No.576986

悠久の時の流れの中で ~敢えて矛を手に~ 第一章

Pichiさん

第二回 受王、二臣と策謀す

2013-05-16 22:17:48 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:475   閲覧ユーザー数:475

 

第一章

 第二回 受王(じゅおう)、二臣と策謀す

 

 女媧(じょか)宮より戻ってきた受王(じゅおう)は眉間に皺を寄せ、苦りきった表情であった。

 

宮殿前で控えていた臣下の慶びの挨拶を聞き流し、外殿から内殿へ歩きだした。

 

外殿と内殿を隔てる分宮楼(ぶんきゅうろう)喜善殿(きぜんでん)を抜け、顕慶殿(けんけいでん)に入っていた。

 

顕慶殿に入った受王(じゅおう)は、侍従に諫大夫(かんたいふ)費仲(ひちゅう)尤渾(ゆうこん)を呼び出させた。

 

 

諫大夫は、王の近くに侍り、王の言動に過ちがあらば、身を挺して諫言するのが務めの役職である。

 

 

費仲(ひちゅう)尤渾(ゆうこん)の両名は、受王(じゅおう)が即位した後に、直々に召し出された逸材で、若輩の身ながら太師(たいし)聞仲(ぶんちゅう)丞相(じょうしょう)箕子(きし)亜相(あしょう)比干(ひかん)であろうと、過ちがあらば、諫言することを躊躇わない者であった。

 

 この為、朝臣からは蛇蝎(だかつ)の如く嫌われていた。

 

 しかし、太師(たいし)聞仲(ぶんちゅう)鎮国武成王(ちんこくぶせいおう)黄飛虎(こうひこ)から、絶大的な信頼を勝ち得ている。

 受王(じゅおう)からも信頼を勝ち得ており、北方七二諸侯の乱の報を知らせたのもこの二人であった。

 

 受王(じゅおう)は、顕慶殿に昇ってきた二人を近くに呼び寄せ、子牙と呼んでいた仙人風情の男から二つの竹片を渡した。「綱紀粛正」と「放伐」と書かれた竹片である。

 

 

 費仲(ひちゅう)は、険しい表情で言上する。

「陛下の心中はお察しします。しかし、聖徳は三皇五帝に優るとも劣りません。この策を用いれば、その聖徳に重大な瑕疵が付きます。臣らにお任せくだされ、御手に血の汚れは付いてはならないのです。」

 

 

「黙れ!北方の反乱が起きたのにも関わらず、聖徳なぞ余にあるわけ無かろう。」

 

 

 尤渾(ゆうこん)が進み出て、言上する。

「聖徳の有無は置いておいたとしても、王者の手が血で染まることはよろしくないことです。」

 

 

「老臣や親族に権力を握られている余が王者であろうはずがない。」

 

 

諫大夫の両名は、黙って頭を下げた。

 

 

「両名と話して、余は決心した。両名の言い分も聞き入れ、明日の朝議で変革の勅を掛けることにしよう。だが、反対多き場合には、もう一つの方針に切り替えることにする。これでよいか。」

 

 

幾分か表情が落ち着いた受王(じゅおう)は、両名に伝えると、そのまま内殿奥深くへ入っていった。

 

 

 翌朝、朝議が開かれると、さっそく受王(じゅおう)から、統治体制に関する深慮を開帳した。

 

 丞相(じょうしょう)箕子(きし)が天を仰ぎながら溜息をつき、玉座の前にひざまずいて、言上する。

 

 

「老臣、あえて王族の一人として陛下に申し上げます。(いん)王朝を開闢なさった湯王(とうおう)から綿々と続く祖法を変えることは、湯王(とうおう)を侮辱なさることであり、先祖に申し訳が立ちません。祖法を変えなければならないほど、国は荒れておらず、無闇に法を変えれば、万民の尊崇と信を失うことになります。邪説に眩惑される事は、王者として避けねばなりません。変法の勅は御撤回なさいますよう、老臣あえて諫大夫に成り代わって御諫言申し上げます。」

 

 

「北方で反乱が起きているのにも関わらず、国は荒れていないと申すか。」

受王(じゅおう)は怒りを露わにしながら、問いただした。

 

 

 亜相(あしょう)比干(ひかん)が進み出て、言上する。

「北方の反乱は、とうに太師(たいし)が平定しておられます。祖法に従わぬ蛮族に慈悲を与えるまでに及びません。(いん)の民さえ守れればそれでよいのです。」

 

 

亜相(あしょう)の言を聞いた受王(じゅおう)は、苛立ちを隠そうともせず、立ち上がり、内殿に姿を消した。

 

 

「陛下は何を血迷っておられるか。祖法を変えてまでも、(いん)から離れた化生のものを民と同列に扱うなどと。」

丞相(じょうしょう)は溜息をつき、誰に聞かすともない声で呟いた。

 

 

 

 

第一章 第二回 受王(じゅおう)、二臣と策謀す 完

 

 

 
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