2学期が始まってからそれなりに日数が経つのだが……
「はい勇紀君、あ~ん♪」
「いや、あのねリンディさん…自分で食べれますから」
「遠慮しないで良いから。あ~ん♪」
現在俺はリンディさんに『あ~ん』を迫られている。
こんな教室の中でやられたら注目が集まるのは当然だし…
「「「「「「「「「「長谷川ー、食ったら分かってんだろうなー」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「長谷川君、パクッといっちゃおう」」」」」」」」」」
男子はこの現状を妬み、女子は現状の次の段階へ行けと促す。
「タベルンダ?ユウハ『アーン』サレタモノヲタベルンダ?」
「ユウキ、タベタラドウナルカ…ワカッテルヨネ?」
視線を合わせたら『俺・即・斬!!』されそうなので2人の方には決して向かない。
…向かなくても『俺・即・斬!!』されそうだなぁ。遺言書いておくか?
「ここにシュテル達がいないだけマシなんじゃないの?」
「いやいやテレサさん。こういった情報はすぐに他クラスにも伝わると思うよ」
テレサ…謙介…。のんびり会話してないでヘルプミー。
「ねえ勇紀君。手が疲れるので早く食べてくれないかしら?」
「いえ…ですからね……」
俺が拒否ってもリンディさんは止めようとしない。かといって食えない。食ったら俺の命がマジ危うい。
……困った、完全に千日手だ。お互いに譲らないから状況が変わろうとしない。
「「「俺(私)のリンディに何手を出してんだ(出してんのよ)クソモブゥッ!!!」」」
キターーーーーーーーー!!!!
この状況をぶち壊してくれる存在…銀髪トリオキターーーーーーーーーー!!!!
俺は初めて奴等に感謝している。コイツ等遠慮なしにリンディさんの事呼び捨てにしてるけどこの際ソレは置いといて。これで状況が動くはず……
「「「「「「「「「「天使の皆さんの昼食タイムは邪魔させん!!!表出ろゴルァ!!!」」」」」」」」」」
「「「上等だ(上等よ)雑魚モブ共!!!」」」
毎度の如く男子生徒達に連行されて行き、それを見送る立場の俺達。
てか連行されたら駄目じゃん!!!状況変わらないじゃん!!!
「えい♪」
「ふぐっ!!?」
連中の方を見ている隙にリンディさんにおかずを口の中に放り込まれた。
「味の方はどうかしら?」
『モグモグ…ゴクン』とよく噛んでから飲み込む。
むむ…この煮物、中々風味があって良い味だ。
「美味しいです。ていうか意外でした。リンディさん甘党だからてっきり甘過ぎるかもと思って警戒してたんですが…」
これも『あ~ん』を避けていた理由の1つだ。
砂糖大好きリンディさんだからな。てっきり舌が引く程の甘さになってるかもと思っていたが杞憂に終わった。
「流石にお弁当のおかずでそこまで甘くはしないわよ」
『失礼しちゃう』とでも言う様に頬を少し膨らまし、睨むリンディさん。
「「……………………」」
そして殺気の密度が増しているレヴィとフェイト。
ははは……五体満足で帰れるといいなぁ………。
それから数日後の休日…。
「…まあ、母さんの人生は母さんのモノだから僕としては深く関与するつもりはないが、実の母親が息子より年下だというのは複雑過ぎる気分だよ。世間的にもどうかと思うし」
「やっぱ、渡しちゃマズかったかなぁ」
ミッドチルダのとある喫茶店。
クロノは珈琲、俺はカルピスを飲みながら会話している。
今日はクロノの友人を紹介してくれるとの事でミッドまで来ていた。その友人とやらはまだ来ていないが。
「本局内でも大騒ぎだよ。母さんが突然若返った事については」
「まあ『若返りの薬』なんてある意味ロストロギアだもんなぁ」
でも危険物ではないためロストロギア認定出来ないらしい。本局も俺から取り上げる事が出来ないので地団駄踏んでるとか。
「おかげで男性局員の多くは母さんに交際、求婚を求める人が続出するし母さんと同世代以上の女性局員は羨望の眼差しを向けているぐらいだ」
「……………………」
モテモテだなリンディさん。まあ、分からなくもないけど。
ただ今のリンディさんは俺達と同い年にまで若返っている。そんなリンディさんに交際を申し込むのは分かるが求婚っていうのはどうなんだ?
まあ、全て断ってるっぽいし。
当然か。成仏したクライドさんも言ってたけど今のリンディさんには好きな人がいるらしいからな。一体誰なんだろうか?ちょっと気になる。
…クライドさんに聞いておけばよかったな。
「特にレティ提督…ああ、レティ提督っていうのは母さんの友人でね。その彼女は『私にも紹介しなさい!!』って母さんに直訴してるらしいし」
レティ提督…ねぇ。
そういやまだ一度も会った事無かったっけ。アニメやコミック版で見たからどんな容姿かは知ってるけど。
基本、関わる様な接点なんて無いしなぁ。
「もっとも母さんは拒否してるんだけどね」
「???何でだ?」
別に会うぐらい俺としては問題無いんだけど。
「さあ…そこは母さんに聞いてみないと」
「ふーん……あ、そう言えばリンディさん、中学に通ってるけどいいのか?艦長職ってそこまで暇な訳じゃないと思うんだが」
「母さんから聞いてないのか?母さんはもうアースラの艦長職を
「はい?」
初耳なんだけど。
「君達の夏休みが終わる少し前の事だ。母さんは現場を降りて内勤業務に異動したんだ。今の肩書きは『時空管理局本局総務統括官』だよ。平和な内勤業務になったおかげで自分が自由に使える時間が増えたんだそうだ」
「じゃあ、アースラの艦長は?」
「母さんの跡を引き継ぐ形で僕が艦長職に就いた」
しかも『提督』になったそうだ。徐々にSts原作に近付いているのが理解させられる。
「その歳での『提督』職だなんてエリート街道まっしぐらだな」
「そういう君も昇進したと聞いたが?」
「まあな。丁度2学期が始まった頃に『陸曹長』になった」
俺も一歩一歩上に向かって進んでいるのだよ。
「君の昇進の早さの方がエリートというのに相応しいと思うけどね」
クロノとお互い苦笑する。
「…で、俺に会わせたい友達とやらはまだ来ないのか?」
「…ふむ。待ち合わせ時間を過ぎてるし、連絡が無いというのも気になるな」
時計で時間を確認するクロノ。まあ、時間を過ぎてると言ってもまだ4~5分程度だから気にする程でもないんだけど。
「…っと、噂をすればってやつか。来たぞ」
クロノが言うとちょうど1人の男性が店内に入って来た所だった。
緑色の長髪に白いスーツ姿。
「ヴェロッサ!こっちだ!!」
クロノが声を上げ、その言葉を聞いた少年がコチラに向かって来る。
「クロノ君済まないね。遅くなった」
「いや、いいよ」
そして彼、ヴェロッサはクロノの隣、俺の真正面に座る。
「勇紀、彼が紹介したかった僕の友達の『ヴェロッサ・アコース』だ。役職は査察官だよ」
「初めまして。長谷川勇紀です。先日昇進したので階級は陸曹長です」
「ヴェロッサ・アコースです。クロノ君の紹介に有った様に役職は査察官だよ。それと喋る時は敬語抜きでお願い出来るかな?」
お互いに自己紹介を済ませる。
「彼は騎士カリムの義弟でね。騎士カリムについては知っているだろう?」
「そりゃあ、顔見知りだからな。義弟がいるとは聞いた事無かったけど」
「そうなんだ。僕は義姉さんやシャッハに会う度に君の事は聞かされていたけどね」
「…何て言ってたか聞かせて貰っても?」
「うーん…僕の口から言うのはアレだから義姉さんとシャッハに直接聞いて貰えるかな?答えてくれるかは分からないけど」
…スッゲー気になる。
「まあ、義姉さんから聞かなくても君の事は色々なトコから耳に入って来るよ。地上で将来を期待されてる若手魔導師の1人だってね」
「誰が期待してるのか……は言われなくても予想がつくな」
脳裏に浮かぶのは地上本部のトップ。
「それに、君の後を追う様に地上に入って来た者は皆、相応の実力を持っているじゃないか」
ヴェロッサが言う『追ってきた者』とはシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、亮太、椿姫の事だろう。
「ここ最近ではリンディ統括官を若返らせた張本人とか…ね」
「ははは…」
「ていうかリンディ統括官は学校に通ってるという噂も聞いたんだけどクロノ君、そこの所どうなんだい?」
「残念ながら事実だよヴェロッサ。『あの時の青春をもう一度』との事らしい」
クロノ曰く、リンディさんも小さい頃から管理局の訓練校へ入り、そのまま局員になったから俺達が通う様な一般の学校には行ってなかったらしい。
で、『せっかく若返ったんだもの。なら以前には出来なかった事をしたいじゃない♪』と言ったらしい。部活は女子バレーボール部に入部してた。
上層部は上層部でよくそんな個人の意思を認めたな。
「女性局員の大半はソレを欲しがっている様子だし」
「…だろうな。身近な人物で言えばプレシアさんが該当するし」
しょっちゅう若返りの薬求めて俺の前に現れるんだよあの人。
本人はフェイト、アリシアと同じ学び舎に通って勉強したいらしい。偉大な大魔導師様に今更勉学が必要とは思えないんだけどな。2人の娘がそれだけ心配なんだろう。てか心配し過ぎ。
時折、学校に忍び込もうと画策する時もあるらしいがリニスさんが(物理的に)黙らせているとの事だ。
「ま、これ以上他の人に渡すと面倒臭くなりそうなんで基本的に拒否させてもらうけど」
「そうしてくれ」
「けどもし上の人が権力使って言い寄ってきたらどうするんだい?」
ヴェロッサの疑問はもっともだが
「『俺が管理局に反旗を翻して正面から敵対しても良いならご自由に』と既に通達済みだ」
「勘弁してくれ。君がそんなことしたらシュテル達は当然として亮太や椿姫、それになのは達も敵になりかねん」
「義姉さんやシャッハもそっち側につきそうだねぇアッハッハ」
???シュテル達はまだしもなのは達やカリム、シャッハがこっち側につくとは思えんぞ?
「(君に惚れているから間違い無く管理局から離反すると思うぞ。構図からすると『勇紀>管理局』だろうし)」
「(義姉さんとシャッハが彼側についたら聖王教会も割れそうだ)」
何だよ?そんな悟った様な目で見るなよ2人共。
「とにかく、マジで管理局に宣戦布告とか止めてくれよ」
「分かってるって」
それからこの話題はすぐに打ち切りにし、ヴェロッサとの交流も深めるため3人仲良く雑談に花を咲かせていた………。
数日後……。
「はあ…」
「いきなり溜め息吐いてどうしたんだよ?」
学校が終わった俺はそのまま管理局の本局にある無限書庫にお邪魔していた。
溜め息を吐いているのはユーノ。
「溜め息吐きたくもなるよ。見てくれよ、この資料請求の山を…」
「…見てもいいのか?」
案外機密情報とか求めてる様な内容だったら勝手に見ると後々問題になりそうだけど、ユーノは首を縦に振るので遠慮無く拝見させて貰う。
「……求めてる資料の内容はともかくこれだけの量を提出期限までに揃えるのはあまりにも厳しくないか?」
「やっぱり勇紀もそう思うよね!!?」
請求してきたのが昨日。で、提出期限が明後日。
ただでさえ無限書庫の情報整理で悲鳴を上げるぐらい忙しい状態なのに、これだけの量を短い期間で提出とは……。
この資料を請求してる奴は何を考えているんだ?無限書庫の現状を理解してないんじゃないか?
誰がこんな無茶な注文したのか俺は確認する。
「……お前かよクロノ」
つい先日、提督になった友人の名がそこには書かれていた。
確かにコミック版でもユーノに無茶な請求を頼んでいた様なシーンはあったけどさ。
「アイツなら
「理解して尚、これだけの無茶を言ってくるんだ。アイツの身体に流れる血は人間のモノじゃないよ」
そ、そこまで言いますか…。余程、普段から無茶させられてるんだな。
現在目の前にいるユーノの目の下には隈が出来てるし、顔色もあまり良くない。
「…なあユーノ。お前最近定時で仕事終わってるか?」
「定時?何それ?美味しいの?」
……定時で終われていないのか。
「もう徹夜が当たり前だよ。1日3時間寝れたら良い方さアハハハハ…」
「悪い事言わんから今日は仕事せずに寝ろ!!」
壊れた人形の様に力無く笑うユーノを見て俺はちょっと大きめの声で言う。
死ぬよ!?Sts始まる前に過労死で死ぬよ!!?
ユーノが死んだらとんでもない原作ブレイクだぞオイ!!
「何つーか…お前の今日の分の仕事は俺が何とかしといてやるから今すぐに寝ろ」
「いや、悪いよ。そんな事をしに勇紀はここへ来た訳じゃないんでしょ?」
うん。ただ、ユーノと喋りに来ただけなんだがこの現状を把握して放ってはおけんでしょう。
「無理はいかんよ無理は」
俺はユーノを引っ張って司書達が使用出来る休憩スペースへ連れて行く。
「ちょ!!?勇紀!!?」
「抗議は一切受け付けん」
そのまま強引に椅子に座らせる。
宝物庫から紙コップとお茶を取り出し、注いでユーノに渡す。
「ほれ」
「……ありがと」
無理矢理に連れてきたのが不満なのか、お礼を言いながらもユーノの表情はブスッとしている。
「そう不機嫌そうな顔するなよ。お前もどっかの誰かさんみたいに倒れたら俺が
「うっ……」
弟子が弟子なら師匠も師匠だねぇ。
少しは己の身体を労わってやろうぜ。
「とにかく今は休め。それとも俺が眠らせてやろうか?」
確か宝物庫には昔、
「…何だかまともな方法で寝れそうな気がしないから遠慮しておくよ」
「そうか?」
「うん…………本当に休んでもいいのかな?」
「良いも悪いも無いって。てかマジで休め」
「……じゃあお言葉に甘えて少し寝るよ」
「夕方には起こしてやるよ」
「お願いするよ………スー…スー…」
おーおー。身体を横にして目を閉じたらすぐに寝息を立て始めたよ。
これはちょっとやそっとじゃ起きないな。それだけ深い眠りについている。
「んじゃ、ちゃっちゃと片付けるか」
俺は休憩スペースを出て再び書庫内の無重力空間に戻ってくる。
「とりあえずクロノの請求してきた資料から片付けるか。ダイダロス、優先順位の高い奴から並べ替えてくれるか?」
「了解だよ」
俺が指示すると、即座に資料の順位が入れ替えられていく。
で、浮かんできたディスプレイに表示されている資料を順に処理していく。
「ユウ君、手際良くなったね」
「たまにユーノの仕事手伝ってたからなぁ」
以前手伝った時は
メッチャ疲れたわあの時は。
それだけの成果を残しつつも無限書庫にとっては全体の整理の1%にも満たないモンだから恐れ入る。
「アレだな。管理局はもっと情報処理に長けた人材を無限書庫に割くべきだな」
「管理局でも有数の激戦業務職場だもんねぇ」
俺とダイダロスは無限書庫の人材について少し嘆く。
今働いている局員も優秀っちゃあ優秀なんだがユーノみたいに的確な指示を出せる人がいないんだよね。
指示出せる人が増えるだけで作業効率が3~7%はアップするのに。
処理し終えた資料は即座にクロノ宛で転送する。
「次は……ふむふむ」
こうして俺はユーノの代わりに資料請求の対応と無限書庫の整理に尽力した。
ユーノには目が覚めた時かなり感謝されたなぁ………。
またまた数日が過ぎてとある休日…。
俺は特に意味も無くミッドをブラブラしていた。
家に居てヒッキーを満喫していてもいいのだが、何となく外に出歩きたかったのだ。
「(せっかくだからミッドのお菓子を家に居る皆の分、買って帰るか)」
そう思っていたら何だかザワザワと通行人が集まってザワついており、道路が通行止めとなって封鎖されていた。
何だ?何か事件でもあったのか?
俺はその人垣に近付こうとした所で
ジャララララ……ガシイッ!!
「んんんんん!!!?」
チェーンバインドに拘束されてしまい
グググググッ……ヒューーーーー!!
「うおおおおおおっっっ!!!!?」
そのまま引っ張られ、俺の身体は宙を舞う。
「なんでさーーーーー!!!?」
意味も分からず確保された俺はそのまま封鎖されている区画の真上を飛んでいる。やがて重力に引かれ落下していく俺。
ヒューーーーー……ボフンッ!!
「おうふっ!!?」
そのまま地面に叩きつけられるかと思いきや衝撃緩和の魔法と対象を受け止める防御魔法のおかげで怪我はせずに済んだ。
「はーい、1名様ご到着~♪」
悪気を感じさせない呑気な声。
「テメエ椿姫コラ!!俺に何の恨みがあってこんな事しやがる!!!」
俺をバインドで縛り、ここまで引っ張った張本人は椿姫だった。
「まあまあ落ち着いて。貴方をここへ呼んだのは理由があるのよ」
『呼んだ』とな?どう考えても『拉致った』の間違いだろ?
「てかあんな呼び方する奴がどこにいるんじゃ!!」
「ここ」
自分の指で自分を指す椿姫。
よし殴ろう!!
コイツの強大な魔力で作られたバインドを直接外すには時間が掛かるから
即座に飛び掛かってとび蹴りをかますが椿姫には身体を半歩分ズラされ、簡単に躱される。
だが初めから躱される事は想定内。着地と同時に右足で回し蹴りを放つ。
が、これもしゃがんで躱される。
「甘い甘い♪」
「甘いのは……そっちじゃーーー!!!」
グイッ!!!
回し蹴りの最中、強引に右足の軌道を垂直に変え、攻撃を踵落としに変更する。
「っ!!」
ブンッ!!……スカッ…
そのまま直撃したと思った次の瞬間、俺の踵落としは空振りに終わる。
「ふぅ…危なかった。貴方の体術、そんな風に攻撃を変えられるのね」
少し離れた場所に佇んでいた椿姫。
…このアマ、
バインド外した直後に
俺は『チッ』と舌打ちして、次の攻め方を思案する。
何が何でもこの馬鹿には一撃入れなけりゃ気が済まない。
「舌打ちしてないで少しは私の話を聞きなさいな」
「だったら素直に殴られろ」
そのままワンツーラッシュで攻め立てるがムカつくぐらい華麗なステップで避けられる。
そんな攻防が約1分続き、一旦距離を取る。そのタイミングを見計らっていたのか
「あ、あのー…」
第三者の声が割って入る。視線を向けると狙撃銃型のデバイスを持った局員らしき男性が1人。
見た目からして分かるが俺達より年上だ。
「椿姫さん。民間人をいきなり連れて来てどうするんすか?」
連れて来られてません。白昼堂々と拉致されたんです。
「ヴァイス二士。彼は民間人じゃないわ。私達と同じ管理局員よ」
「マジッスか?……って、あーーー!!!よく見たら話題のルーキー魔導師の1人じゃないッスか!!」
「そうよ。そして現状を打破できる
「じゃあ、
「勿論よ」
男性局員と椿姫のやり取りを聞いて一言。
「勝手に話し進めないでくれませんかねぇ…」
こちとら現状が訳ワカメな状態なのに。
ていうか椿姫の奴は何らかの事件にでも携わっているんだろうけど俺非番。そもそも救助隊なんですけど?
「そうね。まず貴方に状況を説明しないとね」
「だから何で俺が協力する事前提なんだよ」
「じゃあ協力してくれないの?」
「お前のためには働きたくないなぁ」
「そう…なら貴方はあんな小さい子が犯罪者によって人質にされているのに、それを無視するのね?見て見ぬフリをするのね?」
「は?」
「アレ、見える?」
俺は椿姫の指差す場所を見る。
そこにはビルの窓際に丁度ジークと同い年ぐらいの子供のこめかみに銃口を押し当てている男の姿があった。
「何アレ?」
「見ての通り、犯罪者が立て籠もっているのよ」
「それで?」
「貴方にも子供を救出して犯罪者の逮捕に協力してもらおうと思って」
椿姫は犯人の隙を窺うため、全方位にサーチャーを配置していた所、俺の姿が目に留まったので協力して貰うために俺をあんな方法でこの場まで拉致ったとの事。
「……だったら普通にメールで連絡寄越すなりしろや」
「時間が惜しかったのよ」
「ていうか人質を無事救出して犯罪者逮捕するぐらいお前なら楽勝で出来んだろ」
「
「一人なら?」
疑問に思う俺の言葉に答えるかのように椿姫は1つのサーチャーの映像を見せてくれる。
それは窓際にいる男と人質の子とは別にビルの真ん中に複数人の子供が人質になっていた。
「こういう事よ」
「はあ…」
つまりどちらかを救出出来ても、もう一方をどうにかする事が出来ないと言いたいのかコイツ。
「俺からもお願いします。人質の救出に協力して下さい」
俺に頭を下げる男性局員さん。
そういやこの男性局員さんって…
「どちらさんですか?」
「申し遅れました。自分、武装隊所属のヴァイス・グランセニックと言います」
やっぱり原作キャラでしたか。
ん?て事はこのシチュエーションって…
「《おい椿姫。もしかして…》」
「《気付いた?これ、例の狙撃イベントよ》」
アレか。妹の目に誤射してしまったあのイベントか。
この誤射のせいで妹のラグナが左目を失明するんだよな確か。
「《何でそんなイベントにお前関わってんの?》」
「《そんな事言われても…今日は武装隊の人達の訓練に参加してただけよ》」
それでこの事件に巻き込まれた……と。
コイツも大概原作イベントに遭遇するよな。
「《それよりも本当に手を貸してくれない?》」
「《ていうかあのイベントの人質ってラグナだけだろ?何で他の子供も人質になってんだよ…》」
「《私に愚痴らないでよ》」
…そうですね。お前に愚痴っても仕方ないよね。
『原作に似て非なる世界だから』と割り切ろう。
「だからお願い!手を貸して!」
「俺からもお願いします!人質になってる子が俺の妹なんです!!助けるのに協力して下さい!!」
ヴァイス二等陸士も頭を下げ、懇願してくる。この頃は二等陸士だったのか。
「えっと…ヴァイスさんでしたっけ?見た所狙撃に腕のある局員みたいですけど犯人を狙撃したりはしないので?」
この人の狙撃が完璧なら窓際の犯罪者を狙撃し、中にいる残りの犯罪者を椿姫が制圧出来るんじゃ…。
「……自分、実は妹が人質になってる事に結構動揺してまして。情けない事に照準が上手く定められないんです。『今の状態で撃ったら間違い無く人質に当たる』って椿姫さんにも言われまして」
ああ……。
椿姫の奴、しっかりと警告してヴァイスの狙撃を行わせていないのか。そのおかげでラグナの左目はまだ無事と。
「それに…ビルの奥にいる犯人には流石に狙いを定められないんで」
確かに…ここからビルの中の方にいるらしい犯罪者は見えない。
「そう言う事。だから勇紀、私と貴方で同時にビルの中へ行ってそれぞれ犯罪者を取り押さえたいのよ」
「……犯罪者を取り押さえるために俺を拉致ったお前の言う事を聞くのは癪だが、そうも言ってられないみたいだし……手貸してやるよ」
人質の子も早く助けてあげないといけないしな。
「決まりね。じゃあ早速救出に行きましょう」
椿姫の号令と共に俺は軽く溜め息を吐いてからバリアジャケットを身に纏い、人質の救出班に加わるのだった………。
人質を抱えてビルに潜伏している2人の犯人。
現在俺は
俺はビルの中にいる犯罪者を押さえ、ラグナを人質に取っている窓際の犯罪者は椿姫が押さえる手筈だ。
まずは
「(それじゃあ…ミッションスタートだ!!)」
俺は早速姿を現すと同時にバインドで犯罪者の1人を捕獲する。
「何っ!!?」
突然バインドで拘束された事、そしていつの間にかビル内に俺がいた事に驚く犯罪者。
「テメエ!!管理局員か!!」
ラグナを人質に取っている犯罪者が俺の方を向く。
「余所見はいけないわよ。犯罪者さん」
直後、犯罪者の1人は転移してきた椿姫が首筋に手刀を叩きこみ、一瞬で意識を刈り取る。
「こっちの子は無事保護。勇紀、そっちは?」
「見ての通り。人質は無事だ」
人質にされてた子は4人。全員女の子だ。
…何だか初任務の時を思い出す。懐かしいなぁ。
「な、何だお前等は!!?」
そんな人質になっていた子の1人が聞いてくる。
…女の子だよな?
「管理局員だよ。この犯罪者達を逮捕しにきたんだ」
「本当か?嘘吐いてねえだろうな?もし嘘吐いてるならオレァ許さねえぞ!!」
…随分口調悪い子だね。『オレ』とか。
実は女の子の容姿に見える男の娘じゃないよな?
けど、どっかで見た事が…。
「リーダー、そんな事言ったら駄目ですよ」
「そうですよ。現にあの悪い奴等をやっつけてくれたじゃないッスか」
「私等助けて貰ったんですよ。むしろお礼を……って、あれ?」
口調が男勝りな強気な子を友達らしき子達が諭している。
その1人…長髪の子がジーっと俺を見て何かを思い出している様子。
「…何か?」
「あああああああっっっっっ!!!!!!」
いきなり俺を指差して大声で叫ぶ子共。
何!?何なの!?
「リーダーこの人!!前に雑誌で見た人ッスよ!!ほら、期待のルーキーさんですよ!!」
「何……って、ああああああっっっ!!!!ホントだ!!よく見たら雑誌で見た魔導師の人!!!長谷川勇紀さんだ!!!」
リーダーと呼ばれた子も思い出した様に大声を上げる。
「そっちの女の人も雑誌に載ってた!!滝島椿姫さん!!管理局最高の魔力の持ち主!!」
さっきからこの子等が言ってる雑誌については心当たりがある。
つい先日、俺達長谷川家、亮太、椿姫が取材を受けたばかりだからな。
あの雑誌見たのかぁ。
「あの!!長谷川勇紀さん!!!オレ、貴方のファンなんです!!良かったらサイン貰えませんか!?」
そう言ってサイン色紙を出すオレ口調の子。
どっから出したその色紙?
「勇紀、人気者ね。サインしてあげたら?」
「人気者って…」
サインなんて言われてもなぁ…。
「だ、駄目ッスか?」
そこでショボンとしないで下さい。俺が悪いみたいじゃないか。
「…下手な書き方でも笑わないでくれよ?」
「書いてくれるんですか!!?」
仕方ないといった感じで頷き、色紙を受け取るとパアッと表情を明るくする子。
とりあえずサラサラサラ……っと。
「こんな感じでいいかな?」
「ありがとうございます!コレ、家の家宝にします!!」
そこまで大袈裟なモンじゃないけど。
他の3人の子も『リーダーいいなぁ』とか言って羨ましそうにしている。
「とりあえずここから出ましょうか?貴女も大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です」
椿姫は自分が助けたラグナに声を掛ける。
で、人質になっていた子達を連れ出そうとしたら
パキインッ!
と、何かが割れる様な音がした。
そちらへ向くと俺のバインドを強引に砕いた犯罪者が怒りの形相を浮かべ、手に持っていた拳銃の銃口をコチラに向けた。
コイツ、違法魔導師か!?
「ナメやがって、死ねええええっっっ!!!」
そのまま引き金を引く犯罪者。
「アイギス!!!」
だが俺達を庇う様に前に出た椿姫が即座に空気の壁を作って銃弾を弾く。
俺は即座に魔力を右手に溜め始め、椿姫の背から飛び出し、犯罪者へ向かって駆け出す。
「(やっぱ相手の意識を奪っておくべきだったな)」
犯罪者は非魔導師だからバインドは解く事が出来ないと思い込んでいた。
凡ミスしちゃったなぁ。
そう思いながら犯罪者の目前で飛び上がる。
「なっ!!?」
俺の動作に釣られ、上を見上げる犯罪者。そのまま俺は右手の指を揃えて振り上げ
「必殺!!!カラミティエンドオオォッ!!!!」
一気に手刀を振り下ろして強烈な一撃を叩きこむ。
カラミティエンド……バーン様が使用する最強の手刀。
本家のカラミティエンドは闘気か暗黒闘気を込めた一撃なんだけど俺は魔力を纏わせている。
魔力を溜めている時点で
『なのはViVid』のミウラが使う『抜剣』の手刀バージョンだね。
「ガアアアアァァァッッッッ!!!!」
まともに喰らった犯罪者はそのまま地面に叩きつけられ、動かなくなる。
「ふぅ…」
今度はさっきより強力なバインドを何重にも掛けて、拘束する。
それからビルを出た俺達は、出迎えてくれたシグナムさんと他の局員さん達に2人の犯罪者を引き渡した。
シグナムさんはこの辺りの区画を封鎖するため別の場所で指示してたとの事。
こうして犯罪者達は取り押さえ、原作のイベントがまた1つ違った形で結末を迎える事となった。事情聴取の際、助けた子達が『なのはViVid』に出てたハリー番長とその仲間の3人だと知った時は驚いたね。こんな事件に関わるなんて思ってなかったからさ。
あと、今回の事件を機にヴァイス二等陸士、ラグナの2人とは顔見知りになり、男の知り合いが増えた事が少し嬉しい俺だった。
俺の周り、女の子の知り合い多過ぎるから男の友達や知り合いって貴重なんだよね。
それからヴァイス二等陸士は椿姫に惚れていた。
ホント、あんなヤツの何処がいいのか俺には理解出来んよ………。
~~ハリー視点~~
犯罪者から無事に救出されたオレ達は事情聴取を受け、ついさっき解放された。
「~~♪~~♪」
「リーダー、嬉しそうッスね?」
「そうか?まあサイン貰えたしな♪」
オレの足取りは軽い。事件に巻き込まれたというのにだ。
まあ、オレの憧れの人に助けて貰えたし、サイン貰えたし、何より少しだけだけど戦う姿が見れたし。
「しっかし凄かったッスねー。特に悪者をやっつけたあの一撃」
「ホントホント!」
「アタシ等よりちょっとばかし年上なのに『地上本部の未来を担う若きルーキー、次代のエース達』って雑誌に紹介されてたぐらいですしねー」
コイツ等の言う通りだ。
オレ達よりちょっと年上なのに危険な現場の最前線で幾度となく活躍してる管理局員の人。色んな部署を回りながら物凄い勢いで立場が上がっていく魔導師。
あの局員さん…長谷川勇紀さんが模擬戦を行っている映像が雑誌の付録DVDに収録されているのを見た時、オレの心を掴まれたような気分だった。
今でも鮮明に思い出せる程何度も見たっけあの映像。
「カラミティエンドとか言ったっけ。…カッコ良かったなぁ」
犯罪者に叩きこんだあの一撃。あの人の必殺技かな?
「…うし!決めた!!」
「「「???何がですかリーダー?」
「オレもあの人みたいに強くてカッコイイ魔導師になる!!今そう決めたんだ!!」
「「「本気ですかリーダー!!?」」」
「おうよ!!」
と、言いつつも強くなるには身体を鍛えないといけないよな。
どう鍛えたらいいんだろうか?腕立て?腹筋?ランニング?
「…本屋に寄ってトレーニングに関する本を買うか」
よし!!善は急げだ!!
オレはすぐさま後を着いて来る3人と一緒に本屋に向かった。
強くなりたい。
強くなっていつかあの人と手合わせ願いたい。
オレの胸中に目指すべき道と目標が生まれた瞬間であり、オレが本気で格闘技、魔法戦技に入れ込むきっかけとなった出来事が起きた……そんな日だった………。
~~ハリー視点終了~~
~~あとがき~~
ヴァイスの誤射事件の事を思い出したので忘れない内に書きました。
今回はヴァイスの誤射を無くすか、誤射した後に勇紀の
後、友人が『番長出して』と懇願してきたので『昼飯を奢ってくれ』という取引を持ち掛け、応じてくれたので番長出しました。
勇紀が今回『カラミティエンド』を使いましたが『フェニックスウイング』『カラミティウォール』『天地魔闘の構え』も実は習得済みです。勇紀(あと自分も)はバーン様の使う技が好きなんです。
もっとも今後、上記の技3つを使う機会があるかはまだ未定ですが…。
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。