No.608620

俺の日常が一変した

ネメシスさん

去年、恐怖の大王さんがやってくる年でしたね。
そう思いながらこの短編を製作していました。
ノストラダムスの大予言、恐怖の大王と人類の存亡をかけた戦いの幕開け
そんなイメージの短編です

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2013-08-14 17:02:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1976   閲覧ユーザー数:1947

 

 

『1999年の7の月

 

天から恐怖の大王が降ってくる

 

アンゴルモアの大王をよみがえらせ

 

その前後マルスは幸福の名のもとに支配するだろう』

 

 

 

「……ばっからし」

 

そういい俺は「閉じる」ボタンを押してそのサイトを閉じた。

そもそも俺は占いだとか予言だとかそんなものあまり信じていない。

朝の番組でやってるちょっとした占いは時々見るが、その良い悪いでテンションが急激に上昇下降することなどない。

まぁ、そういうものも何らかの統計だとかをもとにして作られているのかもしれないけど、仮に獅子座の運勢が最低で何をやってもうまくいかない一日だといわれて、じゃぁ世の中の獅子座全員がうまくいかないなんてことがあるのだろうか?

……まぁ、そんな可能性も0じゃないとしても限りなく0に近い数値には違いないだろう。

結局は占いだろうとなんだろうと目安の一つでしかなく、そんな曖昧なものでいちいちテンションが左右されるのなんてばかばかしいことだろう……まぁ、信じるという人を否定なんてしないがな。

それでも、さっきまで俺が見ていたサイトにあった「ノストラダムスの大予言」、お前ははだめだ。

何やら地球の終焉だとか魔王復活だとか大それたことが書かれているということから世界的に知名度が上がり「世界三大予言」などと呼ばれるまでに至っているそうだが他の二つの予言にも言えることだが、ほんと一体何度改定されているのやら。

その予言が公開されて数年くらいは世界的に注目されていたようだが、もうここ数年での注目度は一部の限られた人達の間でしか流行ってないようなマイナー漫画よりも低い。

ま、そりゃそうだろ。

さっきのサイトにあった1999年7の月に恐怖の大王が降ってくるというのがあったが、その年に世界になんら変化はなく、いつも通りの生活が送られていた。

まぁ、一部の地域では内乱だとかなんだとかで人死があったかもしれないが、言っちゃ悪いがそんなものと何ら関係のない、ただの情報でしか知ることがない生活を送っている人たちからしたらそれもいつも通りの生活に分類されるだろう。

予言が外れたことから世界的に注目を浴びていたその予言は注目度を下げることとなった。

俺はその予言をすべて知っているわけではないが仮にその予言の中のどれかが当たっていた、または似たようなことが起きていたとしても今となってはそれは偶然の出来事としかだれも思わないだろう。

中にはその予言を作者であるノストラダムスが書いたポエムだとか言っている人もいるくらいだ。

何やら最近ではまた改訂されたようで、ノストラダムスの予言は実は13年ずれていたから外れたんだというらしく、恐怖の大王は1999年の13年後つまり2012年にやってくるということらしい。

……アホかと。

だったら今までの予言全ても13年ずれていることになるわけで、今まで偶然かどうかで当たっていたかもしれない出来事も間違いだったと認めてるだけでしかないじゃないか。

そして、13年ずれたことを計算しても当たっている予言がないという。

 

「……ま、所詮はその程度だろうさ」

 

俺には関係ないとばかりに、パソコンの電源を切る。

夜も更けてきたこともあるため部屋の電気を消してそのまま布団の中へダイブした。

 

(……そういえば)

 

先程のサイトで見た内容をふと思い出す。

確かその内容では2012年12月22日に恐怖の大王がやってくるということだったが。

 

「……12月22日……明日じゃねぇか」

 

そう、今日は2012年12月21日。

奇しくも恐怖の大王がやってくる前日だったのだ。

 

「……ふぅ、次はいつ大王様がやってくることになるのやら」

 

俺はフッと溜息を吐き目を閉じた。

 

(……あ、明日大学のレポートの提出日だっけ………ま、いいや)

 

意外と早く睡魔がやってきたこともあり、俺はそのまま眠りの中へと落ちていった。

 

 

 

2012年12月21日23時59分55秒

 

56秒

 

57秒

 

58秒

 

59秒

 

『カチッ』

 

2012年12月22日00時00分00秒

 

この時、世界は一変した。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「……むぅ」

 

窓から射す太陽の光が、瞼の裏の眼球を刺激して俺の眠りを妨げる。

もう朝かとまだ寝ていたいと思いつつも重たい目を擦りながら起き上がる。

 

「……ん?」

 

目を擦っている時に気付いた、左手首に感じた違和感に俺はなんだろうと思い目を向ける。

 

「……時計か?」

 

見てみると俺の左手首には一見腕時計のようなものがつけられていた。

しかし、昨日俺は腕時計をしたまま寝ただろうか?

よく考えるまでもなく俺はそんなことはしない。

そもそも俺は腕時計など携帯をまだ持っていなかった数年前までしかしておらず、携帯が手に入ってからは時間を確認する時もそれに頼りきりになっているのだ。

そんな俺が持っているはずもない腕時計をつけていること自体おかしい。

 

「くそ、なんだってんだ!? ……って、どうやって取るんだよこれ!?」

 

急に不気味になった俺はその腕時計のようなものを外そうとしたが、そのどこを見ても外せる部分が見当たらない。

こうなったら無理やりにでもと思い、思い切り引っ張るのだが当たり前のように外れる気配がなく俺の手首が痛くなるばかりだった。

 

「……ったく、どうなってやがんだ?」

 

一通り騒いで結局何もわからないままだったが、そもそも俺は頭がいい方ではないので突然こんなことが起こったからといってああだこうだ考えても答えが見つかる可能性なんて皆無、とまでは言わないまでもかなり低いだろう。

と、言うわけで今現在訳の分からないものに頭を悩ませるのはいろいろと無駄だと思考を停止した。

ふと近くにあった携帯を手に取り時間を見てみると7時をちょっとすぎたくらいでいつもの時間と比べて少し早い時間ではあったが、いろいろと騒いだせいか小腹が空いたこともあり少し早い朝食をとることにした。

 

「……ふぅ」

 

軽く朝食をとった後、ブラックなコーヒーを飲みながら一息つく。

腹が満たされたおかげか先ほどより幾分か心に余裕ができた気がする。

 

「そいう言えば、このわけわかんねぇ状況になってんのって俺だけなのか?」

 

ふと感じた疑問。

この多くの人間が住む地球で俺という一個人だけがこんな状況に陥っているのだろうか?

流石にそれはどうかと思う。

仮に俺だけがこんな状況になっているんだとしたら俺自身に何か特別な何かがあるのかもしれないが、そう思い自分のこれまでを振り返ってみるもはっきり言って俺に特筆できるところ等ほとんどなかった。

だとしたら、俺だけじゃなく俺以外の人たちも同じ状況になっている可能性もある。

もしかしたら何かわかるかもと、淡い期待を寄せテレビをつけてみる。

ちょうどニュースで緊急速報が流されているところだった。

 

「……は?」

 

俺は見間違いかと思い一度目を閉じてこすり、もう一度テレビを見る。

 

「……嘘だろ?」

 

しかし、報道されていたものに違いはなく、俺の見間違いではないということが分かっただけだった。

 

「……恐怖の大王?」

 

そのニュースによると2012年12月22日00時00分00秒丁度に地球上すべての人間の腕に腕時計のようなこの装置が現れたようだ。

そのことで多くの人がパニックに陥っている中、今度は全テレビ局が何者かによりハッキングを受け全テレビが砂嵐状態になってしまったらしい。

数時間そのままの状態が続いたが、ようやく砂嵐が収まり復興したと思った時そこに映し出されていたのは人とは異なる風貌の存在だった。

全体的な姿は人間に近いのだが、体色は黒みがかって目は血のように赤く、耳は物語で見たことがあるようなエルフのように尖っており、その頭には1本の角のようなものが生えていた。

一体何者か、そうみんなが思っていた時、その存在が語りだしたそうだ。

自分は恐怖の大王アンゴル=モーアだと。

その存在が語ったことをまとめてみると次の通りだ。

 

一つ目にアンゴル=モーアはこの地球から遠く離れた星から来た異星人である

二つ目にその星では魔法と科学の二つの文化がありその融合体である魔科学が発展している

三つ目にアンゴル=モーアはその星で異端とされている研究をしていた魔科学者で自身を実験体としてさらなる超生命体へと進化を遂げた

四つ目に超生命体へと進化を遂げたアンゴル=モーアは自身を討伐すべく現れた数多くの戦士たちと戦ってきたがいつしかその戦士たちもいなくなりその星においてアンゴル=モーアと戦える者はいなくなった

五つ目に長い年月を生き、自身を打倒する猛者も現れることがなく退屈していたアンゴル=モーアは、ならば自身を打倒しうる存在を作る装置を発明しようと新たな研究を行いついに完成することができた

 

そう、そのアンゴル=モーアを打倒できる存在を作るために発明された装置とは、今この世界中の人たちの腕に装着されたこの腕時計のようなものMAD(Magic absorption device)という物で、これは魔力を吸収して装備者に組み込み能力を強化させる装置らしい。

この世界に魔力が存在するのか、そう疑問にも思うがそいつはこの世界に魔力があるかないかなど問題ではないと言っていたそうだ。

そしてこの装置だが、ただ魔力を吸収するだけでなく今現在の装備者の能力や状態を表示させる機能もあるとか。

そして、全ての事が始まるのは2012年12月22日08時00分。

一体何が始まるのか、それが気になったがどうやらそこまで言った後、回線は切断されてしまったそうだ。

……と、ここまでが恐怖の大王アンゴル=モーアが語った内容だ。

その後どこでハッキングを行ったのか各国がそれぞれ独自に調査を行ったそうだが、結局何も得られず終いだったらしい。

 

「……恐怖の大王……嘘だろ、マジかよ」

 

俺はそのニュースの内容に唖然としてそれ以上言葉が出なかった。

恐怖の大王アンゴル=モーア、ノストラダムスの大予言が13年の時を経て今ここに実現したということだ。

その予言とどこまでが一緒のかはわからないし、これもまた偶然が重なっただけということも考えられるがそれら全てがどうでもいい。

 

「いった、何が起こるってんだよ」

 

アンゴル=モーアは全てが始まるのは2012年12月22日08時00分だといっていた。

時計を見るとその時間まで残り1分を切っていた。

何が起こるにしても、きっとろくでもないことに決まっている。

……そしてついに恐怖の大王が宣告した時間が今過ぎた。

 

「……ッ!? な、なんだ!?」

 

別段、地震が起きたとか火事が起きたとか皆既日食が起きたとかそんなことはなかった。

だが突然、そう突然に家の外から獣のような腹の底に響くような低い唸り声が聞こえだしたのだ。

 

『(ザァァァァァアァアア)』

 

そして今度は今までニュースが行われていたテレビが砂嵐状態になる。

しかし、それも長くは続かなかった。

 

『(ザァァァァ)……時間だよ諸君。この美しき蒼き地球に住む人類諸君』

 

砂嵐が収まりそこに映し出されたのは、あの恐怖の大王アンゴル=モーアだった。

 

『今この瞬間、この地球上に計666個の大小様々なダンジョンを生み出した。大きいものでは10階以上、小さいものでは5階もない深さのダンジョンをこの地球上の各地に生み出した。その中には様々な魔物たちが諸君を歓迎してくれるだろう。

その魔物たちの歓迎を受け生きて最深部までたどり着きそのダンジョンの主を倒すことができればダンジョンクリアとみなされる。クリアされたらそのダンジョンは消えるだろう。

そしてこの地球上に生み出した665個のダンジョンをクリアしたら、最後の一つのダンジョンで私は諸君を待っているよ。そこで私と共に極上の闘争を楽しもうではないか!

あぁ、そうそう、怖気づいてダンジョンに入らないというのもいいが、ダンジョンに徘徊する魔物たちはダンジョンの外を目指して進行する。

わかるか? つまり諸君たちの世界に魔物が現れるということだ! ダンジョンに行かなければ安全だなどという儚く脆い幻想など捨てることだ。ちなみに魔物たちは時間が経つごとに生み出されていく。何もしないでいると、君たちの世界は私の創ったかわいい魔物たちが蔓延る世界へと変わってしまうだろう。

いうなれば、これはゲームだよ。私たち魔物群と諸君たち人間の生存を賭けた血沸き肉躍るような楽しい楽しい闘争ゲームだよ!

さぁ人間諸君、今までの死ぬほどつまらなく、ただ延々と生きてきた退屈な日常はお終いだ。武器をとれ、魔物を狩れ! 魔物を狩ることでその魔物が保有する魔力を吸収して諸君らはどんどん強くなっていくだろう。そしてぜひ私の元まで来てくれたまえ。

共に狂うほど愉快で楽しい、血風吹き荒れる地獄で踊ろうではないか!』

 

そう、高らかに狂ったように一方的に言い放ったのち、テレビはいつものニュース番組へと戻った。

 

「……マジ…かよ」

 

こうして、俺たちの今まで変わることのなかった平穏な日常は幕を閉じ、人類の存亡をかけた戦いが幕を開けた。

 

 

 

 


 
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