例えば、隣の女の子に「納豆好き?」って聞いてもさらっと流されるのが目に見えている。それでも俺は納豆が好きだから、納豆について可愛い女の子と楽しく会話したい。
「何秒くらいまぜるの?」
「うーん。一分くらい」
お互いにこにこして食べるまでの工程を自慢したい。ほかほかの白米にかける瞬間の高揚感。口の中で踊る絶妙なハーモニー。現実は「きも」の一言で終わるが、あんな素晴らしい食物の話を楽しく出来ないなんて人間失格だ。
今日もこうして納豆の話を女の子としたくて学校に来る。それは相当言い過ぎかもしれないが、熱弁できる話題がこれくらいしかないから仕方がない。
こう見えてスポーツは平均的。サッカーだってバスケだって、部活でやってる奴らの次くらいには上手い。と思う。
クラスがざわつき始めた。もうすぐ朝のホームルームなので、学校に来るのが遅い奴も早い奴も集結する。もちろんクラスが静かな時から、俺は登校している。他の奴らが読書や勉強に励んでる間、今朝食べた納豆を思い起こす。早く来てそんなことする必要ある?と聞かれてしまったら何も言えない。けど、真面目に越したことはない。隣のくるみさんはいっつも遅刻ギリギリで登校するから、よく先生に呼び出されている。俺は遅刻で説教されるのなんてごめんだ。
「おはよー」
「くるみさん。また寝坊?」
「うん。朝ごはん食べてない」
寝癖を引っ提げてのあいさつが最早習慣だ。普通の女子なら寝癖が珍しいが、逆にくるみさんは寝癖がついていない時の方が珍しい。しかし、くるみさんは可愛いから許せる。
「朝ごはんは食べた方がいいよ」
「けど、時間がねー」
バックから菓子パンを取りだし、食べはじめた。ほかほかのご飯を食え。
「ところで、深井くんって料理部だったよね?」
「そうだよ」
「男子で料理部ってなかなかいないよね」
「確かに。俺一人だからな。周りは女の子だけだ」
先生がホームルームを始める。もっと話していたかったが、怒られるのは嫌なので大人しくしておこう。
近頃健康診断があるらしい。俺は三食しっかり取ってるから、心配はしてない。家は両親が共働きで忙しいので、俺が料理を作っている。今朝だって、今日の弁当だって俺が早起きして作ったものだ。料理部に入部してるのだって、もっと料理が上手くなりたいからだ。それに、部活に入ってるほうがなにかしら有利だ。友達も増えるし、テストの情報だって入手できる。周りは女しかいないけど。
けれど、やっぱり一番の理由は料理が好きだからかもしれない。生きてきた中で残飯を出したことがないと言っても過言ではない。なにがあろうと、残さないようにしてる。傍から見たらうざがられるかもしれないが、それが俺のプライドなのだ。もしくは、「食物の神様」が怖いだけのなかも。
仮に自分の命運がご飯を残すか残さないかだったら、皆はどうする?
俺だったら、何がなんでも残さない。そのためにも、美味しいご飯を作る。
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納豆が好きです。最初の最初。