No.545664

少年達の挽歌 日韓戦争編 第四話

BarrettM82さん

IS二次小説『学園の守護者』のサブストーリー。
少年達が虐げられるISの世界で彼らは様々な理由で戦争に赴く。
小野寺魁人の配属された部隊『第六小銃分隊』を通してISの世界の戦争、日本の社会を映し出していく。

【作者から】

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2013-02-18 00:16:49 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:717   閲覧ユーザー数:693

第四話 上官殺し

 

ゲリラ掃討作戦が始まって五日間が過ぎ去った。

我々は周辺警戒していた中隊の連絡が途絶えた為に、捜索する任務に当たった。

現場までは五十キロ先の廃墟と化した小さな町であり、市街戦になることは必死だった。

UH-1J改汎用ヘリは町から二キロ離れた原っぱに着陸して第六小銃分隊を含む一個小隊を率いるのは小川少尉という陸軍士官学校を卒業したばかりの新米士官だった。

階級上は少尉としているが実質は戦い慣れした荒瀬軍曹が指揮していた。

 

「総員展開しろ、第六分隊前へ。」

 

「了解、伍長は右翼から街に接近しろ。敵の伏撃に注意。」

 

少尉の命令に従い軍曹が細かい指示を下す。

深い森の中を腰の辺りに銃を構えながら進む。

すると前を歩いていた新海兵長が歩みを止め、ハンドサインで部隊に停止を伝える。

幾度もの戦場で鍛えられた彼の五感は森を包む静寂と殺気に警戒を発していた。

 

「静か過ぎる・・・。」

 

その時だった。

ポンッ!という迫撃砲の音が聞こえると同時に森の中で爆発が起き、左翼から接近していた別の分隊が吹き飛ばされた。

それと共に森の木々で隠された重機関銃が火を吹いて、日本兵に十字砲火を浴びせた。

突然の奇襲に兵士達は混乱に陥り、指揮官である小川少尉も指示が出せなかった。

すると真横から隠れていた韓国兵が銃剣をつけたAK-102を構えて突撃してきた。

少尉は驚いて腰を抜かして動くことが出来ず、覚悟を決め目をつぶったその時軍曹が突撃してきた韓国兵の胸に5.56mm普通弾を叩き込んだ。

 

「少尉!敵は一個中隊規模です、すぐに撤退を!」

 

少尉は見渡すと森から多くの韓国兵が飛び出してきて、各所で隊員と格闘戦を演じていた。

ある所では一人に対して二人がかりで殴り倒し、倒れたところを銃剣で突き刺されている。

敵は日本軍の圧倒的戦力を前に、小部隊を局地戦に誘い込んでひとつずつ潰していくののだろうと軍曹は読んだ。

少尉はそんなことも考えられず、軍曹の指示に従い通信士にヘリの要請をするように命令した。

軍曹は隊員達に味方を援護しながら撤退するように命じると死んだ兵士からミニミ軽機関銃を拾い信頼している新海兵長に行った。

 

「兵長、俺は側面に回って援護してくる!」

 

「軍曹!」

 

新海兵長の止めようとする声を無視して側面に回りこんでミニミ軽機関銃で韓国軍歩兵中隊の側面を脅かした。

じきにヘリ特有のローター音が響き渡ると少尉の合図で一斉に部隊は撤退した。

すると前田伍長は新海兵長を呼び止めて軍曹の居場所を聞いた。

 

「兵長、軍曹は!?」

 

「軍曹は単独で敵部隊の側面に回りました!今から呼びにいきます!」

 

「大丈夫だ!今から俺が呼びに行く、先にヘリに戻れ!」

 

「わかりました。」

 

兵長は同じ部隊の隊員として信頼して伍長の命令に従った。

しかし伍長は軍曹を殺す絶好の機会だと思い、十七式小銃に5.56mm普通弾を装填して走った。

自分のやることに一々口を出してくる軍曹が善人風に気取っているように見えた伍長は嫌気がさしていた。

 

「(絶好の機会だ、ここで殺せばばれずに済み分隊を掌握することが出来る。俺の思い通りに。)」

 

すると目の前からミニミ軽機関銃を抱えた軍曹と目が合った。

軍曹はいつも対立している伍長が自分を探しに来たことに驚いた反面嬉しく笑みを浮かべた。

伍長は一瞬軍曹の笑みに困惑したがそのまま十七式小銃を構えた。

自分に向けて十七式小銃を構える伍長の姿を見て、軍曹の顔から笑みは消え心の中に一瞬だが抱いた信頼は一瞬で崩壊した。

 

「くそ!」

 

軍曹は瞬時にミニミ軽機関銃を持ち上げるが一瞬遅く、伍長から放たれた5.56mm普通弾は軍曹の左胸を貫いた。

撃たれた軍曹は立ちながらも伍長を睨みつけ、体が前のめりに傾き銃創から出た血が尾を引いて倒れた。

伍長はすぐにヘリが待っている原っぱに向って走りこんだ。

小野寺達は軍曹の帰りを待っていると森から伍長が走ってくるのが見えたが、肝心の軍曹の姿が見えないことに不安を感じた。

伍長は最後まで待っていた五十嵐達のヘリに飛び込むと叫んだ。

 

「軍曹は死んだ!すぐにヘリを出せ!」

 

「伍長、本当ですか!?」

 

ヘリのパイロットは伍長の声を聞き、すぐに離陸した。

 

「本当だ!俺の前で韓国兵に殺された!」

 

「嘘だ・・・。」

 

小野寺達の心に信頼していた荒瀬軍曹という指揮官をなくした喪失感が覆い包み隊員達はヘリの床に脱力して座り込んだ。

ヘリは旋回して先に離陸したヘリに合流しようとした時、ある隊員が叫んだ。

 

「軍曹だ!軍曹が走っているぞ!」

 

隊員達が一斉に片側に集まってみると胸を押さえながら原っぱを走り多くの韓国兵に追われている軍曹の姿があった。

 

「パイロット!すぐに旋回してくれ!」

 

必死に逃げる軍曹の姿を見て隊員達は軍曹を救おうと躍起になった。

ある隊員がドアガンである十七式車載7.62mm機関銃に取り付き追ってくる韓国兵に機銃弾を浴びせる。

これに続いて隊員達が片側に集まり十七式小銃やミニミ軽機関銃で韓国兵を銃撃した。

 

「チッ!」

 

このらを見て前田伍長はキャビンの奥で激しい舌打ちをしたのを聞き逃さなかった。

隊員達は救出できると思い始めた。

だが韓国兵から放たれた一発の5.56mm弾が彼の左胸を貫き、心臓を貫いた。

軍曹はその場で跪くと両腕を空高く上げ、大声で何かを叫んだがヘリの爆音に掻き消されてしまった。

それは自分の不運な人生に対して、それともこんな人生にさせた社会に対してかそれとも他に対して彼が叫んだのかはヘリから見ていた隊員達には分からなかった。

再び隊員達に喪失感が覆い、隊員の中には泣き出す者もいた。

小野寺上等兵はキャビンの奥で煙草を吸っている伍長を睨んだ。

彼は伍長が軍曹を殺したと直感的にわかっていた。

二〇九高地に戻った小野寺上等兵は陣地に作られた狭い簡易的なトーチカで数人の仲間達の前で言った。

 

「絶対に伍長が軍曹を殺したんだ!」

 

すると隣にいた新海兵長が頷いて言った。

 

「だろうな、だが俺たちで上官殺しを立証する事は出来ない。」

 

この答えに小野寺を含めた隊員が黙ってしまう。

だが小野寺は静かに言った。

 

「・・・伍長を殺そう、復讐してやろう!」

 

「そうだ!」

 

この提案に新海兵長は反対した。

 

「そんなこと出来るか!いくらなんでも同じ隊員だぞ!」

 

「それがなんだ!あいつだって軍曹を殺したじゃないか!」

 

「だからと言って殺すのが許されるわけがない!」

 

「誰が俺を殺すだと?」

 

するとトーチカの出入り口に前田伍長が立っていた。

だが彼の階級章は伍長ではなく軍曹になっていた。

 

「私です、前田軍曹。」

 

「そうか。」

 

すると伍長から鞘から鋭いサバイバルナイフを引き抜いて小野寺上等兵に渡した。

 

「掛かって来い、上等兵!」

 

「ウワァァァァ!」

 

小野寺は敏捷な動きで前田軍曹を押し倒して心臓目掛けてサバイバルナイフを振り上げた。

隊員達は突然のことに驚き狼狽したが、前田軍曹は表情をひとつも変えなかった。

小野寺は心臓目掛けてサバイバルナイフを振り下ろしたが、突き刺す手前で止めた。

彼にはまだ同じ軍隊の隊員を殺す勇気がなかった。

すると前田軍曹は上等兵の腹を蹴って退かすと、立ち上がって言い放った。

 

「殺す勇気もねえ腰抜け馬鹿を言うな!」

 

落ちたサバイバルナイフを拾うと鞘に戻してその場にいた隊員達に言った。

 

「荒瀬軍曹が戦死したため急遽俺が分隊長を勤めることになった、全員俺の言う命令に従えばいい。以上!」

 


 
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