No.554648

ALO~閃光の妖精姫~ 第37魔 剣神

本郷 刃さん

第37魔です。
ALO編でのキリトと茅場の対話になります。
そしてログアウトしたアスナが向かう先には・・・。

どうぞ・・・。

2013-03-13 08:57:33 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:16048   閲覧ユーザー数:14697

 

 

 

 

 

 

 

第37魔 剣神

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

空中から現れた茅場と視線を交わし、SAOクリア後の時と似た空気と化す。

 

「これで終わり……で、良いんだよな?」

 

『ああ…。本来ならば、私が自分の手で決着を着けなければならなかったことだったのだが…』

 

少しばかり申し訳なさそうにしている茅場に俺は苦笑を浮かべながら伝えることにした。

 

「俺達には礼も謝罪も不要だ。そもそも、無償の善意を行うような仲じゃないからな…」

 

『……はっはっはっ、いや…まったくその通りだ…』

 

「だろ? 俺はアスナを助けつつ囚われのプレイヤー達を解放する為にお前を利用し、

 お前は自身の尻拭いを俺にさせる為に俺を利用した、それだけだ…」

 

俺は初めて、茅場の純粋な笑みを見た気がする。

今までは何かを企んでいる節があったからな。

そこで奴は真剣な表情に戻り、俺に語りかけてきた。

 

『キリト君、キミにGM権限を譲った代償を行ってもらいたい…』

 

「……何をすればいい…」

 

『これを…』

 

茅場は自身の掌の上に銀色に輝く卵型の結晶を出現させた。

それを俺の前に差し出してきたので、結晶を受け取った。

 

『それは『世界の種子』だ…』

 

「『世界の種子』?」

 

『以前キミに言った『ある物』がそれだよ』

 

なるほど、茅場はこれの完成を試みたのか。しかし、これは一体…?

 

『それがどういう物かは、芽吹けば解るさ…。その後、それをどうするかはキミに任せる。

 芽吹いたものが花になるのを待つもよし、芽を摘み取るもよし、消去して忘れるのもいい』

 

「どういうものかはともかく、俺の判断に委ねられるということか…」

 

説明を終えた茅場の言葉に俺は重みを感じた。何か大切なことだと、すぐに理解できたからだ。

 

『さて、私はそろそろ行かねばならない…』

 

「……どうなるんだ、お前自身は…」

 

『前にも言ったが、意識のエコーであり残像のようなものである今の私は、

 データが魂というのならばおそらく生き続けるだろう。

 だが、やはり私は死人だ……姿を現すものではない』

 

言葉通りの、そのままの意味なのだろう。茅場は消えるのだ。

 

『そうだ……キリトくん、最後に1ついいかな?』

 

「なんだ?」

 

『キミは、あの世界を……『ソードアート・オンライン』を憎んでいるかね?』

 

茅場がした質問、意味自体は特に無いのかもしれないが……答えてやるのが当然だろうな。

 

「憎んでいたさ……家族と離れ、死が目前の世界に叩き落とされたんだ。

 だけどそれは、本当に最初だけだった…。

 すぐにあの世界に馴染んだよ、俺は…。

 むしろ、リアルでの生活よりも充実していた」

 

そう、俺があの世界を憎んだのは最初の、ほんの2、3日程度のことだ。

そこからは生きる為と、仲間や友人を守る為に戦い続けてきた。

 

「俺は人を殺した……だが、それはあの世界のせいじゃない。

 俺自身が弱かったから、あの結果になっただけだ…。

 そして、その判断は間違っていたと思う……でも、守れたものもある」

 

幾多もの人を殺めた。

結果論に過ぎないが、犯罪(オレンジ)殺人(レッド)プレイヤーを殺した果てに、間接的だが守れた命もあった。

 

「それに、アスナにも、ユイにも、他のみんなにも出会えた…。憎む理由は、どこにもない…」

 

『そうか……ありがとう…』

 

俺の回答に奴は礼を言ってきたが、それは聞こえない事にしておいてやる。

 

『もしキミがよければなんだが、私の側に居た女性に言伝を頼んでもいいかな? 『……………』と…』

 

「ああ、それくらいなら…」

 

『ではな、キリト君……また何処かの世界で会おう…』

 

「……またな、ヒースクリフ(・・・・・・)…」

 

茅場は身を翻してこの世界から去って行った。

もしかしたら、まだ何処かに存在しているであろう鋼鉄の城が浮かぶ剣の世界に、辿り着けたことを祈って…。

 

「さて、俺も戻るとしよう……元の世界に…」

 

俺はメニューを操作してログアウトを押した。俺の意識は、この世界からは途絶えた。

 

キリトSide Out

 

 

 

明日奈Side

 

ALOから帰ってきたわたしは、ナーヴギアを外してベッドから跳び起きた。

既に夜は遅いけれど、すぐに和人くんのいる病院に向かおうと着替えを始めたのだ。

着替えが終わり、部屋から出ようとすると…、

 

「お嬢様、起きていらっしゃいますか?」

 

「あ、はい!」

 

ドアがノックされて橘さんの声が聞こえた。ドアを開くと非常に焦った様子の橘さんがいた。

 

「お嬢様。レクトが、緊急事態ということで、警察の強制捜査が入ると…」

 

「っ……分かりました。父さんと母さんは?」

 

「今から社の方に向かうと、準備をされております…」

 

それを聞いたわたしは橘さんと共に父さんと母さんのところに移動した。

 

 

 

「父さん、母さん」

 

「明日奈、事情は…」

 

「全部知ってる…。須郷がやってきたことも、これからやろうとしていたことも、全部…」

 

これから出ようとしていたのだろう、玄関にいた2人を呼び止め、父さんが口に出そうとしたけれどそれを遮った。

 

「明日奈、ALOで何かあったのね?」

 

「うん……終わらせてきたよ、和人くんと全部…」

 

「っ、そうか…。よく頑張った……あとは私達に任せておきなさい…」

 

母さんの問いかけに答えたわたしに、父さんが労いの言葉を掛けてくれた。

 

「わたし、これから和人くんのところに行って来るよ!」

 

「そうね、それがいいわ。橘さん、明日奈をお願いします」

 

「承知いたしました」

 

和人くんの元に向かう事を伝えると、母さんはすぐに頷いてくれた。

橘さんが車で送ってくれるそうだ。

父さんと母さんは車で会社の方に向かい、わたしもすぐに車で和人くんの病院へと送ってもらった。

外には白い雪が舞い始めていた。

 

 

 

病院の裏口に車を停めてもらい、わたしは小さな格子の扉を開いて敷地内へと足を踏み入れる。

駐車場を駆けて病院内への入り口を見つけ、走り抜けようとした……その時だった。

停車してある1台の車の側から1つの影が出てきた。

嫌な雰囲気を感じ、足を止めてその場に留まった。その影とは……、

 

「あ、ははは…遅かったじゃないか…明日奈君…」

 

「っ、す…須郷…」

 

須郷伸之だった、その手には大ぶりのサバイバルナイフを持っている。

髪は乱れ、ネクタイは首からぶら下がっているだけ、服も少し乱れている。

眼鏡の奥の眼は、両方とも瞳孔がほぼ開いている。

キリトくんが頭部を塵の如く切り刻んだからだろうか…。

わたしはその姿に恐怖する。

 

「キリト君は、酷いことをするよね~……痛みが消えないけど、薬があるから良いか…」

 

奴はカプセルのような薬を口に含み飲み込む。

 

「ふ、ふふ……キリト君から始末しようかと思ったけど、ここでキミを犯し尽くして、

 彼の前にその姿を差し出せばどういう反応をするかなぁ? 想像しただけで、楽しみだ…」

 

狂っている、もうこの男を止めることはできない。

だけどあの世界じゃないこの世界のわたしはただの非力な小娘だ。

迫ってくる男から距離を取るようにジリジリと後退するけれど、奴はナイフを振りながら駆け寄ってきた。

あまりのことに驚きながらも回避することが出来た……が、

 

「きゃっ!?」

 

僅かに積もりつつあった雪に足を取られて転倒してしまう。

 

「これで、これで、キミは、僕のものだぁ!」

 

「い、いや…来ない、で……」

 

わたしは腕を動かしてなんとか後退しようとするけれど、奴はそれでも迫ってくる。

 

「僕のものにぃ!?」

 

そして奴の手がわたしの体に……、

 

「ふっ!」

 

―――バキッ!

 

「があぁっ!?」

 

触れることはなかった、須郷は何者かによって吹き飛ばされたのだ。

奴を吹き飛ばしたのは黒髪に長髪の男性で黒のスーツを着ていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ぁ、は、はい! ありがとうございます!」

 

安否を尋ねられたので動揺しながらも返答すると、彼は満足そうに頷いた。

 

「行くところがあるのでしょう? ここは私に任せて、貴女は行きなさい」

 

「……分かりました、お願いします!」

 

どうしようか迷ったけれど、大人の人ならば弱っている奴を抑えられると思い、

この場をお願いすることにして、わたしは院内へと急いだ。

 

明日奈Side Out

 

 

 

???Side

 

間に合って良かったです。彼女に何かあれば、あの子に合わせる顔がありませんからね。

蹴り飛ばした男はナイフを持って立ち上がり始めた。

ふむ、手加減をしたとはいえ立ちますか…薬でも使っているのでしょうね。

 

「うげぇ、げほっ……お前ぇ、何を……ひっ!?」

 

「黙りなさい…」

 

私は男に、いや須郷伸之に対して『覇気』、『殺気』、『怒気』を纏い威圧をぶつけた。

奴はあまりのことに何もできないでいる。

まだ抑えているのですから、この程度で気絶してもらっては困ります。

 

「さて、須郷伸之……我が愛弟子、桐ヶ谷和人と謂われなき299人の人間を自身の欲望の為に利用した罪、万死に値する」

 

「ぁ、あ…ぁ…」

 

「しかし、我が愛刀を貴様のような外道に使うのは不愉快極まりない。それに、貴様如きに武器を使うまでもない…」

 

私の言葉に怒りを覚えた奴は、そのサバイバルナイフを振りかぶりながら迫って来た……が、

それをあっさりと回避する。

そして…、

 

「神霆流師範、時井 八雲(ときい やくも)が貴様に引導を渡そう……神霆流闘技《霍翼(かくよく)》」

 

両掌を奴の腹部に押しつけ、回転衝撃を加えた。

それによって奴の服はその部分から引き裂かれ、約10mは吹き飛び、車に激突した。

そのままぐったりとして気を失ったようだ。

 

「殺しはしない、それでは貴様と同じになってしまう…。ですが、法の裁きを受けてもらいますよ」

 

私は気絶する男の側でそう言った。

 

「ふぅ……和人、良き女子(おなご)に惚れられましたね」

 

あの真っ直ぐな瞳、和人を想い続けている何よりの証拠。

ふふ、決して手放さないようにするのですよ、和人…。

 

八雲Side Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

オリジナル技説明

 

神霆流・闘技《霍翼(かくよく)》

両掌で相手の体に触れ、掌を回して回転衝撃を与える技

 

 

 

 

 

後書きです。

 

この作品のキリトはまったくと言っていいほど『SAO』を恨んでいません。

 

あの世界で起きたことは自分の弱さが招いた結果だと考えているからです。

 

茅場がキリトに頼んだ言伝、それは『after story』で明らかになります。

 

明日奈の前に現れた下種郷、彼女の危機を救ったのはなんと和人達の師匠!

 

皆さんが気になっていた師匠が登場しました・・・強いですよ~。

 

さて、明日はSAOのゲームの発売ですね。

 

自分は勿論、購入しますよw

 

そして次回はついに、彼が目覚めます・・・。

 

それでは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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