祈ったって祈ったって足りやしないよ。
慈悲なんてものは元からどこかに転がってるものじゃないんだからね。
空色は教会の裏に住んでいる黒い服の神父。
胸に下げた銀色の十字架はいつも濡れた金属の蒼。
僕らは彼の説法よりも、
懺悔室で聞く話の方を好んでいた。
「カミサマはどこで生まれたんだい」
「空色はどこで生まれたんだい」
どちらも同じ場所ですよと彼は言う。
ヒトの頭の中ですよと彼は言う。
懺悔室に来る全ての人達を空色は許す。
静かに聖書の引き金を引いて彼らの願いを許す。
その度に打ち抜かれる基督の像はすっかりくすんだ色をして、
落ち窪んだ目で長椅子を見下ろしている。
「神様はどこで死んだんだい」
「空色はどこで死ぬんだい」
どちらも同じ場所ですよと彼は言う。
誰かがそれを知っているだけですよ。
君たちが私を知っているように、
私が彼のことを知っているだけですよ。
彼の唱えるアァメンの響きは暗く澄んだ陰鬱なチャペル。
墓石と土の匂いのする教会を僕らは知っている。
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