No.562879

迷子の果てに何を見る 第六十八話

ユキアンさん

久しぶりの投稿になります。
クオリティは期待しないで。

2013-04-05 14:41:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3116   閲覧ユーザー数:2827

 

 

side 零樹

 

 

話し合いが終わり別荘から出て行くナギさん達を見送ってから僕はもう一度眠りに着きます。かなり無理をして起きていましたからアリスに肩を借りて部屋に戻ります。

別荘内で3日が経ち、ようやくまともに動ける様になり軽く変装してから外に出てデートに繰り出します。

 

「さて、それじゃあ何処に行きます?」

 

「とりあえず何かつまみに行きません?大河内さん達が出店を出していたはずですから」

 

「そうですね」

 

腕を組んで二人で屋台巡りを行ないます。武道大会でかなり散財しましたが普通に楽しむ分には問題ない位のお金は持っています。二人して麻帆良の屋台をぶらぶらしているとカップルのコンテストらしき物を発見した。

 

「面白そうですね」

 

「賞品のペアリングも中々良い物みたいですし出ましょう、零樹」

 

参加することを係の人に伝えると控え室に連れて行かれた。コンテストは一次と二次に分かれており、一次はコスプレで二次は水着審査らしい。二人して似合いそうなコスプレを探して最終的に決まった衣装は……

 

 

 

 

「続いては、麻帆良武道大会本戦参加カップルの零樹&アリス」

 

呼ばれたのでステージに僕が先に上がり周囲の安全を確認するそぶりを見せてから脇に控える。そしてアリスがステージに姿を現し、会場の空気が一変する。誰もがその光景に見とれていた。アリスが選んだのは簡素な白いドレスだ。だけど、それを纏うアリスの雰囲気に呑まれる。大戦期を生きてきた人なら今のアリスはアリス・スプリングフィールドではなく、アリス・エンテオフシュアだと言う位に王族としてのカリスマに溢れていた。

そして、僕はそれを守護する騎士の格好だ。ちなみに帯剣はしていない、というよりこれから帯剣すると言えば良いのかな。

アリスがその手に持っていた剣を構えたのでその正面に跪く。アリスが剣を僕の方に乗せます。

 

「汝、我欲を捨て我が盾と成りて我が身を守り我が剣と成りて我が敵を屠ることを誓うか」

 

「我、我欲を捨て汝が盾と成りて汝が身を守り汝が剣と成りて汝が敵を屠ることを誓う」

 

「されば汝、その命尽きるまで我と共にあることを誓え」

 

「我、この命尽きるまで汝と共にあることを誓う」

 

「ここに誓いは成った。その証としてこの剣を授ける」

 

頭を下げたまま両手で剣を受け取り腰に差す。

 

「我の、いえ、ずっと私の傍にいて下さいね」

 

そして、最後に王としての仮面を脱ぎ捨てて一人の恋する乙女の顔をアリスは見せる。

 

「ああ、その為に僕はここにいる」

 

その答えを聞き、再び王としての仮面を付けるアリス。

 

「行くわよ」

 

「イエス・ユア・マジェスティ」

 

 

 

 

 

 

 

あの後、二次審査が始まる前に僕たちの優勝が告げられたらしい。らしいというのには訳がある。二次審査は水着審査だ。有象無象にアリスの水着姿を見せるのに少しだけ機嫌を悪くしていたらアリスに抜け出そうと言われて会場を後にしたからだ。僕って独占欲が強いのだろうか?

 

「まあ、そんな所が好きなんですけど」

 

「顔に出てました?」

 

「ええ、分かり辛いですけど」

 

むぅ、もう少しそっちの方面を鍛える必要がありますね。

 

「それにしても本当に色々な物がありますね」

 

「まあ、学生でも能力のある奴らが色々なことでお金を稼ぐ時期ですからね。あそこにいる鋭太郎みたいに」

 

前方にある露天商の集まりの一角にかなり怪しい格好をした佐久間がこれまたかなり怪しい物を販売している。パッと見でギリギリ一般人相手に渡しても問題ない程度の魔法薬であることが分かる。あっ、こっち見てヤベって顔してる。少し位注意しとくか。

 

「もうかりまっか」

 

「ウハウハでんがな」

 

「何売ってんだよ、お前は」

 

「安心しろ、この辺を巡回する関係者には掴ませてるから」

 

親指と人差し指で円を作ってみせる。

 

「そこまで腐ってるのかよ」

 

「まあ、良いんじゃないか?どうせ明日以降には光が差さないんだからな」

 

「ストーカーさんも明日のことを聞いてるんですか」

 

「もうそのネタは勘弁してもらいたいんだが。一応零樹から話しは聞いてるからな。シュタイン教授と一緒に学園側で遊ぶことにしている。賞金も出るしな」

 

「なんだ、また金に困ってるのか?」

 

「最近、面白い奴を見つけてな。そいつを弟子にしたんだよ」

 

「……何かレアスキルを持ってるのか」

 

「ちょっと、耳貸せ」

 

かなり強力な結界が張られ、そしてとんでもない事を聞かされる。

 

「……嘘だろう」

 

大声を出さなかった自分を褒めてやりたい。それ位にヤバいレアスキルだった。

 

「オレも最初見たときは信じられなかったが間違いない」

 

背中に嫌な汗が流れる。

 

「どうしたんですか零樹」

 

「黄昏の姫巫女並、もしかしたらそれ以上にヤバいレアスキル持ちがここに居たみたいです」

 

「……そんなにヤバいんですか」

 

「ええ、この事を父さんには?」

 

「当然話してある。そのお陰で拓人はアリアドネーの所属になっている。これで戦争の駒になる様なことも無い。だが、狙われることには変わらないからな。なんとか無効化、あるいは同じことが出来る魔法の研究に金がそこそこかかってるんだよ」

 

「なるほど。僕も協力してあげたいけど今日の大会でかなり使っちゃったからな」

 

「ああ、聞いてるぞ。とりあえず遅くなったが、準優勝並びに婚約おめでとう。挙式は何時だ?」

 

「手っ取り早く夏休みに入ってすぐに、新婚旅行として魔法世界の方に行こうかと」

 

「……凄い電撃婚だな。実年齢的には問題ないだろうけど、書類上は不味くないか」

 

「籍を入れるのが先になるだけで式だけ先に済ませるんだよ。実のところ父さんや母さん、ナギさん達の方が勧めてきてるんだよ。なんせ、どっちも結婚式をやってないんだから」

 

「そうなのか?」

 

「らしいよ。何だこれ?」

 

見慣れない魔法薬があったので手に取ってみる。

 

「精力剤、一本2万」

 

「高っ!?」

 

「レイトさん直伝の精力剤だからな。これが無かったら危なかったとは本人の談だ」

 

「親の床事情なんて聞きたくなかった」

 

「はい、2万」

 

「アリス!?」

 

「今なら十本で一本おまけが付くけど」

 

「仕方ありませんね。大会の賞金を全て使ってあげますからもう少し色をつけて下さいね」

 

「毎度あり。とりあえず今ある分は渡して後日郵送で良いか?」

 

「構いませんよ」

 

「ちょっと、アリス」

 

「レイトさんがこんな物を使っていたということはそうしなければならなかったからでしょう?なら、たぶん零樹にも必要になってくるはずです。それとも零樹は私との間に子供は欲しくないんですか?」

 

「いや、欲しいに決まっている」

 

「なら、良いんですよ」

 

「あ~、ごちそうさん」

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side レイト

 

 

「ナギ、準備の方はどうだ」

 

「準備も何もねえだろう。精々零樹にやられた怪我を治す位だよ。本気でいいもの貰っちまったからな、数日は安静にする必要がある」

 

「そりゃあオレの息子だからな。それにしてもあいつもとうとうこっち側の階段に足を踏み入れたか」

 

「ああ、ここから急激に強くなるんだろうな。それより、レイトの方は準備出来てるのか」

 

「戦艦に輸送の為の転送魔法陣に儀式の供物になるスーパーロボットにドロイドやATの準備はできてるし、一般用と裏用の告知もさっき仕上がった。見てみるか?」

 

「何々、“集え魔法使い。銀河帝国の侵略の魔の手から麻帆良を救え”詳細は以下のホームページへ。裏用が”銀河帝国と称して宣戦布告をさせていただく。一般人を巻き込んでも大丈夫な舞台は用意させてもらった。なお、そちらが敗北した暁には世界中の霊地を共鳴させ地球全体に記憶消去、ならびに記憶改竄などの記憶に関する魔法全てを無効化する結界を展開する予定だ。術式も送ってやる。存分に楽しませてくれたまえ。ちなみに私は魔法がバレようとも何とも思わない。by教皇” ただの遊びに気合が入ってんな」

 

「麻帆良で過ごす最後の学園祭だしな。リーネ達が卒業したらアリアドネーで隠居する予定だ。のんびり世界が滅びるまでエヴァと一緒に過ごす。表舞台に立つのは徐々に控えて行くつもりだ」

 

「レイトが隠居ねぇ〜。あんま想像つかねえわ」

 

「それより、お前の愚息はどうするんだ。良い感じに歪んでるから修正するのは難しそうだぞ。いっその事、若返りの薬と記憶消去の魔法を使って赤ん坊まで戻した方が楽で、周囲に迷惑をかけずに済むと思うぞ」

 

「そこら辺は長い目で見守る方向でアリカと話を付けた。オレ達が離れちまったのが原因だからな」

 

「そう言えば、お前達を異世界に飛ばした奴は見つかったのか?」

 

「いや、まったく見つからねえ。式紙や使い魔を大量に作って魔法世界中に飛ばしたんだが、痕跡すら無い。こっちの方はどうなんだ?」

 

「アリスの話を聞く限り正史の存在じゃないのは確かだ。なら転生者や渡り人かと思ったのだが、それだとオレが探知出来ないはずが無い。隠蔽系の能力を貰っていたとしてもこっちは管理神から直接情報が回ってきているからな。となると、あまり考えたくはないが神そのものだろうな」

 

「そこに辿り着くか。で、勝算は?」

 

「微妙、というか分からん。情報が回って来ないと言う事は少なくともオレが会った二柱よりも上位なのか、それとも隠蔽系が得意な奴なのか。後者ならともかく前者はどうなるか分からん。奥の手も用意してあるが、使いたくない」

 

「一応、オレも異世界転移は完成させたから何時でも帰って来れる様にはなったけど、不安だな」

 

「生物は産まれると同時に死を確定付けられている。不安になるだけ無駄だ。この世の真理は表裏一体。それを受け入れてこその"闇の魔法”だ」

 

「まあな。それでも抗うのが人間て奴だ」

 

「なら、抗えばいい。それもまた真理だ」

 

「そうさせて貰うさ。それじゃあ、オレはアリカとデートに行って来るとするか」

 

「オレもエヴァとのデートに行く時間だ。それじゃあな」

 

 

side out

 


 
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