No.602474

項羽様マジ乙女

くらげさん

まじこいの覇王様がストライク過ぎたので。

2013-07-28 13:51:57 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:14520   閲覧ユーザー数:11781

短編集ちっくな感じで頑張りました。覇王様可愛いよ覇王様。

1/向いてませんよ、覇王様

 

「むむむ……」

 

学園の椅子に胡坐をかいて、腕組でたわわな胸を歪ませる我等が覇王様。

無事学園も統一し、自信の強さも世界に知らしめた彼女が今、ひっじょーーーに頭を悩ませている事柄があった。

知力1が悩んでも無駄とか思ったそこのお前、後で墓場に集合な。

 

「これは不味いのではないのか?」

(悩むだけ損だと思うけど……大和くん、私たちとずっと一緒だって言ってくれた訳でしょ?)

「そんな事は分かっている!」

 

恐らくもう一人の自分と話しているのであろう事に、周囲は気付いていたが急に大声を出されたらビックリもする。

 

「葉桜君。直江の事で何か悩み事か」

「む、京極か。 よ、よく分かったな」

 

覇王モードの彼女に全く怯む事無く話しかけたのは、当然というべきか京極だった。

 

「葉桜清楚ならいざしらず、覇王西楚が頭を抱える事態など彼ぐらいだろう」

「そ、そんな事はないぞ。 俺だって大和以外の事で悩む事はある!」

「参考までに聞かせて貰いたいな」

「け、今朝はニンニクの入った餃子を食べるか食べないかで一頻り悩んだ!」

「その心は」

「大和とキスする事になったら、その、困るだろうが!」

 

覇王様マジ乙女。

乙女は朝から餃子食べるか食べないかで悩まないって思ったヤツ屋上。

 

「それで、一体何を悩んでいたんだね(無視)」

「う、うむ。 百代が山篭りから帰ってきて、模擬戦も終わった訳だ」

「あの状況から無事勝てて良かった」

「んはっ。俺の大和がそれだけ優秀だという事だ!無論、京極にも部下達にも感謝しているがな!

ただ、俺は以前大和に言ったのだ。『百代が帰って来るまでは、俺がお前の姉貴分になってやろう』と」

「ほぅ。そんな事があったのか」

「うん。 それで何くれとなく世話をしてやったのだが、もう百代は帰って来ている訳だしだな、その……」

「成る程。詰る所、理由が無いと直江に会いに行く事が出来ない。そういう訳か」

「理由ならある! アイツは俺の虞美じ、いや、范増だからな!」

 

ふんす!と鼻息荒くドヤ顔で宣言する。

これで周囲へのカムフラージュは万全とか思ってる覇王様マジ乙女。

 

「話が見えんが、結局何を悩んでいるのだね?」

「……姉貴分の立場が無くなって、ちょっと寂しい」

「しかし、君達は付き合っているのだろう?」

「うわーっ!!うわーっ!!」

 

慌てて京極の口を手で塞ぐ項羽。真っ赤になった顔を隠す事も忘れてる姿マジ乙女。

 

「バカッ!周りに気付かれたらどうするっ!」

「それはすまなかった(棒読み)」

「全く……俺がどれだけ上手く隠そうとも、これでは台無しではないか」

 

ぷんすかーと怒って、真っ赤な顔のまま椅子にドン!と胡坐で座りなおす項羽様マジ乙女。

 

「それはひょっとしてギャグで言っているのか?」

 

ん?何がだ?と心底不思議そうにキョトンとする項羽の耳に、授業開始のチャイムが響く。

 

「おっと、此処からは清楚の時間だな(ズズズ……)」

「便利に使われているな、葉桜君」

「もう……でも、項羽が出てると大鼾だし、仕方ないかな」

 

身形をササッと直した清楚は朗らかに笑うと、椅子にキチン。と座り直す。

そんな彼女を見て、京極は席に戻る前に一言だけ尋ねた。

 

「彼女は、本気か?」

「……うん」

 

両者は互いに繋がっているため、回りくどくなった京極の問いに、清楚は苦笑いで答える。

こいつらは何を言っているんだ?と清楚の中の項羽だけが平和だった。

 

 

2/お待ち下さい覇王様。

 

「んはっ! 邪魔するぞ!!」

 

お昼休みのチャイムが鳴ると同時に、F組(無論二年の)に突っ込んできた覇王様。

乙女な覇王様は大和を思うとついBダッシュしちゃうの。これは流行る!

 

「まだ授業中だぞ!」

 

しかし昼前最後の授業は、担任の小島女史が担当で、素早く鞭が飛んでくる。

 

「ほぉ、俺に牙を向けるかよ?」

 

飛んできた鞭を右手で鷲掴み、引き千切ろうと力を込める覇王様。

しかし、その力は解放されなかった。

 

「覇王様。後は終了の号令だけですから大人しく待っていて下さい」

「む……そう言われては、止むをえん」

 

しょぼん。と俯いて素直に教室から出て行く覇王様。

軍師の忠告は素直に受け入れる覇王様。あの頃とは違うんです(キリッ

 

「はぁ……直江。助かったぞ」

「キチンと言い聞かせておきますので、御容赦願います」

「あぁ分かっている」

 

挨拶!と軍隊張りの号令が響き、漸くF組の授業が終わった。

 

 

普通なら一分一秒を争う昼食前の授業を長引かせた人物には呪詛を送るのがF組だったが、愛すべき馬鹿が多いクラスはとかく美少女に弱かった。

誰よりも乙女な覇王様なら、むしろバッチコイ。

 

「大和、飯を食うぞ!」

「はいはい。学食でいいですか?」

「よかろう、共をせよ、我が范増」

「覇王様はお弁当ですけどね」

「それを言うな!」

 

例えその目的が、友人知人に手を挙げて学食に向かう大和だったとしても。

 

「な、なぁ京……その、いいのか?」

「まぁ、あの人『范増って言えば誤魔化せてる』と思ってるから、騙されててあげようよ」

「おぉ、京は大人だな!」

(くくく。知らぬ存ぜぬで大和を寝取ってくれる)

 

おしいクリス、もう十歩ぐらい踏み込んでみよう。

 

 

3/覇王項羽 E:乙女回路

 

「大和は何を食べるんだ?」

「普通に定食ですが」

「……おぉ! ごはんがお揃いだな!」

「ソウデスネー」

 

普通白米は被るだろJKとか思った奴も屋上。覇王様マジ乙女。

 

「しかし、てんこ盛りのキャベツだけで食物典韋は取れるのか?」

「悪来よりは范増の再来と言われたいですね、覇王様の相方としては」

「ちょ、ちょっと間違っただけだろうが!」

「一字違いが大違いってご存知ですか?」

「サドめ」

 

唇を尖らせて拗ねる覇王様だったが、その一瞬を縫って、ヤツが現れた。

 

「そ~んな大和君にお勧め納豆!」

「買いませんよ」

「ありゃま」

「あと、胸当たってますよ燕先輩」

「当ててんのよ」

「懐かしいネタですね」

「あーー!!ああーーーー!!!」

 

座っている大和に後ろから抱き着いて、胸を押し当てる納豆小町。

今日は大和の顔を見ながら御飯を食べたい気分だったので、隣を空けていたのが徒となった。

 

「燕!お前誰に抱きついておるか!」

「誰って、お買い得な男の子? 早いトコ唾付けとかないとねん♪」

「俺のだ!」

「えー、でも今の所は軍師ってだけなんでしょ?」

「覇王様。 燕先輩はからかって遊んでるだけですから」

 

背中にべったりと張り付いた燕の腕を外しながら大和は項羽をどうどうと落ち着ける。

口も上手けりゃ頭も回る燕のサービストークをいちいち真に受ける程大和は純粋ではなかった。

その証拠に、大和程度の力でも首に回された腕は簡単に解けたし、燕もそれ以上はしつこく絡んで来ない。

 

「んじゃ大和クン、またメールするねん♪」

「教えた覚えないですけど」

「ばいば~い♪」

「おい大和。またメールするってどういう事だ」

「教えた覚えないですけど?!」

 

 

4/ヤキモチですか、清楚様。

 

放課後、図書室で読書に勤しむ清楚。

マナーを守る清楚だったが、今日は一応禁止されているケータイ(勿論マナーモード)をチラチラと見て、随分と集中出来ていない。

隣に座って読書している京極は何の反応も示さないケータイを見てそっと溜息を吐く清楚を見て、やれやれ。と内心で苦笑した。

 

(しかし、ソツの無い直江らしくない事態だなこれは)

 

四六時中べったり。という形ではないにせよ、それなりにバカップルな筈だ。

放課後の予定の報告など何時もしているのに、何故今日に限ってはしないのだろうか。

 

「葉桜君。 気が乗らないのであれば、少し運動でもしてくればどうかね」

「え? そ、そんな事ないよ?この本、面白いし」

「そうだな、校内散策など良いのでは?」

 

京極の言葉の真意を悟った清楚は顔を赤く染め、手に持った本を上に下にあげながら、パタンと閉じた。

 

 

一方その頃。大和はだらけ部でダラダラしていた。

 

「大和ぉ、彼女持ちなのにこーんな場所でダラダラしてていいわけー?」

「ほとんど無理矢理引っ張ってきたの弁慶じゃんか」

「抵抗すれば良かったでしょー?」

「ケータイすら触らせてくれない人間のいう事じゃねぇよ」

 

畳の上でだらーんと仰向けに寝転んでいる大和。そのお腹に頭を置くようにして、これまた寝転びながら川神水をちびちびやっている弁慶ちゃん。

幾度となくポケットの中にあるケータイで清楚に連絡を取ろうとしてるのだが、巧みに腕を裁かれてこの様である。爆発しろ。

弁慶は満足そうに大和のお腹の上でゴロゴロし、ときおりにぱーっと笑う。

 

「さて弁慶さん。そろそろ愛しの彼女にメールうっておきたいんだけど」

「だらけ部では生産的活動は禁止されております」

「独裁主義だなぁ」

「義経枕にしたい所を大和で我慢してあげてるんだから文句いわないのー」

 

それだけ言うと弁慶は本格的にシエスタし始め、大和は何とか這い出ようともがく。

が、人の頭ってかなり重い。良い匂いのする女子のなら心情も相まって重さ五割増。

しかし大和は心を鬼にして弁慶の頭を持ち上げる。こういうのでスケベ心を出すと、得てしてコメディになってしまうのだ。

 

「ほら弁慶。いい加減にしないと怒るぞ」

「んー……仕方ないなぁもう」

 

渋々ながらも弁慶は頭を持ち上げ、ようやく大和は人心地。

そしてケータイを取り出すとほぼ同時に開く部室の扉。

 

「弁慶、やっぱり此処にいたな」

「わ、ホントに大和くん居た」

(なまらあぶねぇ)「あれ、清楚さんどうしたの?」

「どうしたの?じゃありません。 全くもう」

 

頬っぺたをぷくーっと膨らませて、清楚はいそいそとだらけ部に入室する。

清楚を案内してきたのであろう義経は、弁慶の前に正座して主としての微笑ましい威厳を放っている。

そんな二人を眺めながらもう一度ゴロン。と寝転がる大和。ケータイを使いたかったのは眼前のお姉さんと連絡を取りたかったからで、傍にいるならまぁ問題ない。

 

「ここは何をする所なの?」

「何にもしない所です」

「何にもしないの?」

「うぃ。ゴロ寝しながらツマミ食べて、川神水飲んでダラダラするだけの簡単なお仕事です」

「そ、そうなんだ……ちょっと意外かも」

 

そう良いながら、清楚も義経を見習って正座で大和の隣に座る。

すると目敏い大和はこれ幸いとばかりに体をずらし、見事お目当ての太ももを手に入れた。

 

「やん、もう。急にきたらビックリするよ」

「ま、偶にはいいじゃないですか」

「仕方ないなぁもう」

 

何時の間にやら義経と弁慶は身を寄せ合って、大和と清楚のイチャつきを見ていた。

 

「先輩、幸せそうだなぁ弁慶」

「……そうだねー」

 

何とも幸せそうに大和の頬を撫でる清楚の邪魔をしてはならない。と義経と弁慶はだらけ部を後にする。

なので、ショータイムなのです。

 

「ねぇ大和くん?」

「なんです?」

「密室で女の子と二人きりって、お互いにその気が無くてもいけないシチュエーションだと思うの」

「すいませんでした清楚さん!」

 

跳ね起きて土下座かましたので、五回ですみました。清楚さんマジエロいっす。

 

 

5/愛されてますね、覇王様。

 

川神チェリーを取る事になりました。詳しい説明は紋白アフターをご参照下さい。

時期とか季節とか、こまけぇこたぁいいんだよ!

 

「な、なんだか、恥ずかしいねこういうの……」

「俺も滅茶苦茶恥ずかしいですけど、それより良いの清楚さん」

「なにが?」

「覇王様、一応俺との関係は隠してる心算だと思うんですけど」

「あー……燕ちゃんの一件でふっ切れたみたい。ウカウカしてられないって」

「燕先輩に感謝するか、微妙な所だなぁ」

 

ま、行きましょうか。と大和が手を差し出して清楚がうん♪と手を取る。

 

 

「お、おいガクト、葉桜先輩が川神チェリーを取るぞ!」

「おぉマジかよ……ゴクリ」

「なぉあぁぁぁぁぁぁおおおおおおぅ!!!! ふ く ら ま な い!!」

「マジかよ大和……殺す」

 

凄まじい嫉妬の視線をぶつけられるが、そんなものは清楚と項羽を落とした時点でドンとこいばっちこいだったので、大和はあんまり気にしない。

その代わり清楚は自分の摘んだ川神チェリーを皆に見られている様で恥ずかしくてたまらない。

 

「お、おい清楚!!」

「あれ、どうしたんです覇王様」

「急に入れ替わったのだ……なんだこんな物。 ほら大和、口を開けろ」

「あーん」

「んはっ、良い子だな。 どうだ、美味いか?」

「すっごい美味しいです」

「そうかそうか。 で、では、次は俺だな」

「え、やりませんけど」

「お前なぁ!!」

 

冗談ですよ。と大和は自分の積んだチェリーを覇王様の口に運ぶと、全くもう。と怒りながらも項羽はあーん。と大口を開けてむしゃむしゃ食べる。

 

「お味はどうです?」

「美味いな!もっと採るぞ大和!」

「乱獲はダメですよー」

「んはっ!分かっている!」

 

カップルじゃなくてもいいから男女二人組。それが今回唯一の決まり事。

だから余計に大和と項羽は人目を引いた。具体的にはリア充爆発しろ。

 

 

収穫も終了し、他に取れた物の説明を受けている時、事件は起こった。

性格が反転するという川神キノコを食べてしまった大和。他人への好悪も反転するという。

 

「大和、大丈夫か?! おい、命に別状は無いんだろうな!」

「大丈夫じゃ。その内効果も切れるじゃろ」

「大和、おい大和!」

「覇王様、あんまり今の大和に話しかけない方がいいと思うよ」

「ど、どういう事だ京」

「好悪も反転するって事は―――」

 

不安そうに大和の腕を抱きしめていた項羽の腕が振り払われる。

 

「へ?」

「……あぁ、いたんですか?気付きませんでした」

「当然、こうなるってことで」

「や、大和?」

「豎子、ともに謀るに足らず」

 

それはある意味、項羽の急所だった。違う言い方をするならザラキ。マハムドオンとかでもいいかも知れない。

 

「そういう訳で。さようなら」

 

この後項羽は大和が正気に戻るまで固まり続けた。

説得に赴いた大和が言うには、呼吸が少し止まっていた時間があったらしい。

ようやく現世に復帰してからはもう泣くわ喚くわ抱きつくわキスは強請るわ。

しかもそれが二人分である。大変だったろうに、でも爆発しろ。

6/見られましたよ、清楚様。

 

「あー何処かに美少女生えてないかなー」

 

ややゲッソリとした顔で廊下を彷徨う百代。やつれている理由は偏に美少女分の不足だった。

というのも、色んな意味で目を付けていた美少女of美少女の葉桜清楚を弟に取られ、こういう時に弄くって気分転換する弟はその葉桜清楚に取られてしまった。

いや、男としての大和に興味は無い訳だが。と色々自分に言い訳してみるが、結局の所弟が他の女(しかも年上)に取られてお姉ちゃん寂しいのである。

 

「景気の悪い顔をしているな、武神」

「京極、清楚ちゃん見なかったか」

「葉桜君なら図書室に居たが、何か用事かね」

「尻撫で回して乳揉みたい」

「ふむ。 所で先程から気になっていたのだが、頭が半分になった赤子が「でゅわっ!!」

 

最後まで話を聞く事無く百代は消えた。

後に残された京極はしかし気にした風でもなく、止めていた歩みを進める。

 

 

「流石にマナーは守る、美少女だからな」

 

そーっと、到底縁のない図書室の扉を開けた百代はあちらこちらに視線を彷徨わせて目的の美少女を探す。

気で探れない事もないのだが、趣に欠けると思うのだ。あとストーカーチックだからやめなさい。と弟に釘を刺されていたりもする。

出入り口付近の開けた場所にはいなかったので、奥へ奥へと進む百代。本を探している訳ではないのでその足取りは非常に軽い。

 

(お、いたいた♪)

 

間違いなく、あの後姿は清楚だろう。美しい黒髪のポニーテール。

しかし、妙な事に清楚の腰には何故か腕が回されており、彼女の腕は誰かを抱きしめる様に持ち上げられている。

 

(清楚ちゃんは何やってるんだ?)

 

一歩一歩、足音を出さない様に清楚の背後に近づく百代だったが、近づくにつれ、徐々に顔が赤くなっていく。

 

「んっ……ちゅっ……大和くぅん……」

「ちょ、清楚さん、ヤバいってマジで」

(ありのまま起こった事を話すぜ。 私は図書室に清楚ちゃんを探しにきたら、清楚ちゃんが弟を襲っていた。

項羽とか覇王とかそんなモンじゃねぇ、もっと違う恐ろしいモノの片鱗を味わったぜ……)

「っ!? え、ちょ、姉さん?!」

「あー……邪魔、したな」

「ちょっと待って!コレには色々事情が! 清楚さん、ちょっとマジでこれ以上ヤバいって!!」

「どうして? いいじゃない、誰も見てないよ」

「現在進行形で姉さんにバッチリ目撃されてる!」

「もぉ……恋人とキスしてる時は、他の女の子の事考えちゃいけません」

 

んーっ!!という弟のくぐもった悲鳴?を聞きながら、百代は赤くなった顔を隠す事もせずに、一言だけ零して立ち去った。

 

「『PLUCK』(勇気をッ!)」

 

 

7/遊ばれてますよ、項羽様。

 

「覇王様、キャンプ行きませんか?」

「んはっ!行くぞ!」

 

風間ファミリーに清楚(と項羽様)を加えた一行は、とある山中の川の畔で一泊二日のキャンプにしけこんでいた。

項羽と清楚の役割(というか向き不向き)を考えればアウトドアは項羽担当になりそうなものだが、バトルがあるわけでもなし、たまにはよかろう。と清楚が出張って、まぁ色々と楽しんでいた。

 

「ギャー!アタシのお肉!」

「ふふん、気を抜きすぎだぞ犬ー」

「これクリス、大人気ないよ」

 

風間ファミリーの二年女子達はキャイキャイとはしゃぎ、キャップは釣竿を持たずに素潜りで魚を捕まえにいき、お目付け役として釣竿を抱えてゲンさんが付いていった。

 

「ふーっ、あっついなぁ……」

「大丈夫か、モロ」(良い声で

「ガクトの優しさ、今は怖いよ……」

 

モロは焼き係りになってしまっていたが、今日も今日とてモロ子ちゃんだったのでガクトが甲斐甲斐しく手助けしている。

 

「はぁ!はぁ! まゆっち、いいだろ、な?」

「あ、あわわわモモ先輩今は危ないですよぉ!」

「っかーーーーたまらん!!」

 

まゆっちは野菜や肉を串に刺したり切り分けたりで忙しく、そんなまゆっちのお尻を狙う美少女な百代。

 

「まぁ怪我させる訳にもいかんからこの辺りでヤメとくとして、だ」

「は、はい……」

「弟がアレでつまらん」

 

そして集団の喧騒の中にいて、しかし自分達の桃色空間をキープしている大和と清楚。

百代がくいっと親指で示した方を向いたまゆっちは、まるで座る為に磨かれたかの様に綺麗な流木に、肌を寄せ合う様にして腰掛ける二人をみて赤面してしまった。

 

「むー。私だって清楚ちゃんとイチャイチャしたいのに、弟めぇ!」

「ラ、ラブラブ、ですね、大和さんと葉桜先輩……」「独り身のまゆっちには堪えるぜー!」

 

和気藹々とした喧騒の中で松風の一言は一際高く響き、ん?という顔をして大和と清楚が同時に首を向ける。

百代とまゆっち、ついでに松風にガン視されている状況に清楚は頬を赤くして俯き、大和はそんな清楚を姉達を交互に見ると、清楚の肩に手を回してクソ暑いのにぎゅーっと密着した。

 

「どうしようまゆっち。弟がジゴロになってしまった」

「いやいや、大和坊は素質ありまくりだったぜー」

「あわ、あわわわわ」

 

清楚が一言、大和に何やら呟いて大和は清楚を見たが、ニッコリ笑うという返事に清楚は苦笑して、諦めた様に大和の肩に凭れる様に頭を傾ける。

と、清楚の時は見るからにバカップルな行動を取る大和だったが、清楚が項羽にチェンジすると対応は変わってくる。

 

「や、大和……」

「ん? 覇王様ですか?」

「お、おう。 元々清楚と変わりばんこって約束していたからな!」

「じゃあ離れて下さいますか、だいぶ暑いんで」

「いっつも思うが、お前ホントは俺の事嫌いだろ?!」

「まさかー。恐れ多いだけですってー棒」

「隠す気皆無なんだな?! 怒らせる気満々なんだな!?」

 

どうどう。と大和は項羽を落ち着けると、焚き火で焼いていた焼き魚(串に丸ごと刺して焼くアレ)と、まゆっちとゲンさんが早起きして握ったおにぎりを取りに動いて、項羽にはい。と渡した。

 

「ん。大儀だ」

「項羽様、現代では焼き魚とおにぎりを食べる際に行わなければ成らないマナーが存在します」

「そ、そんなのがあるのか。 で、どうするんだ?」

 

清楚と項羽が入れ替わった事に気付いたのか、それともファミリー唯一のバカップルの会話が気になるのか未だ潜っているキャップを除いた全員が何してんだ?と二人を眺める。

その気配を大和は肌で感じ、内心ほくそ笑みながら項羽に一言二言耳打ちする。

 

「良いですか覇王様。恥ずかしがってはいけません。堂々と胸を張って言って下さい」

「お、おう……しかし大和、飯を食いだしてから今まで、ソレを言っている者を見ていないのだが、よもや騙している訳ではあるまいな?」

「ショックです、覇王様……そんなに、俺が信用出来ないのですか……」

「ち、違う!お前の事は誰よりも信用している!! ええいくそ!お前それを言うのは卑怯だぞ、全く……」

 

完全に手中に収められている。と項羽は内心で嘆き、ちょっとだけ喜びながらも立ち上がると先ずはおにぎりをがぶっと一口。

次に魚の腹にかぶりついて、モグモグと咀嚼して飲み込んだ後、両手を大きく掲げ―――

 

「さいきょう! いま こうう さいきょう!!」

 

と、山彦が響くぐらいの大音量で大和がいう所のマナーを口にした。

それを聞いて、真っ先に元ネタが分かったモロはぶふっ!?と噴出し、分からないまでも項羽様の純粋さに当てられたゲンさんは口元の引くつきを必死に堪える。

その他、面白さが分からなかった人達は『こいつは何と戦っているんだ?』という顔でポカンとし、元凶の大和は満面の笑みを項羽に向け―――

 

「いいですよ覇王様。馬鹿丸出しです」

「だと思ったわ無礼者!!」

 

そう発言した直後、存分に手加減されているけど十分痛い一撃を脳天に食らった。

ちなみに項羽の一撃は踵落としで、真正面の大和だけはスカートの中身の恥ずかしい布をバッチリ目視できたのだが、これもラッキースケベに入るのだろうか。

 

あとがき。

 

覇王様は卑怯すぎるでしょう。

あのルックスであの性格であのシナリオでしかもCVが一○さんとかチートと言わざるを得ない。

五番目の話の「豎子、ともに謀るに足らず」は実際に范増が言ったらしい台詞です。これを書きたかった。

 

追記

図らずもタイトル詐欺の様になってしまったのでタイトル変更しました。

紛らわしい事をして申し訳ありませんでした。


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