No.599108

真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 第八節:勃発、一刀争奪戦

syukaさん

何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。

2013-07-19 03:07:02 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6626   閲覧ユーザー数:5173

まえがき コメントありがとうございます。梅雨も明け、夏本番になりましたね。毎日部屋に侵入してくる蚊との戦闘を繰り広げているsyukaでございます。ですが言いましょう。真冬の地獄のような寒さよりはマシだと。さて、今回はまた皆でお祭り騒ぎになる予感です。魏との一戦の前の休憩とでも言っておきましょう。それではごゆっくりしていってください。

 

 

 俺、北郷一刀はただ今庭にて大会の景品として椅子に座っている。その隣にはお茶の支度を済ませた月と祝融さん。劉姉妹と桃香に加え、父さんや母さん、親戚の皆・・・。本音を言えば俺も出場したかったんだけど・・・優勝景品が景品なので敢え無く辞退することとなった。何でこんなことになったのかというと・・・それは昨日の昼に遡る。

 

・・・

 

 俺はカフェで父さん、母さんに加え桃香、薔薇、百合とお茶をしている。管轤さんの計らいで桃香の悩みを解消してくれたみたい。相談役は母さんだったみたいだけど。というか、桃香が悩んでたこと自体初耳だったわけで。

 

「へぇ、こっちにも洋風の店があるのか。意外だな。メニューもしっかりしているし。」

「俺も初見はビックリしたよ。現代と遜色ないくらいだし、テラスがあるのは新鮮だったね。」

「めにゅー?てらす?」

「え~と、メニューは料理表で、テラスはこういう母屋から突き出してるとこのことだよ。」

「へぇ・・・。」

「天の言葉って妙な言葉が多いのね。」

「この時代から二千年くらい先の言葉だから気にしなくてもいいわよ。」

「面白そうですね~。一度行ってみたいです。」

「この時代の人からしてみれば面白いかもね。」

「ふぅ~ん、まぁいいわ。一刀、今の時点で左目の調子はどうなの?治りそう?」

「自分の感覚だけで言えば治ってると思う。けど、艶火にはあと一週間は外すなって念を押されてるから自分でも確認してないんだ。」

「こっそり確認もしてないんですか?」

「うん。」

 

 それで変なバイ菌が入っても困るしね。

 

「けど、ご主人様って鈴さんの力が宿ってるから治りが早いんじゃないの?」

「そのはずなんだけどねぇ・・・あの矢に妖術みたいなのが掛かってたみたいで治りが遅くなってるみたい。まぁ、鈴の力があったから死ななくて済んだようなもんなんだ。」

「今の話に出てきた鈴って何者なんだ?明らかに人間業のようには捉えられなかったのだが・・・。」

「そっか。父さんたちにはまだ会わせてなかったね。」

「? 謁見の間で会った時にいた?」

「いたと言えばいたんだろうけど・・・。」

 

 鈴、いるー?

 ・・・

 反応がない。

 

「あれ?どこかに行ってるのかな?」

「普段はどこにいるのよ?」

「え、それは・・・」

「一刀、ここにいたのか。」

 

 俺の言葉は探していた張本人の言葉によって遮られた。その後ろには風香姉さんと咲夜叔母さん。それに月も一緒だ。

 

「鈴、朝から見かけないと思えばどこに行ってたのさ?」

「ん?野暮用だ。私の仲間に探し物の手伝いを要請してきたところだ。」

「へ?もしかして、他の竜?」

「他にいると思うか?」

「・・・。」

 

 探し物に竜を使えるのなんて鈴だけだろうな・・・。いや、本人が竜だから当然なのかも?

 

「で、戻ってきたら呉漢に呼び止められてな。一戦交えてきた。」

「鈴と一戦交えるって・・・咲夜叔母さんもよく無事だったね。」

「一目見ただけで豪傑だと分かったからな。久し振りに武人としての血が沸き立ったよ。いやー、一発殴られただけで壁まで吹き飛ばされるとは思わなんだ。あっはっは!」

 

 

 殴られてここまで清々しい笑みを浮かべる人が世に何人いるだろうか・・・。よく鈴に殴られて気絶しなかったね。むしろそこにビックリ。いや、殴られたことないけどさ・・・。

 

「私も久々に良い運動ができた。この者の太刀はなかなかに重かったぞ。一刀も一度手ほどきを受けてみると良い。いい刺激になる。」

「ほう、一刀との模擬戦か。それは面白そうだ。一刀が幼かった頃はオレも遠慮して敢えて行わなったが、なんでも今の影刀殿は超えているそうではないか。それならオレも遠慮なしで剣を振れるからな。」

「き、機会があったらね。」

 

 鈴になかなかに重いと言わせた太刀。俺は受けるより避けた方が良さそうだ。俺が思うに恋と同等かそれ以上に一撃が重い可能性がある。そんなの受け続けたら腕が痺れるじゃ済まされそうにないから・・・。

 

「そ、そうだ。紹介するね。この人がさっき言ってた鈴だよ。」

「はじめまして。一刀の母の菊璃です。」

「一刀の父の影刀です。」

「そうか。私は鈴だ。一刀の祖父に祖母もそうだったが、出来た親のようだな。ということは、将来的に私の義理の親になるということか。」

「孫の顔なら早く見たいわね。」

 

「いや、論点がずれてるぞ?それで鈴さん、あなたは一体何者ですか?先ほどあなたの話を聞いていたのですが、どうも人間業ではないようなことを聞こえたので・・・。」

「それはそうだ。私は誇り高き四竜の王、黄竜だからな。」

「・・・。」

 

 父さんが絶句している。母さんはどこか納得したような表情で頷いている。

 

「お義母さまの孫ですもの。納得できるわ。」

「理解の早い親で助かる。」

「それはそうと一刀、あなたの本命はこの鈴さんということで良いの?」

「・・・ほえ?」

 

 思わず間抜けな声が零れてしまう。

 

「さっきのは一刀のお嫁さんになると言うふうに聞こえたのだけど?けど、劉備ちゃんや関羽ちゃんも一刀のこと好きなのでしょう?」

「大好きです♪」

「///」

「一刀、言われた本人が顔を赤らめてどうする。男たるもの、堂々としておかなければ。」

「父さんだって母さんに言われたら真っ赤になるくせに。」

「それはそれだ。」

「母さんが俺にプロポーズの話をしたときだって・・んぐっ。」

「それ以上言わんで良い。」

「兄貴が照れてるぜ?珍しいもんを見た。」

「霧刀様は初心ですから触れないであげるのが優しさですよ?」

「風香、それは直接的に言っているのと変わらないのだが・・・。」

「そうでしたか。気付きませんでした。」

「くっ・・・。」

 

 風香姉さんも意地悪だなぁ。というか、いじられる父さんを初めて見た。

 

「そうねぇ、霧刀さんもそうだったけど、一刀の周りにも女の子が多いし・・・一刀が王なのだから皆お嫁さんにしてもいいのかしら?メイドさんの董卓ちゃんも可愛いし、一緒に家事をするのも有りよね。董卓ちゃん、うちの子のお嫁さんになってみない?自分で言うのもなんだけど、一刀も家事は出来るし腕っ節も立つ。結構な優良物件だと思うのよ。」

「え、えと!それは大変嬉しいのですが、まずは婚姻の儀を済ませてからで!けどそれはまだ早いといいますか!ですが決して嫌というわけでもなくですね!」

 

 おおぅ、月が絶賛パニック中です。かなりレアな場面じゃないか?

 

「月、何してるのだ?」

「ひゃ!?り、鈴々ちゃんでしたか。それに愛紗さんも・・・。」

 

 呼びかけられる声に少し飛び上がる月。うん、かなりレアだ。

 

「随分と珍しい挙動だったが、何かあったのか?」

「い、いえ・・・その・・・//」

「董卓ちゃんにうちのお嫁さんに来ないかお誘いしていたの。」

「よ、嫁!?」

 

 

「? なんで愛紗がそんなに驚いてるのだ?」

「なんでって・・・つまり、ご主人様の妻にならないかと言っているのだぞ!?」

「愛紗、言ってることほとんど変わってないわよ?」

「愛紗ちゃんはご主人様を月ちゃんに取られる~って思ってるんじゃないの?」

「へぅ// そのような、ご主人様を取るなんて・・・//」

「そ、そうですよ!そのようには思っていません!//」

 

 俺の将来プランが着実に形成されていってるのは気のせいじゃないよな?というか、風香姉さんと咲夜叔母さんも何か言ってください。あの調子じゃ母さんは止まりません。

 

「ですが・・・。」

「ん?」

「ですが、何?」

「その、少しだけ・・・少しだけですよ?月に妬いてしまいました・・・///」

「これは恋ですね!一刀さんを争う女の戦いですね!」

「姉さん、ちょっと落ち着いて・・・。」

「ふむ、女の戦いか・・・。」

 

 鈴が腕を組んで何かを熟考している。今のキーワードのどこに考えるほどのものが?姉さんの考えはよく分からん。

 

「一刀争奪戦。」

「は?」

「一刀を思慕する者たちで奪い合えば問題ない。無論、私も参加するぞ。」

「奪い合うって・・・そんな物騒な。」

「けど、それなら武官の子だけしか参加出来ないんじゃない?」

「うむ・・・それは確かに。」

「鈴々は無問題なのだ!」

「少し良いですか~?」

「どうしたの?」

「競うものは何も模擬戦にしなくても良いのではありませんか?料理、お裁縫、弁論、演奏など、競えるものは色々ありますよ~。」

「なるほど~。でも私、何か出来ることあるかな~?」

 

 あ、あれ?これはもう決定事項なの?俺としては皆仲良くしてくれればいいだけなんだけどなぁ。

 

「鈴々、料理ならいっぱい食べるのだ!」

「なるほど、食べる方面もあるわね。流石に鈴々ほど食べるのは無理だけど・・・月に料理を教えてもらってるから作る側ならなんとかいけるかも。」

「愛紗ちゃんも流琉ちゃんや朱里ちゃんたちに料理の作り方教えてもらってるもんね~。私も頑張ろっと。」

「私は武官として上を目指します。ご主人様、見ていてください。」

「う、うん。」

「一刀も隅に置けねぇな。流石は兄貴の子だぜ。」

「一刀さん、恋する女の子のためです。ここは一肌脱いで頑張ってください。」

 

 俺にどうしろと・・・。これは結果が出るまで大人しくしとくに限るかな。

 そして冒頭に至る。

 

・・・

 

 俺は月からお茶を受け取り一気に飲み干す。はぁ・・・。

 

「なんでこんなことに・・・。俺が景品と知った途端、皆参加するって言い出すし。」

「愛紗ちゃんなんて特に気合入ってるもんね~。」

 

 鍛練場にいる愛紗に視線を送れば・・・

 

「・・・。」

 

 黙々と武器の手入れをしている。背中しか見えないが、どこか近寄りがたい雰囲気を纏っているのは確かだ。胡花が愛紗の闘気に怯えて泣きそうになってるぞ・・・。

 

「これ、愛紗に当たった途端に殺気で押され負けそう・・・。」

「やる前からそんなだと蒲公英は初戦敗退だな。」

「前みたく恋にぶっ飛ばされねぇようにな!」

「あれはもう喰らいたくないよ~。恋、今度会ったときはちょっとくらい手加減してよ!」

「(こくっ)ちょっとだけ、手加減する。」

「・・・ちょっとの手加減で勝てるかな。」

 

 

 少々諦め気味の蒲公英は置いといて、司会の貂蝉と卑弥呼、それに艶火が壇上に上がる。

 

「それでは武官諸君、それに参加希望の者は一本ずつ槍を持ってくれい!」

「ん?模擬戦じゃないの?」

「誰も模擬戦をやるとはいっとらんぞい?」

「・・・。」

 

 それはそうだった。参加者は鍛練場に集まるように伝えられたけど模擬戦とは聞いてない。

 

「それでは競技内容について説明する。・・・槍投げだ!」

「槍投げ?」

「あそこに石灰で線を引いてあるじゃろ。定位置から槍を投げ、距離ごとに点数が割り振られておる。一番遠くへ投げられた者が一番点数を取れるというものじゃな。」

「なるほどな。それはそれでやり甲斐があるぜ!」

「うへぇ、蒲公英どのくらい飛ぶかなぁ・・・。というか、うちは脳筋がいっぱいだから勝ち目なさそう・・・。」

「そんな軟弱なことを言っているからいつまでも力が付かないんだ。」

「脳筋代表のあんたに言われたらやけに説得力あるね。」

 

 槍投げかぁ。これなら俺も出れるかな?

 

「なぁ艶火、槍投げなら俺も出ていいか?点数とかは関係なく投げてみたいんだけど。」

「ふむ・・・模擬戦のように激しく動くものでもないしな。出てもいいが、無理そうならいつでも止めていいからな。」

「ありがと。俺の番は最後でいいから。」

 

 久し振りの運動だ~。テンション上がってきたぞ!ちなみに、槍の長さは鈴々の丈八蛇矛と同じくらいの長さだ。

 

「ねぇ薔薇ちゃん、私も出ていいかな?」

「ね、姉様!?正気ですか!?」

「勿論♪ちょっとだけでも点数は入るみたいだし、今のうちに少しでも稼ごうと思って。」

「じゃあ私も出ようかな~♪」

「・・・百合も大丈夫なのか?」

「希望者は出場可だからな。規定に従うのなら大丈夫だ。」

 

 ・・・とてつもなく不安になってきた。武官でない麗羽や桃香はまだ心配はない。けど・・・百合が槍投げ・・・。

 

「百合、出るなら怪我しないようにな!危なくなったら逃げていいからな!」

「ふふっ。一刀、娘の心配をする父親のような表情をしているわよ?」

「そりゃ心配になるでしょ!薔薇も心配だよね!?」

「心配だけど、姉様は一度言いだしたら絶対やめないから。説得するのは既に諦めてる。」

 

 槍投げならぬ丸投げである。

 

・・・

 

「ほな初陣はうちが投げるわ。」

 

 霞が円の中へと入る。一息吐いて集中すると槍を持って眼前へと視線を移す。

 

「でりゃあああああ!!!」

 

 ものすごい勢いで飛んでいく槍。オリンピック選手と遜色ないほどの勢いだ。槍が地に刺さり朱里と詠が測定に入る。記録は・・・日本の単位で100mとちょっとか。現代の槍投げ世界記録超えちゃったよ。これがまだ続くんだろうな・・・。

 

「二番手、鈴々が行くのだー!せりゃあああああああ!!!」

 

 これまた霞と遜色ない勢いで飛んでいく。

 

「う~、あと少しだったのだ・・・。」

 

 あと数センチの差で霞の槍に届かなかった。それから紫苑が投げ、

 

「う~ん、もう少しだったのですが。点数的には差はほとんどありませんので他の種目で挽回しましょう。」

 

 

 翠が投げ、

 

「あー!鈴々のに掠ったのだ!翠、ずっこいのだ!」

「狙ってわけじゃねーよ!つうか、勝ちは勝ちだからな。」

「う~・・・で、でも!点数は変わんないのだ!」

「あたしの勝ちという事実も変わらないけどな。」

 

胡花に桔梗、それから武官は大体投げ終わった。残るは俺と桃香、愛紗。それと・・・百合。なんか俺の後ろで貂蝉と卑弥呼が準備運動してるんだけど・・・見なかったことにしよう。

 

「では一刀さん、行ってきますね~。」

「あぁ、不安だ。大丈夫かな?ちゃんとまっすぐ投げれるかな?」

「ご主人様、心配しすぎですよ。流石にそこまで運動音痴ではないでしょう。」

「でも、日頃運動してるようにも見えないし・・・。」

 

 俺の不安をよそに百合はてくてくと投げる位置まで進んでいってしまう。

 

「近くで見ると結構大きいですね~。うん・・・しょ。」

 

 持ち上げるだけで精一杯に見えたぞ!?本当に大丈夫か!?

 

「行きますよ~。」

 

 柄の中心部を持って振りかぶり・・・と思ったら柄の先端が地に付き、体勢を崩してしまった。

 

「う~ん。もう一回。」

「百合、ちょっと待って。」

「はい?」

 

 これは投げる以前の問題だ。あれじゃ本当に怪我しかねない。

 

「ちょっと助言してもいいかな?」

「まぁ、そのくらいなら大丈夫だ。」

 

 俺は持ち方、投げ方、体勢・・・その他諸々を百合に教えた。というか百合の手を取って投げる感覚を教えた。まさかレクチャーに30分掛かるとは・・・。

 

「今度こそ行きますよ~。」

 

 詠と朱里がめっちゃ前で待機してる。流石に百合のはそこまで飛ばないだろうと考えてるんだろうが・・・まぁそうだろうな。

 

「え~い。」

 

 サクッ。測定・・・おおよそ、5メートル。うん、よそうどおりかな。

 

「一刀さん、初めてにしては結構飛びました!」

「うん、良かったね。」

「はい♪」

 

 百合の頭を軽く撫でてやる。嬉しそうだし、このくらいはやってあげてもいいでしょ。

 

「次は私が投げるね。」

 

 桃香が百合と場所こ交代し、槍を持つ。

 

「えい!」

 

 サクッ。測定・・・10メートル。桃香も予想どおりだね。

 

「あんまり飛ばなかったなぁ。」

「他が武官ばっかりだから気にしなくてもいいんじゃないか?」

「それもそうだね。後は愛紗ちゃんとご主人様だよ。」

 

 

 現在のトップは星か。120メートルちょっと。

 

「ご主人様、どうされますか?私はどちらでも良いですよ。」

「愛紗からでいいよ。俺のは点数には反映されないから。」

「分かりました。では行ってきます。」

 

愛紗が槍を担ぎ投擲点へと向かう。

 

「ふぅ・・・。でりゃあああああ!!」

 

 おぉ、飛ぶ飛ぶ。星の記録も楽々クリアっと。ドスッ。記録・・・200メートル。

 

「やはり抜かれたか。」

「鍛錬の違いだ。」

「いや、愛紗の主に対する愛の力とも言えるぞ?」

「ば、馬鹿なことを言うな!//」

「恥ずかしがっては肯定しているのと変わらんではないか。」

「~~~っ!!//」

「ほらほら、星も愛紗をからかうのもそのくらいにして。愛紗、おめでと。」

「あ、ありがとうございます// では、ご主人様どうぞ。」

 

 愛紗から槍を受け取ると投擲点へと足を踏み入れる。軽くストレッチして投げる準備に取り掛かる。さて投げ・・・ん?鈴がこっちに近寄ってくる。

 

「どうしたの?」

「本調子ではないだろうと思ってな。気を分けに来た。その方が体も少しは軽くなるだろう。」

「う~ん、俺的には結構調子は戻ったけど・・・そうだね。じゃあお願い。」

「了解した。んっ・・・。」

「んむっ!?」

 

 唇を奪われた!?キス!?不意を突かれて反応が遅れた。

 

「はわわ・・・」

「あわわ!!」

「にゃわわ!!」

「ほう、鈴め。やるな。」

「なっ・・・あんな、舌まで入れて・・・//」

 

周りが騒がしくなってきた。明里たちは大混乱してるし。

 

「なるほど、己の気を直接相手に流すのか。確かにその方が即効性と影響力は強いな。」

「あの子、やるわね。こんな大勢の前で大胆にキスなんて。あぁいうアピールかしら?」

 

 ちょっと!誰か止めてよ!

 

「・・・っ。ふぅ、ご馳走様。」

「鈴、いきなりすぎて驚いたよ・・・。」

「それも狙いだったからな。」

「確信犯かよ。」

「それよりどうだ?幾分か軽くなったであろう?」

「それはそうだけどさ・・・。こういうのって雰囲気とか大切だと思うんだよ。」

「なるほど。次は考えておく。」

 

 そう言い残すと鈴は何事もなかったかのように俺のそばを離れた。あぁ、視線が痛い。とりあえず気を取り直して精神集中・・・。

 

「ふぅ・・・せい!!」

 

 あ、飛ばしすぎた。というか鈴の力を貰った直後のせいか力の加減を誤った。

 

「お兄ちゃん、凄いのだ!」

「はへぇ、あれで負傷中かよ・・・。ご主人様の本気って・・・つっても何回も見てっから頷けるか。」

 

 測定結果、350メートル。うん、やり過ぎた。

 

「あんた飛ばしすぎよ!少しは測りに行く私たちの身にもなりなさいよね!朱里なんか息が上がってるわよ。」

「ごめんごめん。二人とも、お疲れ様。」

 

 

「はぁ、疲れました~。」

「朱里の働きも点数に入れてあげなさいよ。」

「俺は良いんだけど、詠は?」

「ボクは別にいいわよ。あんたに興味もないし。」

「直接言われると、それはそれできついものがあるね。」

「詠ちゃんは恥ずかしがってるだけですよ。」

 

 月が二人にお茶を持ってきたみたい。

 

「はぁ~生き返る~。」

「ちょっ!?月~。」

「まぁ、ツンツンしてる詠も可愛いんだけどね。」

「~~~// あんた、よくそんな恥ずかしいこと言えるわね。誰彼構わず言ってるでしょ。」

「? 思ったことを言ってるだけなんだけどな?」

「はいはい。あんたはそういうやつだったわ。口説かれてると思ったボクが馬鹿だった。」

 

 俺と月は顔を見合わせる。

 

「俺、口説いてた?」

「いつもどおりでしたよ。」

 

 う~ん、よく分からん。ちなみに、貂蝉と卑弥呼も槍投げをした結果・・・貂蝉はもうすぐ地球一周。卑弥呼は所在不明、測定不能という結果に終わった。この記録は化物呼ばわりされても否定できないって・・・。

 

・・・

 

 それからお裁縫、乗馬、料理などかれこれ八種目行われ・・・。

 

「結果発表!」

 

 長かった・・・。始めたのは朝方だったのに今はもうすぐ陽が落ちるところだ。まぁ、料理種目もあったから昼食を食いっぱぐれることはなかったけど。

 

「今回のご主人様争奪戦、最優秀者は!」

 

 艶火の声を聞き逃しまいと皆が固唾をのみ結果を待つ。

 

「・・・これは有効なのだろうか?」

「は?」

 

 皆の声が重なる。

 

「どういうことだ?もしかして点数が被ったとか?」

「いや、そうではない。しかし・・・」

「とりあえず一番は誰なの?」

「・・・蒼。」

「・・・は? 俺? 際立ったことはしてねぇはずだし、点数も並くらいのはずだったはずだぜ?」

「全ての種目に参加したのが祟ったのだろうな。」

「まじかよ・・・。」

「蒼兄様の馬鹿―!」

「あんた、もう少し空気を読めるよう躾直さないといけないかい?」

 

 馬騰さんが閻魔大王も裸足で逃げ出すような表情で蒼に近づく。

 

「そりゃ勘弁だぜ。兄貴、俺は退散すっから後の処理は任せる!」

「お待ち!」

 

 市へと駆け出していく馬親子。

 

「結局、どうなるの?」

「こればかりは俺の一存じゃどうしようも出来ないからな・・・。一刀、お前に任せる。」

「だろうと思ったよ。そうだね・・・一人ずつ、それか何人か一緒にデートってことで手を打たない?」

「それが無難でしょうね。」

「むぅ~、頑張ったのに~。」

「しゃあないわな。ま、一刀とでーと出来るんやしうちはええよ。」

「あたしも。」

「(こくっ)」

「朱里ちゃん、雛里ちゃん、私たちもでーと出来るよ~。」

「この結果が最良だったのかもしれませんね。」

 

 ということで、翌日から2週間ほどデートを満喫することとなった。明日から大変だぞ・・・。その日、蒼の断末魔が城内に響き渡ったのは別のおはなし。

 

 

あとがき 読んでいただきありがとうございます。蒼さんには尊い犠牲になっていただきました。合掌。さて、次回からは以前もやった人物ごとの拠点パートに移行します。正直、捌ききれるか恐ろしい数ですが、頑張りましょう!それでは次回:鈴との初デート、支え合う二人 でお会いしましょう。

 


 
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