No.619267

タイトル未定 『漢を救う刃』

瑠璃石さん

こちらでの最終投稿からなんと一年。
皆様大変お久しぶりです。
投稿はしてませんでしたが、皆様の作品を何時も楽しく読ませていただいておりました。

今回なんとなく恋姫熱が戻り始めたので、リハビリがてら新作を投稿しました。

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2013-09-14 04:54:54 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4353   閲覧ユーザー数:4145

 

 

 

 

 

 

---キラッ

 

 

 

 

 

 

「また一つ、星が流れた。どこかで我等の手の届かぬ命が散っていったのか・・・」

 

 

豪華な屋敷の片隅にある一室。

 

そこで姿を隠すように衣服を身にまとった男。

 

彼の名を『張譲』と言う。

 

 

 

 

 

 

 

---キラッ!

 

 

 

 

 

 

 

また一つ、彼の頭上で星が流れていく。

 

 

「一体何時になったら我らを排し、漢を平和に導こうとする者が現れるのだ」

 

「張譲様、残念ですが今の漢にそのような力は残されておりません。巷に散っている諸侯でさえ、隙あらば漢を滅ぼし乗っ取ろうと考える者ばかり」

 

「もはや漢は我等の代で滅びるしかないでしょう」

 

 

張譲の嘆きに答えるのは同じく宦官である『趙忠』と『孫璋』だ。

 

彼らは張譲とあわせ、全部で12名存在する『十常侍』と呼ばれる宦官のトップ3

 

現在の漢の皇帝である『霊帝』の寵愛を一身に受け絶大な権力を持つ者達だ。

 

 

「荒んだとはいえ、平和に慣れ地位と権力を纏って過ごしてきた者に、全てを敵に回す覚悟で悪を滅ぼすと言う信念を持った者は存在しないのか・・・・・・これでは何のために我らは!!」

 

 

 

後漢末期

 

この時代はかつて栄えた漢王朝も腐敗が進み、民は飢え 心は荒み 心に悪意や一物を隠した者だけが笑ってすごすという最悪の時代。

 

勿論こんな時代にも英雄と呼ばれる逸材は多数眠っているが、残念ながら張譲の言うようにわが身を捨ててまで漢の再生に尽くすものはいない。

 

特に本当の意味での英雄は残念なことにまだこの世に生まれていないかもしれない。

 

このまま時が過ぎれば、漢は王朝が滅びるだけでなく中華という国の歴史そのものが終わってしまうだろう。

 

 

「張譲様、まだ滅びるまで時間はあります」

 

「天の采配があることを祈りましょう」

 

 

全てに落胆し自らこの国を終わらせたいという気持ちが沸き始める張譲だったが、長きに渡り共に歩んできた仲間が張譲を最悪の道から救い出す。

 

そしてこの事が張譲達を初めとする漢と言う国の未来を大きく変える事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

---キラッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「張譲様、今夜は何時も以上に星が流れますな」

 

「まったくだ。何か良くない事が起きなければよいのだが・・・」

 

 

張譲と張忠がそういいながら満天の星空を見上げていると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---ゴォォォォォ・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天を流れる星の一つが、自分達に向かってくるではないか。

 

 

 

 

「ほっ、星が・・・・・」

 

「我等のほうに落ちてくる?!」

 

「みっ・・・身を屈めろ!!」

 

 

 

天から落ちてくる星に建物の中で身を屈めることに意味があるのか?

 

混乱する頭でそう思う張譲だったが、何もせず星の激突に巻き込まれるくらいならと壁際で丸くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

---ゴォォォォッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

物凄い音と光を残し星は屋敷の上空を通り過ぎていく。

 

 

「たっ・・・・助かったのか?!」

 

「そっ、そのようですね」

 

「一体・・・・あの星はどこへ?!」

 

 

生まれてこのかた思いもしなかった恐怖に身を竦ませる三人。

 

自分の身の安全が確認できると星の行方が気になるのも無理はない。

 

 

「・・・・・・過ぎ去った脅威をぶり返す必要はないが、探してみよう。私はあの星がどうも頭から離れない」

 

「張譲様もですか?実は私もです」

 

「私も同じです。ひょっとしたらあの星は我等の嘆きに天が答えてくれたものかもしれません。何の裏づけもないことですが、私はなぜかそのような気がするのです」

 

 

三人が三人、流れていずこかへ消えていった星に意識を取られる。

 

何時も以上に流れていった星の一つが、偶々とはいえ嘆いていた自分達の頭上を通り過ぎていったのだ。

 

もしかしたらと言う淡い期待を抱いてもおかしくないだろう。

 

 

「夜は更けているが、探しにいこう」

 

「「はい!!」」

 

 

どうしても頭から離れないあの星を探しに時間外ではあるが特例として屋敷を出て行く三人と数人の護衛。

 

 

 

 

「こっ、これは!!」

 

「まさしく星が通った後ですね」

 

 

屋敷を出て少し進むとそこは山と山に囲まれた森が存在する。

 

普段は生い茂る木々によって昼でも暗く、しっかりとした目的を持たなければ迷うほどの場所だが、現在この森はそのかつての姿は残っていない。

 

まるで現代で言うブルドーザーが地面と木々を抉ったかのように、一筋の道が森を寸断していたのだ。

 

 

「行ってみよう」

 

 

この道の先にきっと自分の求める答えがある。

 

張譲はなぜかそれを確信し、星の作った人外の道を終わりにむけ歩いていく。

(ちなみに乗ってきた馬はここで待機させている)

 

 

 

 

 

「すごいですね。全くどうやったらこのような道が一夜で出来るのでしょう?」

 

「我らではこのような道を開拓するのに数ヶ月は要しますよ」

 

 

この時代での開拓は全てが人力。

 

木を切り倒して根を掘り起こし、生い茂る雑草を抜き道を整備する。

 

殆ど村おこしと言っても支障がないほど気が遠くなる作業だ。

 

そんな人の手では到底なしえぬことを僅かな時間で起こした星。

 

この先にその答えがあるかと思うと年甲斐にもなくワクワクしてくる自分がいた。

 

 

「どうやら、ここで終わりのようだな」

 

 

星の作り上げた道はおよそ四里(一里:500m×4=2000m)

 

しかも道の幅も合わせると直線距離で8里はあろうかと言う巨大な物。

 

その長く広い道の終着点になんと、

 

 

 

 

「赤子?」

 

「見たことのない物を持っていますよ?」

 

 

 

 

光り輝く衣を纏った生まれて間もないと思われる赤子が静かに眠っていた。

 

その傍らにはこの時代に存在するはずのない日本刀が落ちている。

 

 

「こんな場所に赤子を残しておくわけにはいかぬな」

 

「ですがどこの子ともわからぬ赤子を後宮へ連れて行くわけには参りませんよ?」

 

 

宦官達の棲家は皇帝の住む王宮の裏手の一角。

 

当然ではあるが皇帝やそれに順ずる者達が住む場所に出自不明な人間を入れるわけにはいかない。

 

それが例え赤子であってもだ。

 

 

「残念ですが、この子はここで息絶える運命だったのです」

 

 

こんな幼い子を見殺しにするのは心苦しい。

 

しかし今自分達の首を絞める材料を持ち帰る事は何進との争いを増長させる切欠になる。

 

まだ漢建て直しの目処さえ付いていないこの状況で、漢を衰退させるかもしれない争いを起こすわけにはいかない。

 

自分達を信じ使ってくれる霊帝のためにも。

 

趙忠と孫璋は苦虫を噛むように張譲に進言する。

 

 

「・・・・・・」

 

 

二人の意見を聞き張譲もその苦渋の決断を我が事のように噛み締める。

 

だが、それでも張譲にはこの赤子を見捨てることが出来ない。

 

捨てることが出来ないならやる事はたった一つ。

 

 

「この子は私が引き取り、わが子として育てる」

 

 

そう。

 

誰の子かわからないと言うなら、張譲本人がこの赤子の親となりこの子が成人するか物心が付くそのときまで育て、自分が身元保証人となるのだ。

 

 

「しょッ、正気ですか?!」

 

「無論だ!!」

 

「でっ、ですが!!」

 

 

張譲の決断に二人は大いに慌てる。

 

それもそうだろう。

 

張譲達は宦官と呼ばれる皇帝の雑用係。

 

しかもこの宦官と言うのは男の逸物を切り落とし、男としての機能を完全に廃した人間失格ともいえる存在なのだ。

 

これは皇帝の一族やその付き人、果てには皇帝の妾などと宦官が過ちを起こさせないために性欲をなくすために行った処置である。

 

当然ながら張譲もその処置をしているので彼に子供ができるなどありえない。

 

よしんばいたとしても彼が後宮に入ったのは今から数年から十数年も前のこと。

 

こんな赤子が生まれてくるはずも、存在するはずもないのだ。

 

 

「この子は私の子だ。私が外へ赴いたとき、神隠しから帰還した子供。この子は天が皇帝陛下や漢の為に遣わした天からの使者なのだ」

 

「陛下をお救いする為に天から来た存在」

 

「なるほど、それならば・・・」

 

 

少なくとも嘘は言っていない。

 

この子は天から落ちた星に乗ってこの地上に現れた天の遣い。

 

漢王朝の時代、天を名乗れるのは皇帝のみだが、その天を補佐する為に天から来たのなら天の遣いと言っても不思議はない。

 

それが皇帝を補佐している張譲の下に来たのなら二重の意味でも問題はないはずだ。

 

 

「今夜は冷え込むだろう。この子を寝かしつけ育てる為にも一度屋敷に戻ろう」

 

「はっ!」

 

「乳母の選任と陛下への願いだしも早急にせねばなりませんね」

 

 

赤子を護衛の兵士の持っていた手ぬぐいで何重にも包み保温した張譲は自分の護衛ではなく赤子の護衛のために兵を連れ屋敷に戻っていく。

 

 

 

 

 

こうして天から遣わされた名も無き赤子は、正史の世で悪と呼ばれた『十常侍』の筆頭である張譲に拾われ、姓を張 名を朔 真名を一刀と名づけられた。

 

 

 

 

 

この先十数年もの先の世で、彼が義父や義小父達の意思を継ぎ漢王朝復活の為に尽力を尽くす事は、このとき誰も予測さえしていなかった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

お久しぶりです。

私のようなものを僅かな方でも覚えていてくだされば嬉しいです。

 

前に公開していた自分の作品を載せていたHPが消えてしまい、新たな場所で再開するために前作を改訂している内に恋姫の熱が戻りつつある愚か者です。

 

ある程度話が纏まっている執筆作品より、思い切って新しいのを立ち上げようと考えたのがこの作品を作り始めたきっかけです。

 

そのコンセプトは・・・・・・恋姫は何度でも蘇る、です!!

 

いや~、皆さんがお書きになる作品の素晴らしい事。

 

自分の好みは別として、読む作品に引き込まれ様々な恋姫の可能性をみました。

 

蜀・魏・呉・董卓・公孫賛・袁術・袁紹・漢・黄巾・その他・オリキャラ・アンチなど、どれも皆さんの個性があって素晴らしいの一言です。

 

個人的には魏はゲームだけでおなか一杯ですけど。

 

色んなルートが考えられる中で、私は今回宦官にスポットを当ててみました。

 

どこの世界でも悪者になっている宦官ですが、腐敗しきる前に転機が訪れたことで変わっていく漢の物語を作って見たいと思い筆を取りました。

 

この世界がどういった流れでどうなっていくのか、それは正直私にもわかりませんが、少しでも同意してくださる方がいれば正式なタイトルを考えて物語を語りたいと思います。

 

それでは、あとがきのほうが長くなって申し訳ありません。

 

以上にて失礼します。

 

 

私のガラスのハートが砕けない程度のご意見をお待ちしております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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