No.600726

おかえりなさい【真・恋姫†無双】【短編】

南無さんさん

こちらは真・恋姫†無双の二次創作となります。
今回は凪視点、前回のお話の別視点でございます。
華琳視点にしようと思いましたが、一作目が華琳だったので、
凪に致しました。
また、前回、拝読、コメント、支援、誠にありがとうございます。

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2013-07-23 16:59:17 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:8136   閲覧ユーザー数:6813

会いたい。

 

 

もう一度、貴方に会いたかった。

 

 

 

 

思い出すのは三国による同盟が締結したあの日。皆で泰平の世が訪れた事に喜んだあの時。

 

青天の霹靂とはこの様な事をいうのだろう。

 

華琳様が仰った。隊長は天の世界に戻られたと。

 

身体に力が入らなかった。

 

 

 

 

 

信じられない。

 

 

 

信じたくない。

 

 

 

 

…隊長が居なくなった。嘘に決まっている。私は思わず、華琳様に糾弾していました。

 

私達を残して消えるはずがないと。

 

 

 

けど、現実は非常で

 

 

 

華琳様は語気を強めながら、私の前で消えたと仰いました。震えが止まらなかった。

 

私は嗚咽を漏らしながら、泣いてしまいました。愛する人が消えた。

 

この残酷な運命を認めたくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからの私は、一月ほど寝込んでしまった。壊れた人形の様に泣いては起き、

 

泣いては起きと同じことを繰り返していた。活気が湧かない、覇気が湧かない、

 

心が絶望に支配されていた。…もう生きていけないと思うほどに。

 

 

 

 

そんな時だった。絶望の淵から救ってくれたのは、真桜と沙和でした。

 

隊長は必ず帰ってくると二人は言いました。私は信じられなかった。

 

俯きながら布団の裾を握りしめ、何故、帰ってこないんだと、

 

叫んでしまいました。幸せな思い出を想うだけで、

 

私は今日も泣いてしまう。悲しみを訴えながら、

 

二人に問い詰めてしまった。

 

 

 

 

 

「凪だけが辛いんやない!!」

 

 

 

「凪ちゃんだけが辛いんじゃないの!!」

 

 

 

 

 

部屋中で大声が響きました。私だけが辛いのではないと、魏の皆が辛い思いをしていると。

 

二人は涙ながらに言い張りました。前に進まなければならない。

 

隊長の事を想うなら、悲しみで立ち止まってしまわず、未来に向けて邁進しなければならないと

 

私は自分を恥じました。皆、隊長を想っていた。帰って来ると信じ続けていた。

 

私だけが時間が止まったように佇んでいたのです。溢れてくる涙を抑えられず、何度も二人に謝りました。

 

 

 

 

 

 

すまない、真桜。すまない。沙和……と何度も頭を垂れながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、私は華琳様に謁見をし、仕事を休んでいた事を心から詫びました。

 

それと同時に警邏の仕事を続けさせてほしいと懇願いたしました。

 

守りたかったから。隊長が守ってきた民の安寧を。

 

華琳様は了承してくださった。

 

 

 

しかし、今まで休んでいた罰として、二度と思い出に寄り添ったまま停滞しない事、

 

心身ともに強くなると約束しました。

 

そうして、私は警備隊長代理として民と隊長の居場所を守っていく、

 

決意を改めて固めたのです。

 

 

 

 

隊長。私は二度と立ち止まりません。ですから、一日でも早く帰ってきてください。

 

貴方をお待ちしております。次に出逢う時は、貴方に誇れる私になって見せます。

 

 

 

 

そう想うと、私は城壁の上で誓いを馳せた。

 

 

 

 

蒼天の空の遥か先、隊長が居るであろう、虚空の彼方に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隊長が帰られてたから、随分と月日が経過していた。

 

私達は華琳様を主導とした立食ぱーてぃーの準備を終え、

 

各々の場所で待機していました。

 

 

 

 

「後は、華琳様を待つだけやな。それにしても、流琉が作った料理は美味そうやなー」

 

 

 

「そうなのー。たくさんあるし少しぐらい、つまみ食いしても平気なのー」

 

 

 

 

私は真桜と沙和に、華琳様がお越しになるまで辛抱しろと窘める。

 

二人は口を尖らせ不満そうな顔をしたが、直ぐに笑顔に戻る。

 

元気になってくれて良かったと。いつも通りの私に戻ってよかったと。

 

二人には感謝している。私に再び活力を取り戻してくれた事を。

 

…けれど、まだ完全に戻ったわけではないんだ。やはり寂しさを感じることがある。

 

あの人が帰られて来たとき、私は本来の自分に戻るのだろう。

 

 

 

 

……と、思案の海にふけていたら、二人から怪訝そうな顔で見られていた。

 

私は何でもないと言い、笑顔で応える。一抹の寂しさを悟られないように。

 

 

 

 

暫しの時が過ぎ、華琳様がお越しになられた。労いのお言葉を一人一人に掛け、

 

そして、壇上に立ち主催としてのお言葉を、三国の将達に伝える。

 

 

 

 

「皆、揃っているわね。では始めるわよ。三国が同盟してから――――――――――」

 

 

 

 

……その刹那、心地が良い風が吹いた。まるでこの場に居る全ての人達を

 

優しく包み込む、そんな柔らかい風が。

 

 

 

 

『おいおい。華琳。一人忘れていないか?』

 

 

 

 

不意に聴こえる優しい声色。忘れる訳がない。

 

私達は驚きを隠すことが出来ず、その方向へと眼を注ぎ、声の主の名を呼ぶ。

 

 

 

 

そして、私の大切な人が笑顔を浮かべながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

―――――ただいま…と―――――

 

 

 

 

 

 

 

私は頬に一筋の涙を流しながら、

 

 

 

一歩を踏み出す。声の主の方へと。

 

また一歩踏み出す。貴方が佇んでいる場所へと。

 

 

 

 

 

…やっと会えました。どんなに、このときを願っていたのだろう。

 

ずっとずっと寂しかった。けど、もう、その様な事は思いません。

 

 

 

貴方が帰ってきてくれたから。

 

貴方の傍で生きていくと決めたから。

 

 

 

だから、万感の想いを込めて伝えます。

 

この言葉に、幾千以上の意味も込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――おかえりなさい……隊長!!―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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