EP16 時井家との再会
和人Side
数日前にいくつかのVRMMOが復活した、ALOも近々復活するとのことらしい。
『ザ・シード』の事についてみんなに話した時は「なんで教えなかった!」と、口を揃えて言われたものだが、
茅場からの形見であることやどんなものなのか分かっていなかったことなどを伝えると、
それなら仕方がないと納得してくれたものだ。
ただ明日奈だけは「せめてわたしには…」と何度も言ってきたのでそこは甘やかすことで誤魔化した(笑)
そして現在はその数日後、GW(ゴールデンウィーク)の1日目なのだが……俺は新幹線で1人奈良県に向かっている。
理由は1つ、師匠とそのご家族に挨拶へ赴いているのだ。
俺にとっては毎年恒例で、必ず1人で向かうようにしている。
それに前回はSAOに囚われていて挨拶に行けず、師匠とはこの前会ったものの、
奥さんと2人の弟妹分とはまだ会っていない、いまからが楽しみだ…。
新幹線が京都駅に辿り着き、そこから電車に乗り換えて奈良駅に向かう。
そこでタクシーをひろい、師匠の自宅へと移動すること約30分。
一軒の日本家屋の前に着き、タクシーの料金を払って門扉の前に立つ。
インターホンを押し、応対を待つ…すると。
『はぁ~い~。どちらさまでしょうか~?』
間延びしたようなのほほんとした声に安心感を覚えつつも、ちゃんと名乗ることを忘れない。
「こんにちは、桐ヶ谷和人です」
『あら……あらあら、まぁまぁ、和人君~? いま、いきますね~』
名乗ってみれば驚いたような反応を取り、パタパタと足音を鳴らしながら歩く音と玄関を開く音が聞こえ、門扉が開かれた。
「まぁ、和人君~…。お久しぶりです~、お元気そうでなによりです~」
「お久しぶりです。葵さんもお元気そうで…」
現れた女性の名は時井葵さん、八雲師匠の奥さんである。
話し方の通りかなりおっとりとした人だが、これでいてしっかりした2児の母親であるのだ。
特に『何があっても動じない』という言葉はこの人の為にあるようなものだと思う。
「立ち話も難ですので~、どうぞあがってください~」
「それでは、お邪魔します」
葵さんに通されるように俺は時井家へとあがらせてもらった。
俺の家よりも大きな日本家屋、その一室である和室に俺は通された。
「良く来ましたね、和人。遠路はるばるご苦労様です」
「いえ、師匠こそ移動代を出していただいて、ありがとうございます」
簡単に言葉を交わすと座布団に座るよう促されたのでそこに座る。
葵さんが緑茶を出してくれたので、一息吐くように茶を啜る。
「それにしても、少し意外でしたよ」
「意外、ですか?」
なにがだろう?とはあまり思わない、おそらくは俺がここに来た意味のことだと思う。
「ええ。明日奈さんとGWを過ごすのかと思いましたが、まさかこちらに来るとは…。
夏に招集を受けているのは公輝から聞いていますよね?」
「はい、ですが体調は整えました。ですので一日だけですが、先に稽古を付けていただきたく思いまして…」
確かに明日奈と過ごすのも良いと考えたけれど、実は彼女は彰三さんの実家に今日から行くことになっているので会えないわけだ。
明後日まではお互いに会えない為、3日目から彼女と過ごすつもりである。
そういえばどこが実家かは聞いていなかったなぁ~? 今度聞いておこう…。
「ふふ、なるほど…分かりました。今の和人の体力、筋力、体調に合わせて稽古を付けてあげましょう」
「ありがとうございます」
「それでは、早速参りましょう…」
そう言われて俺は師匠の車に乗せられて別の場所にある道場へと移動した。
道場への移動後、袴に着替えてそこで稽古を受けた俺は見事に体力が尽きてしまい、
現在はまた車に乗って時井家へと戻っている途中である。
「ふむ。全盛期のようにはいきませんが、その割にある程度は力が戻っているようですね」
「そ、そうですか…」
正直、マジで大変でした。稽古内容はずばり、師匠との組手だ。
休憩無しの3時間組手、本当にきつかった。
「家に戻ったら食事を取って休憩し、午後からは体力作りをしましょう。
安心しなさい、今の体力に合わせたメニューで取り組んでもらいますから」
「了解です…」
大変だけれど、明日奈を守る力を取り戻したいから……頑張るか。
「ただいま帰りました」
「ただいま、です」
「おかえりなさい~。八雲さん、和人君~」
時井家に戻った師匠と俺を葵さんが出迎えてくれた。
「和人、先にシャワーを浴びてきなさい」
「いえ、師匠が先に…」
「師に遠慮などしなくて良いですよ。それに、和人は客なのですから」
「分かりました、ありがとうございます」
師匠に言われては仕方が無いので、俺は先にシャワーを借りることにした。
汗を流し、体を洗うとさっとシャワーを浴びて浴室から出た。
葵さんが食事の準備をしているようで、良い香りが漂ってくる。
居間へと移動すると師匠に座るよう促された。
「もうすぐしたら昼食も出来上がります。
「ん、そうですね」
師匠の言葉を聞き、家の門扉を潜る者の気配を感じた。
どうやらSAOを体験したことで、感覚が強化されたようである。玄関の扉が開く音が聞こえ、誰かが入ってくる。
「「ただいま~」」
やはりあの2人か、襖が開くとそこに少年と少女が現れた。
師匠と同じ艶のある黒髪、少年の方はショートカットで少女の方は長めのツインテールだ。
「「ただいま、父さん(お父さん)」」
「おかえりなさい。
八雲師匠の息子の時井九葉と、娘の時井燐である…ちなみに双子。
現在は中学3年生で14歳だ。2人共午前中は私用で出掛けていたらしい。
「おかえり。九葉、燐」
「「………か、和人さん(和人兄)!?」」
俺が声を掛けると2人はかなり驚いた様子でこちらに気が付いた。
この2人もまだまだだな、俺に気が付かないとは……まぁ気配を消したんだけどさ。
その様子を面白そうに笑っている師匠。
「い、いつここに!?」
「今日の午前中だよ。九葉は身長が伸びたな、燐は綺麗になった…」
「お、お父さん!? どうして連絡してくれなかったの!?」
「それでは面白くないじゃないですか」
訊ねてきた九葉に答えてから、2年間で成長した2人に呟く。
燐は師匠に問い詰めるが、師匠は笑いながらそう言いきった、この人酷ぇ…。
「皆さん~、まずはお昼にしましょう~。お食事が冷めてしまいますよ~」
気の抜けるような葵さんの声に九葉も燐も肩を落とし、俺と師匠は苦笑した。
「それにしても、ホントに驚いたよ…。まさか和人さんがいるなんてさぁ」
「僕だって驚いたんだから…もぅ、お父さんもお母さんも酷いよ~」
昼食を終えた俺達、九葉は笑みを浮かべて、燐は拗ねた様子でそう言った。
「2人も精進すれば気配が分かりますよ。現に和人は気が付いていましたからね」
師匠の言葉に2人はギョッとした表情をし、笑顔が引き攣っている。
まぁ普通の反応だとは思うが、この2人とて『神霆流』を担う者である。
特に九葉は烈弥達と同じ準師範代であり、燐もかなりの腕前であるわけだ。
「和人、2時頃からトレーニングを始めましょう」
「分かりました」
「うぇっ!?
「マジかよ…」
師匠の宣言に俺が頷くと燐は信じられないといった表情をし、九葉は呆然としている。
「九葉と燐も一緒にするか? 俺としてはお前達の成長も見てみたいんだが…」
「和人さんは明日帰るんだよな……よし、オレはやる!」
「う、う~ん、じゃあ僕もやろうかな」
俺の提案に九葉はやる気を出して参加を決め、燐は悩んだ様子を見せたが参加を決めた。
現在は午後1時、あと1時間の間は休憩を取ろう。
俺は九葉の部屋で燐と3人して雑談していた。
SAOのことを聞きたいと言い、燐も着替えてからこの部屋に来た。
2人共俺の話しに聞き入っている、仲間との時間、命懸けの戦い、明日奈の事、色々なことを話した。
「そんじゃあ和人さん、恋人が出来たんだ」
「まぁな……俺のことを俺個人として見てくれて、側に居てくれる…大切な人だ」
「まさか和人兄に恋人がねぇ~…。会ってみたいな~」
「機会があればな」
九葉と燐は明日奈に興味を示したようである。俺としても彼女とこの2人には会ってもらいたいかな。
「VRMMOか…」
「なんだ、興味があるのか?」
「えっと、まぁ。自分の力を試してみたいってのが、あるよ」
なるほどな…。九葉の近くにいて実力があるのは圧倒的に格上の八雲師匠と格下の燐だけ、
自分の力を磨きたいというのもあるんだろう。
「やってみたらどうだ? 俺もやってるし、志郎達も強くなってるぞ」
その言葉に九葉は思案した後、決意の篭った瞳を開き、楽しそうな笑みを浮かべた。
これは面白くなりそうだな。その時だった…、
「和人君~、八雲さんが呼んでますよ~」
「あ、はい」
扉越しに葵さんに呼ばれ、部屋から出て居間へと向かった。
和人Side Out
To be continued……
後書きです。
へいへい、新キャラ3人の登場です! 師匠の奥さんと息子と娘です!
葵さんは最近のアニメやらにある動揺しないのほほんキャラ、
九葉は安定の黒衣衆系キャラ、燐は僕っ娘ですw
ちなみに九葉は今後の物語で関わってくることになりますよw
それでは次回で・・・。
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EP16です。
タイトルの通りでお師匠様の家ですよ~、新キャラ3名登場。
どうぞ・・・。