今日も今日とて政務中。桂花との関係が進んだといっても、桂花が俺の部屋に入り浸ったりするようなことはなく、
だいたいいつもどおり。
以前より、気軽に酒やらに誘えるようにはなったからそれはいいことかな。
手ひどく断られるかもってビクビクしなくていいようになったし。
それとまぁ、この世界(時代?)は権力者は一夫多妻が当たり前なのもあってか、
他の子に手を出すのは構わないけど、自分を一番に見て欲しい。
なんて言われてしまった。……まぁ、俺が押しに弱くて雰囲気に流されやすいのを分かって言ってるんだろうけど。
桂花といえばもうひとつ、鉄扇を修理に出す時にいくらか出資してくれて、私も名前を書かせて。
っていってきたので、普通にOKした。まぁ、霞やらに一言言ったほうがよかったかなぁ、なんて思いつつ、
きっとダメとはいわないだろうと、タカをくくっていたり。
「……」
しかし体力が中々戻ってこないのは考えものだ。日々仕事にせいを出しているがどうにも具合がよろしくない。
みんなには黙ってるけどどうにもここ数日熱っぽいし。
仕事は捗らずに結局もう日が落ちて現代風に言えば残業中。そろそろ切り上げないとな。
というのも、今日は紫青にお酒に付き合って欲しいって言われて、断りきれなかったのだ。
だって断ろうとしたら捨てられた子犬みたいな目で俺を見るもんだから。
あんな目で見られたら良いよっていうしかないじゃないか!
こんなんだから桂花にあんなこと言われたんだろうなぁ……。
「主、おられるか?」
丁度仕事を切り上げようとしていたところでドアが薄く開き、外から声が飛び込んでくる。
この声は星だな。
「居るよ、何か用事?」
「ええ、少々通しておきたいお話が、おや、顔色が優れませぬな」
部屋に入ってきて俺の顔をチラと見るなりあっさりと具合が悪いのを見ぬかれた。
こりゃ相当キてるな。
「ここ数日ちょっと調子悪めでね。何?」
「いえ、大した事では無いのですが。もと魏領の一部の領主が税のごまかしをやっているようで、その対応についてです」
「警告の書状は?」
「送りましたが梨のつぶて、という報告が上がってきております」
「放っておいたら他に示しがつかないし、実力行使も視野に入れないとダメかなぁ。
本当はそういうことしたくないけど、そう思って星が俺のところにきたんだろ?」
「御意。昔からのその地の領主で、魏ができる前は随分と私腹を肥やしていたとの話しもある事です。
曹操が魏を立ち上げてからはそういうことは無かったそうです。腹立たしい事ですが、舐められているのでしょうな
見せしめの意味も込めて、一度懲らしめるべきかと」
人手が足りないからって、今までの領主にそのまま領地を任せてたのがあだになったか。
「どこの領主?」
棚においてある地図を取ろうと立ち上がり、膝に力が入らずその場に崩れ落ちそうになる。
危ないところで星が支えてくれたので床に崩れ落ちてしまうことはなかった。
「主! 全く、まだ病み上がりなのだから、あまり無理をされては……」
「一刀様、失礼しま……」
そこでタイミング悪く、というか良すぎるタイミングで紫青がやってくる。
俺は星にすがりつくような格好、紫青から見れば多分抱きついてるように見えるのではなかろうか。
じわりと目に涙が浮かんだように見えた。
「し、失礼しました!」
大きな音を立てながらドアを勢い良く締めて行ってしまった。
「まずったなぁ、今日紫青と飲む約束してたんだ」
「紫青には私から言っておくゆえ、ご心配なさいますな」
……星にお姫様抱っこされてベッドに運ばれてしまった。なんかされる方って新鮮……。
「さて、紫青を追いかけてまいります。あの子はやや危ういところがあるので、誤解は早めに解いたほうが良いでしょうからな。
主は『くれぐれも』無理をしてはなりませんぞ?」
「待ってくれ、頼むから大事にはしないでくれよ?」
「御意。話しを聞けばみなここに押し寄せるでしょうからな、それでは主も気が休まらぬでしょう」
───────────────────────
走ってきたのは城壁の上、自分の部屋に戻れば良かったんだけど、そういう気分にもなれなかった。
今夜は紫青と過ごしてくれるって約束してくれたのに、どうして星さんが居るの?
どうして、星さんと抱き合ってるの?
考えていると涙がでた。
「酷い……です……」
一刀様と飲もうと思ってもっていたお酒の、徳利の蓋を開ける。
「そういう酒の飲み方は感心せぬぞ? 紫青」
このままここでやけ酒でもしよう、そう思った所で星さんの声。
振り返ると星さんがいた。
「何をしに来たんです?」
「お主に謝りにな。主と酒を飲む約束をしていたのだろう?
少々報告せねばならぬ事があって主の部屋に行ったのだが、
主はどうにも体調が優れぬらしい。
倒れそうになった主を支えた所で丁度紫青が来たのでな」
「え?」
思わず聞き返してしまった。体調が悪いってどういうこと?
お昼は元気そうだったのに……。
「皆に心配をかけぬよう、無理に無理を重ねておられたようだからな。
その無理が祟ったのだろう。
私も先ほどまで主の変調に気づけなかったのだから、紫青が気付けないのも無理はない」
気づけなかった。思わず俯いて落ち込んでしまう。
「落ち込んでいる場合ではないのではないか?
紫青、お主の今すべきことはなんだ?」
「私のすべきこと……」
「主の傍に居る事だろう?
先ほどお主があの調子で部屋から出て行ったので心配しておられたぞ
心配事があったのでは病の治りも悪くなるというものだ」
「星さん、これ」
気がつくと、星さんに徳利を渡して、駆け出していた。
───────────────────────
やれやれ、またベッドに逆戻りか。何て考えながらもそもそと布団に入る。
本当は紫青を追いかけてあげたかったんだけどなぁ。
まぁそもそも、それだけ元気だったらこういう展開にはならなかっただろうけど。
何ておもいつつ、星が行き掛けに侍女に指示を出してくれたようで、侍女がもってきてくれた水を飲んでいると、
「失礼します」
と、遠慮がちな声と共にドアが開いた。紫青だな。
「申し訳ありません、取り乱してしまって」
部屋に入ってくるなり深々と頭を下げる紫青に苦笑。謝るのは俺の方なのに
「ん、気にしてないから大丈夫、こっち来てくれる?」
「はい」
紫青がこちらによってくる間に、上体を起こす。体が重たい。
「ごめんよ、今日は約束してたのに」
「いえ、そんなことより一刀様のお体のほうが大事です!?」
ベッドの縁に腰掛けた紫青の肩に手を回して引き寄せて。
「今日の所はこれで勘弁してもらえないかな」
軽く抱きしめて、その髪を指で梳くようにして撫でて。クセがなく、指に引っかからない黒髪が撫でていて心地いい。
この世界は結構奇抜な髪の色の子が多いけど、俺が日本人だからか黒髪というのがなんだか落ち着く。
「……ずるいです。桂花さんにもこうやったんですか?」
紫青の額を軽く小突く。
「あう」
「今日は紫青と一緒って約束したんだから、わざわざ他の子の名前を出さないように」
ぎゅっと、俺の胸に当てられた手が握られて、紫青の紫色の瞳が俺を覗きこむように見上げてくる。
覗きこむと吸い込まれそうな紫色。
「あ、あの、今日は紫青のことはいいので、休んでください」
「もうちょっとしたら寝るけど、寝るまでこうしてる」
「だ、だめ、です……」
だめ、という語気は弱く、その表情はもっとこうしていたい、と語っているように見えて、手を離してあげる気にはならなかった。
「あの、ですね。紫青も一刀様にこうして抱きしめてもらうのは嬉しいのですけど、その、あの、色々思う所が……」
だんだん頬に朱が差してきて、慌て始めるのが可愛くてしょうがなくて……。
「紫青」
「は、はい!」
片手でそっと目隠しをして、その唇を奪う。肩を震わせ、体を硬直させるものの、すぐに緊張はとけて俺に体を預けるようにしてくれたのがわかる。
手を離してゆっくりと唇を離す。ゆっくりと開かれた目を覗き込めば、少し潤んだ目が俺を覗きこんでいて
「ひどいです……。紫青は、ずっと我慢してたのに……」
そういいながら、紫青の両手は俺の背に回されて、しがみつくように抱きついてきた。
その手はすぐに離されて、俺を押し倒すようにベッドに寝かせてくる。
「でも、お願いですから、今日は休んでください。
お望みなら、一晩中でもお傍にいます、ですから……」
「大丈夫だよ、ただの風邪だろうから」
「だめです! 今体が弱っているんですから、風邪でも油断してはだめです。あまり、紫青を困らせないでください……」
紫青には似合わない鋭い声色。でも最後のほうには泣きそう表情になってしまっていた。
「一刀様の辛そうな様子を見ていると、あの時のことを思い出してしまうんです。
毒矢を受け、意識の無い一刀様は本当に辛そうでした。
一刀様が殺されかけた時、紫青がどれだけ辛かったかお分かりですか……?
一刀様が、紫青の事を求めてくださるのも、慰めてくださるのも嬉しいです、でも……」
「紫青、笑って」
紫青の言葉を遮ってそういうと、はっとしたように黙りこみ、ぎこちなく笑顔を作る。
「俺は絶対みんなを置いて死んだりしないから、そんな泣きそうな顔しないで欲しい」
「はい……」
「ごめん。約束守れなかったから紫青に何かしてあげたくてさ。風邪が治ったら何か埋め合わせするよ。
紫青に何かしてあげられる事、あるかな」
「あの……ですね……」
紫青が俺の耳元に唇を寄せて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「紫青を、一刀様の物にしてください……」
恥ずかしそうに、蚊の鳴くような声だったが、俺にははっきりと聞こえた。
あとがき
どうも黒天です。
今回は紫青さんのお話になりました。
可愛くかけてればいいなぁ。
私に絵心があれば挿絵を作るんですが、私が絵を書くと三歳児の落書きのようになってしまうのですよね。
誰か描いてください……。
描いてくれたら泣いて喜びます
さてさて、ここで皆さんにちょっと質問です。
前回のコメントで結構あったのが、桂花一人に絞って書いてみてほしい、というのが結構ありまして。
一番が桂花で二番が紫青、というのは決定事項ではあるんですが、その他の人についてはどうしましょうか?
今のところ、今までに拠点を書いた人、+魏の一部の人あたりは手を出させる予定なんですが。
名前を上げてしまえば朱里、霞、白蓮、華雄、詠、月、華琳、季衣(季衣は本格的に手を出すかは不明)。あたりですね。
前回の拠点で朱里の出番無かったですけど。
このまま桂花と紫青を大事にするか、他の人にも手を出していくか、ってあたりが悩んでます。
当然他の人に手を出す場合でも、桂花と紫青は大事にしますけどね。
なお、他の人に手を出す場合、デレるときは、27話や今回ばりに甘くなるとおもいますw
さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
また次回にお会いしましょう。
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今回は紫青さんのお話。かなり甘い話しにしたつもりです。