No.542335

IS-インフィニット・ストラトス ネクサス 取材と写真撮影ーCoverage and photography ー

ザルバさん

取材当日、一夏と箒は出版社に一緒に向けっていた。

2013-02-10 01:49:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2178   閲覧ユーザー数:2122

 日曜日、一夏と箒は取材のため黛先輩の姉が働いている出版社に向かっていた。

「こういうのって、当日になってから緊張するものだな。」

「そ、そうだな。」

「ん、その服可愛いな。」

「あ、いや・・・・・・これはこの前友達と買いに行ったときに・・・・」

「その胸元のフリル・・・・・ってのか?結構いいぞ。」

「そ、そうか?ま、まあ、これは私も気に入っているんだ。」

「女の子っぽくなって可愛いと思うぞ。」

「ふ、ふん。別に、お前に褒められても嬉しくないな!」

 そう言って箒は腕を組んでそっぽを向く。ツンデレですね。

「まあ時間までまだ余裕はあるしなんか暖かいものでも買うか?」

「う、うん?いや、その・・・・・・・・もごもご」

「なんだ?」

「寒いなら・・・・その・・・・・て、手を繋げばいいだろう!」

 箒は言葉の勢いはあったものの、その手はうつむき加減になっていた。

「ああ、それいいな。んじゃ、そうしよう。」

「っ!」

 一夏は箒の手を握って地下鉄の改札口へと向かった。

「あ、ぅ・・・・・・・・・・」

 それから編集部に着くまで箒はずっと黙ったままだった。

 

「どうも、私は雑誌『インフィニット・ストライプ』の副編集長をやっている黛渚子よ。今日はよろしく。」

「どうも、織斑一夏です。」

「篠ノ之箒です。」

 取材のために通された部屋は結構広く、トマトを半分に切ったかのようなソファーが三つ三角状に並んでいた。

「えーと、それじゃあ先にインタビューからはじめましょうか。そのあとで写真撮影ね。」

 そう言ってペン型のICレコーダーをくるりんと回してみせる。

「それじゃあ最初の質問いいかしら?織斑君、女子高に入学した感想は?」

「そうですね、ISがたまたま使えることだけで入れたのが最初の衝撃でしたが、入学したときに最初に感じたことは「辛い」って感想でしたね。」

「なるほど。今はどうなの?」

「助け合える仲間がいるので少し安心しています。」

「ありがとうね。それじゃあ篠ノ之さん、お姉さんにISをもらった感想は?」

「・・・・・・・紅椿は感謝しています。今のところ代表候補生には興味がありません。勧誘は多いのですが。日本はまあ、生まれた国ですから、嫌いではないですけど・・・・・」

「オーケー、オーケー。織斑君と篠ノ之さん、どっちが強いの?」

「それは言うまでもなく一夏です!」

「あらそうなの?」

「はい。一夏は今まで誰にも負けたことがない強さを持っています。」

「へ~、織村君ヒーローになれるわよ。」

「俺はヒーローにはなろうとは思いません。ただ皆の笑顔を守れればいいと思っています。」

「お、いいわね。それじゃあ織斑君。心得をどうぞ。」

「それじゃあ一言、諦めるな。」

「いいわね。そういえば織斑君は生徒会に所属しているのよね?楯無ちゃん、イカすでしょ?」

「いえ、ただ時々困ったことをする人です。独断で物事決めたりしますし。」

「そういや薫子が新聞部に来ないって愚痴ってたわよ。」

「それは仕方ないかと。だってクジですし。」

「ああ、それなら仕方ないわね。あの子昔からくじ運ないし。福引き二十回やって全部ティッシュだったときは半泣きだったわよ。」

 その時であった。

「結構はかどっているじゃないか。」

 突然扉を開き入ってきたのは眼鏡を掛けた男性であった。

「あ!根来さん。」

「根来ってあの根来さんですか!」

「一夏、知ってるのか?」

「ああ。七年前にちょっと有名になった人だよ。」

「君が織斑一夏君だね。よろしく。」

 根来は一夏に手を差し出す。一夏は根来と握手する。

「はじめまして、織斑一夏です。姫矢さんからあなたのことは少しばかり聞いています。」

「え!あなた姫矢さんに会ったの!?」

「ええ、夏の始めごろにちょっとだけ話しました。」

「そうか。あいつ元気だったか?」

「ええ。」

 そんな話をしながらインタビューは終わり、写真撮影へと移った。

「それじゃあ地下のスタジオに行きましょうか。更衣室があるからそこで着替えてね。そのあとメイクして、それから撮影よ。」

「え?着替えるんですか?」

「うん。スポンサーの服を着せない私の首が飛ぶもの。」

 そう言って、さっさっと首を手首で切る仕草をする。

「それじゃあ、行きましょうか。」

 

 結構すごいな。俺には似合わないと・・・・・・・ぐっ!

 一夏は胸を手で押さえ、苦しむ。

 やっぱ身体にガタがきてるか。・・・・・でも・・・・・まだ倒れるわけにはいかない。あの人を守れなかった分、皆を守るために!

 一夏は痛みをこらえながらメイク室に向かった。

 

(い、一夏はまだか?この格好は、妙にすーすーして落ち着かないのだが・・・・・)

 スタジオの椅子にかけたまま、箒は居心地が悪そうに身をよじる。

(い、一夏が褒めてくれたら、今日の夕食は外で一緒にとろう。わ、私から誘うんだ。私から・・・・私から・・・・)

 そんなことを呪文のように頭の中で繰り返していると、通路のメイク室からスタジオスタッフの声が聞こえた。

「すみませーん、遅れましたー。織斑一夏くん、入りまーす。」

 ドキッ!

(い、一夏が来る・・・・・一夏が来る・・・・)

 箒はさらに落ち着きかなくなって、意味もなく前髪を右に左に散らして整える仕草を繰り返していた。

「うーん、なんかこれ変じゃないですか?」

――一夏の声だ!

一層どきんと弾む箒の心臓。

「ぜーんぜん!超似合っているわよ。十代のこのスーツ姿ってのもいいわねぇ。」

(す、スーツ!?)

 箒は一夏の方に目を向ける。、

「あ・・・・・・・」

 箒は一夏のスーツ姿に、恋のひいき目がそう見せているのか、箒の目にはかなり、とても、すごく!格好良く映った。

「い、一夏・・・・・・」

「お、おう。待たせたな、箒。」

「う、うむ・・・・」

 いざとなると言葉が出てこない。

 箒がもじもじしながら、やっとの事で紡いだ言葉は非常に小さいものだった。

「に、似合っているな・・・・・。その、なんだ、悪くないぞ。」

「おう。サンキュ。箒も可愛いぞ。」

「か、かわ―――――!?」

 バクバクと心臓が鳴る。箒は痛いほど頬をこらえるように、ぎゅっと目をつむる。

(い、一夏が褒めてくれた・・・・・・。一夏が褒めてくれた・・・・・・)

 ぱしっと頬に手を当てると、確かに熱くなっているのがわかった。

 そんなみっともない表情を見られたくない箒は、うつむいて一夏に背を向けた。

「はーい、それじゃあ撮影はじめるわよー。時間押しているからさくさくいっちゃいましょう!」

 ぱんぱんと渚子が手を叩いて仕切る。スタッフが返事をして、いよいよ写真撮影が始まった。

 

 こ、これは流石に驚いた。ま、まさか一夏の口からあんな言葉が本当に出てくるとは思わなかった。だ、だがこういう格好を見られるのは・・・・・・・その・・・・・は、恥ずかしいものだな。普段の私なら着ない服だ。

「織村君、篠ノ之さんもっとくっついて。もっと。」

 いきなり渚子にそう言われた。一夏は戸惑いながらも同じソファーに座っている箒の方へ場所を詰める。

「えっと、こうですか?」

「あー、ダメダメ。もっと、もっと!」

「え!?」

 一夏は箒の方をちらりと見る。流石の箒もこればかりは声を抑えるのが限界だ。

 一夏は自分の心臓のどうにかこうにかなだめながら、箒のすぐ隣に座りなおした。

「あっ・・・・・」

 腕がわずかに触れあって、箒が信じられないくらいに可愛い声を出す。

 一夏はドキン!と心臓が跳ね上がった。

「うーん、なんか並んでいるだけって絵にならないわね~。織斑君、篠ノ之さんの腰を抱いて。」

「・・・・・・・は?」

「こ・し・を・だ・い・て☆」

「は、はい・・・」

 一夏は少し戸惑った。

 箒の方から抱きやすいように身を預けてきた。

 体が触れた途端、ふわっ・・・・・・とバニラ・パフュームが広がる。

「!!」

 一夏は心臓の音が直接鼓膜に響いているかのような錯覚を陥りながら、震える手で箒を腰に抱き寄せる。

「あ・・・・」

 小さく声を漏らす箒。一夏はその声がたまらなく艶めかしく聞こえた。

(落ち着け、落ち付け、落ち着け・・・・)

 そんな言葉を繰り返しながら、一夏はたまっていたツバを飲み干す。

「んー。いいんだけど、もうちょっとインパクトが欲しいかな」

 のぞき込んでいたカメラから顔を話した渚子は腕組みをして天を仰ぐ。

「お。篠ノ之さんが織村君の首に腕を絡めたらいいんじゃない?うん、いい。いいわ!」

 ぱちん!と指を鳴らす音が響く。

「じゃあ、やって。」

 満面の笑みだった。箒は一夏の首に腕を絡める。

 わずか10センチ足らずの距離で目が合った。

「あ・・・・・」

 見つめ合う一夏と箒。

 なぜだか時間が止まったかのような気がした二人は動かなくなってしまった。

(い、一夏が近い。だが・・・・なぜか遠い気がするな・・・・)

 昔から変わらない性格。だが箒には何処か自分達とは違うような感覚があった。久しぶりに会ったあのときから何かが違っていた。力も、思いも。

 カシャッ!

 突然のフラッシュに一夏と箒は我に返る。

「んん~。いい絵が撮れたわ。腕を回す必要もなかったわね。」

「え、えっと・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 一夏も箒も恥ずかしくなって、ぱっと弾かれたように離れる。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 言葉に詰まっている一夏と箒の心情知ってか知らずか、渚子は屈託な笑みで親指を立てグッジョブサインを向ける。

「はい!お疲れ様!じゃあ、二人ともぱぱっと着替えちゃって。あ、服はそのままあげるから、持って帰っちゃって!」

「は、はぁ・・・・」

「わ、わかりました・・・・・・」

 一夏と箒はお互いに反対側を向いたまま生返事をする。

「えーと、ディナー券は後日携帯電話にデータ転送してあげるから、帰る前にアドレス教えてね。それじゃあおつかれ!」

「そ、それじゃあ、箒。」

「な、なんだ?」

「き、着替えに行こうぜ。」

「あ、ああ。」

 ぎくしゃくしとしながら、一夏と箒は妙な距離感で一緒にそれぞれの更衣室へと向かった。

 


 
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