No.601786

リリカル幽汽 -響き渡りし亡者の汽笛-

竜神丸さん

第4話

2013-07-26 14:34:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2025   閲覧ユーザー数:1996

「…おいおい、管理局の魔導師まで来やがったのかよ」

 

戦いの中に乱入して来た二人の魔導師、高町なのはとフェイト・T・ハラオウン。

 

二人の姿を見たシャドウは面倒臭そうな口調で呟き、左手で触覚を触る。ちなみに彼が振り下ろした鎌はギャリッジの首元スレスレの所で止まっており、ギャリッジは泡を噴いて失神してしまっている。

 

(これ以上は流石に長引くといけねぇし…)

 

シャドウは左手でギャリッジの頭を掴み、もう一度鎌を振り上げる。

 

「さっさと、終わらせた方が良さそうだな!!」

 

今度こそギャリッジの首を刈り取るよう、鎌を振り下ろそうとするが…

 

-ビキィンッ!!-

 

「!?」

 

「させません!!」

 

それを見逃さなかったフェイトが、シャドウの鎌を持った右手をバインドで縛り付ける。

 

「チッ……お嬢ちゃんよぉ、俺達の邪魔をしないでくれ」

 

「あなたが何者なのかは知りません。ですが私達の前で、そう易々と殺害はさせません!!」

 

「言ってくれるなぁ…!!」

 

シャドウはバインドを左手で引き千切ってから近くの影の中へと潜り込み、フェイトの影の中から素早く飛び出す。

 

「おらぁっ!!」

 

「な…くっ!?」

 

シャドウが鎌を振るい、フェイトも自身のデバイス“バルディッシュ”で攻撃を受け止める。

 

「もう一回だけ言うぜ、お嬢ちゃん……俺達の邪魔をすんじゃねぇよ!!」

 

「そういう訳には……いきません!!」

 

お互いに武器を弾き、シャドウとフェイトは戦闘を開始した。

 

 

 

 

 

 

「エースオブエースに、金色の死神まで来るとはな…」

 

ダリルは厄介に思っていそうな目で、なのはとフェイトを交互に見る。

 

彼の算段では、レリックの引渡しを終えたらさっさとこの場から退散するつもりでいた。しかしそこへ謎の異形共と、謎のスーツ姿に変身した女が現れ、訳も分からないまま戦闘開始。そこへ管理局の魔導師まで現れたのだ、彼にとっては実に面倒な状況だろう。

 

「おいおい、嗅ぎ付けて来るのが早過ぎるだろ…」

 

幽汽もそう呟く。が、見た感じではあまり面倒臭そうには見えない。

 

「まぁ良い、誰が来ようが……戦いは楽しんだもん勝ちだ!!」

 

「!? くっ!!」

 

幽汽は気を取り直しダリルに向かって剣を振り下ろし、ダリルがそれをディアマンテで受け止める。そこから更に幽汽の猛攻は続き、ダリルを斬ろうと連続で剣を叩きつける。

 

「ほらほら、どうしたぁ!! 反撃してみろよ!!」

 

幽汽はダリルの顔面を狙って、思い切り剣を突き立てる。

 

「この……どぉらぁっ!!」

 

「何ッ!?」

 

幽汽の突き立てた剣を、ダリルがディアマンテを振るい真上へと弾き飛ばす。武器を失った幽汽の顔面めがけて、ダリルがディアマンテを振るう。

 

「そこだ!!」

 

「やべぇ………な~んてなぁっ!!」

 

「な、ぐほわっ!?」

 

が、それは幽汽にとって想定内だった。ディアマンテによる一撃を幽汽は姿勢を低くして回避し、ダリルの腹部に掌底を炸裂させる。剣で一度斬られているのもあって腹部のダメージが大きくなり、ダリルはたまらず吹き飛ばされ地面を転がる。

 

「ぐ、がは…!?」

 

「残念だったな。今の一撃が本命だ」

 

地面に落ちている剣を拾ってから、幽汽が地面に這い蹲っているダリルを見下ろす。仮面で表情は見えないが、余裕の表情をしているのは間違い無いだろう。

 

「ヘヘヘ…」

 

-ガシィンッ!!-

 

「!? 何だと!?」

 

幽汽の身体が突然、鎖型のバインドで縛り付けられる。

 

「それ以上はさせません!!」

 

「チッ、小娘ぇ…!!」

 

幽汽とダリルの下になのはが降り立ち、幽汽が思わず舌打ちする。

 

「抵抗は無駄です!! 今すぐ武装を解除し、投降して下さい!!」

 

「誰がそんな事…」

 

幽汽が左手に青白い炎を纏う。

 

「―――するかよぉっ!!」

 

-バキィィィンッ!!-

 

「ッ…!?」

 

そして強引にバインドを引き千切り、炎の弾を複数放つ。それに気付いたなのはもすかさず防御魔法プロテクションを張り、飛んで来た炎を全て防ぎ切る。

 

「なら、あなたも逮捕します!!」

 

「やれるもんならやってみろよ……小娘如きがぁっ!!!」

 

なのはが自身のデバイス“レイジングハート”を構え、幽汽も剣を構え直して突撃する。

 

 

 

 

 

 

「あ~あ、何かごちゃごちゃしてきやがったな」

 

ギャリッジの部下をなぎ倒しつつ、ファントムがボソリと呟く。幽汽はなのはと、シャドウはフェイトと戦い始めてしまっており、さっきよりも更に混戦状態となってしまっている。

 

「途中で引き上げた方が良いのか…?」

 

ファントムが自身の頭をポリポリ掻いていたその時…

 

-コツンッ-

 

「ん?」

 

ファントムの頭に、丸められた紙切れが当たる。何かと思い、ファントムがそれを拾って紙切れを広げて中を見る。

 

「…こりゃ本当に、引き上げた方が良さそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラオラオラァッ!!」

 

「くっ!!」

 

幽汽は左手を振るう事で複数の火炎弾を放ち、なのははそれを飛び回りながら回避していく。

 

「チィ…!! 何度も何度も、いちいち避けてんじゃねぇ!!」

 

「それは、とても聞けない注文です!!」

 

火炎弾を回避してからなのはがレイジングハートを向け、複数の魔力弾を生成して発射する。

 

「くそがぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

幽汽が剣に青白い炎を纏わせ、それを巨大な斬撃として放つ。斬撃は飛んで来る魔力弾を次々と打ち破ってから、なのはに斬り裂こうと高速で飛んで行く。

 

「レイジングハート!!」

 

≪All right.≫

 

カートリッジが消費され、レイジングハートの先端に魔力エネルギーが集中する。

 

「ディバイン…バスターッ!!!」

 

レイジングハートから放たれる砲撃が飛んで来る斬撃とぶつかり合い、大爆発を引き起こす。

 

「そぉりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ッ…!!」

 

爆発による煙の中から、高くジャンプした幽汽が真上からなのはに斬りかかる。なのはも防御魔法は間に合わないと判断したのかレイジングハートで幽汽の剣を受け止める。互いに押し合う事で、武器のぶつかっている部分から火花が飛び散る。

 

「思ってたより結構やるんじゃねぇか……えぇオイ!!」

 

「あなたに褒められても嬉しくありません…!!」

 

「はん、そうかよぉっ!!」

 

パワーでは幽汽の方が勝っているらしく、幽汽がなのはを力ずくで真下に叩き落とす。なのはは落ちる途中でバランスを取り戻し、再び空中に舞い上がる。

 

「チッ、しぶといな…」

 

幽汽が地面に着地し、空中に飛んだなのはを見上げる。

 

「キャアッ!?」

 

「!? フェイトちゃん!!」

 

「あ~くそ、すばしっこくて困るぜ」

 

すると横方向から、フェイトが吹き飛ばされて来た。飛ばされて来た方向からは、シャドウが木箱を蹴り倒しながら歩いて来る。

 

「すばしっこ過ぎて困るぜ。ちったぁのんびり動いても良いんじゃねぇの?」

 

「く…!!」

 

フェイトが立ち上がり、シャドウを睨み付ける。

 

「そっちも大変そうだな」

 

「そういうお前もな」

 

「…まぁな」

 

幽汽とシャドウ、なのはとフェイトが互いに睨み合う。

 

「おい!」

 

「あ?」

 

そんな彼等の下に、ファントムが駆けつける。

 

「何だよ、今こっちは忙し…」

 

「勝負ならまた今度にしてくれ、今回はもう引き上げるぞ」

 

「はぁ? おいおいどういう事だ、こっちはまだ戦い足りねぇぞ!!」

 

せっかくの戦いを中断され、幽汽が反論する。

 

「言っとくが、これを提案したのは俺じゃない」

 

「何だとって…………まさか、シアンが?」

 

「ご察しの通りだ」

 

幽汽とシャドウが顔を見合わせる。

 

「おいおい、マジかよ…」

 

「チッ、それなら仕方ない」

 

幽汽は舌打ちしてから、なのはを指差す。

 

「悪いが、俺達の上司から伝達が来たっぽいんでな。勝負はまた今度だ」

 

「な、逃げる気ですか!!」

 

「あぁそうさ、逃げる気だよ。だからテメェ等も…」

 

幽汽がパスを取り出す。

 

「逃げざるを得ないようにしてやる」

 

 

 

≪Full Charge≫

 

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…!!!」

 

パスがベルトのバックル部分に翳され、音声が鳴る。すると幽汽の身体が青白い炎に包まれ始める。

 

(!? まずい…!!)

 

直感で危険だと分かったのか、なのはとフェイトは急いでその場から空中に飛び上がる。幽汽が剣を振り上げた時、身体中の炎が瞬時に剣の刃へと纏われ…

 

「―――おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

そのまま、地面に叩きつけられる。

 

そこから放たれた強大な衝撃波が、まっすぐ地面を突き進み…

 

「「なっ!?」」

 

大量に積まれているドラム缶へと向かって行く。それに気付いたなのはとフェイトはすかさずカートリッジを消費し、魔力エネルギーを集中的に防御魔法に注ぐ。

 

(くそ…!!)

 

今までの一部始終を見ていたダリルも、急いでその場から逃走する。ギャリッジの部下達も失神しているギャリッジや負傷者を運んで逃走を図る。

 

 

 

 

 

数秒後、ドラム缶が次々と爆発し、建物一つが大爆発するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何とか、彼等も逃げてくれてると良いんですが…」

 

遠く離れた距離から、爆発して燃え盛る建物を見つめるシアン。

 

「先程彼等の戦闘を監視していた機械の事も気になりますし……これ以上戦わせるのもあまり得策ではありませんね。まぁただ」

 

シアンは懐から写真を取り出す。写真にはギャリッジの姿が写っている。

 

「逃がしはしませんよ……あなたはこれ以上、長生きしてはならない存在なのですから…」

 

そう言って、シアンはその場から姿を消すのだった。

 

 

 

 

 

 

数時間後、爆発して燃えた建物はどうにか鎮火された。幸い死者は出なかったらしく、防御魔法を張っていたなのはとフェイトも無事だった。また、ギャリッジ及びその部下達は、全員がロストロギア違法取り引きの罪で逮捕される事となった。

 

 

しかしその中に、ダリル・ロッズの姿は無かった…。

 

 


 
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