第21弾 悲劇
シノンSide
本選が開始して30分が経過した。
ついさっき『シシガネ』というプレイヤーと戦い、2人目を倒したことになる。
『サテライト・スキャン』による位置情報の更新、
それによると残っているプレイヤーの人数は21、既に9人が倒された計算である。
周囲1km圏内にいるプレイヤーは3人、1人は私と同じスコードロンでリーダーを務める『ダイン』、
そのダインを追っていると思われる『ペイルライダー』、
最後に800m離れた南の山の頂上に陣取る【立てこもリッチー】こと『獅子王リッチー』である。
私の現在地は山岳エリアの麓、川の対岸には森林エリアがあり、北には両エリアを区分している川と橋がある。
情報がリセットされる前に、キリト達のことを確認しようとして……やめた。
どうせ戦うことになるのだから、いますぐに位置を確認する必要は無い。
まずは一番近くにいる2人を倒そう。
そう考えて、橋に向かっている2人を狙撃しやすい位置へと移動する。
移動して私が狙撃のポジションに選んだのは、鉄橋から300mほど離れている木々と茂みの中だ。
森林エリアから1つの影が出てきたので、急ぎヘカートを設置、伏射姿勢に入る。
出てきたのはダイン、すぐさま鉄橋を渡り終えた彼は岸辺で伏射姿勢を取り、
自身を追い続けているであろうペイルライダーへの攻撃準備をしているのだ。
背後にいると思っていない私に背を向けて…。
「甘いわね……
中継を観ているギャラリーには悪いけれど、ここで仕留めさせてもらうわ。
ヘカートのトリガーに指を添えながらそう思った瞬間、ゾクリッと悪寒が奔った。
「……動くな…」
反応して動こうとした、が……背後からトリガーに添えている右腕を抑えられ、左側からは刃物を突きつけられた。
狙撃のチャンスに夢中になった結果がこの様、さっきまでは誰もいないと思っていたからかもね…。
だけど何時まで経っても訪れないその時に、私はなんの意味があるのかと思い、訝しみながら
「どういうつもりなの? ハジメ…」
そう、制止の声で気付いたが、私の背後を取ったのは浅黒い肌に白銀の髪を持つ少年、ハジメだった。
「……本選開始前に話しをしただろう? ペイルライダーが、俺達の因縁の相手なのかを見極めたい。
違えば撃ってくれて構わないし、私と撃ち合いたいというのなら、仕切り直して戦おう…」
「…はぁ、分かったわよ…。仕切り直して、戦ってもらうからね…」
彼があまりにも真剣な表情と雰囲気で言うものだから、私が折れることにした。
別に撃つチャンスが無くなった訳ではないし、ハジメとの戦いをこじ付けられたので良しとしよう。
少しの時が流れ、2人でダインと森林を警戒していたその時……森林から1人のプレイヤーが現れた。
間違いない、ペイルライダーね…。
「…あいつ、強いわよ…」
「……ああ。だが、それにしては…」
―――殺意が無い
ハジメがそう言った気がしたけれど、気のせいだろう。ゲーム世界に殺意もあったものじゃないし。
そして始まったダインとペイルライダーの戦闘、ベテランのダインは冷静かつ早い判断で攻撃を開始。
それに対してペイルライダーは《
ショットガンを使ってダインを仕留めた。
ダインのアバターには[Dead]の文字が浮かび上がっている。
「……シノン、ペイルライダーを撃っていい」
「そ、じゃあ遠慮なく…」
そして照準が定まり、トリガーの指を引き絞ろうとした……が、予想外の出来事が起こった。
ペイルライダーに何かが着弾して、倒れ込んでしまった。
間違いない狙撃だ、しかも銃声が聞こえなかった。
「……サプレッサーを有した狙撃銃による銃撃か…」
「作動音が小さな
お互いに狙撃音が聞こえなかった理由について話す。
それにしても、聞こえない狙撃に加えて、居ないはずなのに現れたハジメといい、どうなっているのかしら?
「ハジメ、貴方どうやって私の背後を取ったのよ? サテライト・スキャンには映っていなかったはずだけど…」
「……10分前のスキャン時は、川を潜って移動していた」
「は?」
彼曰く、全身の装備を外して全アイテムをストレージに直し、身軽になったことで水中を潜って移動したとのこと。
つまり水中にいればスキャンの影響を受けないということになる、覚えておこう。
それにしても無茶をするのね…呆れて何も言えないわ…。
「……それにしても、おかしい…」
「おかしいって、なにがよ…」
「……ペイルライダーが起き上がらない。妙なライトエフェクトもでている…」
ハジメの言葉にスコープから倒れたペイルライダーの姿を捉える。
すると、彼の身体には青いスパークが這い回っていた。
「え?……っ、電磁スタン弾っ!?」
「……もしや、電圧で相手を
彼の推測通りの効果を持つ弾丸、だけど1発の値段が高いから、
大型Mob狩り専用の弾と言ってもおかしくないのにそれを対人戦で使うだなんて…。
そしてスコープを覗いていた私と、双眼鏡を使って様子を見ていたハジメは、その存在が現れたのに気が付いた。
「…い、いつから、あそこに…?」
「………」
死亡判定を受けているダイン、スタン状態で動けないペイルライダー、
2人の間に全身を灰色のフードマントで覆う、まるで幽霊のようなプレイヤーが立っていた。
そしてそいつは
私はその狙撃銃を見て驚愕する。
「……『アキュラシー・インターナショナル・L115A3』、
最大射程2000m以上、専用サプレッサーが標準装備となっている対人間狙撃銃。
狙撃手を見ることが出来ず、狙撃音が聞こえないことからつけられた名称は……『
ハジメも知っているその銃、アレほどのレアライフルを持ち、
それに見合うだけの狙撃技術を持っているにも関わらず、何故姿を現す?
灰色フードのぼろマントは、ペイルライダーに近づくと、
すぐに体の陰に隠れてしまったのでどんな銃かは判別できなかたけれど、自動拳銃と思われる。
そしてぼろマントは、何も持たない左手の指先をフードの額に当て、
次いで胸へ、そこから左肩、最後に右肩へ、指先を動かしていった…十字を切ったということなのかもしれない。
一体、何のためにそんな無駄な行為を…。
「……シノン、撃て。あのマントの奴を、すぐに…! 奴が撃つ前に!」
考えていると必死な様子のハジメに急かされながら言われたので、即座に狙撃準備を行う。
隣ではハジメも『ドラグノフ狙撃銃』を準備している。
私は十字照準線で奴を捉え、風と湿度を割り出して微調整、
予測円が拡縮して最小になって背中を捉え……トリガーを引いた。
「当たれっ!………ぅ、うそ…」
そう言葉にして願いながら、轟音と共に放った弾丸は……ぼろマントが回避したことで、遠くの大地に着弾した。
そして奴は、スコープ越しに間違いなくこちらを見た。まるで、ハジメと相対した時のようだった…。
「……まさか奴は、私達の姿をどこかで一度認識していたのかっ!」
「それが、一番有り得ると思うっ!」
自動で装填したヘカートで再び狙いを定めるも、あれほどの反応速度を持つ相手に、果たして通用するのだろうかと迷う。
するとハジメは、瞬時に狙いを定め、連続で狙撃を行った。
「……くそっ、やらせるわけには…!」
ドラグノフで連射するハジメに対し、全て回避するぼろマント。
弾丸を撃ちきったハジメは顔を悔しさで歪め、双眼鏡でその様子を見、私もスコープでみる。
―――かぁんっ!
そこで乾いた銃声が鳴り、1発の弾丸がペイルライダーの胸の中央に着弾した。
「……くっ、どうなる…!」
隣で小さく呻くように呟いたハジメ。ペイルライダーのHPはまだ9割はあるはずなのに、
彼は何を焦り、ぼろマントは何故これ以上なにもしないのだろうか?
そこでペイルライダーのスタンが解けたのか、立ち上がって自身のショットガンをぼろマントの心臓部に向けた。
これでアイツは終わる……そう思って、そうなるはずだったのに…。
―――どさり…
小さなサウンドが私の耳にも届いた。その音と一緒に、ペイルライダーは再び倒れ伏した。
口元が見え、大きく開かれたその口は、空気を求め、そして助けを求めるかのよう…。
彼は左手で自身の胸の中央を掴む……直後、ペイルライダーの体にノイズが奔り、不規則な光に包まれて消滅してしまった。
「…なによ、いまのは…?」
呆然と呟く。その間にもぼろマントは左手をマントに隠し、
拳銃を持っている右手を、空中にある大会を中継しているバーチャル・カメラのレンズに向けて放った。
私の中に残っているのは、ペイルライダーが消えた際に起こった【DISCONNECTION】という文字列だけだった。
シノンSide Out
???Side
はっは~、もうすぐで予定の時間だな。
それにしてもあの人もよくあんなこと思いつくよな~。
俺じゃあ、全然無理だってのに~。
ま、俺としてはあの人まで関わってくるとは思わなかったけどよ、偶然だったしな。
「おっと、時計を確認確認♪」
時刻は間もなく最初の処刑時間♪アイツが決めた時間まで、あと…!
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0…イッツ・ショウ・タイム!」
俺は手に持った処刑道具を目の前のベッドに横になっている男に突き刺す。
これでOK、あとはトンズラさせていただきますか~。
「女の方は、もう1人がやるみたいだし♪ それじゃ、良い夢を見な…お邪魔しました~♪」
―――パタンッ…
扉を閉めて、俺はこの部屋から出て行く。
???Side Out
To be continued……
後書きです。
ペイルライダーが
それを目撃してしまったシノンとハジメ、2人は一体どうするのか?
そして最後に出てきた人物とは・・・・・・モロバレですねw
次回はALO観戦組の話しになりますよ。
それでは・・・。
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第21弾です。
ついに訪れる悲劇の時、果たしてハジメ達は・・・。
どうぞ・・・。