No.615611

がちゆり~結衣と櫻子~

初音軍さん

普段ない組み合わせで書いたのですが、あれですね。普段の絡みが極端に少ないから呼び方とかほぼわからずw試行錯誤しながら書いてました。

2013-09-03 17:13:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:550   閲覧ユーザー数:549

結衣視点)

 

 天気の良い暑い日差しの中、買い物帰りに大室さんと会った。

 

「大室さん、こんにちは」

「あ、先輩。今日も暑いっすねー」

 

 たらたらと額から顎に伝って落ちていく汗。

ニュースでも猛暑だと言われているせいもあってか、本当に暑い。

 

「よかったらうち寄ってく?」

「マジっすか。それはありがたいです」

 

 聞けば家を追い出されて、古谷さんも留守だったとのことで

居場所がなかったらしい。お金も心許なかったので私の言葉を

聞いて彼女はとてもうれしそうな笑顔をうかべていた。

 

 どこか京子を彷彿とさせる表情である。

 

 外で立ち話もなんだし、さっさと家へと戻ることにした。

 

 家に着くと部屋の中の熱気がすごかったから、一度窓を開けて

空気を入れ替えてから冷房をつけた。その間、大室さんは体を大の字にして

豪快に横になっていた。

 

「はい、麦茶どうぞ」

「あ、ありがとうございます。先輩」

 

 麦茶をテーブルに置くのと同時に大室さんの手がそれを取って

一気に飲み干してしまった。その後、ビールでも飲んでるかのような

声をあげて口元を拭っていた。

 

「キンッキンに冷えてやがる!」

「カイジか・・・」

 

 ほぼ無意識にボケに対して突っ込む癖がついてしまった私は

あわてて口を閉ざすが大室さんはツボに入ったのか大笑いをしていた。

 

「船見先輩って面白いですね!」

「そうかな・・・」

 

「的確なツッコミナイスでした」

「あ、ありがとう」

 

「それにくらべてうちの姉妹は辛辣なだけで・・・」

「そう・・・」

 

 一度その姉妹には会ってるので辛辣にもなる理由がわかってしまうから

私は適当に相槌を打つしかできなかった。

 

 明るく振舞っているけれど、以前に古谷さんと話してたときの

活発さは潜めているように見える。

 

 そりゃそうか。1度や2度ではなかなか慣れるものではない。

しかも私は先輩だから尚更なのかもしれない。

 

 ほどよく部屋の中が冷えてきたところで私はゲーム機を取り出して

大室さんを誘ってみた。

 

「何かやる?」

「いいんですか、やるやるー」

 

 私は基本RPGメインでやっているが京子もよく遊びにくるため

いろんなジャンルのゲームがいつの間にか集まっていた。

前もちなつちゃんやあかりも含めてゲームをしたこともあるから。

 

「このRPG姉ちゃんの借りてやったことあるんですけど、難しくて」

「あぁ、これは敵の属性と状態異常を狙うと楽だよ」

 

 大室さんが選んでゲームを開始。中盤のボスを指して言う彼女に

私は自分で練り上げた戦略を語るとわかってるのかわかってないのか

首をかしげながら「なるほど」と言っている。

 

「私こうげきコマンドしか押さないから」

「・・・大室さんこのジャンルあまり向いてないよね」

 

「うん・・・」

 

 どうやらクリアして姉に自慢したかったのだろうが挫折してしまったようだ。

このゲームは難易度的には楽な部類なのだけれど。

 

 今度は気楽にできるパーティーゲームを始めると、運の味方した

大室さんの独壇場になっていた。そんな中で横で楽しそうにゲームをしている

顔を見ているととても微笑ましくなってくる。

 

「絶好調~!」

「ふふ」

 

「どうだ、参ったか。ひまわり・・・あっ」

 

 私に振り返って指を差しながら自慢気に言う大室さんは私の姿を

確認すると気まずそうに指を差す形をそのままに徐々に顔は下がっていく。

 

「ご、ごめんなさい」

「そんな気にしないでよ」

 

 せっかくいつもの大室さんになるかと期待していたのだけど

元に戻ってしまった。顔を強張らせながら視線を画面に戻す大室さんの

傍に寄って耳元でささやいてみた。

 

「もう少しリラックスしていいよ」

「・・・!」

 

「私はいつもの大室さんでいて欲しいな。その方が楽しそうだし」

「じゃ、じゃあ先輩も呼び方変えてくださいよ」」

 

「櫻子ちゃん?」

「そ、そうそう。・・・そっちも呼ばれ慣れないですけど」

 

 えへへと言って頬を掻く彼女の仕草が可愛らしくて私も一緒に

笑顔でいてしまう。

 

「じゃあ、櫻子ちゃんも私を下の方で呼んでくれればいいよ」

「えっと・・・結衣先輩?」

 

「そう」

 

「私、みんなに言われると「我儘」だけどそれでもいいんですか?」

「うん、大丈夫。というか、知ってる」

 

「え!?」

 

 何を反応するにも全力で応えてくれる櫻子ちゃんがかわいすぎて

私はついつい笑ってしまう。

 

「そうだ、今日はごはんも食べていく?来る予定の奴が用事できちゃったらしくて」

「歳納先輩のことですか?」

 

「そうそう。ひとり分多く材料買っちゃったから。どうする?」

「そりゃもちろんいただきます!」

 

「せっかくだから一緒に作る?」

「えー・・・めんどくさい・・・」

 

「家で作れるようになれば自慢できるよ?」

 

 自慢、という言葉に目を光らせてくいついてくる櫻子ちゃん。

 

「なるべくわかりやすいように教えるからさ」

「ありがとうございます!」

 

 たぶん覚えることはないだろうけど、この動物っぽい子が

傍に居てくれると楽しいかなと思って誘ってみたけど。

 思ってるよりもノッてくれるのかもしれなかった。

誘い方次第だとは思うけれど。

 

 それから楽しく食事をして道がわかる場所まで見送った後

部屋に戻ると、中には誰もいなく異様なほど静かな空気が流れていた。

 

 私は床にあったクッションに飛び込むように顔をうずめる。

さっきまで櫻子ちゃんが使っていて、少し鼻で吸うと櫻子ちゃんの

匂いが少し残ってるような気がした。

 

 そのままクッションに顔を押し付けていたら。外の暑さとか疲れを残した

私は眠気に襲われて、意識が遠くなっていった。

 

 途切れる寸前、なんとなく私はまた櫻子ちゃんを誘いたい気持ちになっていた。

あの笑顔がまた見てみたい。どこか夏の太陽が似合いそうなあの笑顔が

私はいつしか好きになっていたようだった。

 

お終い

 

 

 


 
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