No.565654

SAO~黒を冠する戦士たち~ 短編集

本郷 刃さん

短編集を書いてみました。
オール甘々になっているので、ある意味ご注意くださいw

どうぞ・・・。

2013-04-13 15:32:59 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:16371   閲覧ユーザー数:14822

 

前書き兼ご注意です。

 

今回は短編集となっており、お題に沿って考えた短編です。

現在までに本編で描かれたカップリングに、もう1組を加えています。

特に時系列は意識していませんの普通に楽しめると考えております。

 

それではどうぞ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SAO~黒を冠する戦士たち~ 短編集

 

 

 

お題

 

桜…桜舞い散る中で・・・(キリト×アスナ)

雨…降りゆく雫に濡れると・・・(ハクヤ×リズベット)

傘…隣のアナタは優しくて・・・(ヴァル×シリカ)

星…流れる星に願いを・・・(シャイン×ティア)

怖…怖いものは怖い・・・(ルナリオ×リーファ)

熱…熱が上がるのは・・・(ハジメ×シノン)

痕…どんな傷痕があったとしても・・・(クライン×カノン)

雪…融けない雪もある・・・(ケイタ×サチ)

 

 

 

 

 

 

 

『桜』

 

わたしは今、大好きな彼と桜並木道を歩いている。

午前中で終わった学校の帰り道、2人で腕を組みながらその道を歩いていく。

その時、穏やかな風が吹き抜けて幾つもの桜の花弁が舞い散り、わたし達を包み込む。

その幻想的な光景にわたしは浮かれるように彼の腕から離れて、舞い散る桜の中を踊るようにステップを踏む。

 

「ほら、和人くん。桜が凄く綺麗だよ♪」

「明日奈。あまりはしゃぎすぎると、足を滑らせるぞ?」

 

苦笑しながらも気を遣ってくれる和人くん、そんな彼に微笑みながら返事をしようとして…、

 

「だいじょう、きゃっ!?(とすんっ!)」

 

足を滑らせて尻餅をついてしまいました。あぅ~、注意されたばっかりなのに///

 

「だから言ったじゃないか…ほら、立てるか?」

「う、うん/// ありが、んっ!?」

「? どうした、明日奈?」

 

和人くんが手を差し出してくれたのでその手を取ろうとした時、

口の中に違和感を感じたので手を取るのをやめ、それに気付いた彼が少し心配そうに尋ねてきた。

 

「だ、大丈夫! ちょっと、口の中に…んっ」

「口の中?」

「は、花弁が…」

 

そう、どうやら尻餅をついた拍子に口が開いて、その時に桜の花弁が口の中に入ってしまったみたい。

舌を動かして花弁を取ろうとするけれど、取る事ができない。

和人くんが見ている前で、指を口の中に入れるなんてはしたない事はしたくないし…。

 

「明日奈、こっち向いて」

「ふぇ、んんっ/////////!?」

 

和人くんに呼ばれて顔を少しだけ向けると、彼の両手に頬を挟まれてそのままキスをされてしまいました。

突然の出来事に驚いて抵抗をしようとしたけれど、わたしの見つめる彼の瞳が「抵抗するな」というように感じたので、

一切抵抗する事なく和人くんにされるがままになり、わたしは眼を閉じた。

舌がわたしの口の中に侵入し、中を舐めまわしてくるけれど、いつものキスと違う事に気が付いた……あ、もしかして…。

彼の舌の動きに合わせるようにわたしもそれ(・・・)を探す、そして…、

 

「ん、ふぅ~…」

「ふ、ふぁ~…/////////」

 

唇が離れた事で息を整える。和人くんはイタズラが成功したような表情を浮かべると、舌をチロッと出して、

 

「はい、取れたよ」

「あ、ありがとう…/////////」

 

そう言った。彼の舌には桜の花弁がくっついている、わたしの口の中にあったもの。

そう思うと凄く恥ずかしい///

和人くんはポケットティッシュを1枚取り出して花弁を包んだ。

 

「あんまり浮かれすぎるなよ……でも、桜の中の明日奈も凄く綺麗だったよ…」

 

注意の後に、いつもの綺麗な笑顔でそう言われたものだから、わたしはまた顔を真っ赤にしてしまいました。

本当に和人くんには勝てる気がしないよ…///

だけど…、

 

「その、また桜の花弁が入ったら、取ってくれる//////?」

「勿論、喜んで」

 

もう一度くらいなら、好いよね///?

 

 

 

 

『雨』

 

―――バシャッ!バシャッ!バシャッ!

 

「「はぁ、はぁ、はぁ………」」

 

濡れる道路を2人で駆けていく。

突然に降り出した雨、朝の天気予報では快晴だったはずなのに見事に予報は外れて雨に降られた。

少し前を走る彼に手を引かれて、近くにある公園の屋根のあるベンチの下へと入る。

 

「はぁ~……里香、大丈夫か?」

「大丈夫な訳ないでしょ…あ~、制服がびしょ濡れよ~」

 

心配してくれた彼、志郎の気遣いの言葉に思わず苛立ちながら答えてしまう。

防水加工が施されていない鞄を持っていたのでそれを庇いながら走った。

お陰で鞄と中身は無事で済んだけれど、見事にあたしも彼も全身が濡れてしまったという。

幸いにも濡れていないハンカチを取り出して顔や頭を拭くけれど、ほとんど意味がない。

すると隣にいる彼からタオルを渡された。

 

「ほら、使え」

「志郎は?」

「バカは風邪を引かない」

 

迷信でしょ…っていうかそれは『バカは風邪を引いている事に気が付かない』って、

ことだったと思うけど……って、そうでもなくて!

 

「そうじゃなくて…」

「安心しろって、綺麗なタオルだから」

「っ、もういいわよ…」

 

あたしは諦めて自分で使う事にした、まったく……こっちの心配ばかりして…。

タオルで頭を拭いていると、仄かな香りを感じた。

このタオル、志郎の匂いがする……自分で考えておいて、凄く恥ずかしい…///

そう思って隣の志郎を見てみればブレザーの上着を脱いで絞っている、相変わらず凄い力ね…。

 

「くしゅんっ!」

 

そこであたしは寒気を感じ、くしゃみをした。うぅ~、さすがにまだ冷えるわね~。

 

「(バサァッ)え? 志郎?」

「トレーナー…ちょっと汗臭いかもしれないけど、風邪を引くよりはマシだろ?」

「ぁ、ありがと…///」

 

またもや茶化しながらそう言った志郎。

だけどあたしを気遣っての行動で、しかも内心では好きな男の子の服を羽織っているせいでドキドキしている。

チラッと彼を見てみて、今度はそこに目がいってしまった。

 

「ん、どうかした?」

「な、なんでもないわ/// (む、胸元が…//////)」

 

あたしの眼を引いたのは志郎の胸元。

第2ボタンまで外され、素肌が僅かに露わになっていて、

白いカッターシャツが彼の肌に張り付いて透き通り、男の色気を醸し出している。

『水も滴る良い男』とはまさにこのこと、それにしても……し、心臓に悪過ぎるわよ~//////

 

「里香?」

「にゃ、にゃに///!?」

 

ど、どうしよう///!? いきなり呼ばれたせいで変な声がでちゃった。

志郎はあたしの額に自分の額を当てて…え?

 

「顔紅いけど、熱はないな……(きゅっ)里香?」

 

彼の服を掴んで、そのまま抱きつく。

本当に、あたしの心配しかしていないんだから……でも、やっぱりそれが嬉しくて、ドキドキするのが止まらなくて…。

 

「寒い、から…抱き締めてよ//////」

「うん、了解」

 

そう言って志郎はあたしを抱き締めてベンチに座らせた。

誰もいない公園で、雨宿りをしながら聞く雨音と彼の生きている証明の音、それがあたしの胸の音をまた加速させていくの…。

 

 

 

 

『傘』

 

「傘、忘れちゃった…」

 

今日の最後の授業が終わって、いざ帰ろうと思った時……雨が降り出した。

小雨だったら走って帰れるかもしれないけど、さすがにそれなりに降っているからそれも叶わない。

下駄箱で立ち尽くすあたし、そこに声が掛けられた。

 

「珪子、帰らないの?」

「烈弥くん……う、うん。ちょっと雨を眺めていたくて…」

 

声を掛けてきたのは大好きな烈弥くんで、あたしは咄嗟の事で嘘を吐いてしまった。

天気予報で雨が降ると言っていたのに傘を忘れた事を言うのが恥ずかしかったから。

そんなあたしに彼は微笑むとこう言ってくれた。

 

「一緒に帰ろ」

「…うん///」

「じゃあ、入って」

 

多分あたしが傘を忘れた事に気付いていると思うけど、優しく手招いて傘の片方に入れてくれた。

 

「行こう」

 

 

降りしきる雨の中、烈弥くんは左手で傘を差してあたしが濡れないようにしてくれる。

 

「今日は用事があるんじゃなかったの?」

「あったけど、珪子の方が優先だから」

「ぁぅ…//////」

 

こうやって嬉しい言葉を投げかけてくれれば、その嬉しさで胸がいっぱいになって赤くなっちゃう。

自分の事よりも他の人を優先しようとするのは、黒衣衆では同じなのかな?

明日奈さんや里香さんがそう言っていたし……その時、彼の右側の肩が凄く濡れている。

その代わり、あたしは全然濡れていない…もぅ~。

 

「どうしたの?」

「こうすれば、烈弥くんも濡れないかなぁって…///」

 

あたしは彼に寄り添うように近くに寄り添いながら、左手で傘を持つ烈弥くんの手に自分の右手を重ねた。

少し驚いた様子を見せた彼は、すぐに微笑んで…。

 

「ありがとう///」

「あたしも、ありがとう///」

 

あたしも彼もお礼を言ってから、また歩き出す。

いつも助けてくれるアナタを、少しでも助けたいから…。

 

 

 

 

『星』

 

「公輝は星みたいですね」

「……俺が?」

 

公輝と2人で夜空を眺める為に高台にある公園に来ています。

私がそう呟くと隣に居る彼は「何処が?」とでも言いたげな顔をしており、私はくすっと笑ってから答える事にしました。

 

「いつも誰かの助けになるように輝いている貴方は、夜にみんなを照らして癒す星みたいですよ」

「ん~…俺としては、そういう実感がないんだけどなぁ~」

 

そうですね、確かに本人ではそういうものは感じないかもしれません。だけど私は知っています。

和人君や志郎君が昼の太陽なら、烈弥君や刻君はその日差しを守る雲、景一君は夜の満月というところです。

そして昼でも夜でも決して主役になることはないけれど、数多の星々と共に輝いてそれらを支えるのが公輝という星。

 

「ま、そう言ってもらえるのは嬉しいな」

 

ニカッと無邪気な子供のように笑う彼、その笑顔に私はいつも笑顔になってきました。

私は、貴方を助けてあげられているのでしょうか……そんな思いも、心の中にあります。

 

「なら奏が昼の青空で、雫が夜空ってことだな」

「え?」

「2人共、いつも無茶やってる俺達を助けてくれるだろ? だから包まれてる感じがするんだ」

 

本当に、私が欲しいと思う言葉を公輝はくれるんですね…。

 

「お、流れ星!」

「ホント…あ、消えちゃいましたね」

 

私達は一筋の流星を見つけるも、すぐに消えてしまいました。

 

「折角ですから、何かお願いごとをしたかったです」

「なんて願うんだ?」

 

興味ありというように私の顔を覗きこむ公輝、顔が近いですよ/// 嬉しいですけど///

 

「秘密ですよ♪」

「む、まぁいっか……ん? 雫、もう一回流れるぞ…」

 

彼がそう言って指差した方向に私は眼を向けた。

すると本当に流星が現れ、すぐに祈りを捧げる。

この願いが届きますように…。

 

「3回お願いできたか?」

「いえ、ですが……3回、それ以上の想いを込めて祈りました/// 公輝はなにかお願いしましたか?」

「おう! 『ずっと雫と居れますように』ってな!」

 

も、もぅ~公輝ってば、本当に…//////

あまりの嬉しさに顔が紅くなるけれど、それ以上に彼のお願いと私のお願いが一緒だった事がもっと嬉しかったのです。

 

―――『ずっと公輝と居れますように』

 

私も彼も笑顔で顔を見合わせてから唇を重ね、そして空を再び見やった。

彼と一緒に在れますように…。

 

 

そういえば…。

 

「どうして流れ星がくるってわかったんですか?」

「ん、勘だ♪」

 

 

 

 

『怖』

 

「やっ! はぁっ!」

「ふっ! せぃっ! らぁっ!」

「きゃうっ!?」

 

強烈な一撃に竹刀を弾かれて、あたしの負けは決定した。

 

「ありがとうございました…大丈夫っすか、スグ?」

「ありがとうございました…うん、平気だよ」

 

お互いに一礼をして試合をちゃんと終わらせ、刻くんの気遣いには元気に答える。

竹刀を持っていた腕に痛みは無い、加減をしてくれていたのも知っている。

でも学校ではみんなに比べて自分が強くなっているのが分かる。

それは、刻くんやお兄ちゃん達が稽古を付けてくれるお陰。

 

「それじゃあ片付けよっか?」

「了解っす」

 

あたしと刻くんは道場の掃除を始めた。箒で埃を集めて塵取りを使ってゴミ袋に入れ、雑巾掛けをして窓ガラスを拭く。

道場を使った後は毎日掃除をしているので大した汚れは無いけれど、大事な事なので欠かさない。

掃除を終えたあたし達は自宅の方に戻った。

 

「あたしシャワー浴びてくるから、ゆっくりしててね」

「ありがとうっす」

 

あたしは刻くんにお茶を出してから洗面所へと移動し、シャワーを浴びる為に服を脱ぐ。

そういえば、今日はお兄ちゃんもお母さんも朝から出掛けてたんだっけ?

ということは今は2人きりで……さ、さすがに昼間からはないよね、えへへ~///

その時、1つの黒い影があたしの視界の隅を駆け抜けた…。

 

「……ま、まさか、ね…」

 

いや、でも、季節を考えればもうアレ(・・・)が出現してもおかしくない。

むしろ、餌を求めての最初の行動かもしれない…。

ううん、きっと気のせいだよね!

そう信じて、残りの下着に手を掛けた瞬間……(・・・)が足元に現れた。

 

「○★□☓▼①②⑨◆△!!!???」

 

あたしは声にならない悲鳴を上げて、一目散にリビングへと駆け出した。

 

 

―――バタンッ!

 

リビングへの扉を開けたあたしは刻くんを見つけるとすぐに抱きついた。

 

「刻く~~~ん!(涙)」

「スグ、ちょっ、なっ//////!?」

「く、黒、あ、アレ(・・・)が、でで、出た、の~!」

「って、ゴk「言わないで~!?」わ、わかったっすから…」

 

刻くんが奴の名前を言いそうになったのでそれを全力で阻止する。

ダメ、名前だけでも絶対にダメ、身の毛がよだつよ~!

 

「ホイホイ、落ち着くっすよ…。ここにアレはいないから、ね?」

「(ぐすっ)うん…」

 

彼に頭を優しく撫でてもらいながら抱き締められる事で、なんとか落ち着きを取り戻す。

そこで今度は刻くんが落ち着いていないことに気が付いた。

 

「スグ、部屋に戻って着替えてくれないっすか///?」

「え…?」

「あの、さすがに刺激がありすぎるっすから…///」

「……あ…//////」

 

あたしの今の格好が上下の下着姿であることを思い出した。

ほぼ裸で彼に抱きついている……恥ずかしいけど、良いよね///?

 

「もう少しだけ、ダメ//////?」

「っ~~~~~、大丈夫、っす//////」

 

お互いに顔が真っ赤に染まる。

だけど仕方が無い、だって……怖いものは怖いんだもの///

 

 

 

 

『熱』

 

体中が熱くて、頭がクラクラして、咳が出る。

朝、目を覚ましてみれば明らかに風邪の症状があり、

体温計で熱を測ってみればなんとまさかの38度5分の高熱だった。

電話で学校に休む事を伝えた後、今度は彼に電話を掛けた。

 

「もしもし、ケイ?(ケホンッ)」

『……詩乃か、おはよう。しかし、体調でも悪いのか? 咳をしているようだが…』

 

私を気遣う景一の声。鋭い、いつもと違う声音と咳でそれが見破られたんだと思う。

 

「うん。ちょっと風邪を引いちゃったみたいだから、今日は学校休む…(ケホンッ)

 だから、こっち来なくていいから(ケホンッ)」

 

最近ではケイにバイクで学校へと送ってもらっているのだけど、連絡を入れないと今日も着そうだったから電話したのだ。

 

『……分かった。だが、しっかりと休めよ?』

「大丈夫よ……薬飲んで、寝ておくから(ケホンッ) それじゃあね…」

『…………ああ』

 

いつもより長い間があってから通話が終わった。

心配してくれているのだろうと思い、私は軽くトーストを半分程食べてから、薬を飲んでベッドで眠りについた。

 

 

ふと目が覚めた。頭にひんやりとした感触があり、触ってみると濡れタオルが額に置かれている。

ベッドの側には見慣れた黒髪のポニーテール、ブレザーの制服を着た男子……まさか…。

 

「ケイ///?」

「……目が覚めたか。体調はどうだ、詩乃?」

「ど、どうして///?」

 

何故ここに彼が居るのだろうか。もうお昼前だけど、お見舞いにしては早すぎると思う…。

 

「……さすがに心配だったからな。学校をキリ上げて、ここに来た」

「そ、そう…///(ケホンッ)」

 

嬉しかった、風邪で誰かが看病してくれる事が。

しかも大好きな彼氏であるケイに看病をしてもらっているから、余計かもしれない。

 

「……何か食べたい物はあるか? 一応、プリンとフルーツゼリーは買ってあるが…」

「ぁ、ぅ、その……プリン、食べる…//////」

 

子供みたいかもしれないけど、甘くて食べやすいのが良かったからプリンを選んだ。

カップのプリンを受け取ってから食べ始めると甘さが口の中に広がった。

食べ終えてみれば、眠気が襲ってきた。ウトウトする私をケイはベッドに横たわらせてから…、

 

「……傍に居るから、ゆっくり休め…」

「うん…///」

 

そう囁かれて、安心しきった私はすぐに眠ってしまった。

 

 

再び目を覚まして周囲を見てみれば、外は暗くなっており、ケイの姿がない。

だけど彼は居た、キッチンに立っている。

微かに漂ってくるいい香り、何かを作っているのかな?

 

「ケイ…///」

「(くすっ)……お粥を作った、昼はあまり食べてなかっただろ? 少しでも食べないとな」

 

私が呼んだ事に気が付いた彼は、苦笑してから御碗にお粥をいれてもってきた。

私の隣に座ると、スプーンでお粥を掬って軽く息を吹きかける。そして私の口元に持ってきた。

 

「……ほら、あ~ん」

「……ぷっ///」

 

ケイがそう言っても似合わなかったので思わず笑ってしまった。

彼は顔を顰めてからお粥を口に含んで…え?

 

「んちゅっ…」

「ふ、んっ…んくっ(こくん)//////」

 

俗にいう、口移しでお粥を食べさせられてしまった。妖艶に見えるケイの笑み、これはダメだ///

 

「……ちゃんと食べるか?」

「はい…//////(ケホンッ)」

 

それからはちゃんと、そのあ~んで食べさせてもらった…でも、凄く美味しかった。

食べ終わった後に薬を飲んで、また眠ることになったけれど……それはケイが帰るということ。

だけど彼は…、

 

「……ちゃんと眠るまで、ついているから」

 

そう言ったケイの表情はただ優しくて私を眠りへと誘うには十分すぎるほどだった。

もしも彼が風邪を引くことがあったら、今度は私が看病してあげよう。

いつも優しい彼の為に。

 

 

 

 

『痕』

 

あたしは自分の背中が嫌い、刃物で幾重にも付けられた醜い傷痕があるから。

服も水着も絶対に背中が見えないようにする為のものしか着ることはない。

いや、いまではなかったというしかないのかも。

あたしを好きになってくれた遼太郎さんは傷痕の事なんて何も気にしていなかったから。

むしろ誓いを立てた誇りだと、カッコイイ事まで言ってくれた。

それが嬉しくて、進んで見せることはしなくても、少しくらいは露出のある色んな服を着れるようになった。

そして今日はデートで、彼と服屋さんに訪れている。

 

「こっちはどうでしょうか?」

「これもいいけど、さっきのやつも良いと思うぜ」

 

あたしが今持っている服はシャツタイプのものだけど、遼太郎さんはさっき持っていたワンピースタイプを進めてきた。

確かにそういう服はあまり得意じゃなかったけれど、

折角男性と交際するようになったのだからワンピースのような女の子らしいものを着るのも良いかもしれない。

 

「ならこれと、さっきのワンピースを試着してみますね」

「お、おう」

 

少しだけドギマギしている遼太郎さん。

それもそのはず、いまこのお店に男性は彼しかいない。

カップルで来ているのはあたし達だけだから。

さすがに居心地が悪いと思うけど、偶には良いわよね♪

あたしは試着室に入ってカーテンを閉めると、服を着替えてみる。

今来ているシャツとスカートを脱いで先にワンピースを着てみようとした時、それに気が付いた。

 

「な、ななな、なっ//////!? こ、これって…//////!?」

 

気が付いたもの、それはあたしの背中にある傷痕の上から付けられている紅い所有者の証、つまり…。

 

「キ、キキ…キス、マーク…//////!?」

 

大声を出さない程度に、しかしそれでも驚きながら改めて確認する。

間違いなく、彼に付けられたものである。

まさかここに付けられているなんて…///

あたしは試着室から顔だけ出した。

 

「りょ、遼太郎さん///!」

「ん、どした、奏?」

 

彼は気が付いたのかして試着室の前に移動してきた。

 

「そ、その……あたしの背中に、キ、キスマークを…//////(ぼそっ)」

「あ~、その~、わりぃ。傷痕も含めてって意味だったんだけどよぉ…///」

「え…///?」

 

それって、つまり……あたしを想ってくれて?

傷痕も含めて自分のだという証明、そうだったのね///

途端に嬉しさと恥ずかしさが込み上げてきて、また試着室に顔を引っ込めた。

 

「あの、ありがとうございます///」

「え、お、おう///」

 

多分、遼太郎さんも照れていると思う。

それならもっと綺麗に、可愛くなろう。

彼の恋人はあたしなのだから、それに恥じないように///

 

 

 

 

『雪』

 

「コレ、可愛い…」

「ん? スノードームかぁ…」

 

京太郎とのデート中に見つけた小さなスノードーム、中には小さな雪だるまの人形が入っている。

 

「季節的には売れ残りなのかなぁ?」

「そうかもね…」

 

彼の言葉には簡単に相槌を打つ。なぜか見入ってしまい、離れる事ができない。

どこか儚いものが余計に私を惹きつける。

 

「ん~、良し……幸、入ろう」

「ふぇ、ちょっと…!?」

 

京太郎に手を引かれてそのスノードームが置かれている小物店へと入った。

彼は中に居た女性店員に話しかけている。

女性は嬉しそうな表情をすると並べられていたスノードームの1つを持ってきて、ラッピングしている。

レジで京太郎が会計を済ませる、ということは…。

 

「はい、幸」

「えっと、いいの?」

「うん。プレゼントだから」

「ありがとう///♪」

 

私の元に戻ってきた彼はラッピングされた小さな箱を渡してくれた。

中にあるのは勿論のこと、私が見ていたスノードーム。

欲しかったものを、好きな人からプレゼントして貰えるのは嬉しい///

それから小物店を出て、カフェテラスへと2人で訪れた。

 

「綺麗だね…」

「うん…」

 

私はカフェテラスのテーブルにスノードームを置いて京太郎と2人でそれを眺める。

消えない雪がドームの中でずっと降り続いている。

 

「私、スノードームの消えない雪が好き。本物の雪は、必ず溶けて消えちゃうけど……これは消えないから…」

「そうか? 俺はどっちも良いと思うけど」

 

もう、京太郎ってば情緒がないんだから…。

私は少しばかり拗ねてしまう、だけどそんな私に向けて彼はこう言葉を放った。

 

「でもさ、スノードームの消えない雪って……幸みたいだよな」

「読みが同じだから?」

 

その言葉にギャグなのかなと考えてそう返したけど、返ってきたのは全然違う言葉だった。

 

「そうじゃないって。幸も、この消えない雪も……どっちも消えないで残って、傍に居てくれる感じがするから…」

「っ/////////!?」

 

思わず真っ赤になってしまった。まさか京太郎にこんな言葉を言われるとは思ってもいなかったから。

まるでキリト達みたいなことを…///

 

「ははは、なんか臭いセリフだったな/// 気にしないで…///」

「(ぼそっ)覚えとく…///」

「え?」

「な、なんでもない///」

 

覚えておく、絶対に…。少なくとも、彼は私とずっと居たいと望んでいてくれる言葉だと分かったから。

だから、私もアナタと一緒に居たいという言葉を考えておくね///

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

まずは本編の投稿ではなくて申し訳ありません。

 

今回は休憩がてらということで、短編集を書いて投稿した次第です。

 

全キャラのカップリングを書くことができればいいなと思っていたものでして・・・。

 

お題に沿った内容ですが、少しばかり無茶苦茶な内容だったかもしれませんが楽しんで頂けていれば幸いです。

 

それと気付いた方もいるかもしれませんが今回はオール女性視点でした、偶には彼女達の視点というのいいですよね。

 

本編はもうしばらくお待ちいただければ、投稿を始めたいと思います。

 

是非とも、『ALO~閃姫Next after~』をお待ちください。

 

頑張りたいと思います!

 

それではまた・・・。

 

 

 

 

 


 
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