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真・恋姫†無双 異伝 ~最後の選択者~ 第五話

Jack Tlamさん

『真・恋姫†無双』を基に構想した二次創作です。
無印の要素とか、コンシューマで追加されたEDとか、
その辺りも入ってくるので、ちょっと冗長かな?

無茶苦茶な設定とか、一刀君が異常に強かったりとか、

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2013-08-22 16:47:41 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5377   閲覧ユーザー数:4383

第五話、『明かされた真実・前編』

 

 

結局、朱里は鞘名とわかり合うことはできなかったようだ。

 

あれから朱里が一人で戻ってきたのを見て、俺はそれを悟った。

 

つくづく強情な妹だ。我が妹ながら情けないことだ。

 

鞘名は俺達が夕飯を食べ終わった頃に帰ってきたが、誰とも会話しないまま、宛がわれた部屋に篭ってしまい、

 

ばあちゃんが何度か声をかけたが、返事すらせず、この日はそのまま寝るしかなかった。

 

俺としても、鞘名と話したかったので声をかけたのだが、やはりというべきか、返事は無かった。

 

 

朱里からは一言、「明日、鞘名さんとの仕合をお願いします」と言われている。

 

朱里は社でのやり取りについて話してくれ、その最後の手札として、俺との仕合を持ちかけたのだという。

 

確かに、鞘名は北郷流剣術免許皆伝となってからの時間が俺より長い。

 

一方の俺はこの間免許皆伝を許されたばかりだ。

 

元々、実力では俺は鞘名に負けていた。当然だ、修行への打ち込み度合いが全く違ったのだから。

 

それをじいちゃん達から聞いて知っていた朱里は、自身が去るということを条件に、仕合を持ちかけたのだろう。

 

つまり、俺が仕合に負ければ朱里を失うことになる。

 

 

だが、そうはならない。

 

戦い続けて幾星霜、無限の円環の中で培ってきた数々の力。

 

そして今では本気のじいちゃんですら五本中三本は降せるほどになった武技。

 

じいちゃんに全くかなわない鞘名は、今の俺の敵ではない。

 

だが、勝敗は兵家の常だ。油断せずに行こう。

 

 

しかし…

 

成長した俺を知らない鞘名に、俺との仕合を持ちかけ、俺が負ければ自分が去るなんて言うとは…

 

朱里は横○版『三国志』を読んだのか?

 

次々に「孔明の罠」を仕掛けていく朱里に、俺は正直恐ろしさを感じていた…。

 

 

 

今の朱里は、絶対にキレている。

 

 

仕合は朝に行うとのことで、早くから起き出した俺は、少し素振りをしてから道場に向かった。

 

道場に座して静かに待っていると、引き戸が開き、じいちゃん、ばあちゃん、朱里が入ってきた。

 

「一刀よ、準備は良いかの?」

 

「いつでも構わないよ。鞘名の方が良ければ、だけどね」

 

鞘名の名前を出した次の瞬間、開いていた戸をくぐって鞘名が現れた。

 

これまで見たことが無いほど険しい表情を浮かべ、俺の正面に座る鞘名。

 

その眼は俺を睨んでいるようで、実際は何も見えていない、空虚な眼だった。

 

いつもの闘気とは違う、何か異質な闘気を感じる。

 

 

 

「………お兄ちゃん」

 

「………鞘名?」

 

「………あたしは絶対に勝つ。お兄ちゃんの隣はあたしだけのものだから」

 

「………やってみろ。外史を駆け抜けて来た俺の力、見せてやる」

 

 

 

互いに立ち上がり、木刀を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――両者構え!………はじめッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道場にじいちゃんの声が響き渡った。

 

 

「せぇやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああッ!!!」

 

先手を取ったのは鞘名だ。初撃必殺を狙った全力の『一文字斬り』を繰り出してくる―!

 

『幻走脚!』

 

俺は気を両脚に流し込み、その一撃を回避すると同時に鞘名の後ろを取る。

 

「甘いぞ、鞘名!」

 

そして、そのまま刀を振り下ろすが、流石に鞘名は回避してみせた。

 

「くッ!?まさか、お兄ちゃんまで『幻走脚』を使いこなすなんて!なら、あたしも!!」

 

鞘名とて北郷流剣術免許皆伝の身だ。『幻走脚』を使うことはできる。

 

「はぁぁぁぁッ…はッ!!!」

 

次の瞬間、鞘名の姿が目前から消える―直前に、俺も再び『幻走脚』を発動させる。

 

その後は互いに連続して『幻走脚』を繰り出し、互いを喰らおうとする野獣の如く、相手の隙を窺う。

 

「―くッ…連続はキツいッ…!」

 

「―その程度で息を上げるな!まだまだぁッ!!」

 

俺は鞘名の息が上がっているところに、隙を突くように刀を打ち込んでいく。

 

対する鞘名は息を上げながらも打ちこまれる俺の刀を見事に迎撃していた。

 

 

 

この勝負、初撃で極めることはできた。だが、それでは鞘名が納得しないだろうから、こうして全力で打ち合う。

 

鞘名の凝った心を打ち砕く最良のタイミングで「あれ」を使う。

 

それが最も有効だろう。あれは免許皆伝だからといって使える技でもないし。

 

 

 

「―どうした、鞘名!お前、こんなに弱かったか!?」

 

「―くッ!まだまだ、こんなもんじゃないよッ!!」

 

剣と同時に言葉の応酬も続ける。傍から見れば過激な兄妹喧嘩にしか見えないだろう。

 

「―あたしじゃ、っつ!不満、なのッ!?」

 

「―それと、これと、ッ、は、別の、話だッ!!」

 

…段々と痴話喧嘩になってきているような気がするのは気のせいだろうか。

 

「…」

 

ふと、鞘名が動きを止める。それに合わせて俺も動きをいったん止めた。

 

ややあって、鞘名が口を開く。

 

「…わかってるんだ。こんなの、八つ当たりでしかないって。

 

 お兄ちゃんが誰を好きになるかはお兄ちゃんの自由だし、それにあたしが口出ししたり、まして妨害する

 

 権利なんてない。それはわかってる」

 

静かな口調だった。しかし―

 

「―でも、これは、あたしの意地なの!

 

 何年もおにいちゃんと一緒に過ごしたあたしの、一番大切なことなの!

 

 ずっとお兄ちゃんの隣にいて!一緒に剣をやって!ずっと…ずっと、一緒だったんだ!

 

 あたしの居場所は他にもあった。でも、その中でも一番大切なのが、お兄ちゃんの隣だった!

 

 これを失くしたら…もうあたしはあたしじゃなくなっちゃうの!!」

 

前の言葉に続いて放たれたのは、血を吐くような叫びだった。

 

仕合の前に感じた異質な闘気…それは、悲しみに、あるいは憎悪に満ちた、闇しかない闘気だったのか。

 

「…」

 

俺は数拍おいて、それに応じた。

 

 

「…誰かの(そば)にいたいと思うのは自然なことだ。だが、あまり俺を見縊るなよ。

 

 『誰かの傍』という場所は………一つではないんだ!!」

 

そう叫ぶとともに、俺は闘気を解放する。

 

溢れ出す闘気が、俺の背後に何かの気配を形作るのがわかった。

 

闘気の解放と同時に、居合の態勢を取る。

 

今の俺が使える最大の技。それを使って、鞘名の心の闇を打ち払う!

 

「ぅうううッ…ぅうぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああッッ!!!!!!!」

 

鞘名の裂帛の気合は、最早慟哭そのものだった。

 

『幻走脚』で加重された、渾身の『一文字斬り』が俺に迫る。

 

引き伸ばされた主観時間の中で、俺はそれを見つめていた。

 

 

 

―適切な打撃点、発生する衝撃、それに応じて力を調整―

 

 

 

数多くの武人たちの戦いを見て来たからこそできる、一瞬の見極め。

 

鞘名の「刀が」射程圏内に入った瞬間、俺はそれを解き放った―

 

 

 

 

 

『―居合!紫電走刀(しでんそうとう)ッ!!』

 

 

 

 

 

気を流し込んだ俺の木刀が光を放ったかと思うと、刹那、それは鞘名の木刀を叩き折っていた。

 

「っぁああああああぁぁあッ!!」

 

神速の一撃で弾き飛ばされた衝撃は『幻走脚』の加速を以ても殺しきれず、鞘名は元居た後方に吹き飛ばされた。

 

道場に木刀が落ちる、乾いた音が響く。

 

鞘名は受け身も取れず、どうと床に打ちつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―勝負あり!この仕合、北郷一刀の勝利!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝負を黙って見ていたじいちゃんの、決着を告げる声が響いた。

 

 

「―ぅ、うぅん………」

 

床に打ちつけられ、少しの間意識を失っていたらしい鞘名が、ばあちゃんの膝の上で目を覚ました。

 

「…あ、あたし、は…負けたの?」

 

そう問うてくる鞘名に、じいちゃんが短く答える。

 

「…うむ。お前の負けじゃ」

 

「…そっか。お兄ちゃんにも負けちゃったんだ、あたし」

 

弱々しくそう言う鞘名は、どこか晴れやかな表情をしていた。

 

「圧倒されちゃった………朱里ちゃんの闘気も凄かったけど、お兄ちゃんの闘気はもっとすごかった…。

 

 それだけじゃなくて、『覇気』も感じた…。お兄ちゃん、本当に王様やってたんだね…」

 

「鞘名さん…」

 

俺の隣に座る朱里が、悲しげに鞘名を見やる。

 

「…ごめんね、朱里ちゃん。あたし、どうかしてた…。

 

 あなたが嘘を言っていないことはわかっていたけど、お兄ちゃんの隣を奪われるって焦って、あなたを狂人扱いまでして」

 

ぽろぽろと涙を零しながら話す鞘名。

 

「…結局、子どものわがままだったんだ」

 

そう言って、鞘名が俺に顔を向けた。

 

「お兄ちゃん…こんな妹じゃ、嫌いになっちゃうよね…?

 

 もうあたし、嫌われてもいいや…。そこまでのこと、しちゃったんだから」

 

笑顔のまま、涙を零しながら、訥々と言葉を紡ぐ鞘名。

 

その姿が、何故か桃香とダブって見えた。

 

当然、桃香はこんなことは言わない。性格も似ているところはあるが全然違う。

 

桃香は多少強引だが、優しいし、とてつもなく人が良いので、他人を悪く言ったりはしない。

 

反董卓連合招集の時はまあ、情報がほとんど無いも同然だったし、噂を信じ込んでしまって董卓―月に対して

 

あんまり良くない言葉を向けていたけど。

 

でも、不思議と今の鞘名の言葉は、桃香が発したとしても違和感が無い内容だった。

 

鞘名の声が桃香に似ているとしても、何故だろう…?

 

「…ごめんね」

 

最後にそう言って言葉を切り、鞘名は重そうに身体を動かし、立ち上がった。

 

 

 

「…待て。俺からも、言いたいことがある」

 

 

 

俺の言葉に、立ち去ろうとしていた鞘名が立ち止まる。

 

俺がじいちゃん達に目配せすると、俺の意を汲んでくれたのか、じいちゃん達は道場から出て行った。

 

鞘名は振り返らない。俺は立ち上がると、こちらに背を向けたままの鞘名に向かって言った。

 

「…外史において一国の君主として戦場を渡り、乱世を駆け抜けたのは事実だ。

 

 だが、朱里が話したのは事実のほんの一端に過ぎない。この話には、続きがある」

 

「…続き…?」

 

鞘名が、ゆっくりと振り返った。

 

「そうだ。朱里、君はどこまで話したんだ?」

 

「始まりの外史が終端を迎え、一刀様と共にこの世界にやって来たところまでです」

 

「え…?どういうこと?そこから続き?」

 

…そうなると、あの始まりの外史が何度か繰り返され、そしてある時から無限の円環によって輪廻する『閉じた外史』に

 

なってしまったことまで話さなければならないのか。長いなぁ。

 

俺は覚悟を決めて話し出した。

 

「俺たちは、輪廻する外史に囚われ、悠久の時を戦い続けていたんだ…」

 

 

…………………………

 

「…そんな、そんなことが…」

 

俺が話し終わると、鞘名はへたり込んでしまった。

 

「…すべて、事実だ。今でも信じられないことが多々あるが、俺がこの世界に戻ってくるのは、どのくらいぶりか

 

 わからないくらいには繰り返されていたんだよ」

 

「…お兄ちゃん、じゃあ、今のお兄ちゃんは見かけどおりの齢じゃないの?」

 

「輪廻の度に記憶が消えていたから主観時間での年齢は常に同じだったけど、全ての記憶を取り戻した今、俺の主観での

 

 年齢はどれほどのものなのかわからない。それは朱里にも同じことが言える」

 

理解されないのも困るので、先程は長々と説明したが、それが終わった今ならこんな説明でも鞘名は理解できるだろう。

 

「…そっか。道理で強いわけだ」

 

納得したかのように、鞘名がまた穏やかな笑顔を浮かべた。

 

「朱里ちゃんとお兄ちゃんは、あたしとお兄ちゃんが過ごした年月とは比較にならないくらい長い時を歩んできたんだね。

 

 あたしが勝てる道理はなかったんだよ」

 

悲しげな笑顔だった。俺が何も言えずにいると、朱里が口を開いた。

 

「…一刀様のおっしゃった通り、誰かの傍らに在るということは誰か一人にしかできないというわけではありません。

 

 一刀様の場合は極端かもしれませんが、人の愛はそこまで小さくありませんよ」

 

「…」

 

「鞘名さんのように、一刀様に対して独占欲を抱くのは皆さん同じでした。かく言う私もそうでしたから。

 

 でも、一刀様の愛の大きさは、私たち全員を包み込み、それでもまだ満ちなかったのです。

 

 …それぞれの立ち位置があっていいのだと思います」

 

そうだ。

 

朱里は彼女であるが、鞘名は血の繋がった家族だ。そんな関係で、隣にいられないなんてことは有り得ない。

 

ただ、立ち位置が違うだけで。

 

「…お兄ちゃん」

 

「なんだ?」

 

「…あたしも、お兄ちゃんの傍にいてもいい?」

 

「…もちろんだ」

 

俺はへたり込んだ鞘名を抱き締めた。

 

「…寂しい思いをさせてごめんな、鞘名…」

 

「…お兄、ちゃん、うっ、い、いいん、だよ、ぐすっ、うぅ…!」

 

しゃくり上げる鞘名を、俺はしばらく抱き締めていた。

 

 

あとがき(という名の言い訳)

 

皆さんこんにちは、Jack Tlamです。

 

今回は…前回の予告通りとはならず、鞘名に真実を明かし、朱里と鞘名の和解、

 

そして冷たく凝っていた鞘名の心を解放する一刀を描きました。

 

 

いや、まあ、祖父母・両親の秘密大公開のはずだったんですが、

 

「これ分けた方が良くね?」

 

的な天啓を授かったので、分けさせていただきました。

 

この後予定通りにやるとなんか締まらないので。

 

 

何度も言っていることかもしれませんが、

 

一刀は今作で、朱里以外の女性と関係を持つ事は拒否することになります。

 

今回の事は、あくまで相手が妹だからやったのであって、いずれ別れることが決定しているであろう

 

恋姫武将たち、オリキャラ含め、決して関係は持ちません。

 

 

あと、鞘名の容姿ですが、髪型と目つき以外は殆ど桃香と一緒です。

 

朱里が苦悩していたのは彼女との関係もありますが、心に深い傷を負っていたとはいえ、急に別れを告げた

 

桃香を思い出してしまうからです。

 

また、作者の妄想でしかありませんが、声も桃香に似ています。

 

 

一刀が放った『紫電走刀』ですが、これは真剣を使わないといけない技で、

 

一刀が使っていた木刀は流し込まれた「気」の負荷で焼け焦げ、使い物にならなくなっています。

 

つまり、この時道場には木が焼ける匂いがプーンと漂っているわけです。

 

 

では、次回こそ、北郷家三代にわたる奇妙な宿命についてお送りしたいと思います。

 

 

それでは。


 
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