No.616680

がちゆり~櫻子と向日葵~櫻子誕生日編

初音軍さん

ツンデレが醍醐味だというのに、気づいたらデレデレに(゜ロ゜)どうしてこうなった状態ですが、少しでも楽しんでもらえれば幸いです!

2013-09-07 00:00:56 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:619   閲覧ユーザー数:618

がちゆり-櫻子と向日葵-櫻子誕生日編

 

櫻子視点

 ここ二日くらい向日葵に避けられてる気がする。

夏の暑さが残る日、一人教室に残った私の頬に一筋の汗が流れる。

 

「落ち着け、今回はちなつちゃんのお手伝いをしているわけではない」

 

 自分に言い聞かせるように呟きながら避けられてる風になるまでの記憶を

辿っていく。自分でも驚くほど鮮明に覚えているのがわかる。

普段はすぐに忘れてしまうことなのに。

 

「じゃあ、私が何かしでかしたんだろうか」

 

 うーんっと腕を組みながら唸っていると、窓から差し込む光にじりじりと

炙られて私がうがーっと叫んでいた。

 

「何で向日葵のことなんかでこんなに悩んでるんだ!!」

 

 机の横に掛けていたバッグを思い切り取ってふんぞりながら歩いていく。

しかしその勢いも徐々に失っていく。無意識に…。

 そして脳裏に向日葵が私のことを叱っているイメージが浮かんでいる。

やがて力が抜けていって歩く速度も遅くなっていって、やがて止まってしまう。

 

「やっぱり私が何かしたのかな・・・」

 

 向日葵が避けてしまうレベルのことをしてしまったのだろうか。

そう思ってしまうと、途端に不安な気持ちがこみ上げてくる。

 

 さっきまで意識していなかった日差しでさえきつく感じてきた。

気持ちの持ちようって大きいんだなって思った。

 

「ひまわりぃ…」

 

 なんだか泣きたくなってきた。理由を聞きたくてもまともに話しができないのだ。

あれだけ喧嘩していたのにいざ目の前からいなくなるとこんなに心細いなんて。

指で目元を拭ってからとぼとぼと歩き出した。

 

 私は本当に向日葵が傍にいないとダメなのかもしれない。

思えば私が調子の良い時はいつも隣に向日葵がいたっけ。

よく叱られてたけど。

 

「よくわかんないけど、仕方ない。謝ってやるか…」

 

 いつもの感じで呟いたものの声に力は入らず。その後に携帯が鳴っていることに

気づいて取り出した。前に携帯を携帯しなくてどうするんだとか言われたから

持ち出して初めての連絡である。

 

「よ~し、買い物でも何でも櫻子さまにまかせろおおお!」

 

 唯一それが気分転換になりえると思い、姉ちゃんからのメールの内容を開いてみると。

 

『あと30分は帰ってくるな』

「ぎいいいいい!ねえちゃんめええええ!」

 

 私は頭をひとしきり掻き毟った後にどうやって時間を潰したか覚えていないほど

頭の中が真っ白になっていたのだった。

 

 

「ただいま~」

 

 身も心もぼろぼろになって家にたどり着くと私は玄関の扉を開けて中に入り

居間の方向から声が聞こえてきて私はそっちの方へ向かった。すると…。

 

パァンッ!

 

「うお!?」

 

 居間に入った途端に大きな音と共に頭になにか引っかかる感覚があった。

びっくりして目を閉じていたのに気づいてゆっくりと瞼を開いていくと。

なにやらテーブルにはケーキを含めた何か色々なものが置いてあった。

 

 いきなりのことで頭が回ってない私の前に向日葵が現れて袋を手渡された。

 

「誕生日プレゼントですわ…」

「う…」

 

「う?」

「うがあああああああああああああ!」

 

 私の反応が発狂じみた叫び声だったことにみんな驚いていた。

何だか色んな気持ちが爆発して、一番強く思ったことが…。

 

「紛らわしいことすんなよおおおお!」

 

 自分でもよくわからない感情が噴出して、やや涙目になっていたかもしれない。

みんなが冷たくて一人になってしまったような感覚に襲われたからだろうか。

 

「こんな…こんなベタな展開のために手の込んだことすんなよおおお!」

「ちょっ、櫻子!?」

 

 私はみんなの前から逃げるように走って自分の部屋に飛び込むように入った。

ベッドの上に倒れるように乗っかると堰を切ったように涙が溢れて出てきた。

なにこれ…意味がわからない。

 

「櫻子…?」

 

 静かにだけど確かに私の耳に届けるように向日葵が私を呼びかけた。

 

「どうしましたの?」

 

 近寄って私の顔を見るとギョッとしたような表情になった。

どうしてそうなったのかわからないという顔に変わる向日葵に向かって

私は食いついた。

 

「私のこと避けてたじゃん…」

「あぁ、それは避けてたというより。櫻子の誕生日のことで相談が」

 

「今日でそれがわかったよ!」

「それはよかったじゃありませんの?」

 

「良くないよ!」

「櫻子?」

 

 私は俯きがちだった顔を上げて向日葵の顔を見つめて言った。

 

「みんなに嫌われたかと思ったじゃんか!」

「それは櫻子に嫌われるかもしれないって覚えがあったからじゃ?」

「うぐ!」

 

 痛い所を的確に突いてくる向日葵の言葉に何も言い返せない。

だけどその後、私に向かって微笑むと向日葵は手を握ってくる。

 

「言わなくてもわかることもあるでしょう? 私は櫻子のこと嫌いになりませんわよ」

「ほんと…?」

 

「えぇ…」

 

 そう言って向日葵はやさしく私の手を握ってくれた。暖かくてやわらかい。

 

「あの…プレゼントは…」

「そんなもんいらない!向日葵とおっぱいさえあればいいんだよ!」

 

 むぎゅう!

 

「きゃぁ!」

 

 ぼかっ!

 

「いてえ!」

 

 向日葵に飛び掛って胸を強く掴んだ後に向日葵に後頭部を強打されて私はベッドに顔を

埋めていた。二人のやりとりはずっとベッドの上でしているから。

 

 普段だったらそのまま起き上がって怒鳴ってるはずの私の胸からこみ上げて

来たのは…。

 

「へへへ…」

 

 笑いだった。何だか知らないけれど、こうやって向日葵と馬鹿やってることが

ひどく幸せに感じる。

 

「あははは」

「ちょっと、大丈夫? 頭強く叩きすぎたかしら?」

 

 心配する向日葵をよそに私はすっきりするまで笑い続けてから。

指で涙を拭ってからもう一度、向日葵に視線を向けた。

 

「本当に嫌いにならない?」

「試してみる?」

 

「うん…」

 

 私と向日葵の顔の距離が近づいていって、一言でも呟けば相手の息がかかる。

それだけ近づいた後。あれは、どっちからだったろうか。

 

 柔らかくてプリッとした感覚が唇に触れて暖かい息がかかってくる。

 

「ん…」

 

 アップに耐えられず、目を瞑ってお互いの唇の感触と匂いを味わう。

他に雑音は聞こえず自分の胸の鼓動がいやに煩く聞こえてくる。

 

 トクントクントクントクン

 

 顔も体も熱くなってきて、まるで二人が一緒に溶け合っていくような

感覚すらしてくる。そして、二人は新鮮な空気を求めるように口を離す。

 

「ぷはっ」

 

 二人して同じような声を出すと、向日葵の目がとろんと垂れてるような感じがして

少し可愛く思えた。私はそんな気持ちを悟られないように向日葵の胴の後ろに手を回して

胸に顔を埋める。

 

 下着と服越しからでも豊満で柔らかい感触が伝わってくる。

向日葵の匂いと温もりを感じる。とても落ち着く匂いだ。

 

「ちょっと、櫻子・・・!」

「もぉあーに?」

 

「やだ、胸に埋もれさせながら喋らないで、くすぐったいですわ…!」

 

 声がさっきより色気が混じってる気がするのは気のせいだろうか。

それとも私で感じてくれてるんだろうか。そうだとしたら何だか嬉しい気がする。

 

 そうして密着しながら向日葵を感じる時間はあっという間に過ぎていって。

体力が尽きた私たちは一緒のベッドで横になりながら手を繋いだ。

 

「そういえばプレゼント渡し損ねてましたわ」

「だからもういいって」

 

「そういうわけにはいきませんわよ。ほら」

「なんだよ、この袋~」

 

 くっついた後の気だるさを押しながら袋のテープを外して中身を出すとそこには…。

 

「な、なんだこれ」

「中学生の平均勉強能力を身につける便利な参考書ですわ」

 

「…」

「…」

 

 ダッ! ガシッ

 

 私が逃げようとしたのがバレバレだったようで、目を光らせた向日葵が私の手首を

掴んでいた。しかもけっこう力強く。

 

「逃がしませんわよ…。撫子さんや花子ちゃんからも頼まれているのだから」

「や、やめて…!勉強だけはやめてええええ!」

 

「普段から勉強してればこんなことにはならなかったのに…」

「やっぱ向日葵大嫌いだああ!くっそおおおおお!」

 

 甘い空気も一時で、いつも通りの雰囲気に戻ってしまったけれど。

もやもやしていた時よりはいいかと少しの間だけ思っていた。

 

 そう、あの地獄の勉強特訓が始まるまでは…。

こうして私の誕生日は甘苦い結果に終わってしまったのだった…。

 

お終い


 
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