No.540661

真・恋姫✝無双~獅子を支える者~凪√13

karasuさん

お久しぶりの投稿です。
過度な期待はせずに生暖かい目でお読みください。

<●><●>

2013-02-06 06:56:00 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:8280   閲覧ユーザー数:6236

この作品はキャラ設定が崩壊しており、オリキャラが出ます。原作重視の方はご注意ください。

 

一刀くんがチートです。

 

時代背景がめちゃくちゃです。

 

それでもいいかたはどうぞ。

 

???「さてと・・・この辺りでいいかな」

 

???「ん~。ちょっと遠いけどまぁ、いいでしょ」

 

二匹の鴉は小高い丘に降り立つと、互いの顔を見ながら頷きあった。そして、急に足元から上がった煙に包まれ、その煙が収まる頃には二匹の鴉の姿は無く、城壁の上で会話をしていた二人の男がそこにいた

 

???「お~お~。派手にやってるね。でもあの二人を呼ぶにはちょっと少なくないかな? 鴉」

 

鴉「そこは備蓄を崩せば良いさ。ちゃっちゃと準備を進めようぜ鴉」

 

鴉「あいよ~」

 

二人はそんな会話をしながら小高い丘から飛び降りる。二人の飛び降りた先で……

 

兵士「死ねーー!!!」

 

兵士「がああああああ!!」

 

曹操軍と盗賊が戦を繰り広げていた。とはいっても所詮は盗賊。曹操軍側も主要な将が率いているわけではないが、その差は歴然であった。徐々に劣勢になっていく盗賊。二人の鴉はそんな盗賊の最後尾、大将の真後ろへと着地していた

 

盗賊頭「な、なんだてめぇらは!!」

 

鴉「なんだろうね~」

 

鴉「まぁ、分からないままでも死ぬのに問題は無いからさ…」

 

鴉『『死ね』』

 

笑顔でそう言い放った二人の鉄扇が盗賊頭の頭を砕き、首を跳ねた。その光景を間近で見ていた盗賊達は、その場を動くことが出来ずにいた

 

それはなにも恐怖によって動けなかったわけではない。ただ、足を何かに掴まれて動くことが出来なかったのである

 

兵士「う、うわあああああああああ!!」

 

兵士「な、なんだよこいつらは!!」

 

そんな悲鳴が各所から上がる。掴まれて動かない足に視線を向けると、そこには地中から這い出てきたとしか思えない、骸骨達が自分たちの足をしっかりと掴んでいた

 

鴉「喰らえ…餓鬼ども……」

 

その一言を皮切りに地獄絵図が繰り広げられる……兵士たちの足を掴んでいた骸骨達が地上へと這い上がり、兵士たちを次々と食べ始めた……お互いに助けを求め合う兵士達を見ながら鴉はその顔に不気味な笑みを浮かべる

 

そして、兵士達を喰らいつくした骸骨達の次のターゲットは……

 

餓鬼「がああああああ」

 

鴉であった

 

鴉「家畜が飼い主を襲うなんて……」

 

鴉「教育が必要だね……」

 

二人の鴉がそう言うと同時に骸骨たちは炎に包まれる。そして、骸骨たちの燃えたところには白い炎のようなものが宙を漂っていた

 

全ての骸骨が燃え散ったことを確認すると二人の鴉は鉄扇を取り出し舞始める

 

その舞に惹かれるように白い炎が集まり二つの人型を作り出した

 

鴉「これで…」

 

鴉「完成…」

 

舞をやめ、鉄扇を閉じると同時に二人の鴉の体が燃え始める。自らの体が燃えているにも関わらず鴉の顔には不気味な笑顔が浮かんでおり、二人が燃え散ると同時に、二つの人型が色を持ち、とある人物となってこの世界に確立した

 

左慈「なんだ…ここは?」

 

于吉「さ、左慈!!! そ、その格好は…ついに私の愛を受け入れてうごっ!!」

 

ズボンを履きかけの状態で現れた左慈の姿をみた于吉が、躊躇い無く飛びつこうとしたが、その顔面に左慈の放った氣弾がめりこみ、頭から後ろに倒れる

 

しかし、于吉がこの程度でめげるはずもなくすぐに立ち上がったが、すでに左慈はズボンを履き終え戦闘態勢にあった

 

鴉「お二人さん。漫才もいいけど、そろそろ話しかけていいかな?」

 

そう二人に話しかける三人目の鴉。さきほどの二人とは違い、その頬に大きく『嘘』の一文字が浮かんでいた

 

于吉「頬に嘘の一文字…なるほど、鴉ですか」

 

左慈「フン…管理者が俺たちを呼び出して何のようだ?」

 

何事もなかったかのように鴉に話しかける于吉、明らかに機嫌が悪そうな左慈。そんな二人に笑顔を向けながら鴉は

 

鴉「いっしょにこの世界ぶち壊さないかい?」

 

そう言い放った

 

 

 

劉備の軍勢を退けてからいくらか時が経ったある日

 

魏の諸将は玉座の間に集結し軍議を執り行っていた。その内容は涼州攻め…袁紹から奪った土地の治安を安定させた魏はいよいよ、涼州制圧へと動き出そうとしていた

 

華琳「涼州攻めの準備は順調のようね。あと気になるのは…」

 

凛「孫策率いる呉の動きです。涼州を攻めると成れば呉の国境とは反対側へと兵を動かすことになります。もし呉が涼州攻めに合わせるように魏へと攻めてきた場合には、援軍を送ることが困難となります」

 

華琳「そうね。しかし、この機会を逃せば劉備が兵力を蓄える時間を与えるだけになるわ」

 

荀彧「はい。ですから、ここは呉へと使者を送り、なんらかの牽制をしておくべきかと」

 

そこで軍師勢の言葉が詰まる。呉への牽制というが、劉備との国境の兵を裂くわけにもいかず、北方の兵力を動かすには時間が掛かりすぎる。そして…

 

風「呉は元々自分たちが治めていた土地を取り戻してからは、統治に専念するだけであってこれといった動きがないのですよ~」

 

魏や劉備を攻める機会はいくらでもあった。にも関わらず呉はまったく動く気配を見せていなかった

 

春蘭「??? どういうことだ秋蘭?」

 

秋蘭「呉の目的が読めないということだよ姉者」

 

霞「せやな~。正直ここまで動かんと不気味過ぎるわ」

 

霞の言葉にその場に居る皆が一様に頷く中、一人だけ首を捻りながら

 

春蘭「ならば孫策に直接訊けばいいのではないのか? どうせ使者は出すのだろう?」

 

何を迷っているのだ?とでも言いたげな顔で、そう言い放った

 

荀彧「馬鹿はちょっと黙ってて」

 

そう荀彧が春蘭を一蹴すると、春蘭が「なんだと!!」と言って身を乗り出すが

 

華琳「なるほど、それも一つの手ね。偉いわ春蘭、後で可愛がってあげるわ」

 

華琳のその一言に、荀彧は心底残念そうな、春蘭は飼い主に褒められる忠犬のように目を輝かせた

 

華琳「では、一刀と凪。二人に呉への使者を命ずるわ。これで軍議を終えるから、二人はすぐに呉へ向かう準備をしてちょうだい」

 

そこまで言って華琳が手を一度叩くとそのまま解散となる、使者を命じられた一刀は

 

一刀「拒否権無しか…呉の面々にはあまり良い印象持って貰えてないと思うんだよな…」

 

と、頭の後ろを掻きながら呟いた……

 

 

 

 

 

~凪side・始~

 

軍議が終わった後、私は華琳様に呼び出されて部屋へと向かった。そこで呉へと届ける書簡を受け取ると、旅支度をするために私は部屋へと戻った。たぶん、無意識のうちに私自身はしゃいでいたのだと思う、でなければこんなことに気づかないはずがない。この…

 

真桜「遅いで凪~。時間はいくらあっても足りひんのに」

 

沙和「そうなのー。憧れの隊長を凪ちゃんの魅力で悩殺するには、しっかり準備しなきゃなの」

 

愉快痛快すぎる二人の親友が私の部屋へ勝手に侵入していたことに…

 

「いいか二人とも、遊びで行くわけじゃないんだぞ。道中どんなことがあるかわからない危険な―」

 

真桜「そうや! どんなことがあるかわからん! しかし、しかしやで凪。過ちを犯さすには凪もそれ相応の準備をしてやな」

 

沙和「凪ちゃんも大人な魅力を魅せてかないと、きっとあの何考えてるかわからない隊長は反応してくれないのー。じゃないとあんなことやこんなことにならないのー」

 

「あんなことや…こんなこと…///」

 

沙和の言葉に自然と変な考えが浮かび、顔が熱くなるのがわかった。隊長と……

 

真桜「おんやぁ…沙和さん。凪もまんざらやないみたいやで」

 

沙和「ぬふふ~。真桜ちゃん、これはやりがいがあるの」

 

そこから二人の好意……という皮を被った嫌がらせが始まった。すぐさま私は街へと連れ出され、新しい服などといった呉へ使者として向かうには不必要に思えるようなものを、次々と買わされた。挙句の果てには…新しい……下着とか…///

 

い、いや。私は嫌がったんだぞ!! でもあの二人があまりにもしつこかったし…

 

それに『いざというときの備えはあったほうがいい』とか言われたから…

 

私と一刀さんが…一つ屋根の下で……は!! 私は何を考えているのだ!!

 

こんな浮ついた考えでは任務に支障が出ると考えた私は、どうにか二人の魔の手から逃れ、城内を歩いていた。いつの間にか日は落ち、あたりは月明かりに照らされていた

 

「いつの間に…なんだかんだ言いつつ、私も楽しんでいたのかもしれないな」

 

気が付けば私は自室の目の前まで戻ってきており、浮ついた気分もどこか落ち着いたように感じた私は、そのまま眠りにつくことにした

 

 

~凪side・終~

 

 

翌日、凪と一刀の二人は沙和や真桜、警邏の兵達に見送られ呉へと向かった。だが、二人を見送っていたのは沙和や真桜たちだけではなかった…

 

左慈「北郷……人形と二人旅とは…滑稽だな」

 

一刀に対する憎しみを微塵も隠すことなく、表情を歪ませ、そう呟いた左慈。その手は力の入れすぎで震えていた

 

于吉「今にも襲い掛かりそうな剣幕ですね、左慈」

 

左慈「当たり前だ!! 俺は奴を殺すためにこんな馬鹿と行動を共にしているんだ!!」

 

そう于吉に向かって叫びながら左慈が指差した先には……

 

鴉「集中するんだ俺…極限まで集中すればスパッツの中身を覗くことだって出来るはずだ………むむむ……見えガフッ!!!」

 

手でメガネを作り、それを目に当て一心不乱に凪を見ていた鴉の横顔に、左慈の氣弾が直撃し、真横へと倒れた鴉

 

左慈「……どうしてこんな奴の話しに乗ってしまったんだ俺は…」

 

于吉「管理者は個性的な方が多いと聞きますからね。あ、それと左慈。私のことならいつでも襲っていただいグフッ!!」

 

左慈「死ねこの変態ども!!」

 

鴉と同じように倒れた于吉に罵声を浴びせた左慈は、一人息を荒げながらどこかへ行こうとした

 

鴉「ん?左慈ちゃん。どこにいくんだい?」

 

いつの間に立ち上がっていたのか、左慈の目の前には鴉が何事もなかったかのように立っていた。ヘラヘラとした表情に多少の苛立ちを覚えつつも

 

左慈「北郷を追うに決まっているだろう」

 

左慈は端的にそう答えた

 

鴉「あ~。気持ちは分からなくはないけど、それはダメだよ~。今の二人じゃ話しにならないからね。だから……」

 

そんな言葉と同時に鴉の手元が動き、二枚の羽が左慈と、これまたいつの間にか立ち上がり、背後から左慈の尻を撫でようとしていた于吉の首筋に刺さった

 

左慈「っつ! 貴様、何をした!!」

 

鴉「興奮しない、興奮しない。ほら、ついておいで。俺が二人に何をしたか分かるだろうからさ」

 

そう行って鴉は二人に背を向けて歩き出す。左慈と于吉は顔を見合わせると、黙って鴉の後についていった

 

 

しばらく歩いていると、三人は元は村であったと思える場所に辿りついた。しかし、そこに村の原型はなかった

 

鴉「ここは劉備と曹操が争ってる間に、盗賊団に襲撃を受けた村でね。ん~っと…あ、いたいた」

 

何かを見つけたように走り出した鴉。その先では一人の少女が黒焦げたなにかを抱きかかえて、泣いていた

 

鴉「復讐したいかい?」

 

いきなり鴉に声をかけられた少女に驚いたような様子は無く、ただ虚ろな目で頷きかえした

 

鴉「そう、なら…悪魔からのプレゼントだ」

 

笑顔を浮かべながら鴉は少女の胸倉を掴み、その喉に数枚の羽を突き刺した。少女の喉から止め処なく血が溢れ出し、徐々に少女の体を包み込んでいった

 

少女「あは、アハはははははハハハハハハハハハハハ」

 

喉から血を流しながら、狂ったように笑う少女は、数秒も経たないうちに全身を血につつまれ、その姿をある人物へと変貌させた

 

左慈「面白い趣向だな…」

 

そう呟いた左慈が構えるよりも速く少女であったなにかが襲い掛かる。真上へと振り上げた右手を力任せに振り下ろす。しかし、左慈はそれを難なく避ける。だが、その顔には驚愕の色が浮かんでいた…それは少女であったなにかの速さに驚いたのではなく

 

于吉「身体能力強化の術式ですか。ということは、これを相手にこの感覚に慣れろということですかね」

 

左慈「らしいな」

 

攻撃を避けられた際に生まれた一瞬の隙をついて于吉が、脇腹に氣弾を当ててとある人物の…北郷一刀の形をしたバケモノを吹き飛ばす。二人の言葉を聞いた鴉は、戦いの様子を見ながらただその顔に笑みを浮かべているだけであった

 

吹き飛ばされたバケモノは、その場で受身をとるとすぐに体勢を整え、于吉目掛け真っ直ぐに駆け出した

 

左慈「しかし、これでは…」

 

その進路に左慈が割って入り、拳を振り上げるようにして腹部に一撃。その一撃でバケモノの体は上空へと浮かび上がった

 

于吉「今の私たちの相手にはなりませんね」

 

空中にいるバケモノを于吉が術で縛り上げその場に固定させる。そして、いつの間にかバケモノと同じ高さまで飛び上がっていた左慈が、その頭部目掛け踵落としを喰らわせた

 

バケモノ「あ、ガ…」

 

断末魔をあげる間もなくバケモノの体は真っ二つになり、黒い煙となって霧散した

 

于吉「さて、これでテストは合格。といったところですか?」

 

鴉の方へ顔を向けてそう言った于吉に対して、鴉は心底不思議そうな顔をしながら

 

鴉「何言ってるの? むしろこれからが本番に決まってるじゃないか…」

 

左慈「何を言ってrガアアアアアアア」

 

鴉の方へ一歩進み出たと同時に左慈の全身を激痛が襲った。まるで体の内側から槍で貫かれるような痛みに、自分の体を抱きかかえる左慈。于吉の方へと視線を向けて見ると、于吉も同じように痛みに悶えていた

 

鴉「あらら? そういえば術の説明してなかったっけか? その強化術って普通のとは違って、俺特性でさ~。第三段階まであって、段階を追うごとに苦しまなきゃいけないわけよ。ちなみに今第一段階ね」

 

悶え苦しむ二人に、懐から取り出した羽でちょっかいを出しながら説明する鴉。今の二人にはこのおちょくりの相手をする余裕などあるはずもなく、ただ鴉を睨みつけることしかできなかった

 

鴉「ほら~。頑張んないと体が破裂して死んじゃうよ~。ま、死んだら死んだで、今の少女みたいに二人の肉片を有効活用させて貰うから安心してよ。それじゃ、頑張ってね~」

 

二人の苦しむ様子に満足したのか、はたまた飽きたのか、鴉は二人に背を向けると、その姿を鳥へと変え、一刀たちの後を追うように、呉へ向けて飛び立った

 

残された二人は、行き場のない力を暴れることで発散し、ひたすら苦痛に耐えていた

 

 

 

貂蝉「ぬっふぅぅぅぅん!!」

 

卑弥呼「でやあああああああ!!」

 

無駄に気合の入った声とともに、二つの筋肉達磨が何もない空から急に現れ、大地を揺るがしながら着地をした。二人が降り立った場所は、南蛮よりさらに南西へとずれたところであった

 

貂蝉「あらやだ。予定と随分違うところに着ちゃったわん」

 

卑弥呼「恐らく鴉の仕業であろう。胡蝶も、こういった地味で、小賢しい嫌がらせが得意だと言っておったからな」

 

貂蝉「ご主人様は~。胡蝶の言葉を信じるなら、今は呉に向かってる最中ね」

 

卑弥呼「うむ。だが卑弥呼よ、忘れるでないぞ。我らの目的は、この外史への介入ではなく、鴉の持ち出した『例のモノ』なのじゃからな」

 

卑弥呼の言葉に、貂蝉はわかってるわよと言わんばかりにウィンクを返した。それに納得したかのように卑弥呼は頷いて返し、二人は一刀と凪の元へと急いだ。鴉がただ盗んだモノを隠すためだけに、外史に逃げ込む筈がないと分かっているからである……

 

 

 

一刀「さてと、日も暮れてきたし今日はこの村で宿を取ろう」

 

一刀と凪の二人が呉を目指してから数十日。二人は呉の本拠地である建業付近のとある村まで来ていた。村についた一刀は、疲れたといったような表情を浮かべながら、そう言った

 

凪「はい。それにしても…この辺りは私たち魏の領地に比べて、だいぶ荒れていますね…」

 

凪は夕暮れに照らされた村を見回しながら、そう呟いた。所々に見られる、崩れかけた家屋、散乱するゴミ…

 

一刀「魏に比べれば呉は将の数も、資源も劣る。荊州の辺りを得ればかなり余裕が生まれてくるとは思うが、それは魏でも劉備のところでも同じだからな。三つの勢力が必死になって荊州付近で小競り合いをしているのは、そのせいでもあるな」

 

凪「では、仮に魏が荊州の地を押さえることが出来れば…」

 

一刀「大陸の統一も十分に見えてくるだろうな。まぁ、仮に押さえたとしてもそれを維持していくほうが大変だとは思うがな…」

 

凪は一刀の言葉に俄然やる気を出したが、そのやる気もすぐに消えてしまう

 

 

~凪side・始~

 

 

大陸統一…もし華琳様が大陸を統一すれば、きっと皆が苦しむようなことはなくなるはず。少なくとも今のように戦が繰り返されるような世の中よりは、ずっと幸せになれるはずだ…

 

だが…その時に一刀さんは私の傍に…この世界に居るのだろうか…

 

私は横目で一刀さんを見た。その顔はいつも通りで…自分がこの世界から消えてしまうかもしれないということに対する、不安や悲しみを微塵も感じさせなかった

 

いや、もしかしたら…一刀さんは天の世界に…元居た世界に帰りたいのかも知れない

 

もしそうだとしたら、私は余計なことをしてしまったのだろうか……

 

一刀「凪、何を呆けてるんだ?」

 

「はぅ!!い、いえ。なんでもありません!!///」

 

恐らく何度か私に呼びかけていたのだろう、気が付いたときには一刀さんの顔面がすぐそこまで迫ってきており、私は思わず後ろに飛びのいた

 

そんな私を一刀さんは不思議そうに見ながら

 

一刀「ほら、宿探しに行くぞ」

 

そう私に言って、背を向けると歩き出してしまった。私は慌てて追いかけ隣に並ぶと、一刀さんと一緒に宿を探した

 

 

 

~凪side・終~

 

 

 

翌日の早朝。一刀と凪の二人は朝飯を済ますと、さっそく建業へ…孫策たちが居るであろう城へと歩き出した

 

そんな二人を上空から眺める影が一つ

 

鴉「見つけた♪ さて、どんな感じに挨拶しよっかな~…やっぱここは自分がどんなキャラなのか知ってもらう感じがいいよね~」

 

そう一人呟きながら、鳥の姿のまま小躍りをする鴉。そして、二人の上空を通り過ぎて先回りすると、人の姿に戻り地面に着地した。少しの間一刀と凪の二人を待っていると…

 

商人「はぁ…はぁ…」

 

鴉の後方から荷車を引いた商人らしき人物がやってきた。商人の様子や既に歪み始めているのか、外れかけている車輪からして、その荷車は相当重いものであると、安易に想像できた

 

その姿を確認した鴉は、一刀と凪が来るであろう方向を見て、人影らしきものがないことを確認すると…

 

鴉「いいこと思いついちゃった~…」

 

喜びを一切隠すことない声色でそう呟き、まるで遊び道具を目の前にした子供のような笑顔で、鴉は商人へと近づいていった

 

鴉「あらら。これ車輪壊れかけじゃないですか」

 

商人「へ?」

 

荷車の前で屈みこんでいる鴉の方へと商人が振り返る。いきなり声がしたことに驚いているのか、商人はきょとんとした顔を鴉に向けていた

 

鴉「お困りみたいですね。この荷物はどこまで運ぶ予定なんですか?」

 

商人「はぁ、許昌の店までね。ここまで馬で引いて来たのですが、もう年だったのか途中で死んでしまいまして…。もう少し行けば大きな町に着くので、そこまで行ければ新しい馬を買えるのですが」

 

商人は鴉の人懐っこい笑顔につられるかのように話しだし、鴉は事情を聞くと少し悩むかのような仕草を見せると

 

鴉「ふむ、私ではあなたを悩みから解放してあげることは出来ますが……少し待てば私の友人達が来ますから、もしその友人達が了解してくれればあなたを悩みから解決してあげられるかもしれませんね」

 

商人「え!? ほ、ほんとうですか!」

 

商人は鴉の言い回しに多少の違和感を持ったが、現状を打破できるかもしれないということに対し、素直に喜んだ

 

鴉「えぇ……本当ですとも」

 

商人のほうは見ずに一刀と凪が来るであろう方角を見ながら、鴉はそう呟いた。思わずこぼれそうになる笑みを堪えながら、鴉は自分に近づいてくる四つの気配を、今か今かと待ち続けた……

 

 

~一刀side・始~

 

俺と凪が昨夜食べた料理についての感想などを話しながら歩いていると、前方に人影が見えてきた。多少警戒をしながら近づいていくと、その人影のうちの一つは見覚えのある人物であった……正確には人なのかどうかもわからないが……

 

鴉「やぁ、待ってたよ北郷くん」

 

人懐っこい笑顔を浮かべている鴉の横には、車輪にガタがきている荷車と、その持ち主であろう人がいた

 

「こんなところで待ち合わせをした覚えはないな…何か用か?」

 

鴉「ははは。冷たいな北郷くんは。まぁ、二人の時間を邪魔しちゃったことは申し訳ないと思ってるけど、どうにもこの商人さんが困ってるみたいでさ。俺にはどうにも出来ないけど、二人ならどうにか出来るんじゃないかと思って」

 

そう言って鴉の視線が商人のほうへと移り、俺と凪もつられるようにその人物へと視線を移した

 

一気に三人の視線を受けた商人はどこか居心地悪そうにしながら、事情の説明を始めた

 

凪「なるほど……一刀隊長」

 

凪がこちらを見てくるのに頷き返すと、俺は荷車へと近づき屈みこんだ

 

「工具がないと直せそうにないな。…少なくともこの場では無理だろうな」

 

俺が商人の方を見ながらそう言って立ち上がると。商人は心底残念そうな顔をする。なんとかしてあげたい気持ちはあるが、行き先が許昌となると…

 

凪「…………」

 

凪も同じ考えなのか、壊れかけた車輪をじっと見たまま何も言わない

 

鴉「まぁ、二人なら車輪が壊れてもこの荷車を運ぶことは可能だろうけど、今は大事な用があって建業に向かってる途中だしね~。商人さんは一度建業に戻るってのは駄目なのかい?」

 

商人「そうしたいところなのですが…。そうするとこの積荷の納期に間に合わなくなってしまいまして…大事な取引ですので…」

 

少しの間四人を沈黙が包んでいたが、ふと商人は何かを思い出したかのように顔を上げた

 

商人「そういえば旅のお方。確かあなたなら私をこの悩みから解放してくださると…」

 

商人の言葉に鴉は少し悩むような仕草をみせると

 

鴉「あなたの望むとおりの解放かどうかはわかりませんよ?」

 

商人「試してみる価値はあります! それで、どのような手段なのですか」

 

この時、鴉は…あいつはその顔に笑顔を浮かべていた。それはさっきまで商人に向けていた人懐っこい笑顔ではなく…死神、悪魔、そんな言葉が似合うような狂気に満ちた笑顔だった

 

鴉「それはですね…こうするんですよ…」

 

???「鴉――――――――――――!!!!」

 

後方から急に聞こえてきた叫び声と共に、俺と凪の間を二つの影が通り抜け、一直線に鴉に向かった

 

その影が鴉に触れた途端に砂塵がおこり、鴉の体が吹き飛び、地面をバウンドしながら転がった

 

凪も俺も咄嗟に戦闘体勢ととり、その二つの影の襲撃に備える

 

砂塵がおさまり、二つの影の姿がはっきりと見えてくる。そこには…

 

凪「ひっ!ば―」

 

???「かーーーーーーーーーーーーー!!」

 

???「ぬうううううううううううううん!!」

 

凪が何かを言おうとした瞬間に、二人の人間?が叫び声をあげる。それに威圧されたのか凪は口をパクパクさせていた

 

???「だ~れが、筋肉達磨の化け物よん。私の名前は貂蝉。貂蝉ちゃんって呼んでねん」

 

???「わしの名は卑弥呼。好きに呼ぶが良い」

 

片方がウィンクをすると空気がはじける様な轟音が鳴り響き、もう片方が胸をはると大地が震えた

 

鴉「貂蝉さんに卑弥呼さん。まだ楽進さんは何も言ってませんよ」

 

いつの間に立ち上がっていたのか、鴉は服についた埃を落としながら何事もなかったかのような顔をしてこちらに歩いてきた

 

吹き飛ばされる前との違いがあるのは、鴉の着ている服が血にまみれていることと、その手に人の心臓が握られていることであろう

 

凪「な!?」

 

そんな鴉の姿をみた凪が慌てて商人のいた位置に視線を移すと、そこには胸から血を流して倒れている商人の姿があった

 

「貴様……」

 

胸の中から込み上げる怒りを抑えることなく鴉を睨みつけるが、鴉は飄々とした態度で

 

鴉「彼が解放されたいって言うから、解放してあげたんじゃないか。死ねばもうこんなことで悩むことはないだろう? アハ、アハハハハ」

 

今まで隠していた本性を爆発させるかのように笑い出した鴉。今俺たちの前で笑っている奴こそ…本物の鴉なのだろう…

 

凪「はぁあああああああ!!」

 

俺の思考を遮るように発せられた声と共に、凪が鴉へと駆け出す。怒りながらも、それに囚われることなくトリッキーな動きで鴉との距離を縮めていく凪の姿に、なんとも場違いだが確かな成長を感じた俺は、喜びを覚えた

 

鴉「久しぶりの再会で熱くなっちゃったのかな、楽進ちゃん?」

 

貂蝉「私たちもいくわよ、卑弥呼」

 

卑弥呼「おう!」

 

凪にあわせる様に貂蝉と卑弥呼も動き出したが、俺は動けずにいた

 

「久しぶり……」

 

その言葉が本当なら鴉と凪は面識があることになる…いつ…どこで…

 

瞬間、鴉に渡された黒い箱のことを思い出していた。そもそもあの箱は、あの事は俺だけに話されたことなのか? いや、奴はそんなこと一言も言ってない……まさか、凪は知っているのか…

 

凪「一刀隊長!!」

 

「っ!?」

 

凪の声に呼び戻されるように、いつの間にか俯いていた顔を上げると、そこには眼前まで迫っている物体があった。それを紙一重で避けた俺は、再度戦闘体勢をとる

 

鴉「あはは、はずれちゃったか~。わかるよ~北郷くん…気になるんだよね、俺の言葉がさ?」

 

鴉は貂蝉、卑弥呼、凪の三人の攻撃を捌きながらそう俺に問いかけてきた

 

「気にする必要もない。お前はここで死ぬんだからな」

 

迷いを振り払うように『備前長船長光』を鞘から抜くと、俺は三人に加勢するべく鴉へ向かって駆け出した

 

鴉「そう、何もあの黒い箱を俺から受け取ったのは北郷だけじゃない……、俺の目的は、この世界の人物があの箱を開けることであって、北郷が開けなきゃいけないようなものでもない。……たとえば、北郷を想う人物に渡せば開ける可能性は十分にある…」

 

鴉の言葉に俺ともう一人の動きが止まる。その一瞬の隙に鴉は貂蝉と卑弥呼から距離をとり、俺と…凪の二人を交互に見た

 

鴉「これだから人ってのは愉しいんだよ……最高だね…思わず勃っちまいそうだよ」

 

卑弥呼「ふん!!」

 

俺と凪を見ていた鴉の腹部に卑弥呼の拳がめり込み、そのまま貫通した。しかしそこから血は流れることはなく

 

貂蝉「偽者……!!」

 

鴉「私はこの辺りで退散させて貰いますよ~っと」

 

その言葉と同時に鴉の体が弾け、無数の黒い粒となって霧散した。よくよく見ると、それは小さな蟲だった

 

凪「…………」

 

横目で凪の方を見ると、凪は俯いたまま強く拳を握り締めていた…

 

たぶん鴉から黒い箱を受け取ったのは凪のことだ…そして、恐らく…凪はあの箱を開けたんだ…俺のために……

 

言いようのない複雑な気持ちが湧き上がり、胸がざわつく。しかし、俺と凪はすっかり忘れていた。鴉の他にもう二人、この場に化け物がいるということを……

 

~一刀side・終~

 

 

 

 

 

 

どうもkarasuです。

いかがだったでしょうか?楽しんでいただけたでしょうか?

なんて、いつも通りの入り方でしたが、大佐方お久しぶりです。karasuです。

約半年ぶりの投稿となりました…遅すぎですかね?

今作は書いているうちに、色々と浮かんでは消えするものですから、中々纏まりません。たぶんこれからもこんな感じになるんだろうなと思っています。

しかし、今回のようにあまりにもssを書かない時間が長いと自分なりの書き方を忘れてしまうので、単発ネタをちょくちょく投稿していくようにしたいと思います(前もこれ言ったような気がしますがねww)

なので、『このネタで書いてみてくれ!!』『あのイラストで書いてみてくれ!!』などといったリクエストを大募集します。

 

まだまだ言いたいことはありますが、ここら辺で失礼致します。ちなみに次回は拠点です。

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

こんな私ですがこれからもほそぼそと続けていきますので、よろしくお願いします。

 

 

 

 

リクエスト待ってますよ大佐方……今回はマジですから…

ただ、全てのリクエストに応えれるわけではないですけどねww

それでは(┓鴉´◉◞౪◟◉)┛))ヨイサヨイサ♪

 


 
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