No.546831

しまのりんち1話

初音軍さん

ちょっと年数を経たせて二人暮らしをさせてみました。完全な妄想話ですがよければ見てってください~。二人で同棲すればこれからいくらでもイチャイチャできるもんね♪

2013-02-20 22:36:14 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:950   閲覧ユーザー数:929

私がリリアン女学園を卒業して、家の寺を継ごうとした際に

妹である乃梨子に強い意志で再開の言葉を告げられて

私は桜が散り、舞う中去っていった。

 

 それから私は乃梨子に会うことはなく、一年が過ぎた矢先に

連絡がついた。それも驚く内容で。

 

『志摩子さん、私と一緒に暮らそうよ!』

 

 息も切れ切れに電話をしてくる彼女に落ち着くように

私は言うと、首を横に振ってるような様子が受話器越しからでも

想像ができた。

 

『マンション、もう借りたから!』

 

 前々から感じていた、計算した後での乃梨子の驚くべき積極性。

私がとろいせいもあるのだろうけど。

 

「だけど、私はお寺のこともあるし」

 

 とても嬉しいし、乃梨子とも一緒にいたかったが家のことを

放り出すことはできず。断ろうとした時。

 

「それのことで、お寺からもそう遠くなくて、私の大学もそこに近くして。

あと、私免許取ったんだよ。毎日、志摩子さんをお寺まで

送るから」

 

 まるで雪崩のように勢いよく言葉が飛び出して私は

聞き取るだけでも精一杯だった、本当にそれで穴なくできるものなのか

不安にはなったが。

 

「わかったわ」

『それじゃ!』

 

「えぇ、でもこちらの方でも了解を得ないといけないし。本当に

両立できるかお試し期間としてだけ、一緒に暮らしましょう」

 

 ちょっとの間が空いてから、彼女からは迷いの言葉もなく。

 

「うん、わかった!」

 

 という強い意志を感じる言葉が聞けた。

これが、これから始まる話の序章になる出来事であった。

 

【しまのりんち】一話・同棲

 

 父からの許可は容易く降りた。むしろ喜ぶ勢いである。

それはお寺の仕事に影響が出ないことと、私が外に出て

いろいろ勉強しておけという意味を込めてだろうか。

 

 どちらにしろ、私は反対どころか逆に勧められることとなった。

 

「上手くいくかわからないですよ」

「あぁ、それでもいいさ。一度やってみないことにはな」

 

 父はえらく乃梨子を気にいってる様子である。

あの年頃で仏像が好きという人は確かに少ないし、

檀家さんの知り合いでもあるから、二人ともすごい近い距離

で話し合ってるとこも見た。

 

「わかりました、そうします」

「なんだ、志摩子。お前は乗り気じゃないのか?」

 

「いえ、そういうわけではないのですが・・・」

 

 学園では妹で頼りになるパートナーで、好きな人ではあったが

あくまで学園内での話である。

 

 そこから出て、今まで通り。もしくはそれ以上の生活が

できるのか。一緒に暮らすこと、しかも長いこと一緒という事実に

私はついていけるのか、という不安。

 

 だが、それらはどれも父が言う通り、やってみなければわからない。

のである。あとは、私の気持ちの問題・・・私はどうしたい?

 

 頭の中で乃梨子の姿を想像して浮かんだ気持ちはやはり。

一緒に居てみたい、の言葉だった。

 

【乃梨子】

 

 どのくらいぶりだろう。記憶に残るのは、まだリリアンに入りたてで

学園のしきたりに困惑していた時、とても美しい人がいた印象と

かなり上に立っていたと思われたその人がすごく身近に感じられる

出来事を体験したことである。

 

 卒業式の時は柄にもなく泣いてしまったけれど、今になってはいい思い出である。

彼女を迎えに行くために、彼女の住んでいるお寺から一番近いバス停で

待機していた。

 

 前に遊びに行った時と何ら変わりのない風景で、静かで落ち着く雰囲気に

一息ついてベンチに座り文庫本を開く。

 

 春の陽気に眠気を誘われながらも私は意識を強く持って書物に目を通す。

しかし、いつからかぼんやりした意識からプツッと途切れる感覚がしたと

思ったら私の耳元に懐かしく優しい声が入ってきた。

 

「乃梨子、そんな所で寝ていると風邪をひくわよ」

「あっ、すみません。志摩子さん」

 

 いつの間にか横になっていた、上半身を起こして私は声がした方へと

視線を向ける。

 

 よかった…。私の思い出が美化されていた訳ではなく、目の前には

この世のものとは思えないほど美しいあの人が私の前に現れていた。

 

 藤堂志摩子。リリアン女学園生徒会の生徒会長の一人。

通称、山百合会の白薔薇様(ロサ・ギガンティア)

 

 当時の私はリリアンかぶれでも、幼稚舎から通っていた純粋培養では

なかったため、この呼び方もかなり恥ずかしかったのだけれど

ずいぶんと染まるっていうか慣れてきたようだ。

 

「志摩子さん・・・」

「乃梨子・・・」

 

 まるで戦場に出た夫を待っていた妻が帰ってきた夫を見つめるような

そんな雰囲気に似ていて、私たちはずっとお互いを愛しい眼差しを向けていた。

 

「おかえりなさい」

 

 はたして、その言葉は先にどちらが放ったのか。あまり覚えていなかった。

都合よく少し待っただけでバスが到着して私たちは荷物を持って

乗り込んだ。

 

 こんな人数で大丈夫かと思うくらいバスの中には人の気配をほとんど

感じることはなかった。道中も車が混んで渋滞ってことも

まったくなく、目的地にはすんなりとたどり着くことができた。

 

 着いたマンションは平凡なもので古すぎることもなく、新しすぎることもなく

ちょうどいい雰囲気の外観をしていた。家賃もバイトと大学を両立すれば

さほど難しいこともなかった。

 

「ここだよ」

 

 志摩子さんの手を引いて私は部屋の番号を確かめて目的の場所に

立ち止まり後ろにいる志摩子さんに声をかけた。

 えらい静かにしているから志摩子さんの手だけしかないんじゃないかとか

そんな怖い考えをしてしまったが、振り向くとちゃんと彼女の姿はある。

 

 やっぱりあまり乗り気じゃないのだろうか。と心配していると。

 

「ごめんなさい、ちょっと驚いてしまって」

 

 私の行動が積極的なのは彼女も知っているはずだろうけど。

久しくあってないから、ややぎこちなさが残っているのだろう。

 

 中へと案内すると既に先に何日か住んでいる私は荷物を全部片づけて

いて綺麗になっている部分を見せると志摩子さんに褒められた。

 

 それは素直にうれしく感じていて、志摩子さんには最低限必要な

ものだけを持ってきてもらっていた。

 

 リビングには食器棚とテーブル椅子一式に少し空いた空間には

足がないような低いソファーの正面にテレビを置いてある。

 

 リビングを中心に隣には寝室、反対側には台所。

ここへ来る途中の廊下にはお風呂場と洗面台にその反対側にはトイレが

ちゃんと小奇麗に完備されていた。もちろんエアコン付きである。

 

 今まで住んでいたとこの大叔母にその話をしたら喜んで揃えてくれて

申し訳ないなと思いつつ、せっかくの好意だからちゃんと受け取らないと

逆に失礼に当るだろうと、私は喜んでお願いをした。

 

「すごいわね」

「でしょー」

 

 他にも小さい本棚とか、何かを置くスペースには蔦子さまに

撮ってもらった写真を写真立てに入れて置いていた。

もちろん中身はこれまでの思い出が詰まったリリアンでの二人の姿である。

 

 黙って立ち呆けるより行動が先とばかりに志摩子さんを椅子に座らせると、

私はカップに緑茶を淹れて志摩子さんの前に置く。

 

 マグカップに緑茶とかあまり雰囲気的にはミスマッチなのだが

美味しく飲めればそれでいいかなって思っている。

 

 ここからは大事な話しが始まる。実際に場所を見て説明を直に聞いて

それで気が乗らなかったら私は諦めようとした。

 

 

 無理して一緒にいても長くは続かないからだ。

そりゃ、一緒にいれないとすごく寂しいかもしれないけど。

その時は私が寺まで遊びにいけばいいだけの話だ。

 

 そんな考えで胸が終始ドキドキしたまま話を切り出していくが

志摩子さんは考える時間も与えずにこう答えた。

 

「いいわよ」

「やっぱダメか・・・・・・え?」

「だから、一緒に住んでもいいわよって」

「ほんとに? そんなあっさりと・・・?えぇぇぇ?」

「何、断って欲しかったの?」

 

 少し不満そうに頬をふくらまして呟く志摩子さんに脳内で「かわいいいいいい」

と叫びをあげているのをどかしても、あまりに都合よく返事が戻ってきたから

信じにくいことである。

 

 しかし、何度聞き直しても同じ答えが返ってくるから私は思わず

ガッツポーズをとり、椅子から立ち上がっていた。

 

「あ、でも」

「何かしら、乃梨子」

 

「同棲って形ですし、せっかくだから恋人っていう形でしてほしいんですが」

「今更何を言ってるの。そんなことわかっているわ」

 

 微笑む表情に嘘偽り無しというのが見てとれた。

今度は幸せ過ぎて私が死にそうなんですが・・・。

そんな言葉を飲み込んで私は志摩子さんの傍に近寄ると

思い切り抱きしめた。

 

 ふわふわの癖っ毛が柔らかくていい匂いがして、この感覚が

懐かしい。そしてそんな私に志摩子さんは微笑して頭を撫でてくれるのだ。

 

「これからずっと一緒にいましょう。志摩子さん」

「えぇ、もちろんよ。乃梨子」

 

 その後、このルームシェアに私が全部支払を考えていた案を志摩子さんは

完全却下して二人で支払っていくことになったのだ。

 

 あらかじめ二人で暮らせるようにベッドはダブルで配置してあった場所に

二人で横になって見つめあう。横になったことは今までないが

どれくらいぶりだろうって思えた。

 

 今後は薔薇の館とは違った二人の生活に最初は戸惑いながらも

くっついていられると喜んでいたものの、思ったより忙しくなって

会える時間はリリアンに居た頃とそう変わらなかったが

 

 予定では私よりも早く帰ってこれる志摩子さんが食事の用意を

してくれて、奥さんのように私に慕ってくれる様子が

こそばゆくてうれしくて幸せなのである。

 

 そして寝る時には私は志摩子さんの手をとってキスを交わす。

それだけで私のやる気は回復していくのだ。

 

 学生の頃とはだいぶ勝手が異なってはいるが、それでも

二人は幸せに暮らせたのだった。

 

 だけどそれも束の間。私たちが住んでいる場所を特定した

懐かしい面々がお邪魔に来ることもあるが、それはまた別の話である。

 

「志摩子さん、大好きだよ」

「ふふ、それは私もよ」

 

 ただ今はその時になるまでイチャイチャしておくことが大事。

傍から見ると顔から火を噴きそうなくらい甘ったるい状態に酔う

私たちなのだった。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択