EP4 俺は(わたしは)、キミのもの
和人Side
『ザ・シード』の開花、ALOの復活、新生アインクラッドの登場、
そのアインクラッドの第1層ボスの単独撃破から幾ばくかが経ち、須郷が殺害された。
かなりの激動の日々と言えたかもしれないがいまはそれも落ち着いている。
俺達『
学校の方ではそろそろ本格的に体育などの授業が組まれるはず、単位取得の必須科目にも指定されているし。
とまぁ、そんなある日の学校での出来事…。
「カズ、ケイ。バスケしねぇか?」
「ん~、まぁ偶にはいいかもな」
「……私もやろう」
「じゃ、決定。他にもやる奴いるか?」
今日は昼食をクラスメイトと食べ、そのあと興田にそう誘われた。
俺も景一も折角なので参加を決め、村越が他のクラスメイトに呼びかける。
それによって野木と日原の男子2人が参加することになった。
そして昼休みのバスケコートへと移動、チーム分けは俺、興田、日原のAチーム、
景一、村越、野木のBチームに別れてゲームを始める。
形式は分かる通り3on3だ、とは言っても特にルールを決めていないバスケをするだけなんだけどな。
「それじゃあ……スタート!」
最初の攻撃は俺達からで守りは景一達、村越の開始の声でゲームを始めた。
結果、かなり白熱してしまった。
俺と景一が別れた事で戦力的に五分五分になったので片方が1点を入れれば、
もう片方がすぐに入れ返すという状況になり、現在では俺と景一で一対一の勝負になってしまっている。
他の4人が先にバテてしまったからであるが、先に2点差を付けたら勝ちというルールになった。
それも5分程続き、景一が俺よりも1点先取している状態で俺はボールを放ったのだが…、
「くっ!」
さすがに外してしまい、それを景一が奪い、そのまま反対側のゴールへと長距離シュート。
マズイ、こいつの
―――ガコンッ、バサァ!
入れやがった、隣を見てみれば景一は小さくガッツポーズを取っている。はぁ、やられた。
―――おぉぉぉ!
―――きゃぁぁぁ!
「ん?」
「……む?」
歓声が響き渡り、俺と景一は揃って首を傾げた。見てみれば生徒達がコートの周りに集まって騒いでいる。
ギャラリーがいるのには気付いたけれど、まさかここまで多くなっているとは……途中で完全に熱中していたからなぁ。
取り敢えず俺達は興田達の元に移動した。
「わるい、負けた」
「良いって、気にするな」
「ていうか凄かったぜ!」
負けてしまったことを軽く謝罪すると興田は笑いながら言ってくれたし、日原は感動したように声を上げた。
景一の方でも村越と野木が彼を労っている。
そこでふと視線を感じ、そちらに目を向けてみれば…、
「……っ//////!?」
ゲームを観戦しにきたのだろう明日奈と視線が絡み合った。
それが恥ずかしかったのか彼女は顔を紅くして俯かせており、隣にいる志郎と里香は笑っている。
その微笑ましい光景に俺も笑みを浮かべた。
和人Side Out
明日奈Side
昼休みに里香やクラスメイトの数少ない女の子達と昼食を食べている時、
少し離れた所で話しをしていた男子達の会話が聞こえてきた。
「2年の桐ヶ谷達がバスケの試合をしている」って、そのまま何処かへ行ってしまった。
普通は誰かがバスケをしていることに騒がないけど、
今回は違う……2年の桐ヶ谷、それは間違いなくわたしの大好きな人で、彼は有名人だからだと思う。
その話しが聞こえたと思えば、里香と女の子達はすぐに食事を済ませてわたしを催促させた。
「早く食べて見に行くわよ」と、わたしもすぐにお弁当を食べて皆でバスケットコートへと向かった。
「す、すごっ…」
「うわぁ~、多いわね~」
「う、うん…」
高畑さんと里香がそう呟き、わたしも圧倒されるように頷く。
生徒の数が凄く多い、中には一番近い2階の教室などから見ている生徒もいる。
キリトくんは良くも悪くもとにかく目立つ、今では人気のある生徒の筆頭となっているし……そんな時だった。
「里香、明日奈、高畑! こっち来い!」
わたし達を呼んだのは志郎君で、他に見学していたクラスメイトの男子と道を開けて様子を見せてくれた。
キリトくんと景一君達とのバスケ、わたしはそのゲームに魅入ってしまう。
いつもは妖精の世界での剣の戦い、パソコンに正面から真剣に取り組んでいたり、
そんな一面は見てきたけどスポーツで汗を流す彼はまた新鮮。
ブレザーの上着を脱いでカッターシャツ姿でバスケをするキリトくん。
相手が景一君だからなのか、結構本気を出しているみたい。
他のチームの男の子達は体力切れになったみたいで彼と景一君の一対一になっている。
けれどそれも終わりを迎えた、キリトくんがシュートを外してしまい、
零れたボールを奪った景一君が止めのシュートを放ったことでゴールに入った。
一瞬だけ悔しそうな表情をしたキリトくんだったけど、すぐに笑顔になっている。
その時、彼とわたしの視線が絡み合い、思わず照れてしまって顔を俯かせちゃった。
なんか最近こんな風に紅くなってばかりだけど…わたし、本当に大丈夫かなぁ//////?
明日奈Side Out
和人Side
「ふぅ、バスケなんて久しぶりだからちょっと疲れたな…」
「お疲れ様、キリトくん」
午後の授業が終わった後、明日奈と一緒に下校しているところだ。
鍛練で体を動かすのとはまた違うものだから、バスケは少し疲れた。
それにしても……隣を歩く明日奈は何処かソワソワとした様子だ、しかもここ最近いつもである。
「なぁ、明日奈」
「え、な、なぁに///?」
可愛らしく首を傾げる明日奈、だがやはり反応がおかしい。
「なんか最近様子が変だけど、体調でも悪いのか?」
「う、ううん、そんなことないよ/// 大丈夫…///」
「いや、顔を紅くして言われてもなぁ…」
聞いてみてもこんな様子である。
まぁ、なんだ、その……女性特有の
けれど彼女なら甘える時は甘えてくれるし、俺もそうするようにしているから大丈夫だろう。
「明日奈、何処か行きたい所とかあるか?」
「え…あ、その…キリトくんのいえが、いい…///」
「俺の家?…で、いいのか?」
「うん、キリトくんの家がいいの…//////」
少し前のように明るく言うのではなく、ただ大人しくそう呟く明日奈。
実際のところ、スグが帰宅するのは部活もあるので遅くても夜の7時前頃だと聞いているから、
それまでの間に彼女を送ってあげる事ができれば問題無いだろう。
「そっか……分かったよ」
「ん…//////」
小さく頷きながら、これまた小さな笑みを浮かべた明日奈。
やはり様子が変化した彼女だけれど、いまはまず俺の家に向かうようにしよう。
2人で腕を組みながら向かった。しかしその道すがら今度は互いに珍しく沈黙。
明日奈は時折なにかを言おうとするけれど、すぐに口籠ってしまう。
俺から聞くのもマズイ気がするから、話しを切りだすこともできない。
ホントにこういう時ってどうしたらいいんだ?
これでもSAOでは明日奈と夫婦だった…それなのに彼女がなにを思って、何を望んでいるのかを分かってやれない。
むしろ、SAOで夫婦だったからなのか? 彼女と居るのが当たり前だと感じていたからかもしれない。
うん、もう少し明日奈の事を考えてあげるようにしないとな…。
「ただいま」
「おじゃまします///」
誰も居ないけれど、家に帰ったら必ず挨拶は言うようにと師匠に言われてきたので、癖さながらにそう言う。
明日奈を自室へと上げてから俺は適当に冷えた麦茶を淹れて、自室へと入った。
そこで俺の眼に映ったものは……、
「明日、奈…?」
「ひゃっ、ひゃいぃっ/////////!?」
明日奈。そう、彼女なのだが……俺のベッドの上にある枕に顔を埋めていた。
しかも匂いを嗅ぐという行為までして…いや、まぁ、分からなくもないこともないんだが…。
「あああ、あの、そそそ、その、これはっ//////!?」
「と、とにかく落ち着け、明日奈」
麦茶の入ったコップを机の上においてから混乱する明日奈を宥める為にベッドに座り彼女を抱き締める……が、その瞬間。
「あ、あわわわっ/////////!? (ドンッ!)あっ…」
「っ、つぅ~…」
「ぁ…ご、ごめんなさいっ!」
真っ赤になった彼女に突き飛ばされてしまい、思わぬ事だったので受け身をとれずにベッドから落ちて頭を軽くぶつけてしまった。
その明日奈はというと今度は真っ青な顔ですぐに俺の傍に来てくれた、目尻からは涙まで浮かび始めている。
「だ、大丈夫だから、な?」
「(くすんっ)ぅ、うぅ…」
安心させようとそう言ったがそのまま泣き出してしまう。
もう一度、思える限り優しく抱き締めてあげて、頭を撫でてあげる。
そうすると少しは落ち着いたのか泣き止んだ様子を見せてくれたのでホッとした。
「不安、か?」
「(ぐすっ)ううん、不安じゃないよ…」
シュンッという音が本当に聞こえたように落ち込む明日奈。
何が彼女をここまで追い立てるのか、原因というものは俺のはずだと思う。
問題はその原因となる理由が分からないのだ。
「もしかして、俺がなにかしちゃったか?」
「ち、違うの///! わたしが勝手に期待しちゃって、あっ…//////」
期待? 何を? ナニ、を……あ~、なるほど……って、期待!?
「ちち、違うんだよ//////!? 期待っていうのはそういうのじゃないの//////!
だからね、期待は、あの、その…ぁぅ~//////」
っ、そういうことだったのか/// いや、俺自身そういうことを考えた事がないわけじゃない。
そういう年齢だし、SAOでは何度も体を重ねたし、加えて親公認の仲ともいえるし、お互いの体調も万全といえるものになった。
ただ、彼女を想えばもう少し後の方がいいのではないかと考えたのも事実。
現に俺は今年で17とはいえ今はまだ16のガキで、明日奈は18になるとはいえ17の少女。
逆であればどれだけ良かったことか、彼女よりも年下なのが悔やまれる…。
つまり、責任云々という考えが俺にもちゃんとあるのだ。
「ほ、ほんとにごめんね、いきなり、こんな…//////」
黙った俺に気を遣いながら、気まずそうにそう言った明日奈は続けて喋り出す。
「わたし、ね……怖いの…」
「怖い?」
「眠ってた、2年間の間に……須郷に、何かされたんじゃないかって…」
「っ!?」
俺は戦慄した。いくら奴でも眠っている相手に、しかも病院でそんな事はしないはず……そう、思えなかったから。
だから、安易な言葉を掛ける事が出来なかった。
「でもね、そんな怖い思いを…キリトくんなら、吹き飛ばしてくれるって、思ったの…。
だけどね……そんなの、自分勝手な考えだって、キリトくんを困らせるって、分かってるのに…」
震える明日奈、また泣いてしまうのか? 泣かせてしまうのか?
笑ってほしい、笑顔を俺に見せてほしい、ならばどうする?
そう考えて、俺は彼女の唇に自分のを重ねた。
不安を消せるように、笑ってもらいたくて、唇を重ねて舌を絡めていく。
お互いに苦しくならないうちに、唇を離す。
そしてどちらともなく言葉を発する…。
「「俺(わたし)は、キミのもの…。だから、キミが欲しい(の)…」」
目が覚めたのは夕方の6時半前、まもなくスグが帰って来てもおかしくない。
俺の隣で眠っている明日奈は穏やかな表情である。
安心したらしい、その身が穢れていなかった事に……俺も嬉しかったのは言うまでもない。
「かずと、くん……だい、すき…///」
可愛らしい寝言に俺は自分の頬が緩み、愛おしさを感じた。
『和人』、俺のことをずっとそう呼んでくれた。
これでまた俺達の関係は一歩前に進んだ、男と女として。
彼女を守る為にもより一層の精進が必要だな…。
「俺も大好きだよ、明日奈…」
和人Side Out
To be continued……
後書きです。
・・・・・・というわけで、生々しいかつ甘々しい話しでした。
まぁ早い話し明日奈が和人のものに、和人が明日奈のものになったというべきですね。
それぞれがホントの男女の関係になったということなんですよ。
それにしても、いまいち完璧といえるような仕上がりになっていない・・・。
ここから少しずつ訂正を加えるかもしれませんね。
ではここらへんで、次回から「奈良修行編」に入ります。
それではまた、次回で・・・。
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EP4になります。
さてさて、タイトルが示すものとは一体?
どうぞ・・・。