No.559980

~貴方の笑顔のために~ Episode 32 私はあなたの妹だから

白雷さん

呉に届いた魏からの救援の知らせ。
これはその救援の知らせをだす前後の魏の様子である。

2013-03-28 04:51:08 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:11565   閲覧ユーザー数:9010

(華琳視点)

 

 

くっ!なんなのよ、これって!

 

 

私たちは、北郷一刀を名乗る敵軍と刃を交えている。

 

進軍する前、私は王座の間で、敵数総勢7万と聞いていた。

そして、それは正しかった。

ほんの少し前までは。

 

私たちの兵数は20万。正直のところ、魏の総兵数はもっと

いるのだけれど、すべて集めるのは時間がかかる。

そして、敵数は7万。 それならば、20万の兵数であるならば、

こちらの犠牲者はほとんど出なくてすむであろう、そう思ったのだ。

 

私は洛陽の兵とこの周辺からの兵を集め、すぐに出発したのだった。

 

でも・・・

 

敵と、交戦が始まってから半日もたたないうちにこちらの勝利は決まったも

同然だと思った。

もう、敵の総数は2万程度に減っていたからだ。

 

しかし、そこでだ。そんな時、敵の後方より不気味に

旗があがった。

 

それは白い旗に、十文字が書かれていた。

 

 

そして、それは私たちを動揺させるに十分であった。

いや、将たちはおそらく、その動揺をうまく隠せていただろう。

しかし、一般兵たちは違っていた。

 

そして・・・始まったのだ。

 

   「お、おい、あれって、北郷様の旗だよな、  たすけなくちゃ、天を!」

 

   「そうだそうだ!」

 

   「天の御使いはあちら側だぞ」

 

   「天の意思は俺たちにはない」

 

   「俺たちは逆賊だ!」

 

 

 

はっきりいって、その兵は周りをあおっているように見えた。

 

そう、それはおそらく反乱因子、そう思った私はすぐに捕らえよ!と

命令したが、それは遅かった。

いや、思いのほかに反乱因子が多かったのだ。

そして、魏の兵が魏の兵を殺戮する、光景が始まった。

 

混乱が広がった。

なんていったって、みな同じ魏のよろいを着ている。

そんな中で、敵かを見分けるのは困難を極めた。

 

私は困難を避けるため、軍を再編成しようと、一時的撤退を命じた。

しかし、それも、不可能だった。

 

私たちが一時的撤退をしている中、前方より、

魏のよろいを着た大群が押し寄せてきた。

 

 

   「味方だ! 援軍が来たぞ!」

 

 

そう、兵たちは思った。

 

しかし、それはわなだと、私はすぐに気がついた。

なぜならば、私はなにも援軍を出すようにと命令していないのだから。

それに、どう考えても時期がよすぎる。

 

私は軍に停止命令をだし、その前方にいる軍の将は

その旗を掲げよと命令した。

 

そして掲げられた旗は、あの十文字の旗だった。

 

前方には15万近くの兵。 後方には3,4万近くの兵がいる。

これは、各州に援軍要請を求め、

後方にいる敵を突破し、城に篭城し軍を立て直し、様子を伺うのが得策と思った。

 

 

しかし、後方に進むとそこには援軍がいた。

それはこちらのではない。敵のだ。

総計25万といったところであろうか・・・

 

つまり、私たちは、囲まれてしまったのである。

こちらの軍は混乱に陥り、正直言って数がわからない。

 

 

 

 

 

 

そして今、桂花が篭城するための城とそこへいくための

一番の経路を探し出し、今突破を図っているところである。

 

 

 

 

「桂花、城まではあとどのくらいあるの?」

 

 

「はっ、あと5里程度かと。」

 

「そう、まだ結構あるわね。 春蘭!しんがりの様子はどうなっているかしら?」

 

 

 

 

「すみません、もう、もちそうにありません。」

 

「風!援軍の兆しは?」

 

「ないようです・・」

 

 

なにか、なにか方法は! この状況を切り抜ける方法は!

 

 

 

 

 

 

 

 

「華琳様、ここはいってください。 私が何とか食い止めます!」

 

「なにを言っているの春蘭! あなたをおいていけるわけないじゃないの!

 敵は40万近いのよ!それで、ここに残るってことは、

 意味わかっているの!」

 

「華琳様、 わかっています。 

 だからこそ、わたしにいかせてください!」

 

「だめよ!」

 

そうよ、だめに決まっているじゃないの。 部下に駒になれなんてそんな

命令はできないわ。

 

 

「では、ほかに何があるというのですか!」

 

 

ほかに・・・そうだ、ほかに何がある・・

ここで、全員で引き下がればどんどん後ろから削られてしまう。

そして軍は瓦解するであろう。

 

そして、全軍を反転させて、相手に向かうのはおろか過ぎる。

時間もたたずに全滅するのは目に見えている。

 

だけど・・・

 

 

 

「それはっ!」

 

「いかせてください。華琳様。 それが、武人にとって、

 いえ、私にとって、一番の誇りです。」

 

なにいっているのよ・・・春蘭・・

 

 

 

「春蘭・・・」

 

 

「華琳様、私もここにのこります。」

 

そういったのは流琉だった。

 

 

「流琉!何を言っているの!」

 

「春蘭様だけじゃ、突進しそうですから」

 

そういって彼女は笑っている、しかしその手は震えていた。

 

「ははっ、流琉もいうようになったな」

 

「ごめんなさい。でもこんなときくらいは許してください。」

 

 

 

 

何を言っているのこの子達は・・・

 

それになんで、こんなときに冗談いって笑っているのよ!

馬鹿じゃないの!

 

 

 

 

そんなの、そんなの

 

私が許すわけがないじゃない!

 

 

 

「流琉、私がいく!」

 

「季衣、私を信じて。お願い。 季衣には華琳様を守る役目があるでしょう?」

 

「でもっ!」

 

「お願い季衣。」

 

「いやだよ、流琉・・・」

 

「ちょっと、季衣。なかないの。まだ私、死んだわけじゃないんだから」

 

「いや、だよ・・・」

 

「季衣、もう、なにもつくってあげないよ」

 

「それも、いやだよ・・」

 

「それじゃ、わがままじゃない。 私は大丈夫だから、ね。

 華琳様を、頼んだわよ、季衣!」

 

 

「・・・うん」

 

「? 季衣?聞こえなかったよ?」

 

 

「うん、うん。うん。  わかったよ。 流琉!

 華琳様は私が絶対に守る!」

 

「ありがとう、季衣」

 

 

 

ちょっと、季衣!何を言っているの!

春蘭も流琉もおいていくわけがないじゃない!

 

 

「華琳様、いきましょう」

 

 

 

 

桂花・・・?

あなた・・・

 

「ちょっと、あなた。自分が今何を言っているのかわかっているの!桂花!」

 

私は彼女に怒鳴りつける・・・

 

「わかっています!わかって、います・・・

 でも、ここで、私たちは華琳様を失うことはできないんです!」

 

そう強く私に言った彼女は泣いていた。

 

 

「ちょっと、風!何かいったらどうなの!」

 

「・・・・」

 

なんなのよ。なんで、なんでなの!

 

 

「華琳様!」

 

 

「春蘭・・・」

 

「私に、華琳様を、守らせてください!」

 

「お願いします!」

 

 

春蘭・・流琉・・・

 

 

 

 

 

 

「・・・・、わかったわ。春蘭、流琉、でも、ひとつだけ約束して頂戴」

 

「なんでしょうか?」

 

 

「あなたたちの命は私のものよ。 この意味わかるわよね」

 

「はい。 わかっております、華琳様。」

 

 

だったら、私にもう、あなたたちを止める資格はない・・・

 

 

 

「では、頼んだわよ! 春蘭、流琉!」

 

 

「「御意!!」」

 

 

「桂花!風!季衣!  全速で、後退するわよ!」

 

「「「御意!」」」

 

 

そして、私は春蘭、流琉を後に残し、撤退を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(春蘭視点)

 

華琳様たちが撤退してから1刻くらいが経過しただろうか・・・

 

 

最初にのこった味方は、その数を目で確認できるほどに

減らしていた。

 

 

 

 

くっ!さすがに数が多すぎる!

 

もう、華琳様は無事だろうか・・・

桂花や風はちゃんと、城に向かえているだろうか・・・

季衣はちゃんと、華琳様を護衛できているだろうか・・

 

 

 

「流琉! 無事か!」

 

 

「はいっ!なんとかまだ!」

 

私の後方で戦っている流琉もそうはいってみせているが

もう息は荒かった。

 

「久しぶりだな、こうやって流琉と共に戦うのは」

 

「そうですね。」

 

「流琉は、華琳様につかえることができて、幸せだったか?」

 

私は・・なにを聞いているのだろうか・・

これではまるで、私たちが死ににいくみたいではないか・・・

 

 

 

「はい、それはもう。 それに、兄様にも会えることができましたし」

 

一刀・・・。

 

「はぁ・・一刀め、あいつ、今どこでなにやってるんだよ。」

 

「あれ、春蘭様、兄様のこといつからそう呼ぶようになられたんですか?」

 

「べっ、別にいまのは間違いだ!」

 

「ふふっ」

 

「な、何がおかしい」

 

「いえ、ただ、今この状況で、こうやって、こんな話をしているのが

 なんだかおかしくて」

 

「そう、だな。  なぁ、流琉。 お前には、今したいことってあるか?」

 

「それは、なにより、兄様に会うことです。」

 

「なっ!」

 

「春蘭様もそうではないのですか・・・」

 

「・・・・」

 

 

北郷・・一刀。  いつからだろうか、彼の存在が私の中で、

こんなにも大きな存在になってしまったのは。

 

最初は、なんだこいつって思っていた。

華琳様のよこに男なんて要らないってそう思っていた。

けれど、やつは、

違った・・・

 

それは、なんでだろうか・・

言葉では説明できないけれど、

 

一刀はきっと、初めて、いやおそらくこの一生の中で

一人だけ、私がひかれた男・・・

 

一刀・・どこにいるんだ・・

天の使命って。 これれが!こんなのがお前が望んだ未来なのか!

まだ、終わっていないだろう。

これからも、ずっと、お前の使命は、

終わらないだろう。

私たちがいる限り・・・

 

私たちは、いや、私はお前を必要としているのだから。

 

お前がいないと、だめなんだから!

 

 

 

 

「そう、だな。 私も、会いたい、よ・・・」

 

「えっ、今なんて?」

 

 

「なんでもな」

 

「くっ!」

 

「おい、流琉!! 」

 

「すみません・・春蘭様・・」

 

私が流琉のほうをみると、彼女は足に矢を受けていた。

 

「ちょっとまってろ! 今行く!」

 

 

「こないでください!」

 

「流琉・・?」

 

「春蘭様、もう、たぶん、もう時間は稼げたと思います。 後は、

 春蘭様、あなたの番です」

 

なにを、いっているんだ流琉は・・・

 

私の番? それは私が撤退する番ってことか・・

 

「馬鹿なことをいうな!」

 

「だったら、こちらも言わせてもらいます、 馬鹿なことをいわないでください」

 

「なんだと!」

 

「考えてみてください、春蘭様、 まだ、戦いは終わっていないんです。

 ここで、二人とも倒れてしまったら、誰が華琳様をお守りするのですか!」

 

「それはっ!」

 

「わかってください。春蘭様。 華琳様が私たちをここで戦わせてくれたように、

 今度は春蘭様が私をここで戦わせてくれる番です」

 

「なにをいっている!ふたりで、退くぞ。 私ならお前を抱えられる」

 

「だめですよ・・」

 

「なんでだ!」

 

「私はお荷物になりながら死にたくありませんから」

 

「流琉!!」

 

 

「だから、いってください。」

 

「そんな!」

 

「最後に、守らせてくださいよ。 

 春蘭様を守って死ぬことができる。 これほど、名誉なことは

 ありませんから」

 

「そんなことをいうな! 私はここに残る」

 

 

「いってください・・少しの時間くらい、稼げますから」

 

「無理だよ・・流琉、  私はお前をこんな状態でおいてはいけない」

 

「いってください!!!」

 

「いやだ!」

 

 

「春蘭様!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったら、ふたりとも、  にげる」

 

 

 

そんな声がきこえた途端、私と流琉の周りの敵がだんだんと減っていく。

 

 

なんだ、なにが起こっている!

 

 

「二人とも、ここは私が、やる」

 

 

そして、目の前の敵がはれたとき、

私たちの目の前に立っていたのは、恋だった。

 

 


 
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