No.616086

足りないよ、恋ちゃん

くらのさん

こんにちわ。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。蜀のお話です。
今回はシリアスです。重いです。それではどうぞ、お楽しみください。

2013-09-05 01:32:08 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:4660   閲覧ユーザー数:3596

それは日の暖かな午後のことでした。三国鼎立し、主な仕事が机に向かうことが多くなり、皆がのんびりすることも増え始めた日のことです。

 中庭で一刀がのんびりと横になっていた時でした。

 

「……ご主人様……」

「恋?」

 

 一刀の視界に赤い触角のような髪の毛が映り込みました。

 起きて見ると三国一の武将、呂布奉先こと恋が肉まんの袋が一杯詰まった紙袋を片手に持ち、やってきていました。近くにはセキトも音々の姿もないようです。

 

「恋、お昼ごはん?」

「……(フルフル)」

「それじゃおやつ?」

「……(コクッ)」

「そっか……」

 

 お昼ごはんもお腹いっぱいに食べたんだろうなー。と一刀は心の中で呟きました。

 

「ご主人様も一緒……」

 

 一刀の隣に座りながら紙袋から肉まんを一つ取り出すと差し出します。

 

「くれるのか?」

「(コクッ)」

 

どうやら今日は一緒におやつを食べるために来たようです。

 

「ありがと。一緒に食べような」

「(コクコク)」

 

 それから二人はのんびりと食べ始めました。時折会話をする程度で、静かな時が過ぎていきます。

 一刀が一つ食べ上げ、恋が四つ食べ上げ。一刀がもう一つ貰い、恋が残りを食べ上げました。

 

「恋、おいしかった?」

「(コクッ)」

「そっか」

 

 木の幹に寄りかかるようにしながら一刀は空を見上げました。木の葉っぱに紛れて青い空が見えます。

 争いがなくなり、こうしてのんびりと出来る幸せを噛みしめていると膝に重みが加わりました。

 

「恋……?」

「(スリスリ)」

 

 見れば恋が一刀の膝で丸まっていました。お眠のようです。動物のように本能のまま動く恋に一刀は苦笑しながらも頭を撫でてあげ――ある違和感を覚えました。そして違和感に気付きました。

 

「恋……」

「……?」

「少し太った?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉に恋は目を開けるとキョトンと一刀を見つめました。

 

「やっぱり少し太ってる様な……。そう言えばここ最近、体を思いっきり動かすことなんてないからね」

 

 野党も減り、軍を動かすことも前に比べればずっと減っているのです。当然、武将だって動くことも減ります。

 

「…………駄目?」

 

 コテリと首を傾げる恋です。何とも思ってないような表情ですが、瞳にに不安の色が出ています。

 そんな恋に向けて一刀は笑って否定します。

 

「太り過ぎは良くないけど恋ぐらいなら良いんじゃないかな? だから、一杯食べて良いんだよ」

「…………(コクッ)」

 

 嬉しそうに顔を一刀のお腹に顔を埋めました。それを愛おしそうに一刀は恋の髪の毛を撫でました。

 そうして午後は過ぎて行きました。

 

 

 

 

 

 

夕方、恋が歩いていました。頭にあるのは一刀の言葉です。

 

『太っている様な……』

 

 一刀は良いと言いましたが、やはり少しだけ気になります。一刀に今まで通り好きで居て欲しいと思うからです。

 ですが、自分では太ったという感じがありません。そのせいで恋としては痩せた方が良いのか、悩んでいました。

 誰かに聞いてみようか、そんな事を考えていると丁度愛紗に出会いました。珍しく手には肉まんを持っています。

 

「愛紗……」

「ん、れ、恋、どうした? これか? これは先ほど厨房でもらったのだ。け、決して買い食いなどではないからな」

 

 片手に持っている肉まんを隠すようにしながら言い訳じみたことを言い始めました。

 愛紗としては普段から一刀や鈴々、恋といった買い食いを良くするメンバーに説教をしているからか、少し後ろめたいようです。

 しかし、恋としては肉まんも気になりますが、それよりも気になることがあります。そのことを尋ねようと口を開きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……太った?……」

 

 その瞬間、愛紗の顔色が一瞬で変わりました。真っ青になり、手もカタカタと震え始めました。肉まんが落ちそうです。

 その姿を見て、恋は首を傾けます。

 何故、愛紗が顔色を青くしているのか分からないのです。ただ、分かるのは太るというのは大変問題があるらしい。という一点のみです。

 しばらくして、愛紗が言葉を震わせながら尋ねます。

 

「ど、どうしてそ、そんなことを……」

「ご主人様が……」

「ご、ご主人様が、なんと……?」

「太ったって……。前に比べて動かないから、太ったって」

 

 恋の言葉を聞くたびに愛紗の顔色の悪さに磨きがかかっていきます。もう、土色に近いです。

(嘘、太った? いや、そんな筈は……。だが、ここ最近、確かに体を動かすことが減ったが……。ご主人様が気付くほど……!?)

 

 そこまで思うと愛紗の頭の中であらぬ妄想が広がり始めます。

 

『恋、ここ最近、愛紗太ってないか?』

『……?』

『何か、こう輪郭とかがふっくらとして来たような……』

『……(コテリ)?』

「そっか、分かんないか。でも、恋はすごくほっそりしてるな。やっぱり太ってる子よりも恋みたいな子だよな(スリスリ)』

『~♪~~♪~』

 

「ご、ご主人様が……」

 

 愛紗は立ってられないとばかりに壁に手をついて寄りかかりました。

 その時、自分の手に持っている肉まんが酷く恐ろしくなりました。それと同時に甘い誘惑が駆け巡ります。

 道連れ。そんな甘い誘惑が愛紗の口を動かしました。

 

「れ、恋。この肉まん食べるか?」

 

 顔を真っ青にしながらも笑顔で肉まんを差し出しますが恋は首を横に振って一言。

 

「…………太るとご主人様に嫌われる。だから今日は肉まんお終い……」

 

 その言葉は愛紗の心をぶち壊しました。

 

「きゃあぁーーーーーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、中庭には鬼気迫る表情で青龍偃月刀を振るう武神の姿があり、それを見つめ。

 

「愛紗、どうしたんだ?」

「……(モグモグ)?」

「ま、恋が分かるはずないか。恋、肉まん美味しい?」

「(コクコク)」

「そっか」

 

和気あいあいとする二人の姿がありました。

 

 

 

 

 

 

友人に「お前の書き方ってシリアスには向いてないよな」と言われたくらのです。なので反発心を持ってシリアスにしてみました。

やはり女性にとっての禁句。それは女性を恐怖のどん底に叩き落とすには十分でしょう。まさにシリアス! これほど重い話もそうないでしょう、と自負しております。これで友人に文句は言わせない! しかし、やはりシリアスは疲れますね。やはり、私は皆が仲良くやってるのが好きです。軽い話はいいですね。次回は軽い話にしましょうか? 月ちゃんや璃々ちゃん。朱里ちゃんに雛里ちゃん。軽い話にした方が。それではまた軽い話で。See you next again!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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