第8剣 女神フレイヤ、巨人の王スリュム
キリトSide
第3層へと突入した俺達。
第1層、第2層と違い、やはりピラミッド形状になっている為かこの層は上層に比べ狭く、通路も細いうえに入り組んでいる。
しかし、今回ばかりは先を急がなければならないので、
俺とアスナの愛娘であるユイの力を借り、地図データに則って先へと進む。
途中にあるギミック類もユイの指示に従って次々と解除し、時間を弄さずに前へと進めた。
2度、中ボスと戦うことにもなったが、それらを含めても14分で第3層のボス部屋へと辿り着いた。
そこには上層にいたサイクロプスやミノタウロスの2倍はあると思われる巨躯、しかもその下半身は長く、
左右に10本もの足がある巨人が待ち構えていた。
「……キリト、ここは私とお前で…!」
「ああ! 俺とハジメでタゲを取る、他のみんなは足に集中攻撃を頼む!」
「「「「「了解!」」」」」
ハジメの言葉の意味を悟り、他のみんなに指示を出し、それぞれが行動に移る。
天井知らずの攻撃力を持ったその攻撃は凄まじく、逸らしたり弾いたりすることで大ダメージは受けずに済むが、
さすがにこの巨躯で激しい攻撃なので俺もハジメも決して集中力を途切れさせないようにする。
「やぁっ!」
「ハァッ!」
「だぁっ!」
「うらぁっ!」
「せぇいっ!」
リーファ、アスナ、クライン、ルナリオ、シノン…みんなが足の1本に集中して攻撃している。
1つずつ潰していくのが最良だと、アスナが判断したのだろう。現に彼女は俺の方を向くと…。
―――信じてるから…だから、こっちは任せて!
そう、俺に呼びかけてきた。俄然、やる気が増したし、負ける気もしなくなってきた!
横目にシノンを見た後、彼女もハジメに視線を投げ、2人の視線が一瞬だけ交じり合い、
互いに微笑を浮かべてからすぐに戦いに戻ったことに気が付く。
どうやら、ハジメもやる気が増したようだな。
その時、リーファが長刀で放った一撃により、奴の足が1本吹き飛んだ。
「いま吹き飛ばした方側の足から破壊してくれ! そうすればバランスが保てなくなるはずだ!」
俺の言葉にアスナ達は頷き、そのまま攻撃を続けた。俺とハジメも仲間の頑張りに応える為に、タゲ取りに勤しんだ。
それから6分が経過した頃、片側の足が全て無くなったことでバランスを崩したボスに対し、
ルナリオが強力な一撃を叩き込んだことで、奴は真横に倒れた。
その隙に残りの足を全員で切り刻み、ぶっ叩き、突き刺しを繰り返し、全ての足を破壊することに成功した。
あとは動けないボスを背後やら攻撃の命中しない箇所から集中攻撃を行い、見事に打ち倒すことが出来たわけだ。
HPとMPの回復後、5分ほど休憩(精神的な)を取り、俺達は第4層へと足を踏み入れた。
ダンジョンの構造からして、最後である第4層は少しの道とボス部屋のみと予測できる。
俺達はスリュムを倒し、ニブルヘイムに叩き帰すべく、奥へと続く道を歩んでいた……のだが…。
「ここから、出して…」
通路の壁際、細い氷柱によって鍾乳石のような柵が檻を形成していた。
その中には身長がアスナほどで、雪のような白い肌と流れるようなブラウン・ゴールドの長髪と瞳、
大き目の胸を持つ、見目麗しい(アスナには劣るが…)人が囚われていた……もしや…。
「お願い……私を、ここから出して…」
「「「罠ね・罠だね・罠よ」」」
「罠、なんだよな…?」
そんな請願を真先に一蹴したのは女性陣のアスナとリーファとシノン、疑問形でクラインがそう言った。
まぁ、確かにこの時間に制限がある状況下では一蹴するしかないよな…。
「パパ、あの人はNPCです。ウルズさんと同じで言語エンジンモジュールに接続していますが、HPゲージがイネーブルです」
「そうか…つまりあの人は護衛対象か、或いは…」
ユイが教えてくれた事実に俺は2つの可能性を考える。1つはクエスト中に出現するNPCの護衛、もう1つは…。
「「……罠だろうな・罠っすね」」
「罠、だな…」
ハジメとルナリオも即座に応え、さすがのクラインもその可能性が高いと理解したか。
そう、もう1つの可能性は罠だ…俺達に奇襲を掛ける為、または何処かへと誘導する為の。
だが俺はそうは思わない。何故なら、この場面でここに囚われているとしたら、1人しか有り得ない。
「あんた、名前はなんだ?」
「私は『フレイヤ』と申します」
「なるほど…目的は、スリュムに奪われた宝物の奪還だな?」
「はい、妖精の剣士様。貴方の言う通り、私はスリュムに奪われてしまった大切な宝物を、どうしても取り返したいのです…」
檻に歩み寄った俺の問いかけにあっさりと答えた。
嘘、というよりもこの物語の展開上でこの人物は嘘を吐いていない。
その確証を俺は掴んでいる。
「なら問題無いな。助けるぞ」
と、俺が言ったのだが……珍しく、白い目を向けられた…しかも女性陣に。
「お兄ちゃん…わたし、がっかりだよ…」
「キリトはそういう人じゃないと思ってたのに…」
「キリの字よぉ…。オレもカノンが居なけりゃ、お前と同じだったかもしれないが、お前にはアスナがいるじゃねぇかよ…」
どういう意味だ、ゴラァッ! 俺は心身共にアスナの物だっての! リーファもシノンもクラインも失礼だな!
「……英雄、色を好むと言うからな…」
「キリトさん…。それでも、キリトさんはボクの憧れっすよ!」
ハジメ、ルナリオ…テメェらはワザとだろぉっ!? そのニヤけた顔を隠そうともしないのかっ!?
「酷いよ、キリトくん! わたしという者がありながら…!」
「駄目ですよ、パパ! ママを悲しませたら!」
オヨヨッと泣き崩れる(真似をする)アスナ、終いにはユイにまでそう言われる始末。
分かった、お前ら(ユイ以外)……いい度胸だなぁ…。
「よし、アスナ。リアルに戻ったらたっぷり可愛がってやる…なぁに、アスナの為なら俺は何時間でも頑張るから」
「え゛っ/////////!?」
照れと絶句と驚愕を同時に行えるアスナは器用だなと思いつつ、俺は視線を他のメンバーに向ける。
皆が皆、怯えているのに気付く…「やりすぎた」、一同そう思っているに違いない。
「クライン、この一件が終わったら《
なぁに、HPバーがレッドになったらすぐに回復させてやるさ。
シノン、お前は射撃の訓練がしたいよな? なら俺が的役になってやる。
俺に向けて射撃を行って俺はそれを叩き落としながら接敵するから、自分がやられないようにしてくれ。
リーファは、そうだな……リアルで剣道の稽古を付けてやる。二刀流は貴重だからな、多分良い経験になるぞ」
「「「(ふるふるっ!)」」」
「遠慮しなくていいぞ?全力で教鞭を揮ってやるから、覚悟しておけよ…」
「「「(ガクガクガクガクッ!?)」」」
俺の宣言に3人は断るべく首を横に振ったが、そうは問屋がおろさずに、圧力を掛ける。
次いでハジメとルナリオにも視線を向ける。
「2人とは、リアルで久しぶりに戦おうか…? 一対二でも構わないが、無論……全力で、本気で征くからな?」
「……そ、そう、だな…」
「りょ、りょうかい、っす…」
動揺を押し隠す2人はどもりながら応える。これで文句はこれ以上言わせない…(黒笑)
アスナの日記より抜粋
きょうのきょうくん…『にどと、ぜったいに、キリトくんをからかわない、まる』
俺は二振りの剣で氷の檻と両手足を拘束していた氷の鎖を断ち切り、囚われていた人物を解放した。
みんなが危惧していた罠の類はなく、会話が続くことになった。
「ありがとうございます。私も出来得る限りの力をお貸ししますので、どうかスリュムのいる部屋へとお連れください」
「ああ。アンタの力、期待している」
会話を終えるとフレイヤと名乗った人物のパーティーへの加入ダイアログウインドウが現れたので、OKを押す。
すると、視界左上にある仲間達のHPとMPゲージの一番下に、『Freyja(フレイヤ)』の名とHPとMPゲージが追加された。
ここでリーファの持つメダリオンに一瞥すると、その8割近くが黒く染まっている。
まだ時間に多少の余裕はあるが、かといってゆっくり出来るわけでもない。
「さて、ダンジョンの構造から考えて、そこの階段を下りればすぐにボス部屋のはずだ。
序盤は攻撃パターンを掴むまで防御主体、反撃時は指示を出す。
攻撃パターンの変化は黄色と赤ゲージへの突入で変わるはずだから、そこを注意するように」
その言葉にみんなは真剣に頷き、俺達は階段を下りた。
階段を下りた先には、2匹の狼が彫られた氷の扉があり、近づくとその扉が開き始めた。
「アスナ、頼む」
「うん」
俺の言葉を聞き、アスナは支援魔法を
次いで先程パーティーに加わった人物がHPを大幅にブーストさせる未知の魔法を使った。
準備が完全に整い、俺達は部屋の中へと足を踏み入れた。
その中には黄金製の様々な武器やオブジェクトが置かれており、金貨や金塊までもある。
アスナとリーファ、シノンとクライン、ユイが部屋の中を見渡す。
「凄い金の数々ね…」
「億万長者もビックリですよ…」
「目が痛くなりそう…」
「総額で何ユルドになるんだろうな、コイツは…」
「さすがのわたしも判定できません…」
そんな風に話す5人に対し、残る俺達4人は僅かに暗闇に包まれる部屋の奥を見据えた。
そして次の瞬間、その声が聞こえてきた。
「小虫が飛んでおるわ…」
大地が震えるかという程の重低音の声、床を歩く音、そして視線の先に現れる巨大な影。
通常の人型邪神やボス邪神の倍を優に超える巨躯、脚は巨木のようであり、肌の色は鈍い青のような色。
両腕両脚には幾つもの獣から剥いだと思われる黒褐色の毛皮を巻き、腰回りには小舟ほどの大きさの板金鎧。
上半身は裸なのだが筋骨隆々、長く青い髭が垂れ、額に乗る黄金の冠、そして瞳は寒々とした青。
いままで戦ってきたボスの中でも最大級の大きさだ。
コイツがこの城の主、『霜の巨人の王スリュム』か。
「アルヴヘイムの小虫が、ウルズに唆されたか。彼奴の居場所を教えれば、財宝を好きなだけくれてやるぞ、んん?」
「お生憎と、財宝には興味ない。興味があるのはお前の首だ。さっさとその小狡い頭を寄こせ、デカブツ」
「キ、キリトさん…」
スリュムの言葉に俺が言い返すと奴が顔を引き攣らせた気がし、ルナリオも引き攣った顔で俺を呼んだ。
なお、俺は既に二振りの剣を抜き放ち、構えている。
ハジメとルナリオも構えたので、みんなも即座に武器を抜き放つ。
しかし、奴は俺達にではなく、さきほどパーティーに加わったばかりの人物に目を向けた。
「そこにおるのはフレイヤ殿ではないか。ようやく儂の嫁になることを決めたか、んん?」
「嫁ぇっ!?」
「うむ。我が嫁にと、この城へ輿入れをした晩、なにやら宝物庫を嗅ぎ回っていたのでな、仕置きにと獄へと入れたのだ」
驚くクラインの言葉に奴は説明を入れた。あの人物の設定はそうなっているのか……まぁそもそも、妖精九種族ではないからな。
そこに俺の服の裾をくいくいと引っ張る感覚、リーファだ。
「あのね、お兄ちゃん。あたし、この展開に覚えがあるの……フレイヤとスリュム、奪われた財宝なんだけど…」
「安心しろ、俺がしっかりと覚えてる。この後の展開も、な」
「そ、そう? なら任せるね」
どうやら彼女も気付きつつあるようだが、このまま教えても面白くないので、黙っておくことにしよう。
するとそこで、スリュムが固執している人物が声を毅然とした声を上げた。
「お前の妻になど、誰がなるものか! 剣士様方と共にお前を倒し、奪われた物を取り戻すのみ!」
確かに愛と豊穣の女神フレイヤには、戦いや死を司る戦女神の性質もある。
故に、敵に対してはこのような気位も見せるのだろう。
ただ恐らくは、その
「さすがはフレイヤ殿。ならばまずは小虫共を捻り潰し、その後でゆっくりと愛でてやろう、ふっふっふっ…」
その言葉に、女性3人がキレたような気がした。特にアスナさん、笑顔だけど笑顔じゃないです。
ま、いくらゲーム内のストーリーとはいえ、こんな下卑た言葉は不愉快だな。
「……弱い犬ほど良く吠える…」
「使いっパシリが、調子に乗るなよ?」
「っ、小虫風情がぁっ!? 良いだろう、ヨツンヘイムを手中に収める前祝いに、儂が直々に平らげてくれようぞ!」
ハジメと俺の言葉に激昂した様子を見せるスリュム。
間違いなくコイツも言語モジュール・エンジンに接続されているだろうな。
そこで俺の視界右上に奴のHPが表示された。長大かつ3本もあり、しかも見た目からして相当のステータスなのも間違いない。
HPゲージが見えない、新生アインクラッドのフロアボス達に比べればペース配分が出来るからましか。
「さぁ来るぞ! ユイの指示に従い、序盤は回避に集中!」
「「「「「「「「了解(はい)!」」」」」」」」
俺達はスリュムとの戦闘を始めた。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
みなさんご存知のフレイヤ(笑)の登場になりました~w
そして原作ではクラインがここで笑いを取る行動を取ってくれました、本作では神話知識を兼ね備えたキリトさんが担当しました。
クラインには(この場にはいないけど)カノンがいますからね・・・無論、キリトはアスナ一筋ですがw
スリュム? 次回で終わるよww
それとここまででお気づきかと思いますが、ウチの言語モジュールを使っているNPCAIはみなさん表現豊かです。
それでは次回で・・・。
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第8剣です。
さて、ついにあの神とスリュムの登場となります。
どうぞ・・・。