No.568018

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ三十八


 お待たせしました!

 命より突然に告げられた衝撃の内容。

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2013-04-20 12:36:55 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:5941   閲覧ユーザー数:4519

 

「月の物が来ないのじゃ、どう計算しても一刀とのあの後からなのじゃが…」

 

 命よりの突然の告白に俺の頭は完全に混乱していた。

 

 月の物が来ないって…しかも俺とシてから!?そこから考えられる答えは

 

 どう考えても一つしかなかった。

 

「それ以外に何か体の異常があったりするのか?」

 

「うむ…実は戦が終結した頃からしばらく気分が悪い事があってな…あまり

 

 人には見せられんと思って何とか堪えてはいたのじゃが…それと、どうも

 

 最近酸っぱい物が食べたくなる事が増えた位かの」

 

 あああぁぁぁ…それってどう考えても悪阻なんじゃ…という事は、本当に

 

 命のお腹に俺の子が…?

 

「と、とりあえずだな…ちゃんと医者に診せよう。話はそれからだな…月、

 

 いるか!?」

 

「はい、どうしました?」

 

「すまないが華佗を連れて来てほしい。出来れば早急にだ」

 

「それじゃやっぱり何処かお悪いのですか?」

 

「それを確認する為にも華佗の力が必要になる」

 

「わ、分かりました。誰かある!」

 

 月は慌てた様子で華佗を探す為に人を呼びに行った。心底から命の容態を

 

 心配しているのが分かる。

 

 しかし…えらい事になった。もしこれが本当だったら…朱里に何て言えば

 

 いいんだ!

 

 俺がそう考えながら頭を抱えていると、命に後ろから殴られる。

 

「痛っ、何を突然…」

 

「何をではないわ!一刀は結局妾より朱里の事が大事なのじゃな」

 

 そう言った命の眼は怒りと呆れがない交ぜになったような感じであった。

 

 

 

「うっ、それはその…」

 

「妾とてそれがあったから今の今まで言えんかったのじゃ。一刀にとっては

 

 妾の…いや、他の女の事などその程度のものなのではないかとな。朱里を

 

 さしおいて子供を身籠るなどおこがましいなどと言われるのではないかと

 

 …もし本当に妾が子供を授かっていたら、一刀は祝福してくれないのでは

 

 ないかと…だから、だから」

 

 そう言っている命の眼にはみるみる涙が溢れてきていた。

 

「ごめん…ちょっと動転してた。最初から俺に責任がある事なのだから、本

 

 当に命のお腹に俺の子が宿っているのなら、新しい生命の誕生を喜びこそ

 

 すれ、邪険にする事なんかは絶対にしないから」

 

 俺はそう言って命を抱き寄せる。命は俺の胸の中で声も立てずに泣きじゃ

 

 くっていた。ずっとプレッシャーに思っていたんだろうな…ダメだな、俺

 

 がしっかりしなくちゃいけないのに。

 

 ・・・・・・・

 

「う~む…」

 

 しばらくして、たまたま洛陽にいた所を捕まえられて連れて来られた華佗

 

 が命の診察をしている。

 

「どうだ?何か異常はあるのか?」

 

「いや、異常ではない。一刀、此処はおめでとうと言っておくよ」

 

 おめでとう?…って事は…。

 

「それじゃ…」

 

「ああ、彼女のお腹には子が宿っている。おおよそ三月って所かな」

 

 三月…やはりあの日からか。

 

 確かにめでたい事ではあるのだけど…朱里に殴られるのは覚悟しなくちゃ

 

 ならないな。

 

 

 

「しかし、お前も大変だな。一気に二児の父親になるのだから」

 

 華佗のその言葉に俺の思考が一瞬止まる。

 

「えっ!?…それってどういう…」

 

「朱里からまだ何も聞いてないのか?確かあれは曹操軍との決戦の直後位だ

 

 ったし…向こうの方が一ヶ月位先に産まれるんじゃないか?」

 

 どういう事だ?朱里が?決戦の直後?一ヶ月位先?華佗の言葉が俺の頭を

 

 ぐるぐると回って考えがまとまらない。そういえば最近、朱里は俺と一緒

 

 に寝る事はあまり無かったし、何かしきりにお腹をかばっている仕種が多

 

 かったような気もしたけど…ええっ!?

 

「まさか…朱里も?」

 

「ああ、間違いないぞ。朱里も喜んでいたぞ『おじい様とおばあ様にひ孫の

 

 顔を見せられる』ってな」

 

 事も無げに答えた華佗の言葉に俺の頭の中は新たな驚きと喜びでない交ぜ

 

 になっていた。

 

「しかし、それならそうと何故言ってくれなかったんだ?」

 

「朱里が自分から伝えるから俺には黙っていてくれと言われてな」

 

 そうか…朱里もか。よし!俺も気合を入れていかないとな!!

 

「むう、妾が一番最初では無かったのか。ちょっと残念じゃの」

 

 命が少々不機嫌そうに頬を膨らませながらそう言っていた。

 

「まあ良い、妾も一刀の子が授かったしの。まずは南陽に戻って朱里に声を

 

 かけてやると良いぞ」

 

 

 

 数日後、南陽に戻った俺は真っ先に朱里の部屋へ行く。

 

「朱里!華佗から聞いたぞ!」

 

「はわっ!?…聞いちゃったんですか!?」

 

「何故そうならそうと言ってくれなかったんだ?」

 

「ご主人様が私の妊娠を知ったら、私はこのままこっちに置いていかれるん

 

 じゃないかって急に心配になって…」

 

「馬鹿だな、俺が朱里を置いて何処かに行く事なんて、今までもこれからも

 

 あり得ない事だよ」

 

 俺がそう言って朱里を抱きしめると、朱里は眼を細めながら嬉しそうに俺

 

 の背に手を回していた。

 

「それはそうと…ご主人様。もしやとは思っていましたけど、本当に陛下に

 

 手を出されたノデスネ?」

 

「えっ!?知ってたのか?」

 

「エエ、私ハ何時ゴ主人様ガ仰ッテ下サルノカト待ッテイタノデスガ…マサ

 

 カ隠シ通セルナンテ思ッタリシテマセンヨネ?妊娠マデサセテ」

 

 そう笑顔で話す朱里の背中から段々とどす黒いオーラが発せられていた。

 

「…って、何故妊娠まで知ってるんだ!?」

 

「ヤッパリソウナンデスネ…陛下ノ様子ヲ見テルト悪阻ノヨウナ症状デイラ

 

 シタノデ…曹操軍トノ決戦ノ前位デスネ?」

 

「…はい、そうです。ごめんなさい!!」

 

 俺は完全に土下座モードであった。

 

「イエイエ、土下座ナンテシナクテモイイノデスヨ?タダ…」

 

「ただ?」

 

「シバラクゴ主人様ノキカン坊ニハ大人シクナッテモラウダケデスノデ」

 

 そう言った朱里の手は何時の間にか俺の股間に伸びていた。

 

「いや、待て。それは朱里の体にも障るんじゃないのか?」

 

「大丈夫デスヨ。アナタノキカン坊ヲ抑エル方法ナンテイクラデモアリマス

 

 カラ」

 

 朱里はどす黒いオーラを纏ったまま、笑顔でそう答える…逆に怖すぎる。

 

 俺はそれにまったくといっていいほど抵抗する気力を失い、気が付けば空

 

 が白むまで朱里の手と口で搾り取られ続けたのであった。

 

 

 

「なあ、一刀帰って来とるんやろ?何で此処におらんの?」

 

「ご主人様はちょっとお疲れのようでして…今日は寝かせてあげておいてく

 

 ださい」

 

 朝食時、霞の質問に朱里はそう笑顔で答えていた。

 

 その顔は何時にも増してツヤツヤとしていたのは言うまでもない。

 

 そして一刀はというと…。

 

「ああ、太陽が黄色い…しかも指一本まともに動かせないって…もう無理だ

 

 って俺が音をあげてからさらに10…いや20は搾られたのか?…我が恋人な

 

 がら怖すぎる…」

 

 寝台の上で真っ白に燃え尽きていたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 そして数日後、正式に朱里と劉弁の懐妊が発表されたのであった。

 

 皇帝に子が出来て、その父親が天の御遣いであるという事で大陸中が祝賀

 

 ムードに包まれていたのだが…。

 

「そう、朱里と陛下が…一刀の子を…いいなぁ」

 

 一人蓮華だけが沈んだ表情になっていたのであった。

 

「蓮華様…」

 

 そしてそれを切なげに見ていた思春の眼には強い決意が宿っていたのだが、

 

「思春、ちょっといいかしら?」

 

 そこへ雪蓮が声をかけてきた。

 

「どうされました、雪蓮様?」

 

「あなたに頼みたい事があるの。蓮華の為でもあるけどね。とはいっても、

 

 多分あなたはそうするつもりだったのでしょうけどね」

 

 

 

「まさか…」

 

「ええ、蓮華にも一刀の胤を分けてもらうのよ。でも、まさか一刀に此処ま

 

 で来てもらうわけにもいかないから…蓮華を視察の名目で南陽に行かせる

 

 から、そこでもらえるようにするのよ」

 

 思春は自分の考えと同じ事を雪蓮に言われて驚く。

 

「しかし雪蓮様、私も同様の事を考えていたとはいえ、実際それを実行する

 

 のは大変な事では…?」

 

「二人きりだから大変なのよ。だ・か・ら!」

 

「…まさか私も一緒にとかいうわけではないですよね?」

 

「あら~、いい勘してるわね」

 

 予想外の雪蓮の提案に思春はさらに驚く。

 

「ちょ、…ゴホン、お言葉ですが雪蓮様…私は確かに蓮華様の為ならどのよ

 

 うな苦労も厭いませんが、幾ら何でも…私とて女です、そういうのは己で

 

 好いた相手と…」

 

「だからでしょ?まさか隠せてるなんて思ってる?」

 

 その雪蓮の言葉に思春は自分の顔が一気に赤くなるのを感じる。幾ら落ち

 

 着かせようとしても、逆に一刀の事を考えて鼓動が一気に跳ね上がってし

 

 まっていたのである。

 

「で、ですが…だからこそ私は…」

 

「でも蓮華と一刀を二人きりなんて今の二人の立場じゃ難しいでしょ?それ

 

 に思春だって一刀と二人きりになれる自信があるの?」

 

 

 

 

 雪蓮にそう言われ、思春の眼が泳ぐ。

 

「しかし…それに北郷達はそう遠くない内に…」

 

「?…一刀に何かあるのね?」

 

「い、いえ、それは…」

 

「まさか私相手に隠せるなんて思ってないわよね?」

 

 その言葉で完全に観念した思春は一刀達に起こるであろう事を話した。

 

「そう…天の御遣いとしての役目を終えた一刀達は元の世界に帰るのね…

 

 確かにそれは悲しい事かもしれないけど、ならばこそ蓮華と思春の想い

 

 は遂げさせてあげないとね。よし、決めた!冥琳、いるでしょ?」

 

 雪蓮の言葉に物陰にいた冥琳が姿を現す。

 

「ああ、一部始終は聞かせてもらった。ならば蓮華様の視察には私も同行

 

 させてもらおう。天の御遣いの血が孫呉にも入るのであれば、我々とし

 

 ても万々歳だからな。領内の事は穏達に任せておけばいいだろう」

 

「当然、私も行くわよ!妹の為、孫呉の未来の為にもね!」

 

 そう言って盛り上がっている二人を見ながら思春はため息をついていた。

 

「幾ら蓮華様のためとはいえ…本当にこれで良かったのだろうか?」

 

 その問いに答えてくれる者は何処にもいなかった。

 

 そしてそんな話があった事すら知らない蓮華は沈んだ表情のまま、空を

 

 見上げていたのであった。

 

 

 

 そしてこの状況に心を揺らす者達は他にもいるのは事実なわけで…。

 

 ・・・・・・・

 

「うぬぅ…一刀の奴ぅ~、朱里を除けばウチが一番付き合いが長いのに…

 

 まさか陛下にまで手ぇ出してるって…確かにウチは女としての魅力は乏

 

 しいんかもしれんけど…見とれよ、絶対今度こそモノにしちゃる!」

 

 ・・・・・・・

 

「一刀様…私のような傷だらけの女なんて嫌なのかもしれないけど…私だ

 

 って貴方を想う気持ちに偽りはありません…だから」

 

 ・・・・・・・

 

「兄様…私だって何時までも妹でいるつもりはありません。私じゃ物足り

 

 ないかもしれませんけど…」

 

 ・・・・・・・

 

「一刀さん、私だって陛下や朱里に劣ってなんかいませんからね。しばら

 

 く庫見家も八百一も封印です…陛下になんか負けないんだから」

 

 ・・・・・・・

 

「ご主人様…朱里ちゃんや陛下には負けるかもしれませんけど…私だって」

 

 ・・・・・・・

 

「ふふふー、遂にお兄さんの解禁ですねー。まさか二人に妊娠させて朱里

 

 ちゃん一筋だなんて言わせませんよー」

 

 ・・・・・・・

 

「一刀様…私はあなたにお仕えしてから日は浅いですし、そんなに魅力的

 

 な物を持っているわけではないですけど…でも」

 

 ・・・・・・・

 

「どうしたの、お母さん?」

 

「璃々は弟か妹は欲しくない?」

 

「欲しい!」

 

「そう、それじゃお母さん頑張っちゃうから」

 

 ・・・・・・・

 

「儂とてまだまだ小娘どもには負けんぞ。お館様、夜討ち朝駆けに気を付

 

 られよ…ふっふっふ」

 

 ・・・・・・・

 

「あらあら、北郷さんも大変ですね。でも私とてこのまま黙って見ている

 

 つもりはありませんよ」

 

 ・・・・・・・

 

 此処に来て、一刀を取り巻く女達の情念は一気に盛り上がりを見せ始め

 

 ていたのであった。

 

 

                         …続く。(続きが怖い気もしますが)

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 結局、本当に命は一刀の子を懐妊してました。

 

 さらに朱里の妊娠も発覚で、一刀を取り巻く女模様は

 

 激変を見せ始めてきました。

 

 まずは雪蓮達が何やら画策して蓮華と思春を差し向けようと

 

 していますが…果たしてどうなる事やら。

 

 というわけで、次回は蓮華達が南陽に来る所から始まります。

 

 ちなみに最後の女性陣の中に蒲公英や桃香達がいないのは一応、

 

 北郷軍陣営の女性のみ(張三姉妹・涼を除く)の心情を描いた

 

 からで、他の方も同じような事を考えている可能性はあります。

 

 そして霞が『朱里に次いで付き合いが長いのは自分』と言って

 

 ますが、彼女がそう思っているだけで、朱里の次に付き合いが

 

 長いのは雛里ですので。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ三十九でお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 本当はあと数話程度で完結させようと思っていたのですが、

 

    何だか難しそうになってきました…。 

 

 


 
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