EP12 天才との約束を…
キリトSide
開校式&入学式から2日後、俺は久しぶりにALOの央都アルンへと訪れていた。
「ユイ!」
「パパ!」
目的は愛娘であるユイとの再会だ。
俺はALOの牢獄から解放されたその日から、この世界には一度も訪れる事が出来なかった。
俺としては退院した日にログインしたかったのだが、みんなに(特に母さんに)止められていた。
その為、ユイとの再会は2ヶ月近いものになってしまったのだ。
アスナはユイと会えていたから、まだマシなのかもしれない。
「おかえりなさい、パパ」
「ああ…ただいま、ユイ」
ユイは元の少女の姿に戻って俺に抱きつき、俺も彼女を抱き締め返す。
アスナは微笑みを浮かべながら俺達を見つめている。
「わたし、パパに会えて、凄く嬉しいです♪」
「俺もだよ…」
ユイは涙を浮かべつつも笑顔で接してくれて、俺も笑顔でそれに応えた。
「また3人で一緒に過ごせるなんて、夢みたいだね…」
「アスナ、夢じゃないよ」
「そうですよ、ママ」
夢見心地でぽつりと呟いたアスナに俺とユイは答えた。
確かに夢みたいだが、これは俺達が掴み取った現実である。
ま、その気持ちが分からない訳じゃないけどさ。
「ですが、他のVRMMOが閉じられていっているんですよね?」
「うん、そうだよ…」
『夢』という言葉にユイが現実を聞き、それに答えるアスナ。
そう、現在稼働しているVRMMOの数は少なくなっている。
あの事件により、安全性が確立されてきたVR技術に批判が集まり、ほとんどのゲームが閉じられているのだ。
他に稼働しているのはALOも含めて3種のゲームだけである。
アスナから聞いた話によれば、このALOもしばらくすれば閉じられてしまうと言っていた。
どうすればいいかなぁ…。
「あの、パパ…もう1つ聞いてもいいですか?」
「ん、どうした?」
「種族は人間からは変えられないのですか?」
「あ、それはわたしも思った」
ユイの問いかけにアスナも乗じてきた。
2人の疑問、それは俺が妖精の姿ではなく人間のままになっているからだ。
そのうえステータスがSAO時のモノだから戦闘は圧倒してしまう。
というかそれをいま聞くのか?…まぁ、いいけど。
「もうGM権限がないから無理だよ。後々どうにかするしかない…」
疑問が解消されたからか2人はまた新たな話しを始め、俺もそれに加わる。
だがこのALOが閉じられる前に、俺にはやらなければならない事がある……アイツの遺言を、伝えなくてはな…。
キリトSide Out
和人Side
ユイと再会して数日後、学校が終わると俺はある人物に接触を求めた。
意外にもすんなりと受け入れてくれたので、こちらが指定したファミレスで合流することになり、
俺はその人物を待っている…そこに、
「悪いね、キリト君。待たせちゃったかな?」
「構わない。俺が呼びだしたんだからな、菊岡」
『SAO対策室』のメンバーで退院前に知り合った総務省所属の菊岡誠二郎が現れた。
そう、俺が呼びだしたのはこの男だ。
菊岡は俺の正面の席に座ると、近くにいたウェイトレスを呼んでコーヒーを注文している。
少ししてコーヒーが運ばれてくると、それを一口飲んでから俺に問いかけてきた。
「それで? 聞きたい事っていうのはなんだい?」
「単刀直入に聞く、茅場と交際していたという女性はいま何処にいる…」
「っ……なんで、そのことを知っているのかな?」
俺の質問に菊岡は僅かに動揺の色を見せたが、それをすぐに隠して聞き返してきた。
内心は驚いているのだろう。
「簡単な事だ、茅場本人から直接聞いた。正確にはSAOで茅場を倒した直後、他のプレイヤーのログアウトが完了した時だな。
俺はその時に、死ぬ前の奴と話しをしたんだ」
「なるほどね、そういうことだったのか……だけど、それがどうしてその女性と会いたいということになるんだい?」
説明を受けた菊岡の反応は納得したという感じはあるが、やはり理由を聞かないことには完全には納得してもらえないようだな。
まぁ、コイツは大事を言いふらすような男じゃないのは分かるから、話しても問題無いだろう…。
「茅場からその女性への遺言を預かっている、それを伝える為だ…」
「……内容は「悪いがそれは教えられない」ふむ…」
理由を聞き納得はしたようだが、内容が分からないということからか思案しているようだ。
しばらくしてからおもむろに口を開いた。
「そうだねぇ……先に茅場晶彦がどういう状況にあったのかを説明させてもらうよ」
「分かった…」
菊岡の提案に俺は思案する理由が何かあるのかもしれないと思い、聞いてみることにした。
彼から語られた茅場の話し、そのほとんどは俺がALOに囚われていた時に茅場自身から聞いた内容と大した差異はなかった。
ただあるとすれば……茅場が交際していた女性――名を『神代凜子』というらしい――の首に爆弾を仕掛けていたという。
正直、何故あの茅場がそこまでの事をしたのかが分からなかった。
遺言の内容を知る俺には、アイツが彼女を危険に晒す意図が……っ、そうか、そういうことか…。
俺はある1つの考えに至った、おそらく
「……と、こんな感じだね。まぁキミの事だから彼女に対して何もしないとは思うけど、やっぱりこっちも仕事だし。
しかも彼女は2日前に釈放されたばかりだからねぇ…」
「そうか……だが、俺としても他の人間を通してのアイツへの遺言を任せたくはない。俺が頼まれたことだからな…」
互いに思案するように押し黙る。最悪の場合、雫さんや師匠の伝手を使う必要があるかもしれない…。
そう考えていると…、
「よし、分かった…それなら彼女のメールアドレスを教えよう。
その代わり、無理矢理に面会するのはやめてほしい。会うかどうかを決めるのは、彼女だからね」
「ありがとう、それで構わない。今後の付き合いも、まぁ善処してやる」
「それはありがたいね~」
菊岡は譲歩してくれたようで例の神代凜子氏のメールアドレスを教えてもらった。
彼の注意も当然であるので、頷きながらも今後の付き合いを善処することにした。
「ここは僕が奢るよ。大人のマナーってやつだからね」
そういうと自分のコーヒーを全て飲んでから伝票を持っていってしまった。
俺も自分のコーヒーを飲み干し、ファミレスを後にした。
帰宅後、携帯に教えられたメールアドレスを打ちこんでからメッセージを考える……なんと話を切りだせばいいのか…。
しかし難しく考えても仕方が無いな。俺はこう内容を打ちこむことにした。
―――自分は桐ヶ谷和人、もう1つの名を『キリト』といいます。
ヒースクリフ、茅場晶彦から貴女への最期の言葉を預かっています。
出来れば、直接会って貴女に伝えたいと思っています。
どうか、返答のほどをお願いします…。
「これが妥当なところだろ……問題は、すぐに返答を貰えるかだな…」
内容を打ちこんでからメールを送り、俺はそう呟く。問題はそこなんだよな~。
いきなり見知らぬ人間からメールを送られ、しかも元とはいえ茅場と交際していた女性だ。
アイツを殺したと言ってもいい俺に、良い顔色はしないだろう。
「取り敢えず……飯にするか…」
階下のキッチンから香ってくる夕食の香りに誘われるように、俺は自室を後にした。
スグと夕食を取った後、自室に戻った俺はALOをプレイしようとナーヴギアを手にした。
この『破壊の兜』(明日奈は『茨の冠』という)の中には色々な
茅場から任された『世界の種子』もここにある。
それに、俺自身の戒めの為にもこの兜は持っておくことに決めたのだ。
仲間達もナーヴギアは処分せずに持っているとのこと。
そしてALOを始めようとした時だった……携帯端末にメールが届いたようだ。
メールは神代氏からであり、驚いた俺はすぐにメールを読んだ。
―――貴方と会います。会って、あの人の最期の言葉を聞かせてください…。
短く、しかし決意の篭った内容である事が十分に伝わってきた。
早速、何時、何処で会えるかについてメールを送ると、なんと明日の午後から会えないかと聞いてきた。
幸い、明日は土曜日なので午後からは空いている。
彼女は現在、宮城県に住んでいるようで、朝から新幹線に乗ってこちらへ来てくれるそうだ。
東京駅で会うことになり、着いたら連絡を入れてくれるとのこと。
「まさか、こんなに早く決まるとはな…」
だが僥倖だ。明日の予定を再認識し、俺はナーヴギアを被ってALOへとダイブした。
和人Side Out
To be continued……
後書きです。
原作で書かれていなかったアスナとユイの再会シーンを、本作ではキリトとユイの再会シーンで書きました。
そして和人が『世界の種子』を芽吹かせる時が訪れようとしています。
つまり今回は『世界の種子編』というわけです。
次回は神代凜子さんを登場させますよ~・・・そのかわり、シリアスムードですが。
それでは・・・。
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EP12です。
今回から少しシリアス、というよりも真面目な話しになります。
どうぞ・・・。