No.539913

本編補足

根曲さん

・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。

2013-02-04 08:41:45 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:323   閲覧ユーザー数:321

マルケルディア建国(前篇)

C1 ケチな詩人

C2 自由戦士隊宿舎にて

C3 起床

C4 沈黙の門出

C5 残してきたもの

C6 賭博

C7 食事

C8 激突

C9 物色

C10 マルケルディア都市国家軍超兵器

C1 ケチな詩人

 

グリーンアイス連邦マルケルディア都市国家のプーチン酒場。ざわめき。騒音。台座に上がりハープを奏でる色男のクトゥルゾフ。もう片方の台座ではストリップティーズが踊る。

 

クトゥルゾフがハープから手を離して一礼し、ストリップティーズが退場する。階段から降り、クトゥルゾフは腕組みした兎獣人の男から1000ピカ札を受け取る。クトゥルゾフは舌打ちして、1000ピカ札を上下に振った後、懐から財布を取り出し、その中に1000ピカ札を入れ、再び懐へ入れて呪文を唱え、酒を飲みかわす客達を避けてカウンターに近寄る。兎獣人のバニーガールがクトゥルゾフに寄って来る。

 

クトゥルゾフ『いつものやつを頼む。』

 

うさぎ獣人のバニーガールは苦笑いをする。

 

兎獣人のバニーガール『お水ですね。少しは売上に貢献してくださいな。』

クトゥルゾフ『そりゃ無理な話だ。俺はここに小遣いを稼ぎに来たからな。』

 

音が鳴り響く。台座ではカスタネットとトライアングルを持ち、踊るダイオウグソクムシ人の女を両脇にこぶとりで3メートルの体躯を持つミニブタ獣人のおっさんがギターを弾いている。もう片方の台座ではストリップティーズが踊る。大柄な男がクトゥルゾフを押しのける。

 

大柄な男『ビール一本!』

 

兎獣人のバニーガールは笑顔になってビールを一本運んで来る。眉を顰めるクトゥルゾフ。

 

クトゥルゾフ『俺の方が先…。』

 

大柄な男はクトゥルゾフの肩を叩く。

 

大柄な男『おい、兄ちゃん。金は溜め込むだけじゃなくて使わなくちゃよ。楽しめね~ぜ。』

 

クトゥルゾフは大柄な男が完全に見えなくなると口を開く。

 

クトゥルゾフ『うるせー、泡の夢に溺れてやがれよ。』

 

兎獣人のバニーガールが水をクトゥルゾフの前に差し出す。クトゥルゾフは水を受け取り、一気に飲み干してカウンターに置く。

 

クトゥルゾフ『金は大事さ。へへっ、金がありゃ何でも手に入れることができる。何でもな。買えないものはこの世に無い。』

吟遊詩人の女の声『そうは思いません!』

 

クトゥルゾフは眼を見開き、横を向く。クトゥルゾフを睨みつける吟遊詩人の女。クトゥルゾフは両手を広げる。

 

クトゥルゾフ『いつの間にこのお嬢ちゃんはいたんだ?』

 

兎獣人のバニーガールは吟遊詩人の女の方を向く。

 

兎獣人のバニーガール『え、さっきから居ましたけど。』

 

クトゥルゾフに詰め寄る吟遊詩人の女。

 

吟遊詩人の女『人の心は買えません!』

 

クトゥルゾフは身を引いた後、腹に手を当てて笑い出す。吟遊詩人の女は一歩前に出る。

 

吟遊詩人の女『何がおかしいのです!』

クトゥルゾフ『へ、ははは、人の心ねぇ。』

 

クトゥルゾフは笑うのを止め、親指を立て人差し指を吟遊詩人の女に向けて伸ばす。

 

クトゥルゾフ『買えなくても、奪うことはできる…。』

 

クトゥルゾフは手首を曲げ、上を向いた人差し指の先を吹く。唖然とする吟遊詩人の女。クトゥルゾフは微笑んで首を左右に振ると、手を振りながらプーチン酒場の入り口の扉へと歩いていく。クトゥルゾフは扉の前に立ち止まり、懐に手を当てる。

 

クトゥルゾフ『抜け出すためのパスポート、自由のための片道切符…。』

 

クトゥルゾフは溜息をつき、プーチン酒場から出て行く。

 

C1 ケチな詩人 END

C2 自由戦士隊宿舎にて

 

マルケルディア都市国家軍自由戦士隊宿舎。窓からは基地の外で自由戦士隊廃止、都市国家市民の税の無駄使いをやめろと書かれた大弾幕を持ち、フェンス越しに座り込むマルケルディア都市国家市民達が見える。部屋の中で麻雀をしているロンと3人の自由戦士隊員達。クトゥルゾフはハープを持って、壁にもたれかかり、窓の方を向いている。

 

ロン『ロン!』

 

ロン達の方を向くクトゥルゾフ。舌打ちする自由戦士隊員A。

 

ロン『ひひひ、いや今日もついてる、ついてる。』

 

頭を抱え、机の上にピカ紙幣を数十枚投げる自由戦士隊A。

 

ロン『ありがとさん。』

 

ロンは机の上のピカ紙幣を取り、麻雀牌をかき回す。自由戦士隊員Aは眉を顰める。

 

自由戦士隊員A『俺は降りる。』

 

眼を見開くロン。

 

ロン『足りなくなっちまうよ!』

自由戦士隊員A『このままじゃ巻き上げられるだけだからよ。』

 

自由戦士隊員Aは立ち上がり、手首を振って部屋から出て行く。舌打ちするロン。クトゥルゾフは窓の方を向く。クトゥルゾフの方を向くロン。

 

ロン『お、楽隊殿!』

 

クトゥルゾフは眉を顰めてロンの方を向く。

 

クトゥルゾフ『あ、何だ?俺は一人しかいないぞ。』

ロン『まあまあ、どうです?一局。』

 

クトゥルゾフは懐に手を当てて首を左右に振る。

 

クトゥルゾフ『やらねえよ。』

 

眉を顰めるロン。立ち上がる自由戦士隊員Bと自由戦士隊員C。

 

自由戦士隊員B『俺達も帰るわ。』

自由戦士隊員C『じゃあな。』

 

ロンは立ち上がる。

 

ロン『お、おいおい!待ってくれよ。』

 

クトゥルゾフの方を睨みつけるロン。扉が閉まる音。

 

ロン『あんたみたいに慎重、いや臆病だと大事な幸運を取り逃がすんだよな。』

クトゥルゾフ『は、お前みたいに大胆だと、狙いすぎておっ死ぬぜ。』

 

遠ざかる足音。

 

C2 自由戦士隊宿舎にて END

C3 起床

 

鈍い音。ベットから転げ落ち、脇腹を押さえるクトゥルゾフ。

 

クトゥルゾフ『…ってーーーーーな!』

 

クトゥルゾフは顔を上げる。

 

クトゥルゾフ『何しや…。』

 

クトゥルゾフの眼に映る自由戦士隊隊長で元スパルタン都市国家の将校デモスと自由戦士隊副隊長で可憐で端正な顔立ちをし、髪をツインテールに束ねた元アーヴェ神聖隊の騎士ラナイカ。クトゥルゾフは飛び上がって跪く。

 

クトゥルゾフ『こ、これはこれは…。』

 

クトゥルゾフは窓を見た後、デモスとラナイカの方を向く。

 

クトゥルゾフ『夜分遅くに…。』

 

デモスは腕を組んでクトゥルゾフを見る。

 

デモス『早朝だ。』

 

クトゥルゾフはデモスを覗き込む。

 

クトゥルゾフ『早朝?』

 

クトゥルゾフは窓の方を向いた後、デモスの方を覗き込む。

 

クトゥルゾフ『早朝に何の御用で?』

 

デモスはクトゥルゾフの詰襟を掴む。

 

デモス『朝っていや決まってるだろう!起床!』

 

首をかしげ、デモスの顔を覗き込むクトゥルゾフ。デモスはクトゥルゾフを持ち上げて、耳元に口を当てる。

 

デモス『起こせってんだ!このすっとこどっこい!!』

 

クトゥルゾフは床に落とされ、眼を見開いて耳を押さえる。クトゥルゾフの傍によるラナイカ。

 

ラナイカ『乱暴は駄目よ。』

 

ラナイカはデモスを睨みながらクトゥルゾフの胸板を触り、摘む。ラナイカを睨みつけるクトゥルゾフ。

 

クトゥルゾフ『どさくさにまぎれて何処触ってんだ!この変態!!』

 

ラナイカは頭に手を当てて舌を出す。クトゥルゾフは眼を閉ざして立ち上がり、眼を開ける。

 

クトゥルゾフ『分かった。分かりました。隊の奴らを起こしてミーティングルームに集合させりゃいいんですね。』

 

頷くデモス。クトゥルゾフは舌打ちして部屋から出て行く。

 

C3 起床 END

C4 沈黙の門出

 

自由戦士隊宿舎ミーティングルーム。壇上にはデモス、ラナイカ。隣には自由戦士隊員のポピャがいる。壇上の下に居る自由戦士隊員達。デモスはポピャの方を向く。

 

デモス『全員いるか?』

 

ポピャはデモスの方を向く。

 

ポピャ『う…全員…居る。』

 

デモスは腕組みして2、3回頷く。

 

デモス『そうかそうか。』

 

デモスは自由戦士隊員達の方を向く。

 

デモス『これより自由戦士隊は作戦行動に入る!』

 

眼を見開き、顔を見合す自由戦士隊員達。自由戦士隊員のシュラヴュラが一歩前に出る。

 

シュラヴュラ『お、おいおい!これより作戦行動に入るって…俺達何も聞かされてないぜ!』

 

自由戦士隊員Aがシュラヴュラの横に立つ。

 

自由戦士隊員A『そ、そうだ!俺達は準備が…。』

デモス『準備ならできている。何の為に俺達は訓練を積んできてると思ってんだ?』

 

クトゥルゾフが一歩前に出る。

 

クトゥルゾフ『いったい何の任務なんだ?』

デモス『俺にも知らされてない。』

 

デモスは窓の外にあるシンジャイアン級巨大潜水艦を見た後、自由戦士隊員達の方を向く。

 

デモス『あそこにあるシンジャイアン級巨大潜水艦に乗り込めば分かる。』

 

ざわめき。デモスは耳に手をあて自由戦士隊員達の方に向けた後、腕組みする。

 

デモス『貴様らの気持ちも分かるが、市民の税を母体に禄をもらっている以上拒否はできんだろう。そうなれば外に出た途端、八つ裂きだ。』

 

ざわめき止む。眉を顰める自由戦士隊員達。

 

デモス『さ、行くぞ。』

 

デモスとラナイカに続いて部屋から出て行く自由戦士隊員達は宿舎の地下通路を通り、地下ドックに辿り着く。開いているマルケルディア都市国家軍シンジャイアン級巨大潜水艦の艦首ハッチへデモスを先頭に中に入っていく自由戦士隊員達。鋼鉄で覆われた廊下を仄かに照らす照明灯。進む自由戦士隊員達の影が映し出される。自由戦士隊員のポポロゾフが口を開く。

 

ポポロゾフ『俺りゃ、こう暗いところは苦手だよ…。』

 

クトゥルゾフがポポロゾフの肘を小突く。

 

クトゥルゾフ『お前、ブベルド鉱山の元鉱夫だろ!?』

ポポロゾフ『昔の話だ…。』

 

ポポロゾフは身を震わせる。

 

ポポロゾフ『…ああああ、思い出したらゾッとしてきた。』

 

ポポロゾフはクトゥルゾフの方を向く。

 

ポポロゾフ『妙なもんは見て見ぬ振りをすべきなんだ。でないと取り返しのつかないことになっちまう。へへへ。あの肉片みたいなのは…な。』

 

クトゥルゾフは眉を顰めてポポロゾフから距離を取る。機械音が響き、シンジャイアン級巨大潜水艦の艦首ハッチは閉じる。後ろを見る自由戦士隊員達は首をかしげ、顔を見合わせた後に開いた扉から放出される光の一画へと消えていく。

 

部屋に入り、眼を見開く自由戦士隊達。部屋の中にはマルケルディア都市国家連邦代表のアレクサンが座っている。アレクサンは自由戦士隊の方を向くと立ち上がる。跪くデモスとラナイカ。それに続く自由戦士隊員達。立ったままのポピャの頭を抑えて跪くクトゥルゾフ。

 

アレクサン『突然の出立で申し訳ない。』

 

顔を上げるデモス。

 

アレクサン『我々の行動はどうしても向こう側に察知される訳には行かないのだ。』

 

ラナイカはアレクサンの方を向いた後、デモスの方を向く。

 

アレクサン『我々はユグドラシル大陸王国と戦う!』

 

顔を上げる自由戦士隊員達。自由戦士隊員Bが立ち上がる。

 

自由戦士隊員B『ユ、ユグドラシル大陸王国だって!そ、そんな大国に…。』

 

青ざめる多数の自由戦士隊員達。自由戦士隊員でシーン皇国出身の剣士で優男のヒデツグが笑みを見せる。

 

ヒデツグ『敵が巨大であれば巨大であるほど斬りがいがあるというものだ。クケケケケ。徹虎は血を欲しがっておる。』

 

ヒデツグは刀を鞘からだして反りを舌で舐める。自由戦士隊員Bはヒデツグの方を向く。

 

自由戦士隊員B『俺達全員がテメェみたいな剣豪じゃねえんだ!ボケッ!!』

 

ヒデツグは眼を閉じて首をかしげる。立ち上がる自由戦士隊員のシュラヴュラ。

 

シュラヴュラ『それじゃ、俺達はこのまま出立ってことになるのか?誰にも知らされることなく、伝えることもなく…。』

 

頷くアレクサン。拳を振り上げる自由戦士隊員達に対してデモスが掌を向ける。

 

アレクサン『君達にはすまないと思っている。恋人、友人と離れ離れになり、二度と会えぬかも知れぬ戦地に文もないまま送り出す事になったことを。しかし、ユグドラシル大陸王国はブゼン王の指揮の下、再びこの地へ攻め入ろうとしている。父王の雪辱戦として。そうなれば、戦地となったこの地で侵略、そして略奪が行われる!君達の親しい人たちもその毒牙にかかるだろう!それを防ぐ為に我々は打って出て、ユグドラシル大陸王国の出鼻をくじくのだ!』

 

アレクサンは自由戦士隊員達を見下ろす。

 

アレクサン『そして、その力は君達にある。勝利の暁には英雄として語り継がれるだろう。私が君達の実力を保証する!』

 

上げた拳を下ろす自由戦士隊員達。デモスとラナイカは眼を見開く。

 

デモス『それで、都市国家代表殿、任務というのは?』

 

アレクサンはデモスを見つめて頷く。

 

アレクサン『ゴウガメ岬においてレジスタンスと合流し、合図があるまで待機。合図をしたら敵の中枢部、恐らくド派手な機動城塞を叩き潰してくれればいい。』

デモス『つまりは伏兵…と。』

 

自由戦士隊員Aが鼻下を人差し指でなぞる。前のめりになる自由戦士隊員達。

 

自由戦士隊員A『へ、へへへ。そうだ、俺たちゃ、訓練に明け暮れてきたもんな。』

自由戦士隊員B『ユ、ユグドラシル大陸なんて余裕だぜ。』

シュラヴュラ『そうだよな。それなら早急にかたがつきそうだぜ。』

 

歓喜の声を上げる自由戦士隊員達。デモスは自由戦士隊員達の方を向いた後、クトゥルゾフの方を向く。デモスの顔を覗き込むクトゥルゾフ。

 

デモス『おい、楽隊。壮行に景気のいい歌を頼むぞ。』

 

眼を見開くクトゥルゾフ。

 

クトゥルゾフ『おいおい、俺にふるの…。』

 

クトゥルゾフはアレクサンの方を向く。

 

クトゥルゾフ『か…。』

 

クトゥルゾフは立ち上がり、ハープの弦を一回弾く。

 

クトゥルゾフ『しょうがねえな。』

 

クトゥルゾフはハープを弾く。

 

クトゥルゾフ『

 

いざ 歩め 我らが精鋭

 

進め 矛先を 血に 染め 

 

鋼の 煌めきは

 

名を 照らす 栄光

 

導かれる 魂

 

朽ちる肉体は 消え

 

記される輝きの一行

 

深く 埋もれても

 

いざ 歩め 我らが精鋭

 

進め 屍を 乗り越え

 

流れた 血糊は

 

名を 照らす 栄光

 

 

歓声。クトゥルゾフは一礼して座り込む。アレクサンは自由戦士隊員達に向かって一礼する。

 

アレクサン『では、頼む!』

 

C4 沈黙の門出 END

C5 残してきたもの

 

格納庫に座り込む自由戦士隊員達。鋼鉄の壁に背をかけ、座り込むクトゥルゾフの眼には賭け事を行う自由戦士隊が映る。

 

ロン『ツモ!ははは、今日もついてるついてる。』

 

クトゥルゾフは苦笑いをロンの方に向けた後、頭に手を当てるクトゥルゾフ。クトゥルゾフは手を離し、眼を見開く。壁から背を離した後、再び壁に背をつけ、首をかしげる。壁に耳を当てるクトゥルゾフ。

 

自由戦士隊員A『お~い、吟遊詩人の旦那。』

 

自由戦士隊員Aはシュラヴュラの頭をヘッドロックしてクトゥルゾフの前まで歩み寄る。クトゥルゾフは自由戦士隊員Aとシュラヴュラの方を向く。

 

クトゥルゾフ『何だ?』

自由戦士隊員A『こいつが結婚したっていうんですよ。』

 

周りからの歓声の声。顔を赤らめるシュラヴュラ。クトゥルゾフはシュラヴュラの方を向く。

 

クトゥルゾフ『ほう、そいつはめでたいな。』

 

自由戦士隊員Aはシュラヴュラと相手のカーデラの映る写真をクトゥルゾフに見せ、シュラヴュラの頭に拳を当て軽く回す。

 

自由戦士隊員A『確かカーデラちゃんだったけ、マルケルディア都市国家市民の未亡人とはいえ、こいつこんなカワイ子ちゃんと結婚しやがって…こいつめ~。』

クトゥルゾフ『ほっほう。なるほどそれでさっき…。』

 

クトゥルゾフの方にしかめっ面を見せるシュラヴュラ。自由戦士隊員Aはシュラヴュラの頭の拳を回す。

 

シュラヴュラ『いてててて!』

 

自由戦士隊員Aはクトゥルゾフの方を見る。

 

自由戦士隊員A『だからお祝いに何か一曲お願いしますよ。』

 

クトゥルゾフは片手で頭を掻いて、顔を赤らめているシュラヴュラの方を見て頷く。

 

クトゥルゾフ『ああ、分かった。で、いくらだすんだ?』

 

自由戦士隊員Aは眉を顰めた後、シュラヴュラの方を向き、再びクトゥルゾフの方を向いて3000ピカ札を渡す。

 

クトゥルゾフ『まいどあり~。』

 

自由戦士隊員Aは舌打ちしてシュラヴュラの方を向く。

 

自由戦士隊員A『これで祝儀は無しな。』

 

頷くシュラヴュラ。クトゥルゾフはハープを片手に持つと弦を奏でて歩きだす。

 

クトゥルゾフ『

 

気高き 光に 残される面影

 

見えぬ 思いに 照らされる 一筋の道

 

互い その手を 絡め 解けない 標へと 

 

廻る 輪は 運命を刻む

 

絡む 糸は 連綿と続き

 

未知の 未来へ 陽の光を与え

 

過去は 出会い 繋がり 創りだす 

 

愛は 君へと紡ぐ

 

 

立ち上がり拍手と歓声を送る自由戦士隊員達。顔を赤らめるシュラヴュラ。自由戦士隊員達はシュラヴュラを胴上げしだす。クトゥルゾフは後ろを向き、一礼する。

 

クトゥルゾフ『市民の仲間入りおめでとう…。』

 

C5 残してきたもの END

C6 賭博

 

壁を背に眼を見開くクトゥルゾフは賭け事をしている自由戦士隊員達の方を見た後、時計を見る。

 

クトゥルゾフ『こんな時間だというのに…お盛んなことで。』

 

欠伸をするクトゥルゾフに近寄る自由戦士隊員A。自由戦士隊員Aはロンの方を向く。

 

自由戦士隊員A『へ、あの野朗。結構な額を巻き上げやがって。』

クトゥルゾフ『負けると分かってりゃ、やらにゃいいのによ。』

 

眉を顰めてクトゥルゾフの方を向く自由戦士隊員A。

 

自由戦士隊員A『あんた、ここに入ってどんだけ溜め込んだんだ?』

 

クトゥルゾフは懐を力強く押さえる。

 

クトゥルゾフ『借さねえぞ。』

 

自由戦士隊員Aは頷く。

 

自由戦士隊員A『そりゃ分かってるけどもよ。』

 

クトゥルゾフは眼を閉ざし、2、3回頷く。

 

クトゥルゾフ『人生を無事終えるには雀の涙程度。豪遊して一生暮らすには砂塵のごとし。』

 

クトゥルゾフは眼を開き、溜息をつく。自由戦士隊員Aは両腕を後頭部において、クトゥルゾフの隣に座り込む。

 

自由戦士隊員A『なんじゃそりゃ…。俺も賭け事なんて止めて、まっとうに稼ごうと思ってたのによ。』

 

自由戦士隊員Aはポケットからハーモニカを取り出す。

 

自由戦士隊員A『こいつと小銭で自由を求めてきてこの有様だぜ。』

 

舌打ちする自由戦士隊員A。クトゥルゾフの眼に映る、賭け事をしている自由戦士隊員達。クトゥルゾフは前掛けを伸ばす。

 

クトゥルゾフ『俺はもう寝るぜ。』

 

自由戦士隊員Aは起き上がり、クトゥルゾフの方を向く。

 

自由戦士隊員A『あ、ああ…。』

 

C6 賭博 END

C7 食事

 

格納庫を照明が照らす。車輪の音がして、格納庫の扉が開き、マルケルディア都市国家軍の給仕係が大鍋を運んでくる。飛び上がり、鍋に駆け寄る自由戦士隊員達多数。眉を顰めるクトゥルゾフ。デモスが鍋の前に立ちふさがる。その場に止まる自由戦士隊員達。

 

自由戦士隊員B『お、おい!隊長!!何しやがんだ!』

 

デモスは自由戦士隊員達を睨みつける。

 

デモス『おい、テメェら食いたきゃお行儀よく並べ!』

自由戦士隊員C『わ、分かりましたよ!』

 

自由戦士隊員達はデモスの後ろに並ぶ。クトゥゾフは立ち上がり、列の方へと歩いていく。クトゥルゾフは皿にもられたカレーを持って行く自由戦士隊員で義足のチンを見る。

 

クトゥルゾフ『チンさん…。』

 

チンはクトゥルゾフを見る。

 

チン『ん~。これはカレーだね。』

クトゥルゾフ『いつものマメの入ったスープみたいなやつじゃねえのか。』

 

チンはクトゥルゾフの横を通り抜けていく。足音。青ざめ、冷や汗をかくクトゥルゾフ。クトゥルゾフはゆっくりと後ろを向く。仏頂面のヒデツグがクトゥルゾフを見つめる。

 

ヒデツグ『食事を取りに並んで何が悪い…。』

クトゥルゾフ『いや、べ、別に何も言ってねえだろ!』

 

ヒデツグは顎に手を当てる。

 

ヒデツグ『顔が青ざめているぞ。さては怯えているのか貴様。…ふふ。』

 

ヒデツグは笑みを浮かべて舌舐めずりする。

 

クトゥルゾフ『ふふ、じゃねえよ!あんたはおっかねえんだよ!』

 

ヒデツグはクトゥルゾフの顎を刀の柄で上げる。眼を見開くクトゥルゾフ。

 

ヒデツグ『その表情…ゾクゾクする…。斬りがいが良さそうだ…。』

 

ヒデツグに負ぶさるラナイカ。

 

ラナイカ『こ~ら!私を差し置いて何二人でイチャイチャしてるんだ!!』

 

舌打ちするヒデツグ。ラナイカはヒデツグの頬にキスをする。ヒデツグは眼を見開き、顔を少し赤らめると眼を閉じて前に進む。ヒデツグの方を向くクトゥルゾフ。

 

クトゥルゾフ『お、おい。こいつは男だぞ!』

 

クトゥルゾフに負ぶさるラナイカ。

 

ラナイカ『クトゥルゾフちゃんもチューしてあげるね。』

クトゥルゾフ『いらんわ!』

 

ラナイカを振りほどいて、カレーを受け取り、格納庫に座るクトゥルゾフ。ラナイカは地面に座り込み口に人差し指を当てて首をかしげる。円形に集まる自由戦士隊員達。中央にはデモス。

 

デモス『お前達に話がある。これより4時間後、我々はゴウガメ岬の奥の森にてレジスタンスと合流する。』

 

顔を見合わせる自由戦士隊員達。

 

デモス『日頃の訓練通りに行えばいい。ピョンピョンバッタの組み立て、及び操縦だ。』

 

頷く自由戦士隊員達。

 

デモス『では、食事後、英気を養うため休息とする。』

 

デモスは座り込んで、ライスの方を食べる。食器の音が格納庫に木霊する。

 

C7 食事 END

C8 激突

 

夜陰に隠れ、ゴウガメ岬へ浮上するシンジャイアン級巨大潜水艦。艦首ハッチが開き、降り立つバックパックを背負ったデモスと同じくバックパックを背負った自由戦士隊。服を濡らし、前進する彼ら。森林から出るレジスタンスのセラス、シュラス父子。潜行していくシンジャイアン級巨大潜水艦。

 

手招きするセラス、シュラス父子。海岸を這って進む自由戦士隊員達。デモスが森林に入り、セラスと握手をする。次々と森林に入っていく自由戦士隊員達。最後の一人が森林の内部に入ると、デモスは魔方陣を描き、数回手を動かした後、魔方陣に触れる。

 

魔方陣は回転し、砂浜を左右に移動しながら足跡を消した後、デモスの手前に戻る。デモスは魔方陣を手で掻き消すと後ろを振り向き、手で指示を出す。自由戦士隊員達は小隊を組んで別れ、森林の奥へと入っていく。

 

クトゥルゾフは左右を確認し、後ろを向いて掌を前に出し、自由戦士隊員達に指示を出す。クトゥルゾフ及び自由戦士隊員達は各々の鞄から機材を出し、組み立てる。暗闇から、青白い闇へと変わる。機材を組み立てる一同。青白い闇はやがて赤く照らされる。

 

海岸線に現れるマルケルディア都市国家軍の大艦隊。赤紫のTeSSa-266級指揮官用人型機構の乗る艦載艇を先頭にゴウガメ岬に接岸し、降り立つマルケルディア都市国家軍のDBx-1177級人型機構軍。

 

森林から眺めるクトゥルゾフ。自由戦士隊員Cがクトゥルゾフの傍らに寄る。彼らの後ろにはCx2-88級人型機構5機並ぶ。

 

太陽が昇り、陣形を整えるマルケルディア都市国家軍。数秒するとユグドラシル大陸王国のスワリュー級爆撃機とハイロゥ級攻撃機が編隊を組んで現れる。迎え撃つネステロフ級戦闘機。マルケルディア都市国家艦隊の高射角砲が火を吹く。空を染める機銃。いくつかの戦闘機が煙を上げ、海面に激突し爆発を巻き起こす。

 

砂煙が巻き起こり右手からユグドラシル大陸王国と親交を結び特権を得ているコザツク族の人型機構群と左より壮麗な装飾を施したブゼン専用機動城塞を中心に50隻余りのクリュワテール級機動城塞が現れ、格納庫のハッチが開き、大量のユグドラシル大陸王国精鋭のアタナトイ級人型機構が現れる。

 

砂埃を巻き上げながら砂浜に集結するアタナトイ級人型機構。マルケルディア艦隊の後ろの海面から波飛沫が起こり、多数のカチューシャ級ミサイルがアタナトイ級人型機構に向かって放たれる。カチューシャ級ミサイルは爆風を巻き起こし、砂浜をえぐって多数のアタナトイ級人型機構を吹き飛ばし、損傷させるがアタナトイ級人型機構の損傷部分は結合し、直ちに修復され再び動き出す。

 

赤紫のTeSSa-266級指揮官用人型機構を先頭に突撃するマルケルディア都市国家軍。マルケルディア都市国家艦隊はジグザグ走行をする。砲撃音が鳴り、ブゼン専用機動城塞の砲塔及びクリュワテール級機動城塞の砲塔が一斉に火を吹く。ゴウガメ岬に水柱と砂煙が立ち上る。多数のアノパイア級対潜哨戒機がクリュワテール級機動城塞の飛行板から発進する。

 

砲撃により削られた砂浜を進むマルケルディア都市国家軍。両軍のいくつかの軍用機が煙を吹き、砂浜に激突して爆発、炎上する。パラシュートで脱出したパイロットの何人かは機銃掃射で体を蜂の巣にされ、地面に辿りつくなり倒れこむ。

 

コザツク族の族長用人型機構のコクピットのハッチが開き、緑の長髪をたなびかせた女性で眼鏡をかけ、ウシャンカを被ったコザツク族の長アナスタシアが馬に乗って現れる。アタナトイ級人型機構は隊列を整え、ブゼン王専用機動城塞の砲塔が天を向き、怒号と共に発射されるとマルケルディア都市国家軍に向かっていく。アナスタシアは剣を振り上げる。

 

アナスタシア『突撃ーーーーー!!』

 

突撃するコザツク族の人型機構。

 

マルケルディア都市国家艦隊の砲塔が火を噴き、カチューシャ級ミサイルが数機のアタナトイ級人型機構を跳ね飛ばして砂浜をえぐる。クリュワテール級機動城塞の砲塔の火が噴き、スワリュー級爆撃機の爆撃がマルケルディア都市国家軍の人型機構を吹き飛ばす。

 

跳ね飛ばされたアタナトイ級人型機構は立ち上がり、爆風によって装甲に付けられた傷は即座に元に戻り、隊列に復帰する。金属片をまき散らし、多数のDBx-1177級人型機構の剥き出しになったコックピットからは金属片が突き刺さり、血だらけになって白目を向いたパイロット、臓物をまき散らしながら泣き喚くパイロットが見える。

 

自由戦士隊員達がクトゥルゾフの傍らによる。クトゥルゾフは自由戦士隊員達を見た後、頷いて振り返る。クトゥルゾフは前進するアタナトイ級人型機構の方を向いた後、ブゼン王専用起動城塞の方を向き、両者の中間点を見つめる。

 

クトゥルゾフは振り返り、自由戦士隊員Cの肩を叩き、Cx2-88級人型機構へ乗り込む。自由戦士隊員達は振り返り、自身のCx2-88級人型機構に乗り込む。

 

マルケルディア都市国家軍人型機構の機銃がアタナトイ級人型機構に掃射されるがその傷が瞬く間に回復し、前進するアタナトイ級人型機構。

 

衝突する両軍。DBx-1177級人型機構の剣撃がアタナトイ級の装甲を掠めるが、アタナトイ級人型機構の装甲は即座に回復し、逆に素早い太刀捌きでDBx-1177級人型機構を切り刻む。倒れたDBx-1177級人型機構のコックピットを踏みつぶし、前進するアタナトイ級人型機構。コザツク族の人型機構が側面のDBx-1177級人型機構を斬り、押し倒し、マルケルディア都市国家軍を波打ち際まで押し込む。

 

マルケルディア都市国家軍の人型機構の脚部が海水に浸かる。炎上するザッドチェフ級駆逐艦とグロスク級空母。艦隊の後ろの海は重油で黒く染まる。激しい動きを繰り広げる両軍の軍用機。

 

赤紫のTeSSa-266級指揮官用人型機構がアレクサンデル級戦艦の艦首に飛び乗り、艦橋を向き、眼部を光らせる。赤紫のTeSSa-266級指揮官用人型機構は降り立ち、手前のアタナトイ級人型機構を一刀両断する。血飛沫と臓器を撒き散らして左右に割れるパイロットを包み込むように切断面が即座に結合し、回復するそれを赤紫のTeSSa-266級指揮官用人型機構が蹴り飛ばす。

 

アレクサンデル戦艦の艦旗に自由戦士隊の旗が登る。

 

ゴウガメ岬の背後の森林からバックパックから火を吹き跳躍する一機のCx2-87級指揮官用人型機構。クトゥルゾフは頷き、背後の4機に指示を出す。Cx2-88級人型機構のバックパックから火が吹く。ゴウガメ岬の奥の森林から弧を描いて次々と高速で跳躍するCx2-88級人型機構群。

 

Cx2-87級指揮官用人型機構は航空中のスワリュー級爆撃機を真っ二つにし、ブゼン王専用機動城塞の甲板に降り立つ。続々とブゼン専用機動城塞に群がるCx2-88級人型機構。クトゥルゾフ機もブゼン王専用機動城塞の甲板に降り立つ。

 

艦橋の窓から見える立ち上がるユグドラシル大陸王国の士官及び兵士。ベットに裸体が透けて見える赤いドレスを着た妾のキッス・チャーミーを侍らせ唖然とするブゼン。傍らの床には砕けたワイングラスが落ち、赤い液体の染みができている。

 

Cx2-87級指揮官用人型機構がブゼン専用機動城塞の艦橋に剣を突き刺し、引き裂く。振り返り、逃げ惑う艦橋のユグドラシル大陸王国兵士及び士官。ブゼンは青ざめて馬にキッス・チャミーと共に騎乗し、艦橋から飛び出る。機銃に向かい駆けていくユグドラシル大陸王国兵士達。

 

ブゼンに斬りかかるCx2-88級人型機構が機銃掃射を受け、煙を吐きながら倒れこむ。跳躍し、散開しながら大量の人型機構用手榴弾をばら撒くCx2-88級人型機構群。ブゼンの騎乗する馬はブゼン王専用機動城塞とクリュワテール級機動城塞の壁を蹴って森林の中へ消えていく。

 

爆発が機動城塞群に巻き起こり、バランスを崩し、地面へと落下していく機銃手達。クトゥルゾフ機及び他のCx2-88級人型機構はは砲塔を叩きつぶし、艦橋を切り刻んだ後に跳躍して大量の人型機構用手榴弾をばら撒くことを繰り返す。ユグドラシル大陸帝国の方へ向かうユグドラシル大陸王国の軍用機が後ろをマルケルディア都市国家軍のネステロフ級戦闘機に取られ、機銃により次々に堕ちていく。

 

突出していたアタナトイ級人型機構の何機かは後ろを振り返り、DBx-1177級人型機構にコックピットを突き刺される。引き抜かれた剣から血がほとばしり、回復するアタナトイ級人型機構の装甲は赤く染まる。砂浜へと押し出されるアタナトイ級人型機構及びコザツク族の人型機構の群れ。大破、炎上していくユグドラシル大陸王国機動城塞群。

 

コザツク族の指揮官用人型機構のコックピットのハッチで呆然とするアナスタシア。ぽっちゃりした体型で丸眼鏡をかけ、ウシャンカを被り、無精ひげを生やしたコザツク族戦士オダックがアナスタシアの近くに駆け寄り、口を何回も開く。オダックはアナスタシアを見つめ、823回往復びんたする。馬から落ち、膝を突き、頭を回しながら戦場をうつろな眼で見つめるアナスタシア。

 

オダックは更に口を何回も開くが、砂浜の方を見て舌打ちし、アナスタシアと馬を無理やり抱きしめ、コザツク族の指揮官用人型機構のコックピットのハッチに連れ込む。手で指示を出すコザツク族の指揮官用人型機構。コザツク族の軍勢は退却していく。

 

退却するユグドラシル大陸王国の機動城塞部隊。追い掛けるユグドラシル大陸王国の軍用機達。Cx2-87級指揮官用人型機構は、ゴウガメ岬を向き、手を振り上げる。跳躍しながら砂浜へと向かうCx2-88級人型機構群。砂浜のアタナトイ級人型機構群は前進を止め、蜘蛛の子を散らす様に逃げ出す。

 

飛んで背後から攻め入るCx2-88級人型機構。Cx2-88級人型機構は跳ね回り、アタナトイ級人型機構のコックピットを突き刺す。

 

Cx2-88級人型機構に撹乱され同士討ちするユグドラシル大陸のアタナトイ級人型機構多数。アタナトイ級人型機構のコックピットから這い出た兵士を踏み潰すクトゥルゾフ機。赤紫のTeSSa-266級指揮官用人型機構及びTeSSa-266級指揮官用人型機構を先頭に突撃するDBx-1177級人型機構群。

 

砂浜は肉片と瓦礫の山で覆われ、取り残されたコザツク族の人型機構及びアタナトイ級人型機構達は全滅する。マルケルディア市の部隊は各々の顔を合わせ、雄たけびをあげる。砂浜に旗を突き刺す赤紫のTeSSa-266級指揮官用人型機構。

 

シュラヴュラが自機のコックピットから躍り出る。

 

シュラヴュラ『旗だ!旗が立ったぞーーーー!!』

 

赤紫のTeSSa-266級指揮官用人型機構のコックピットのハッチが開き、グリーンアイス連邦議員アレクサンが現れる。アレクサンの方を見つめるクトゥルゾフ。歓声をあげる一同。

 

マルケルディア都市国家軍兵士達『勝利だ!我々の勝利だーーーー!アレクサン万歳!英雄に栄光あれ!!』

 

クトゥルゾフ機のハッチを開き、クトゥルゾフはハッチの先端まで来て座る。歓声がゴウガメ岬に鳴り響く。クトゥルゾフは煙草に火をつけ、溜息をついて瓦礫とアタナトイ級人型機構、死体が積み重なる砂浜を見つめる。

 

C8 激突 END

C9 物色

 

ゴウガメ岬において負傷兵及び、損傷した機体を運ぶマルケルディア都市国家軍の遠目でクトゥルゾフ機とCx2-88級人型機構が多数たむろしている。Cx2-88級人型機構のコクピットのハッチに座る自由戦士隊員Aと自由戦士隊員B。

 

自由戦士隊員A『しっかし、ロンの奴が死んでくれてほっとしたよ。ツケが溜まってたからな。』

自由戦士隊員B『何にせよ、踏み倒す事が出来て良かった良かった。ハハハ。』

 

彼らの傍らにはアタナトイ級人型機構の山、その隣にはユグドラシル大陸王国のパイロットの死体が山となって積み重なっている。Cx2-88級人型機構が砂浜に散乱しているアタナトイ級人型機構の肩を持ち、立たせる。

 

クトゥルゾフ機と数機のCx2-88級人型機構のコックピットのハッチが開き、クトゥルゾフと自由戦士隊員Dが現れる。アタナトイ級人型機構に歩み寄り、ボタンを押してハッチを開ける。中を見回すクトゥルゾフ。

 

クトゥルゾフ『…こいつも駄目だな。』

 

シュラヴュラがアタナトイ級人型機構のコックピットのハッチを覗き込む。

 

シュラヴュラ『うわ、血だらけ…。きったねえ。』

 

アタナトイ級人型機構のコックピット内は血飛沫が彩り、腹から腸を出して口から血を流して俯くパイロットの死体。

自由戦士隊員Aと自由戦士隊員Bがコックピットの中に入り、ユグドラシル大陸王国のパイロットの遺体を運び、ユグドラシル大陸王国のパイロットの死体の山に向けて投げる。アタナトイ級人型機構の肩を持っていたCx2-88級人型機構はそれをアタナトイ級人型機構の山へ投げる。音が鳴り、砂煙が起こり、クトゥルゾフ及び自由戦士隊員達の前に現れるCx2-87級指揮官用人型機構。コックピットのハッチが開き、デモスが現れる。

 

デモス『いつまで漁ってんだ。』

 

クトゥルゾフはデモスの傍らに寄る。

 

クトゥルゾフ『まあまあ、デモスの旦那。有名な不死装甲を持つアタナトイ級人型機構が手に入るんですぜ。』

デモス『ゴウガメ岬から移動するぞ。』

 

自由戦士隊員Aはにやけ面でデモスを見る。

 

自由戦士隊員A『馬鹿いうな隊長さんよ。俺達は勝ったんだぜ。それに折角この地を手に入れたんだ。何で手放す必要があるんだよ。』

自由戦士隊員E『そうそうユグドラシル大陸王国なんざ俺達の敵じゃねっての。いくらでもかかってきやがれだぜ。』

 

デモスは自由戦士隊員達を見回す。

 

デモス『あいかわらずお前らは目先のことしかみえんな。』

 

デモスは懐から液晶付き無線機を取り出す。

 

自由戦士隊員A『ん?何かの自慢ですか?』

 

デモスは自由戦士隊員Aを軽く殴る。

 

デモス『よく見やがれ!』

 

液晶を見つめる自由戦士隊員達。液晶に映る路線を走る列車。

 

シュラヴュラ『列車しか見えねえけどさ。』

自由戦士隊員B『でも、こいつ車両の幅がやけに短くないか、正方形と言うか…。こんな狭い…。』

 

路線で止まり、アタナトイ級人型機構に変形する列車の車両群。次々と現れる列車達。

 

自由戦士隊員E『し、し、車両が…車両がぁ!ひ、人型機構に変形、へ、変形しただって!!!』

自由戦士隊員A『お、おいぃっ!し、しかも、か、数がべらぼうじゃねえか!』

 

デモスは森林の方を指差す。

 

デモス『あの森の向こうの様子だ。』

 

青ざめる自由戦士隊員達。

 

デモス『オラ、分かったら戻るぞ!』

 

自由戦士隊員達はCx2-88級人型機構に乗り込み、グロスク級空母の飛行板まで跳躍する。動き出すマルケルディア都市国家軍艦隊。デモス機のコックピットが開き、現れたデモスは液晶付き無線機をセラスに手渡す。

 

デモス『ありがとよ。こいつらには言葉で説明するよりも大分いい。』

 

木々がざわめき、鳥の群れが飛んでいく。

 

C9 物色 END

C10 マルケルディア都市国家軍超兵器

 

甲板に寝転がる自由戦士隊員達。海岸線を睨みつけるデモス、ラナイカ。クトゥルゾフはラナイカの横に座り込み、ハープを奏でる。

 

クトゥルゾフ『どうかなさったんで?』

 

クトゥルゾフの方を向くデモス、ラナイカ。クトゥルゾフのハープの弦を弾く手が止まる。マルケルディア都市国家艦隊が止まり、立ち上がる自由戦士隊員達。

 

自由戦士隊員D『んだ?何かあったのかい?』

 

縁に寄る自由戦士隊員達。水面が揺らめき、黒い巨大な影が現れる。青ざめる自由戦士隊員達。唖然とするクトゥルゾフ。

 

自由戦士隊員E『ひっ!た、助けてくれ!!』

 

飛び上がり、右往左往する数多の自由戦士隊員達。デモスが自由戦士隊員達の方を向く。

 

デモス『落ち着け!』

 

伏せる自由戦士隊員F。

 

自由戦士隊員F『こ、殺されりゅ!』

 

マルケルディア都市国家軍兵士Aが立ちあがる。

 

マルケルディア都市国家軍兵士A『あれは味方だ!』

 

マルケルディア都市国家軍兵士達はデモスの方を見た後、鼻で笑う。巨大な波飛沫が立ち、超巨大潜水機動城塞2番艦のトライデントが浮上する。立ち止まり、超巨大潜水機動城塞2番艦のトライデントを見上げる自由戦士隊員達。眼を見開き、飛び上がる自由戦士隊員達。

 

自由戦士隊員F『ひゃほほ~い!こいつはすげえぜ!』

自由戦士隊員D『こいんなすげえものがあったとは!これで奴らなんぞ楽勝だぜ!』

 

マルケルディア都市国家軍兵士Bははしゃぐ自由戦士隊員達を見つめた後、トライデントの方を向く。

 

マルケルディア都市国家軍兵士B『フン、猿どもは馬鹿騒ぎしやがって見苦しいが、いつ見ても勇壮だな。侵略から守る為の兵器。マルケルディアの守護神だな。』

 

クトゥルゾフは舌打ちをしてそっぽを向く。

 

クトゥルゾフ『けっ、人を殺す為に作られ、脅威で脅かす駆け引きの道具によ。』

 

トライデントの108番ハッチが開き、中に入って行くマルケルディア艦隊。鋼鉄で覆われた壁を見回す自由戦士隊員達。ハッチが閉じ、マルケルディア都市国家艦隊が進み、開けた巨大格納庫に出る。自由戦士隊員Bが体を乗り出す。

 

自由戦士隊員B『なっ、なんだこれは!』

 

大量の潜水艦、駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦、空母、戦艦が整然と並ぶ。ラナイカは口に手を当てる。

 

ラナイカ『…こ、こんなに積めてまだ余裕が…?都市国家軍10個以上の規模じゃない。』

 

踊りだす自由戦士隊員達。

 

自由戦士隊員C『こりゃすげぇ、これだけの軍隊があれば…。』

自由戦士隊員D『へへへ、ユグドラシル軍なんて楽勝、楽勝!』

 

接岸するマルケルディア艦隊。アレクサンデル級戦艦の艦橋から出てくるマルケルディア都市国家高級武官達。

 

パルメダヲ『はは、我が軍の損害は軽微、大勝、大勝。』

カットラス『父上、これで本国に帰れば鼻が高いというものです。しかし、代表殿は勝ち戦と言うのに俯いたまんまですな。』

パルメダヲ『無理もあるまい。実戦経験が少ないのだ。』

 

クトゥルゾフは笑い声を上げながら去っていくマルケルディア都市国家高級武官の方を拳を震わせながら見つめた後、溜息をつく。マルケルディア都市国家高級武官達に続くマルケルディア兵士達。

 

自由戦士隊員G『かぁ、でっけいな!これで娼館があれば最高なのによ。』

 

マルケルディア都市国家軍兵士達に続く自由戦士隊員達。カットラスが後ろを振り向き、眉を顰めるとマルケルディア都市国家兵士達と自由戦士隊員の間に出る。

 

カットラス『何をやっているんだ!貴様らは!!』

 

立ち止まり、顔を見合わせる自由戦士隊員達。カットラスは近くのマルケルディア都市国家兵士Cを睨む。

 

カットラス『一つ目を呼んで来い!猿どもの世話は野生児に任せるにかぎる!』

 

マルケルディア都市国家兵士Cは一礼するとアレクサンデル級戦艦の艦橋へ駆けこんでいく。自由戦士隊員達を睨み付けるカットラス。アレクサンデル級戦艦の艦橋からサクリュオスが駆け出てくる。サクリュオスは息を荒げ、カットラスの隣に寄るサクリュオス。

 

カットラス『こいつらを案内しろ。場所は三等貨物室だ。』

 

サクリュオスは頭をあげ、カットラスを見つめる。

 

カットラス『分からんのか?』

サクリュオス『アレクサン様のお傍に…。』

カットラス『それはお前の役目ではないだろう。とっとと小汚いこいつらを案内しろ!』

 

サクリュオスは一礼する。

 

サクリュオス『ハッ!』

 

サクリュオスは自由戦士隊員達の前に立つ。

 

サクリュオス『自由戦士隊員達はこちらに…。』

 

マルケルディア都市国家軍兵士達は笑い声をあげながら去っていく。クトゥルゾフは負傷兵と損傷した艦隊を見つめ、拳を振るわせる。

 

C10 マルケルディア都市国家軍超兵器 END

 

intermission

 


 
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