No.567695

ネタ帳 その1

quinnce15さん

単発ネタ帳です。思いついたシーンをあげているだけですから……

2013-04-19 15:49:15 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:245   閲覧ユーザー数:245

 

「ふぅ…… 何とかなったね。皆、怪我はない?」

ユウヤは辺りを見回した。

「まあ、何とか、ね」

「……疲れたけど、無事」

「こちらも大丈夫です」

と、仲間たちが応える。

「しかし、ありがちな罠とはいえ、毎回ほんと手こずらせてくれるわよねぇ」

レンゲが嘆息するのも無理はなかった。

 宝箱を開けた→魔獣が飛び出した なんていうのは、使い古された王道パターンだが、度々ユウヤ達を苦しめてきた。

「さて、中身は確保できたし、そろそろ帰ろうか」

「……」

立ち上がりつつユウヤは声をかけるが、皆の反応が悪かった。

「あれ?どうした?」

「……あれ」

 シノが目線で示す方向を見れば、通路の入り口が落石で塞がれていた。

「どうやら、魔中との交戦中、何らかの衝撃でこうなったのかと」

レンに言われて、ユウヤも納得した。

(確かに、あれだけ暴れたらこうなるのもしゃーなしかもね)

 レンゲは改めて、自分たちを苦しめた元凶ともいえる宝箱を睨み付けた。

 

 事態はこうだ。

『洞窟が新発見されたので、中の様子を見てきて、可能ならマッピングもして欲しい』という依頼を受けたユウヤ達一行は、そに洞窟に足を踏み入れた。

 道中、強敵に出会うことも、何かトラップがあることもなく、ユウヤ達は拍子抜けしていた。

 難なく辿り着いた最深部に、これ見よがしに宝箱が1つ。

 正直、『物足りない』と思っていたユウヤ達は、あからさまに怪しい宝箱を開けた。

 案の定強い魔獣が現れて、ユウヤ達は追い詰められるも、なんとか討滅成功。

 しかし、交戦中に魔獣の尻尾が壁に激突し、そこが崩れて入り口が塞がったと。

 

「さて、どうしようか?」

誰にへでもなく、ユウヤは問いかける。

 ざっと部屋の中を見渡してみるが、入り口は塞がれた場所しかない。上を見上げても、遥か彼方に天井が見えるだけ。壁を登って脱出という案はない。

「一か八か、ここ、飛び降りてみる?」

レンゲが言うのは、入り口とは反対側にある崖。試しに照明魔法を使ってみるが、当然底まで光は届かずに、暗くて何があるかここからでは見えない。

「止めておいたほうが賢明だと思います。ここまで1本道だったので、仮にこの下が通路だったとしても、どこかで合流できるとは思えません」

「まあ、そうだよな」

レンの応えに、ユウヤも相槌を打つ。

「定番だけど、あれ、壊すのがいいんじゃないかな」

ユウヤが指し示すのは、入り口を塞いでる岩々。

「また、どこかが崩落する危険性もありますが?」

「そのときはその時じゃん。今はこれしか方法考え付かないし、やってみてもいいんじゃないか」

 勤めて明るく言うユウヤに、皆は同意することにした。

 

「セイッ ハッッ ヤァッッ!!」「――総てを滅ぼす業火よ 今我にその力の欠片を―― フレアボムッ!!」「アハハハハ 砕け散れぇッッ」「行きますよシャムキャット レッグカットです」

 剣、魔法、拳、召喚獣と、皆の力を合わせながら岩を砕いていく。

 続けること20分程――

ピシッ ガラガラガラ

 ついに一番大きな岩に亀裂が入った。

「よし、このままいくぞ」

「えぇ」「了解です」「はい」

 更に続けること5分

 とうとう、壁の向こう側が見えた。

「今だ。行け、みんな」

ユウヤの声に、仲間たちが走り抜ける。

(よし、俺も――)

そう思った時だった。

ガラガラガラ ドンッ ズザザァー

 壁の、さらに上の部分が崩落を始めた。しかも、先ほどの比じゃない大崩落を。

 そのまま走り抜けていれば、ユウヤは間に合ったかもしれない。しかし、剣士の癖か、音に反応して一瞬足を止めてしまっていた。

「ユウ、上よ」

「チッ」

落ちてきた岩を回避するために跳躍。しかし、出口が余計に遠くなってしまった。

 間の悪いことに、着地予定地点も、崩落を受けて岩が流れ込んでくる。

「う、わぁぁぁ」

 成す術もなく、そのまま岩の雪崩れに巻き込まれるユウヤ。

「ユ、ユウヤァァァッッ」

 普段は物静かなシノが、悲鳴に近い大声を張り上げる。走り寄ったレンとレンゲは手を伸ばし、ユウヤを掴もうとする。

 が……

 

キーンコーンカーンコーン

 教室に、午後の授業開始前の予鈴が鳴る。

「どうやら、昼休みはここまでのようだね」

 男子生徒Qはそう言って、手にしていたノートを閉じる。

「えぇ~ 今いいトコだったのに……」

「そうですよ。これじゃあ、続きが気になって、授業どころじゃありませんよ」

「……ヒドぃ」

 途端、不満げな顔をする3人の生徒。

「まあまあ、放課後にまた続きするから。それに、午後の授業、君たちはレポート提出あるんでしょ」

 なだめるように言いながら、Qは机の上を片付けていく。

「……放課後、絶対ですからね。約束ですよ」

やがて、観念したように1人が言う。

「もちろん。待ってるよ」

穏やかな声でQは約束する。

「分りました。じゃあ、授業行ってきます」

立ち上がった1人を追うように、残り2人も教室を後にした。

 残されたQは1人、ポツリと呟いた。

「これが、普通のTRPGで終わればいいんですけどねぇ……」

その呟きに応える者はいないが、Qが手にしたサイコロが一瞬、紅い光を放った……ように見えたのは、誰も知らない話である。

 

 
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