No.549669

深紅の宇宙の呼び声/Preface Story ZERO  第二話 姫と騎士

VieMachineさん

先日アップロードした作品(
http://www.tinami.com/view/549450 )のSF側での話の序章です。
3話構成になります。

2013-02-28 17:49:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:334   閲覧ユーザー数:334

  再び強い振動が艦を襲った。おそらくもう・・・

 

「もはや全員は脱出できん・・・ここまで来たんだ、もう地球と運命を共にするしかなかろう。」

 

 プライドさんの言うとおりだろう・・・。どうせこの中の数人しか脱出できないなら・・・。最後の最後まで地球を救う方法を考えたほうがいい。

それは和平の祝砲があがる瞬間だった。何人かはこの祝砲に反対していた、和平が成立した今、その力を誇示する必要はないと・・・。しかし、その最悪の瞬間に・・・P-ARK-01-1 ArkのF.C.S.はバックアップも含め、すべて破壊された。

 無能なVIPどもが集まった艦橋に代わり、向かいの艦長室が、即席の作戦司令部になっていた。A.L.F.から3人、P.A.L.から3人、 E.S.A.F.から4人・・・10人の即席幹部会・・・。それぞれがそれぞれの分野のエキスパートではあった。が、こんな事態の対処を専門とし たものは誰もいなかった・・・。

 

「・・・あのさ、ちょっと・・・考えたんだけど」

「・・・どうした、ラス・・・戦闘用個体なんだから無理しなくてもいいぞ。」

「失礼しちゃうなぁ。あのさ、星ごとS.C.R.F.で囲っちゃうのはどうよ・・・」

「エネルギーは何とかするとしても・・・時間軸固定のためのビジョンが。普通の人じゃ無理よ・・・。」

 

 時間軸固定のためのビジョン・・・命あるものすべては意志の力で自らの体の時間子の通過速度をわずかながら変異させることができる。生来備わった時間的感 覚だ・・・。S.C.R.S.・・・SynChronoRupt Systemを起動させるために不可欠なもの、しかしながら、永続的に時間をずらす事はできない。人間の体の発生させる時間子誘導場はたいしたものではな い。

 

「だからどうしたというのですか?」

「火訝・・・それは・・・・」

「そうね。私たちは四の五の言ってる余裕なんてないのだから。楓華、あなたにも頼みます。」

「はい・・・艦長。」

 

 シンディー・メイプルリーフ・・・。遺伝子を改変して、人間に本来備わった以上の時間的感覚を持つ女性。彼女だってそう長くは時間をずらせないはずだ。し かし、彼女のクローン楓華がいる。楓華には、その感覚がまだ使いこなせないが潜在的に大きな力を持っていることは確認されている。今はそれに頼るしかな い。

 

「でもいつまでもそれで持つわけは・・・」

「スルース、くどいぞ。」

「・・・」

「どうせやるしかないんだ、わかるな。」

「・・・うん、わかったよプライド」

 

 しばらく会議は続き、行き当たりばったりの計画が作られた。穴だらけ、その割りに失敗が致命的な計画が・・・。

 

「よし、じゃあやるぞ。時間が無い・・・」

 

 俺は初めて声を上げた。皆が俺を見る。そう、先陣は俺たち戦闘機乗りが勤める。この重力波の嵐の中を・・・飛ぶ!

 

「E.S.A.F.Sol Guardian第1遊撃部隊Inner Planets Venus 夜凪 氷狩、出るよ!」

「同じく Mars 朝霞 火訝。出撃します。」

「2人とも頼むよ。信じてるぞ。」

 

 十代前半の少年と、生真面目そうな青年が扉を出て行く。P.A.L.の心理学者の声に2人はそれぞれの笑みを浮かべると消えていった。

 

「P.A.L. Project-FF Plan Exp14 FF-X14 Rapier TestPilot 姫 楓華・・・。出る・・・」

 

 少女が身を翻す。扉を出て行くそこで、女性が待っていた。

 

「楓華・・・お前のD.N.A.を信じな。Time LeaperのD.N.A.をさ!」

「・・・信じる。シンディー・メイプルリーフ、あなたのD.N.A.を『楓葉』は信じる!」

 

 そうして俺の番が回ってきた。ほかの部隊の戦闘機乗りたちも同様に艦を出たころだろう・・・

 扉の前に立ち、ゆっくりと目を閉じる。俺の目の前には立っているはずだ。時間子研究の第一人者、P.A.L.最年少のプロジェクトチーフ、そして・・・俺の記憶、経験、名前のすべてを持つ幼馴染が・・・。

 

「俺のいってきますは・・・長いぜ?」

「・・・じゃあ、早く始めなさい。」

 

 つれねえやつ。これで俺の一番大切なものなんだからたいしたもんだ。

 まず、これを叫ぼう。お前が自分の世界を守るために名づけた、雄雄しい名を。その苦悩の果てに、お前が最後に頼ったお前を支える力の名を。

「P.A.L. Project-FF Plan Exp13 FF-X13 Saber KernelUnit ZION・・・」

 

 一気に言って目を開く。おいおい、泣くなよ。泣くのをやめて聞け。お前が取り戻してくれた・・・新しく、懐かしい記憶と、名前と、その技を今ここで、そし てこれから示してやる。お前が生き続ける限り、お前が俺を必要とする限り・・・何度でも戻ってきて傍にいよう。お前が俺をどのように扱っても、それができ る限り俺はお前を恨むことは無い。

「E.S.A.F.Sol Guardian第1遊撃部隊Inner Planets Mercury 風樹 紫苑。出撃する!」

「うん!!」

 

 そして笑ってやる。何度も言っただろう。いついかなるときも、俺が死んだ時も、形が変わってもそうだった筈だ。

 

「泣くなよ・・・葵。俺が・・・守るからさ!!」

 

第二話 Knight and Princess -- Shion Fuju & Aoi Miyu / Fin

 


 
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