意図した事に反しよう だから私を恨んでくれていい・・・

 孫呉に都合の悪い全ての悪は、私が墓場までもっていこう その覚悟もあるからな」

 

一刀の答えを聞く事もなく、冥琳は静かに一刀の横をすり抜け、宴に沸く人ごみの中へと消えていった

 

「冥琳・・・」

 

冥琳が先程発した覚悟ある言葉の内容を、どれだけ正確に解している者がいるだろうか?

策を提案し実行することの重み、人の想いを背負う事の難しさを改めて一刀に投げかけた出来事であったといえる

 

折角纏めた平和への道筋である天下三分の計を、冥琳に根底から覆すような真似をされ、怒りに一時は支配された一刀であったが

自身が提唱した考えに”穴”があり、そこを突かれる前に塞いだのが冥琳だと思いなおした一刀は

雪蓮を探すのを再開し、テラスに出ている雪蓮を発見し歩みを進めていく一刀であった

 

「・・・そう、そんな事を言っていたのね 冥琳らしい ホント馬鹿な・・・ 冥琳なんだから・・・

 一刀が近づいて来たのは、てっきり勝手に決めた結婚の事に関する愚痴なのかと思っちゃった」

 

一刀の話す内容に少し拍子抜けしたのだろうか 本音ともいえる言葉が見え隠れしていた

 

「それもあるにはあるが・・・冥琳の言葉がひっかかったのでね

 俺に一言の断りも無く結婚を決めた理由は、何か別の処・・・

 例えば最近、雪蓮と蓮華の様子がおかしかったのに起因してやしないか?」

 

「あら そこまでお見通しなのね さすが私の旦那様だわ」

と苦笑を交え、一刀に降参の言葉を発する雪蓮

 

「で? 俺に事前の相談なくここまで強引に決めた背景って・・・ もしかして俺の腕が・・・原因か?」

「!!!」

 

一刀の指摘に瞳を大きく見開き、雪蓮には珍しく身体がビクンと揺らすほどの動揺をみせたのだった

 

「そうか・・・ で? おれの身体は何時まで持ちそうなんだ?」

 

一刀のさらなる問い掛けで、胸の中に仕舞い込んで隠し通しておこうとしていた事実が

不安をかき消したいが為、後から後から雪蓮の口からどんどん湧いて出てくるのであった・・・

 

「・・・・・・このままだとそんなに時間がかからない内に、身体の機能がどんどん失われるそうよ・・・」

一刀の問いかけに関して、雪蓮は動揺を必死に胸の内に秘めながら、懸命に気丈に振舞いつつ答え終わる

たった数文字発しただけにも関らず、雪蓮の喉は一瞬で砂漠と化し、水を求めて意識が朦朧としフラフラと彷徨う旅人と化してしまう

 

「・・・わかった ありがとう」

そう一言発した一刀は雪蓮を静かに自身へと抱き寄せ

雪蓮の頭に手を載せてぽんぽんと軽く叩き、その後桃色の雪蓮の髪を優しく撫で続けるのだった

 

「ねぇ 一刀 残酷な頼みって事は承知しているつもり・・・ 私の全てを一刀の好きにしていいわ

 ・・・だからお願い 未来に帰る道を断ち切って!」

 

撫でられた事もあってか落ち着いたのであろう

雪蓮は意を決し一刀と瞳を合わせ、雪蓮の願いを思い切って口にした

 

「もはや帰れないと心の奥底で覚悟はしていた だが今、その覚悟を完全に断ち切る必要がある・・・とそういうことなのか?」

雪蓮の叫んだ願いに、自身があやふやにし心の奥底に仕舞い込んでいた想いを、今一度行動を振り返る一刀

 

「ええ! そうよ 貂蝉がいうには・・・私達と繋がりが出来れば身体は元に戻るんですって」

 

「繋がり?だって? そんなのあるじゃないか! 俺は雪蓮を愛してるし信用している 信頼だってしているぞ?」

 

雪蓮の言葉に即座に反論する一刀であったものの・・・ この時ばかりは的が大きくズレていたようである

 

「そうじゃなくて・・・ 一刀はこの手の事はホンッット鈍いんだから・・・

 一刀はこの世界で生まれた人じゃないでしょ?

 だ・か・ら私達との間に赤子を授かれば、確固とした繋がりが一刀にも出来て、世界から弾かれることがないんですって」

 

反論する一刀の頬へそっと両手を触れさせ落ち着かせた雪蓮は、水が大地へと染み込むが如く・・・

ゆっくりと丁寧に一刀が理解できるよう説明する

 

「イッイィィィーーーーー アハハ なるほど・・・そういうことか! 

 直接言ってくれて助かったよ ・・・鈍感な俺でも漸く理解できたよ

 なるほどなぁ~~~ これまでいろんな事を有耶無耶にして生きてきたからなんだろうな

 

 この世界から消えるのを選ぶのか、骨を埋める覚悟をもつのか選択の時だってこと・・・なんだろうな・・・」

 

そうしみじみとした声で遠くをみつめる一刀に耐え切れず

すぐにでも抱きしめたかった雪蓮であったものの・・・必死で自身の思いを打ち消し我慢する

 

「ええ・・・ 一刀に反対されると思って、冥琳にも相談せずに勝手に進めちゃった・・・」

漸く強引に結婚へと至った経緯を自身の口で語った雪蓮である

 

「通りであの場にいた皆驚いていた訳だ アハハ」

 

「一刀急かすような真似をしてごめんなさい ・・・答えを聞いてもいい?」

 

「馬鹿だなぁ こんな美人で思いやりのある奥さん(・ ・ ・)が出来たんだ 文句などこれっぽっちもないよ

 ただ未来にいる母さんや爺ちゃん、和葉達に雪蓮や子供を会わせる事が出来ないのが、本当に申し訳ないがね

 

 それと身体の事・・・ 心配かけてすまなかった・・・雪蓮

 死が二人を別つその時まで・・・ 苦労かけ続けるかもしれないがよろしく頼むよ」

 

雪蓮は大粒の涙を瞳から溢れさせ頬を伝って、光り輝く雫となり夜空を舞って静かに大地へと染み込んでいく

嬉しさ故の・・・一刀を失う事へ不安が払拭され安堵した故の・・・涙であったのか

それは雪蓮自身にも計りしれない想いが、雫となって夜空を舞ったのであろう

 

 

この時の二人を纏う静けさは生涯忘れることなく、実に心地の良いものだったに違いなかろう

 

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宴の次の日となる夜、建業城・玉座にてーーーーーーーーーーーーーー

 

「あの会場にいた者を含めた皆が 今ここにいるわね」

雪蓮が言うように、今この玉座には

 

緋蓮、蓮華、小蓮、冥琳、紅、王林、祭、楓、思春、穏、明命、亞莎、桜、瑠璃、珊瑚、子虎、藍里、琥珀は言うに及ばず

一刀、雪蓮付きの侍女となった月、詠、そして霞といった新顔の姿もあった

 

一刀を除く主な将が勢揃い、孫呉の領土が東は呉や会稽、西は柴桑までと広がった現在、こうして集まる機会等ほとんどあるまい

こうして主な将達が集まった理由

それは言わずと知れた、一刀と雪蓮の結婚に関する事項に、触れる事を確信し予期していたからに他ならない

 

その最初の口火を切ったのは比較的冷静なのだろう 

追求役にもってこいの理論派論客の人物といえた張昭こと”王林”その人であった

 

「雪蓮様 そろそろ坊やと結婚に至った経緯を、妾達にも詳細に教えて欲しいさね」

 

王林の言葉に静かに頷くと、雪蓮は虎牢関での一刀の身体の異変から始まり、貂蝉達と語った日の事まで詳細に順を追って説明しだす

 

雪蓮が説明しだすと皆から口々に、そんな事があったと漏れ聞こえ、それぞれが思い返しているようであった

連合軍に参加していない冥琳達別働隊の者達もまた、そんな事が一刀の身の上に起こっていた事に驚愕の色を隠せないでいた

 

そして事は漸く本題へと辿りつくのであった

 

”天の御遣いと称している通り、一刀はこの世界で生まれた人じゃない

 私達との間に赤子を授かれば、確固とした繋がりが一刀にも出来て、世界から弾かれることがない”という事を切々と語った雪蓮

 

そして最後に雪蓮は皆に向けて、こう静かに言葉を紡ぎ始めた

 

「惚気るつもりはないんだけど、私は一刀を独り占めするつもりはないし

 この大陸中何処を探しても、一刀ほどの男は現れないと断言するわ

 

 でも孫呉に住まう者であり、一刀と2人の間で愛すると誓い合った仲ならば

 私に遠慮することなく、貴方達も一刀と結婚し子を成したらいいじゃない?

 

 私達との間に多くの赤子を授かれば、多くの確固とした繋がりが出来て、世界から弾かれる心配もなくなるんだから 

 そして私は誰が相手であろうとも、一刀に一番に愛されているなら、例え多妻であっても構わないと思っているわ

 

 私と一刀との婚姻はその切欠に過ぎないんだから・・・ 話はこれでおしまい

 あとは貴方達と一刀との仲次第ということね」

 

そう言い終えた雪蓮は自身の仕事は終わったとばかりに、欠伸を噛み殺しながら玉座の間から出て行き

一刀が一足先に寝ているであろう寝室へと戻っていく雪蓮

 

一方、ここに居並ぶ女性達は雪蓮の言った言葉に唖然とし、信じられないといった面持ちの表情が辺りを包み込んでいたのだった・・・

 

 

「あら~ そうなると母さんと恋人ね・・・ただならぬ関係 それも有り!有りだわ!」

「母様・・・自重なさってください そっそれにしても兄様と・・・あぁ~~~~~」

「ちょっちょっと! お母さんもお姉ちゃんも! シャオが一刀の超ぉー正妻なんだからぁ!」

 

それぞれの世界を構築する似た者同士、さすが母娘といえた

 

「ここまで開き直られてはな・・・」

「ふかぁ~~~~く追求するつもりでしたけれど・・・」

「紅 妾の妹ながらお前が時々恐ろしく感じる時があるさね・・・」

「はっはっはーーー 策殿がこういっとるんじゃ 何の問題もなかろう?」

「あはは あたしが結婚かぁ すっかり諦めてたけどねぇ」 

 

冥琳と紅、王林は溜息をつき呆れ果て、祭と楓は豪快に笑い飛ばしている

 

「だっ誰が! ほっ北郷などと! けっっ結婚だと! じょ冗談ではない!」

「一刀様とけっ結婚です! ・・・はぅわ!」

「かっ一刀様と・・・かぁぁぁぁーーーー」

「はぁ~ん 一刀様のお嫁に行くためとあらば! 朱里を上手く騙して家を継がせるしか・・・」

 

思春は動揺し、明命、亞莎は仲良く照れ隠し、藍里はすでにお家騒動にまで発展している様子

 

「たっ たいちょうとあたいが・・・」

「かずとしゃま・・・が瑠璃の夫?」

「隊長とボクがねぇ? それは実に楽しそうだね~」

 

珊瑚、瑠璃、子虎とそれぞれの反応であるが、いつもの三羽烏と違い精彩が欠け纏まりはないようである

 

「母上様 さっ桜は無事務めを果たし家へと大手を振って門をくぐる事が出来そうです」

「うふふふ これで陸家も安泰ですねぇ~ 子供の名前どぉ~しましょう」

「発明は必要の母とも言うし・・・ 母になるとはどんな気持ちなのだろう?」

 

桜、穏、琥珀、それぞれの想いが口からだだ漏れし暴走中でありますが・・・

 

「いや~ うちでええんやろか? どないしよぉ~ 恥かしいわぁ~」

「へぅ~~~~~~~~~~~」

「月ぇーーーー 気絶しないで! きっとこんなの悪い冗談よ! しっかりしてぇーーーー」

 

霞は大いに照れ、月の妄想は暴走を始めすでに結婚生活へと突入している模様で

詠はそれ所ではなく、必死に月を正気に戻そうと叫び続けている

 

雪蓮が立ち去った玉座で展開された桃色吐息の模様をお送りいたしました

 

 

 

 

建業城の広場で繰り広げられた雪蓮の演説の内容は

広場に潜んでいた斥候の手により、各地の諸侯へ次々と情報がもたらされていた

 

陳留にてーーーーーーーーーーーーーー

 

「天皇制ですって? フフフ アハハハハーーーーーー」

「やるわね 孫策 それとも呉の頭脳の周瑜? 一刀? どちらかの入れ知恵なのかしらねぇ?」

 

「わかりかねます・・・ これにはどういった意図が? 

 実質『孫呉』と『王』と世間から呼ばれ、その中心に居たのは孫策、北郷、周瑜であったのでは?」

 

華琳は秋蘭へ向ける笑みを崩さず、椅子に背を預け答える

 

「フフフ 秋蘭 確かに貴方のいう通りだわ

 そうね 解りやすく例えるなら、良く語られる対比は『覇道』を目指す覇王と『王道』を仁愛の王

 

 仮によ? 『覇道』を目指す王が私として、『王道』を目指す仁愛の王は桃香を当てはめるとすると・・・

 本来の孫策は私と同じでしょう? 今まで取っていた行動を察するに、おそらく大陸の覇道を目指していた筈よ」

 

華琳の言葉を聞いても一向に理解不能の秋蘭であったが・・・

 

「ふふ その目をみている限り 稟はもう判っているようね 秋蘭 宣言した孫策は一体どちらの道と言えるのかしらねぇ?」

と秋蘭へ向けて、椅子にある肘掛に肘をかけ、親指と人差し指で顎を軽く摘まんで聞いてくる華琳

 

「・・・!!! それでは華琳様・・・」

 

「判ったようね 秋蘭 聡い貴方は好きよ

 そう、孫策は私でもなく、ましてや桃香とも違う”王の道”だと今回大陸全土へ宣言したのよ

 

 天の御遣いである一刀と共に歩んでいく道であると・・・ね  一刀の仁愛、孫策の覇道が治める国造り

 世間からの自称、”孫呉の王””天の御遣い”を返上する戦いをすると、この度大々的に喧伝したと言えるわ

 

 私達に使者を一切送ってこなかった理由、大陸に”天は2つ”はいらないという意思表示でしょう

 同盟を秘密裏に結んだ今となっては、すぐに私達が直接手を下し、孫呉を排除するという大義は失ったと言えるわ

 

 もし私達が盟を破れば、劉備と諸葛亮という第三者が証人となり、盟を破った事を非難する孫呉が大義を得る格好となるわ

 仮にこの度孫呉を攻めなければ、帝を擁している私達の力を他勢力が軽んじる恐れが出てくる

 

 どちらに転んだとて、私達『 曹魏 』が痛いのは変わらないのよ ホント油断のならない勢力だこと・・・

 

 だから精々、劉表か袁術をけしかけるしか仕返しの方法はないんでしょうけど・・・

 あの二つの勢力とは元々、孫呉の排除対象に入ってるのだから大して意味もないし

 同盟して共闘という嫌がらせが出来ない事もないんだけれど、弱っている勢力同士が結んだとて、今の孫呉に勝てる道理はなし

 

 時間稼ぎも怪しいところね 手を出し余計な事をして、後で孫呉からその点を突かれる方が嫌だし

 私達はこの度の孫呉の宣言に対し、ただ見守るしかないって訳だけど・・・

 

 漢王朝の帝を天とする曹魏、天の御遣いを天とする孫呉 天は一体どちらを選ぶのかしらねぇ? フフフ・・・」

 

楽しげに稟と秋蘭へ視線を交互に移す華琳であったが

 

「稟 二人を別つ事出来そう?」

 

間髪入れずに、稟へ問いかける華琳に対して・・・

 

「考えるまでもなく”否”でしょう 北郷が不動では全ての離間策が水泡に帰す事になるでしょう

 逆に言えば、仮に北郷を抜くことが出来たなら、孫呉が自壊することは間違いないでしょう」

 

華琳の質問に関して、稟は眼鏡をそっと直しながら即答する

 

「婚姻までして一族に天の血を取り込み、畏敬の念、強い意思と絆を育む・・・ちょっと羨ましくて嫉妬しちゃいそうよ フフフ」

笑っているのか?怒っているのか?解らない一種異様な笑みを浮かべている華琳に対して

 

「では華琳様 宣言の真の理由は、世間へ向けて北郷の立ち位置を明確化した・・・ということでしょうか?」

秋蘭は臆する様子もなく華琳に対し確認をする

 

「ええ でしょうね 孫呉内外に・・・そして漢王朝にもう未練はないという・・・大陸中への意思表示ね」

諸侯に対し一歩先んじたそう思った矢先に、孫呉に対してだけは空振り、まんまとしてやられた感が強く残った・・・

 

「秋蘭や稟だから言うけれど、一時期、私も孫策と同じような事を考えていたわ」

「華琳様・・・」

 

主である華琳が、北郷にあれだけ固執するには、何か訳があると皆が思っていた

その理由の一端が、この後の華琳の言葉で明らかにされたともいえる

 

「私は一刀を手に入れたなら、『象徴』として使おうとしていたわ

 あくまでも民衆を御する心の拠り所としてだけどね・・・ 帝を得た今となっては必要なくなったとも言えるけれど

 

 ただあの人をひき付ける魅力は、こちらの手中にある献帝にはなく、劉備の仁愛と同じくらい ・・・いえ 明らかに凌ぐと見ているわ

 こちらの斥候が民から情報をほとんど得られなかった事をみてもね」

 

「それでですか・・・少し納得いたしました」

 

「フフフ 益々面白くなってきたわ 覇王・・・天皇・・・仁愛・・・さて誰が一体 この大陸を制するのでしょうね」

 

「『覇王』華琳様が、この大陸を制する時まで、何処までもお供いたします」

「大陸の王へと押し上げてみせます この智謀の全てを賭けて」

 

「フフフ 期待しているわ秋蘭 稟 いくわよ! 私達も止まっている訳にはいかない 当初の予定通り華北を制するわ!」

 

「ハッ!」

「ハハッ!」

 

華北を制すれば・・・次の標的は貴方達よ! それまで待ってなさい

華琳の瞳に強い輝かしい意志の炎が灯り、強敵との激闘を心待ちにする華琳であった

 

 

 

漢中にてーーーーーーーーーーーーーー

 

「桃香さま 私に何か御用?とか」

 

「愛紗ちゃん・・・すっごく言い辛いことが綴られているんだけど・・・」

 

「言い辛いこと?とは一体・・・」

 

「それは・・・一刀さん 孫策さんと結婚・・・したみたい」

 

「えぇっ!? そっそれは誠でございますか!」

 

「あっ愛紗ちゃん ぐっぐるぢい・・・」

 

「あぁっ すっすみません 桃香さま・・・」

 

桃香が持つ書簡に眼を通そうと思っていた筈が、なんの弾みであろうか 気づけば姉である桃香の首を締め上げていたのだから

愛紗の動揺の度合いが、余程大きかった事が知れるエピソードといえるだろう

 

意識を失いかける前になんとか脱せた桃香は、手に持った書簡を愛紗へ手渡し、愛紗が眼を凝らし書簡を見つめている間に

疑問に思った事を側に控える朱里と雛里へと話を振った

 

「朱里ちゃん 雛里ちゃんこれってどういう事かな? 今、漢王朝から独立する意味って何だろ?」

 

「漢王朝から独立し弓引く行為に及ぶという事は、董卓連合の二の舞になりかねない愚かな行為と言えます

 ですが、漢王朝の有力諸侯である曹操様、袁紹様は、孫呉と一切直接領地を接してはおりません

 

 献帝様から逆賊討伐の宣旨が仮に出たとしても、戦費、兵の損失もかさみ、先に恩賞が出なかった諸侯が派兵をするでしょうか?

 一枚岩となれない連合軍に対して、孫呉軍は自身の力を汜水関と虎牢関で存分に誇示しております 

 

 また、曹操様は軍事同盟を孫呉と私達の間で既に結んでおります

 この状況下において宣旨が出され、討伐という流れはないとみるべきでしゅ」

 

桃香の問いかけに饒舌に語った雛里が、いつもの如く噛んでしまったのをみた朱里は、すばやく合いの手を差し伸べる

 

「曹操さんが宣旨を賜る時機として有力なのは、華北を制し同盟の目的が成就した時でしょう

 

 しかし同盟が成就した時には、すでに大陸に存在している諸侯の数が、連合を組むに値する数を誇っているとは思えません

 ですが仮に残った勢力が、我が軍、曹操軍、馬騰軍、孫策軍だとしたならば、桃香さまいかがでしょうか?

 

雛里と朱里が桃香の疑問に自身の推測を織り交ぜながら答えていく

 

「あっ!! 」

 

朱里の最後の問いかけに、漸く輪郭が見えてきたのか

桃香は声をあげて驚くが、朱里は桃香の答えを聞く事もなく、続けて言葉を発してゆく

 

「我が軍は漢王朝の復興、再建を目指しております、そして馬騰さんは漢王朝の臣に拘られておられます

 孫策さんは唯一、この中では漢王朝の支配から脱却しているのです

 

 曹操軍、馬騰軍、劉備軍、この3軍にて献帝さまからの宣旨を賜り、孫呉を討つ

 これが曹操様が描く、今取りうる最良の手段でしょう ですがこの手段を取りうるかどうかは、全て・・・曹操さんの意思次第なのです

 

 そして大陸の平和を乱すのは曹操軍であるという大義名分を、孫呉側に同時に与えてしまう諸刃の剣となりえるのです」

 

「諸刃の剣ってどういう事? 孫策さんは独立しちゃってる訳だし、乱しているのは孫策さんの方じゃ?」

 

「桃香さま それは漢王朝側から見た主張にすぎません

 漢王朝の権力を得た曹操軍、片や呉に住まう民衆の支持を得て腐敗する漢王朝からの独立を果たした孫策軍

 

 ・・・そうなった時、桃香さまはどちらに付かれるおつもりですか?

 

 『 仁愛 』という大義を抱える桃香さまにとって、どちらについて戦ったとしても、後味の悪い物になるは必定です」

 

「そっそして・・・それは孫呉と結びつきの強い馬騰軍にとっても・・・簡単にどちらにつくと即断する事が出来ない事なのです

 この度の同盟は・・・いずれ私達にとっても楔となって、黒い影を落とすこととなるやもしれません・・・」

 

朱里の言葉を受けて、雛里は悲しげな表情を桃香に向けながら、最後にはその胸中を思い視線を落としてしまう

 

「やはり上手いお話には裏がありました・・・」

溜息をつく朱里の顔にもほろ苦い表情が窺えた

 

「じゃ 一刀さんはそれを”全部”知っていて、私達に同盟を勧めたのかな?」

朱里と雛里の話を聞き、桃香は愕然としながらも、気丈に振舞ってはいるが・・・ 声にいつもの明朗闊達さがなかった・・・

 

「恐らく御遣い様とは”別”でしょう これは会議で終始黙っておられた孫策さん、その背後にいた周瑜さんの策謀とみるべきです

 私の構想では、3国が互いを牽制しあうという状況を作り、私達の勢力の力を拡大させる時を稼ぎたかった

 

 御遣い様は桃香さまと同じ・・・大陸を平和にという想いが、先に出ていらっしゃったのでしょう

 けれど・・・膠着状態に陥った時の為に、周瑜さんが御遣い様の構想に予め楔を打っておいたのだと思われます

 

 ・・・そして楔を打った事実は、御遣い様だけには伏せられ、孫策さんにだけ事実が告げられていた

 三国による同盟が締結できなければ、事実は闇へと葬られ、そのまま伏せておけば良い訳ですから・・・

 

 同盟が成り、膠着状態へ陥った閉塞時の打開への最後の切り札として

 華北を制し憂いが無くなった時、曹操さんが”漢王朝からの討伐の宣旨”という正当な手段を使って

 何時でも孫呉へ攻めてきてもいいという口実を与えたのです

 

 孫呉自らが手を下さずとも、戦争へと突入し均衡を打開できる”切欠”を周瑜さんは敢えて作っておいたんです きっと・・・

 覇道を目指す曹操さんが、華北を制した後にその手段を使わない筈がありません・・・

 

 曹操さんがこの度同盟を結んだ背景は、同盟することに多大な利があり、単に都合が良かったからという理由に他なりません・・・

 途中の過程において、3国になろうとも4国であろうとも・・・ 大して変わりないと思っていらっしゃる筈ですから・・・

 

 最終的(・ ・ ・)に曹魏が大陸を制していればそれで良いと・・・

 

 ですから、曹操さんが華北を制したその時、私達が巴蜀の地を制する制しないに関らず

 曹操さんが朝廷からの宣旨により起こした戦いに、私達は巻き込まれてしまう事は必定で・・・

 

 三国同盟の破棄により、大陸はより混沌とした世界となり、桃香さまが平和を維持しようとすれば曹操さん達と反目

 曹操さん側についたなら孫策様、御遣い様達と反目と、どちらを選んでも板ばさみとなってしまう状況となるんです」

 

「そっそんな・・・」

桃香の悲痛な声が漢中の玉座に虚しく響き渡った・・・ 

 

皆が絶句し重苦しい空気が纏っている所に

「しかし朱里よ それはちょっと飛躍しすぎておかしくはないか? この度、曹操軍が献帝様をお救い出来たのは”たまたま”であろう?」

と星が疑問に感じた事を朱里と雛里に問いただす

 

「星さん おそらく孫呉側は、曹操さん側が献帝様をお救いしたという事実に関し秘匿し続けていた事を

 どこからかその情報を入手し、折込済で行動に移していたと考えるのが自然です

 

 周瑜さんはこの事実をいち早く掴んでいた事で、御遣い様がご提案された天下三分の計を了承されたのではないでしょうか?

 

 時期的にみても、献帝様が即位なされてから、一切使者を送らなかったという孫呉側の噂も聞いていますし・・・

 帝が即位なされてから、そんなに日も経っていない内に、孫呉が漢王朝から独立したというこの度の事実といい

 全ての辻褄が合い、理由として十分頷けます」

 

「なっ なんだとっ! いくら何でもそんな神のような所業できる筈なかろう!」

と先程まで書簡を食い入るように見つめていた愛紗が、朱里の言に真っ向から否定の意を展開するものの・・・

 

「ですが 愛紗さん 私たちが漢中を落とす算段まで先を見通し、用意周到に準備していた孫呉側が

 この事実だけを見落としている筈はないんです!!」

 

朱里には珍しく、強い口調で愛紗を諭し反論する

 

「では何か? 朱里 

 反董卓連合そのものが孫呉と曹魏によって仕組まれ、少帝と十常侍、董卓達を皆殺しにしたとも考えられないか?」

 

「愛紗さん さすがに・・・そこまでは飛躍のしすぎだとは思いますが・・・

 何よりその根拠が示す証拠がありません、董卓さんと賈駆さん達はすでに亡くなられております

 

 孫呉が曹魏と共闘して先の帝様達を廃した処で何も得することがありませんし、張遼さんを味方に引き入れてる経緯もあります

 義を尊ぶ張遼さんがそんなマネをして孫呉に降るでしょうか?

 またそんな行為に及んでいる事実を知ったならば、御遣い様と呉の民衆がその行為を許さないでしょう」

 

「それはそうか・・・すっすまん」

自身の思考が飛躍しすぎていたことに気づき自省する愛紗

 

「だが朱里よ 今の所、曹魏、孫呉の2国に対し、我らがその後塵を拝していることに変わりあるまい?」

 

「星さんのおっしゃられる通りです ですからすぐにでも対応を協議して行動に移さないと・・・手遅れになるかもしれないんです」

 

「そうだな いつまでも他人の手を借りるのは性に合わん」

「愛紗 ううっーーーーーー でも飲みたいのだぁーーーーーー」

「うるさいぞ! 鈴々」

 

鈴々のわがままをたしなめる愛紗であったが、本音は漢中を落とし皆祝いたいのだ 

だが未だに上庸に呂布、巴蜀に劉璋と問題は山積で、孫呉、曹魏両国に大きく地力を離されている以上

暢気に休んでなどいられないのだった

 

漢中を制し息つく暇もなく、劉備軍は巴蜀を制する新たな戦いへと突入するのであった・・・

 

 

 

北平にてーーーーーーーーーーーーーー

 

「華雄 烏桓が冒頓、丘力居の軍を二手に分けて、ちょろちょろとこちらに仕掛けて来ている」

反董卓連合が終ったものの・・・厄介な火種に白蓮は頭を抱え悩まされていたのだが

 

「フッ 任せろ! 二軍とも蹴散らせば・・・よいのだろう? 

 こいつらは私に任せ、お前はここに居て踏ん反り返っていたらいい ”金髪ドリル”は任せたぞ」

 

「あっ・・・・ああ 雪が降る前に決着をつけて来い 頼んだぞ!」

「ああ 寒いのは苦手だからな 任せろ 越! 用意はいいか? いくぞ ついて来い! それでは友よ 行って来る」

 

「華雄様! まだ準備は整っておりませんぞぉ~~~~~」

「遅い! さっさと準備せんか!」

「そっそんな無茶苦茶なぁーーーーーーー」

 

友の華雄と弟の公孫越の叫びが木霊する だが去り行く友の背を苦笑し見送る白蓮

 

友の頼もしさにジワジワと嬉しさが滲み出て来る

これなら・・・なんとかなりそうかな?・・・星とはまた違った頼もしさを友、華雄から感じる白蓮であった

 

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長安にてーーーーーーーーーーーーーー

 

「母さま!」

「叔母様!」

 

「なんですか! 翠、たんぽぽ騒々しい・・・」

 

「母さまが暢気すぎんだろ? 孫呉が独立したそうだぞ?」

眉を顰め首を傾げながら、呆れ顔で答える翠

 

「そう・・・やっぱりね 漢王朝の臣の枠を外せない私と、大陸の大空を自由に羽撃こうとする一刀君達

 どちらが・・・これからの大陸に必要なのかしらねぇ」

と仕事を進めていた手を休め、一息入れながら窓の外へと視線を移す翡翠

 

「母さま・・・」

「叔母様・・・」

翠と蒲公英は、翡翠の呟きに答えることは出来なかった

 

「大陸の動きもそして羌族という異民族との融和 私にはこれが限界だわ

 至急涼州にいる龐徳と韓遂に、羌族の動きに十分注意するようにと連絡をとっておいて」

と即座に対応を指示する翡翠

 

「叔母様 承知しました」

蒲公英はそう翡翠に答えるや、急いで部屋を駆け出て行った

 

「母さま 涼州へは?」

蒲公英の去った方向を見つめつつ、翠は母である翡翠に問いかける

 

「当分帰れないでしょうね・・・ 大陸の様相は西涼にいるより、より混沌とするでしょうから・・・

 私達はこのまま大陸の行く末を、ここ長安にて油断なく見守っていくつもりです 翠貴方もそのつもりで」

椅子の背にもたれため息をつきつつ、翠の問いかけに答える

 

「あっ・・・そういや 母さま・・・北郷と孫策が結婚したらしいとも・・・」

翠は重要ではないと思い、後回しにしていた情報を思い出したかのように、翡翠へと告げたのだが次の瞬間・・・

 

 ごちん!!!

「あだだだっっ!」

 

勢い良く飛び込んできた翡翠の拳骨での一撃が炸裂し、凄く鈍い音を立てて翠が倒れた

翠の頭からシューという湯気が、激しく吹き出しているかのような様子が、部屋内で展開されていたのだった・・・

 

「貴方はどうしてそんな大事な事をすぐ言わないのですか!!」

むむむ・・・やはり先を越されてしまいましたか けれどまだまだ機会はある筈 いえ作ってみせるわよ

 

倒れ気絶している翠を横目に、強く拳を握り締める翡翠の執念は、今後実るのか否か・・・

全ては翡翠の足元に倒れている娘の翠とたんぽぽが握っている・・・のかもしれない

 

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鄴にてーーーーーーーーーーーーーー                            

 

「猪々子さん 斗詩さん 収穫を終えた秋を目指して兵を募兵、調練をしておきなさい」

麗羽がこうして軍事に関して口を挟み指示をするのは珍しい

大概、猪々子に投げ、さらに斗詩に丸投げされるのが通例だからである

 

「でも麗羽さま どこに攻め入るんですかい?」

猪々子としては内政に従事するのは飽き飽きだと思ったのだろう

麗羽の言葉に食い付く速度が違った

 

「もちろん 白蓮さんの領土ですわ そのつもりで」

麗羽の指示に動揺を隠せない斗詩と猪々子であったのであろう

 

「「ええっ! 何故に?」」

という二人の発した言葉に集約されていたといえる

 

「河北四州・・・オッホッホッホ 語呂がいい・・・というのは冗談で

 華琳さんと戦って勝つ為、絶対的な兵力を得る為・・・ただそれだけですわ!」

 

麗羽はこう述べたが、斗詩と猪々子の二人はどうみても前半の河北四州の長に拘っているように思えた為

 

「「はぁ~」」

 

二人の反応はこうした生返事になってしまっていた

 

「準備を怠らないように! いいですわね!」

と主である麗羽にそう念を押されては・・・

 

「「は~い」」

と二人ともそう答えるしかなく、他に何かあるのではないのか?と勘ぐりたくなる猪々子と斗詩であった

 

「斗詩さん 猪々子さん 声が小さい!」

「「はぁ~~~い!」」

 

いつもの調子の麗羽だった事もあり、思い過ごしであると思い返し、二人は素直に従うのであった

 

袁紹軍と公孫賛軍との戦いは回避不可能 勝利の女神は一体どちらに微笑むのだろうか!?

 

              ・

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寿春にてーーーーーーーーーーーーーー

 

「子憎たらしい孫策をやってしまいたいのは・・・山々なのじゃが・・・」

洛陽から寿春へと帰り、玉座にちょこんと座った美羽は、足をバタバタさせ行儀が悪いのも構わずに不機嫌な声を響かせる

 

「お尻ぺんぺんが怖いんでしょう?」

そう七乃に指摘されるや、つい条件反射的にお尻へ両手で防ぐ格好をしてしまう・・・

これだけで、美羽の考えが七乃や紀霊にバレバレなのだが・・・

 

「ぎくっっっ そっそっそんな訳・・・なかろう? 七乃」

 

七乃に的確な処をつかれ、瞳を大きく見開き涙を少し溜め

小さな身体を硬直させながらも小刻みにぷるぷる可愛く震える美羽をみて

その可愛さに今にも失神しそうな七乃であった

 

「今度はお尻ぺんぺんで済まないかもしれませんねぇ」

とさらに美羽の可愛らしさが堪能できるかと、更に悪のりする七乃

 

「どっどういう事じゃ? お尻だけじゃ済まないということは・・・ ぶるぶるがくがく」

と七乃の冗談がもはや通じなくなっていて、恐怖にうち震える子うさぎの如き美羽さんでありましたが

 

「・・・どちらかの首が飛ぶ可能性があるということ・・・でしょうねぇ」

と生真面目な紀霊さんから、少しの容赦もなく、トドメの一撃が美羽に直撃したのでありました

 

「ぴぃぃぃぃぃ! (ぱたり・・・ じゅわぁぁぁぁぁぁ~~~)」

と短く悲鳴を出したあと玉座に座りながら意識を失ってしまう

意識を失った美羽の下半身の辺りから”染み”が急速に広がっていくのでした

 

「紀霊さん・・・」

「・・・すみません」

七乃の冷たい視線を受け、謝ることしか出来なかった紀霊であった

 

「あとでお嬢様には無闇に動かない方が良いという事も、合わせてお伝えしておきますよ」

 

七乃は紀霊にそう呟きながら、この後、急ぎ2人して玉座の”染み”の後始末をする七乃と紀霊の2人でありました

 

              ・

              ・

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襄陽にてーーーーーーーーーーーーーー

 

「どうしてこうも次から次へと無理難題が飛び込むのだ」

 

「そうこちらに愚痴をこぼされましてもなぁ~ 

 

 董卓軍の賈駆の要請を受け連合軍へと派兵した孫呉の隙をつき出兵したものの・・・

 こちらの動きを先読し、用意周到に準備され惨憺たる敗北に終り

 黄巾の乱が収束以降も街は荒廃したままで、税収は一向に増えず仕舞で軍拡にも手を付けれず

 

 もはや我らの後ろ盾となっていた張譲殿を始めとした十常侍の面々も、次々と処罰されたようですし

 それだけでも頭痛の種だというのに、我らの領土である上庸をまんまと呂布軍に占拠される始末では・・・」

 

「分かっているのならばなんとかせい! そちは軍師であろうが! 蒯越」                        

 痛いところを蒯越に指摘され、激怒する蔡瑁

 

「そう無理難題を申されても困りますなぁ? 蔡瑁殿が劉表様を臥せさせる(・ ・ ・ ・ ・)時期が遅すぎたせいでしょうに」

 

 痛い所を捏ね繰りまわされ子憎たらしいと、蒯越の顔を憎々しげに睨みつけていた蔡瑁であったが

 

「しょうがあるまい! 張譲殿の命を受け、黄巾の者共を領内に匿わねばならなかったのだから・・・

 今となっては全て裏目に出て、孫呉との差は広がるばかり・・・ (これでは孫権をいつ手に入れられるのか ええい忌々しい)

 

 して、孫呉の動きは?」

と少し話の方向性を変える蔡瑁に対して

 

「今の所大人しいようですな」

とこちらもそっけなく蔡瑁の問いに答える蒯越  

 

「そうか ならとりあえず義兄(劉表)が亡くならん事には話しにならん せっかくうるさい劉琦と黄忠を長沙へと左遷させたのだから

 とりあえず甥の劉琮を立てるまでの辛抱だ」

冷静さを少し取り戻したのか、自身のおかれた状況を整理する蔡瑁

 

「それまでは我々も大人しくしておくのが吉ですな」

漸く軍師らしい助言をしたかと思えば、現状維持とは・・・と呆れ果てる蔡瑁であった

 

この劉表軍首脳の認識のズレを、冥琳率いる孫呉に見事利用し突かれ、取り返しのつかない事態を招く事を

未だに想像だにしていない蔡瑁と蒯越達、劉表軍の首脳達であった

 

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上庸にてーーーーーーーーーーーーーー

 

孫呉軍と対峙したものの・・・撤退した呂布軍は上庸城へと帰還を果たす

それと同時に漢中が陥落したとの一報を受け取った恋とねね

 

こんな短期間で堅牢を誇る漢中が落ちるのなら、援軍にと急いで駆けつけはしたが

陥落するのも時間の問題だったのかもしれないと、情報を聞きつけたねねはそう思案するものの・・・

呂布軍としても、切実な問題が差し迫っている事に頭を悩ませていたのだった

 

「いや はてさて・・・ 恋殿 実に困りましたのです」

 

三方を川に囲まれ、堅牢を誇る上庸城の玉座に頭を抱え唸るねねの声が響き渡る・・・というのも現在の季節は冬である

 

当然のことながら、秋に米は収穫され、通常この時期の庶民の懐具合も温かい・・・筈なのであるが

荊州の多くの都市では、上庸を始めとした大きい都市であろうと、黄巾賊が各都市に跋扈していた為、街は荒れ果て例外なく貧しかった

民衆達が苦しいにも関らず、劉表軍は租税の取り立てを厳しく行い、すでに臨時徴収という手段まで行っていたのだ

 

そうした経緯もあり、呂布軍が上庸の街へ侵攻してきた際にも民は全く抵抗をみせず

すんなりと恋やねね達を受け入れた経緯があったのだが

いかんせん、15000もの兵数を日々維持し養っていくのは、莫大な兵糧と経費も馬鹿にならない

 

なのでねねとしては、春に徴収するまで間、臨時徴収をして間に合わせようとしていたのだが・・・

先に記した劉表側の臨時徴収が足を引っ張る格好となり、代表者達から臨時徴収の申し出を断られ唸っていたのだ

 

「ねね しょうがない我慢する・・・」

眉を顰め、ねねの説得を試みる恋

 

「・・・と言われましても、虎牢関から運んできた大量の食糧があるといえど、春先の徴収時期まで到底もたないと思われるのです」

ねねの指摘は軍を維持していく上で、死活問題ともいえるもので、我慢という精神問題で簡単に解決できる問題でもなかった

最悪、兵士達が暴走し略奪する恐れがあるからだ

 

「ん~~~ 川や山で何か獲るとかダメ?」

恋の提案は、幸い城の外を流れる川には、日々魚など獲り飢えを凌ぐ・・・

15000もの将兵の、日々の糊口を凌ぐのには辛すぎといえた提案であったのだが・・・

 

「自給自足ですかのぅ~ 我々が飢えるのが先か 徴収して凌げるのか はっきり言って恋殿 かなり微妙ですぞ?」

ねねは可愛く口を尖らせ腕を組んで、恋の周りをトコトコと歩き回って悩んでいたものの・・・

 

「んっ 我慢する!」

代表の恋が我慢すると言った以上、ねねに自給自足行動を行う事に否はなかったが

呂布軍の兵士達の皆がその意思を共有できる筈もなく、何故俺達がこんなことを・・・という想いが引っかかっていた

 

こうした認識のズレが、呂布軍の先々にも暗雲が立ち込める 今後の呂布軍の動向が気になる処である

 

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彭城にてーーーーーーーーーーーーーー

 

陶謙の容態が漸く安定した事もあり、劉備軍が漢中を陥落させた事を陶謙に伝えると同時に

徐州の牧への継承を劉備に固辞されたことを陶謙に伝えた陳登と糜竺であった

 

「そうじゃったか 劉備殿には申し訳なかったかのぉ~ 黄巾討伐の折に託すべきであったのかのぉ~」

 

陶謙は反省しきりといった風で、陳登と糜竺は主の容態が悪くならないか

冬であるのにも関らず背から汗が滴り落ちるような寒々とした思いをしていたのだった

 

「陳登、糜竺や」

 

「ハッ 陶謙様」

「はい 陶謙さま」

 

「後の政事は任せる 好きにするがよかろう 儂の見立てじゃと御遣い殿は信頼できる 

 孫呉につくべきじゃろうと思うが、そうなると最前線となり戦禍に巻き込まれてしまう事じゃろう

 袁紹殿、袁術殿は徐州を戦場となることを厭わぬ性格 ならば勢いのある曹操殿に就くのが得策じゃろう

 

 そう思うのじゃが儂の意向はこの際無視し、二人の思うがままにこの徐州を束ね好きにすればよい」

 

そういい終えた陶謙は、陳登、糜竺の二人の答えを聞く事もなく、再び眼を瞑り眠るのであった

それから数日後、陶謙はこの世を去った 享年60歳 徐州の今後を考えた時、若すぎる死といえた 

 

陶謙の葬儀を行い終えるや、麗羽や美羽は使者をすぐさま送ってきて、我が傘下にと呼びかけてきた

がしかし、陶謙の跡を継いだ陳登は、二つの勢力からの要求を跳ね除けた

 

陶謙の跡を継いだ陳登の隣には、友である糜竺の姿はなかった・・・

 

徐州を継いだ陳登の決断は? その行方は? 

各勢力の欲望の魔の手が伸びつつある、予断を許さぬ方向へと向かいつつあったのである

 

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成都にてーーーーーーーーーーーーーー

 

「まだ厳願や魏延は我々に抵抗するのか!」

 

劉璋は控える王累と張任に向かって、忌々しいという表情を隠しもしなかった

黄巾の乱が収束しかけた時に、劉璋の父である劉焉が病に倒れそのまま他界

 

跡目を劉璋に据えたのは、そこに控えているた王累と張任が中心となった成都派であったのだが

劉璋の政治能力を疑問視し、跡目に据える事に異議を唱える将達がいたのだ

それが厳願を旗頭とする、魏延、法正、張松、孟達といった地方の城主達で構成された地方派勢力と

反目しあって事実上、内乱状態にあったと過言ではない惨憺たる有様であった

 

それまで成都派は、漢中の張徴と休戦協定を組んで、その隙に地方派を一蹴すべく内乱を収めようと躍起になっていたが為

漢中へと侵攻してきた劉備軍への張徴の援軍要請を無視してしまったのだ

 

結果、成都派が漢中の張徴の元へと兵を派兵する間もなく、桃香達が漢中を陥落させた事で勢力がガラリと一変してしまったのだった

ここにきて成都派は地方派を押さえ込む所か、劉備軍が南下してくる可能性も入れなくてはならなくなったのだが

更に悪い知らせが成都派の面々に飛び込んできたのだった

 

成都派が掴んだその悪い知らせとは一体!?

 

巴蜀にも動乱の波が刻一刻と、押し寄せて来ようとしているのであった

 

 

 

 

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●『真・恋姫†無双 - 真月譚・魏志倭人伝 -』を執筆中

 

※本作品は【お気に入り登録者様限定】【きまぐれ更新】となっておりますので、ご注意を

人物設定などのサンプル、詳細を http://www.tinami.com/view/604916 にて用意致しております

 

上記を御参照になられ御納得された上で、右上部にありますお気に入り追加ボタンを押し、御登録のお手続きを完了してくださいませ

お手数をおかけ致しまして申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいますよう、よろしくお願いいたします<(_ _)>

 

■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 ○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン) 

 

  春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し

  『江東の虎』の異名で各地の豪族を震撼させた

  優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた

 

  容姿:髪は桃色で、孫家独特の狂戦士(バーサーカーモード)になると、右目が赤色に変化するのが特徴で、平時は量目とも碧眼である

  祭と同じく胸が豊満で背は祭より高い 体格は祭よりすこし大きい 顔立ちは蓮華というより雪蓮に似ているだろうか

 

 ○張紘 子綱 真名は紅(コウ) 

 

  呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程昱(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる

  張昭と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  ※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。 

   呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です

 

  容姿は青眼で背丈は冥琳より少し低い 顔は姉の王林とは似ておらず童顔で人に安心感を与える顔立ちである

  髪は腰にまで届こうかという長く艶やかに保った黒髪を束ね、ポニーテールと呼ばれる髪型にしている事が多いが

  その日の気分により、長髪を肩辺りで束ね胸の前に垂らしている場合もあるようである

  服装は藍色を基調とした西洋風ドレスを身を纏っている

 

 ○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)

 

  普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う

  発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する

  このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される

 

  ※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです

 

  容姿は真名と同じく琥珀色の瞳をもち、髪は黒で肌は褐色がかっており月氏の特徴に似通っている

  背は明命と同じくらいで、服装は赤を基調としたチャイナドレスを身に纏っている

 

 ○張昭 子布 真名は王林(オウリン) 

 

  呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる

  張紘と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか

 

  容姿は冥琳より少し高めで、紅と姉妹でありながら顔立ちが似ておらず、冥琳と姉妹と言われた方がピッタリの美人系の顔立ちである

  眼鏡は使用しておらず、服装は文官服やチャイナドレスを着用せず、珍しい”青眼”でこの眼が妹の紅と同じな事から

  姉妹と認識されている節もある 紫色を基調とした妹の紅と同じ西洋風のドレスを身を纏っている

 

 ○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)

 

  緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名

  祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする

  部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている

 

  真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・

 

  容姿は祭と同じくらいの背丈で、端正な顔立ちと豊かな青髪をうなじ辺りでリボンで括っている

  均整のとれた体格であるが胸は祭とは違いそこそこ・・・ちょっと惜しい残念さんである

 

 ○凌統 公績 真名は瑠璃(ルリ) 

 

  荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると

  知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる

  以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま

  呉の三羽烏の一人として日々を暮らしている

 

  容姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女

 (背丈は朱里や雛里と同じくらい) 真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます

 

  ○朱桓 休穆 真名は珊瑚(サンゴ)

 

  『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族

  槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす

 

  容姿:亞莎と同じくらいの背丈で、黒褐色の瞳に端正な顔立ちであり黒髪のセミロング 人懐っこい柴犬を思わせる雰囲気をもつ  

  胸に関しては豊満で、体格が似ている為よく明命から胸の事で敵視されている  

 

  ○徐盛 文嚮 真名は子虎(コトラ)

 

  弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが、一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で

  徐々に頭角を現し、後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる 

 

  容姿:思春と同じくらいの背丈で黒髪のショートヘア 体格も思春とほぼ同じく、遠めからでは瓜二つである 

  二人の区別の仕方は髪の色である(所属部隊兵談) またしなやかな動きを得意としている為、思春の弓バージョンと言える 

 

  ○諸葛瑾 子瑜 真名は藍里(アイリ)

 

  朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される

  その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される

 

  天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為、未熟であった一刀の補佐に転属させられる 

  初期には転属させられた事に不満であったが

  一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に(わだかま)りも消え、一刀に絶大な信頼を寄せるようになる

  後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し、軍師としても積極的に起用している

 

  容姿は朱里より頭一つ高いくらい 茶髪で腰まであるツインドテール 朱里とよく似た童顔でありながらおっとりした感じである

  服装に関しては赤の文官服を着用しており、胸は朱里と違い出ている為、朱里とは違うのだよ 朱里とは・・・

  と言われているようで切なくなるようである(妹・朱里談)  

 

  ○太史慈 子義 真名を桜

 

  能力を開放しない雪蓮と一騎打ちで互角に闘った猛者  桜の加入により瑠璃が一刀専属の斥候隊長に昇格し

  騎馬弓隊を任されることとなった(弩弓隊・隊長 瑠璃→子虎、騎馬弓隊・隊長 子虎→桜に変更)

  本来の得物は弓で、腕前は祭を凌ぎ、一矢放てば蜀の紫苑と互角、多矢を同時に放てば秋蘭と互角という

  両者の良い処をとった万能型である

 

  武器:弓 不惜身命

  特に母孝行は故郷青州でも有名であり、建業の役人街が完成した際に一刀の薦めもあって一緒に迎えに行く

  隊長として挨拶した一刀であったが、桜の母はその際に一刀をいたく気に入り、是非、桜の婿にと頼み込む程であった

   

  容姿はぼん・きゅ・ぼんと世の女性がうらやむような理想の体型でありながら身長が瑠璃ぐらいという美少女系女子

  眼はブラウン(濃褐色)であり、肩下までの黒髪 気合を入れる時には、白い帯でポニーテールに纏める

  一刀の上下を気に入り、自身用に裁縫し作ってしまう程の手先の器用さもみせる

 

 ○高順

 

  「陥陣営」の異名をもつ無口で実直、百戦錬磨の青年 

  以前は恋の副将であったのだが、恋の虎牢関撤退の折、霞との友誼、命を慮って副将の高順を霞に付けた

  高順は恋の言いつけを堅く守り続け、以後昇進の話も全て断り、その生涯を通し霞の副将格に拘り続けた

 

 ○青(アオ)

  白蓮から譲り受けた青鹿毛の牝馬の名前

 

 ○馬騰 寿成 真名を翡翠(ヒスイ)

 

  緋蓮と因縁浅からぬ仲 それもその筈で過去に韓遂の乱で応援に駆けつけた呉公に一目惚れし

  緋蓮から奪おうと迫り殺りあった経緯がある

 

  この時、緋蓮は韓遂の傭兵だった華雄にも、何度と絡まれる因縁もオマケで洩れなくついて回ることとなるのだが・・・  

  正直な処、緋蓮としては馬騰との事が気がかりで、ムシャクシャした気持ちを華雄を散々に打ちのめして

  気分を晴らしていた経緯もあったのだが・・・当の本人は、当時の気持ちをすっかり忘れてしまっているが

 

  この事情を孫呉の皆が仮に知っていたのならば、きっと華雄に絡まれる緋蓮の事を自業自得と言いきったことだろう・・・

 

 

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【あとがき】

 

常連の読者の皆様、お初の皆様 こんばんは 雪月でございます

いつも大変お世話になっております

 

今週更新分で、長かった第2章本編に関しては終了致しました 

各勢力の動向をかなり強引に詰め込んだので、長文となってしまい申し訳ありません

 

ちょっと短めの前話で切った意味が、少しは判明したのでは?とも思えるのですが・・・

終幕と銘打ちましたが、書く事項が多くてかなり長くなってしまいました(滝汗

 

振り返ってみますと、序章が8話、第1章が10話、第2章が21話と制作を始めて、ほぼ1年かけて漸くここまで辿り付けたのですね

第3章は群雄が淘汰されていくお話となりますので、より三国志らしい展開に漸く近付いていく事になると思います

 

ここまで続けられましたのも、皆様からの御支援があったればこそであります

私一人ではとうに挫折し、放置されている外史の仲間入りとなっていたに違いありません

 

ここまで制作した以上、私としても完結まできっちりと制作していこうと、決意も新たに制作して参る所存でおりますので

今後とも引き続きコメント、コレクション、御支援ボタン、ツイッター等の御支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い致します<(_ _)>

 

この度の話に関しましては、”未来への鍵”と題しお送りしたお話でしたが、詳細に解説致しますと

 

緋蓮の言葉にて既におお出ししていますが

『王道楽土の実現』・『孫呉にすむ人々の子孫繁栄』・『実現する為の人材』・・・序章 第4話参照

 

その中の”●子孫繁栄の願い”という鍵を主題としたお話といえるんですが

要約しちゃうと雪蓮との”結婚話”が主デスネ ハイ・・・

 

その他にもこの度、天皇制が敷かれた事による”●王道楽土の夢”が加わった事により

『実現する為の人材』=一刀を中心に構成された縁”●合縁奇縁 (不思議なめぐり合わせの縁)”

 

と初期に設定し表題にもあります『 孫呉千年の大計 』の”物語の核”となります”三つの柱”が

この第2章の終わりで漸く出揃ったことになるんです

 

物語をお読み戴きました直後に、お気付きになられました皆様が、もしいらしたのでしたら・・・

”凄い”としかありきたりの言葉でしか表現出来なくて、本当に申し訳ありません

 

制作者であります雪月脱帽であります<(_ _)> 決してカツラぢゃないんだからね!

 

最後に実に雪蓮らしい 少々強引といえる内容ではありましたが

皆様にとってこの結婚はサプライズ・・・となり得ましたでしょうか?

 

そして第3章への繋ぎの意味も込めまして、各勢力の動きをカキコしておきました

 

ここからどのような過程を経て淘汰され、無事に一刀の初期構想通り、天下三分にまで無事到達できるのか?

第3章ではその辺りを詳しく紡いでいく予定でおります お楽しみに!

 

来週からは前話あとがきにて申しました通り

7週ほどかけて、決定致しました拠点候補ヒロインのお話を展開させていきますので、こちらの方もお楽しみにお待ちくださいませ

 

これからも皆様の忌憚のない御意見・御感想を、制作の糧にすべくコメント等でお聞かせ下さいませ

それでは次回更新まで(*´∇`)ノシ マタネ~♪


 
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