No.535222

真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1-32

ここのところ腰痛がひでえ。
ぎっくりにならなきゃいいけど。

私の作品偏ってんな、と思う今日この頃。
華琳というか魏√後のやつも書いてるし被らないようにするのが大変。まったく誰だよ、このシナリオ考えたのは!!

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2013-01-23 17:15:01 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:9080   閲覧ユーザー数:6823

 

 

 

この作品は【 恋姫†無双 】【 真・恋姫†無双 】の二次創作です。

 

三国志の二次創作である物に、さらに作者が創作を加えたものであるため

 

人物設定の違いや時系列の違い。時代背景的な変更もありますので

 

その辺りは、なにとぞご容赦をお願いいたします。

 

上記をご理解の上、興味をお持ちの方はそのままお進み下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、馬鹿たちが余計な事をしてくれたせいで……」

 

 

洛陽の街中。我が我がと先を争い強引に都へ入った袁紹軍と袁術軍。

 

その両軍が起こした混乱を収拾せざるをえなくなった曹操は、こめかみを引き攣らせながら苛立たしげに足を踏み鳴らしていた。

 

 

「ご老人、何か他に手伝えることは無いか?」

 

『いえいえ、先だって起こった混乱を治めていただけただけでも充分ですじゃ。本当にありがたいことで――』

 

 

夏候淵が街の人間の相手をしているのを少し遠目で見つつ、周囲に目を光らせる。

 

彼女の逆鱗に触れないよう、曹操軍の兵士達は一定の距離を取っていた。

 

最も、曹操配下の中でも最古惨と言える夏候惇と、親衛隊の隊長である許猪だけはその背後に控えていたが。

 

ふと、そんな曹操の眼が一人の人間をその視界に捉える。

 

走っているわけでもない、別段早く歩いているわけでもない。

 

特別容姿が端麗でも無く、自分の眼に止まる人材でも無い。どこまで行っても普通の人間。

 

だが今この時に限り、その少女が自分の眼に止まった。

 

それはつまり自分が、曹孟徳が何らかの興味を持ったということ。

 

こういう時は直感で動くことを是としている曹操の決断は早かった。

 

 

「春蘭、季衣。少し用が出来たわ」

 

「はい。でしたら我らも共に」

 

「いいえ、一人でいいわ。あなた達は秋蘭の手伝いをしていてちょうだい」

 

「えー!?華琳さま、それってボクも着いてこないでいいってことですか?」

 

「ええ、たまには護衛に気負わず過ごす時間もいいでしょう?」

 

 

「でも……」

「しかし……」

 

 

許猪と夏候惇。二人の声が重なる。

 

それが自分の身を案じてくれているが故の抗議の声だということは分かっていたが、こればかりはどうしようもない。

 

曹操は二人を安心させるように微笑を浮かべた。

 

 

「安心なさい。私が行こうとしているのは春蘭や親衛隊の季衣が着いてくる必要が無い、安全な場所よ。そう時間も掛からないわ」

 

「むむむ……そう華琳様が仰られるのでしたら……」

 

「分かりました!でも気を付けてくださいね?華琳様」

 

「我が儘を聞いてもらって悪いわね、二人とも。それじゃあここは任せたわ」

 

 

言って、先刻の眼に止まった少女が消えた方に向かって歩き出す。

 

未だに向けられている心配そうな視線を感じ、苦笑しながらもその足は一切の迷い無く止まらない。

 

曹孟徳――その存在が一度こうと決めたことは簡単には覆らない。

 

なぜ少女――公孫賛などという普通の、歯牙にも掛けない人間に興味を抱いたのか。

 

知識欲にも近い感覚を携え、曹操は各軍の兵士や将が走り回る人込みに姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「董卓さんはまだ見つかりませんの?」

 

「姫~、そう簡単に見つかったら苦労しませんって」

 

「そうですよ麗羽様~、董卓さんって言ったら敵の親玉さんですし、そんな簡単には」

 

 

憮然とした面持ちで両腕を組む袁紹を、文醜と顔良が宥める。

 

袁紹はその言葉に、苛立たしげに足を踏み鳴らしている。

 

時を同じくして曹操が、苛立たしげに足を踏み鳴らしているなど、袁紹には夢にも思わないだろう。

 

そして原因が袁紹――つまり自分にあるということも。

 

 

「――本初」

 

「……?あら、白蓮さんじゃありませんの。董卓さんは見つかりまして?」

 

 

唐突に背後から掛けられた声に袁紹が振り向くと、そこにはそれなりに付き合いのある幽州の太守、公孫賛が立っていた。

 

字で呼ばれるのはいつものことだが、袁紹なりに一応友人である白蓮の雰囲気に違和感を感じていた。

 

一瞬、誰なのか特定するのに時間が掛かったことが、それを表している。

 

 

「あ、白蓮様。どもっす」

 

「白蓮様、どうしたんですか?こんなところに」

 

「ん、いや。……猪々子、斗詩、ちょっと本初のこと借りてってもいいか?」

 

 

少し言い難そうに顔を逸らし、唐突と言えば唐突な頼み。

 

だが、今の二人には白蓮のことが救世主のように見えていた。

 

なぜなら自分達の大将、袁紹の先刻の台詞“董卓さんはまだ見つかりませんの?”はあれ一回だけではなかったから。

 

既に何十回と問い掛けられていた質問に正直、文醜と顔良は精神的な疲労が蓄積していた。

 

そこに白蓮のこの申し出。断る方がおかしいと言えよう。

 

もしこの頼みをした相手が曹操や、また他の人物だったなら断ったかもしれないが。

 

幸か不幸か、白蓮の人となりと性格を知っているからこそ、文醜と顔良に躊躇いは無かった。

 

 

「別にいいっすよ!……姫がいても捜索が滞るだけだし」

 

「猪々子さん、何か言いまして?」

 

「いやいやいや!なんでもないですよ姫~!」

 

「……もう。文ちゃんいつも一言多いんだから。あ、白蓮様。麗羽様のことよろしくお願いします」

 

「うん。じゃあちょっと借りてくな。行くぞ、本初」

 

「ちょ、ちょっとお待ちなさい白蓮さん!まだ私は一言も良いとは……わ、分かりましたから肩を引っ張るのを止めてくださいます?」

 

 

引き摺る、まではいかないものの自分の肩を掴んでぐいぐいと引っ張る白蓮の強引さに

 

抵抗することを諦めた袁紹は渋々と白蓮の後ろに着いていき、すぐそばの路地へと姿を消した。

 

 

「ふ~白蓮様が来てくれて助かったなー斗詩」

 

「うん。あのままずっとあれが続いてたらこっちが参っちゃうもんね」

 

「それはそうとさ、なんか白蓮様変じゃなかったか?」

 

「え?……そうかな?私はいつもと同じに見えたけど」

 

「なんだろ、なんかいつもより強引だったというか」

 

「急ぎの用だったからじゃないかな?……でも確かに。白蓮様ってあんなに強引じゃ無かった気がしないでもないんだけど……」

 

「まあウチらも白蓮様のこと全部知ってるってわけじゃないからなあ……そんなことより斗~詩~?」

 

真面目な表情から一転。欲望だだ漏れと言うか、とにかくロクでも無いことを考えてるような表情で両手をワキワキさせながら、文醜は顔良に迫っていく。

 

反面、迫ってくる文醜を顔良はジト眼で見ていた。

 

「駄目だよ文ちゃん。麗羽様がいない内にちゃんと仕事終わらせとかないと。じゃないと麗羽様が戻って来てからまた小言の中で仕事することになっちゃうよ?」

 

「あ~そりゃキツイや。仕方ない、斗詩の胸揉みの仕事は後に取っとく!」

 

「後でも駄目!」

 

「そ、そんなー!」

 

殆ど漫才に近い二人のやり取り。

 

既にその頭の中には白蓮から感じた違和感に対して考える要素は残っていない。

 

それはもちろん、自分達の主にとっては殆ど唯一と言っていいほどの友人である白蓮に全幅の信頼を置いているからに他ならない。

 

友人と言うならもう一人、曹操の名が上がる。

 

だが二人の関係は友達と言うには希薄で、どちらかと言えばライバル――好敵手に近い物なのかもしれない。

 

まあ本人達がどう思っているのかは知らない。

関係に関する質問をすれば、まず間違いなく二人ともまったく違った答えを返すのだろう。

 

だがだからこそ、殆ど唯一の友達だと思っているのなら、文醜と顔良は違和感の正体を追求するべきだった。

 

 

 

白蓮が、友達と呼ぶ人間にはして欲しくないことを。

 

白蓮にも“許容できるものと許容できないものがある”ということを。

 

それは白蓮が、袁紹のことを“友人”と思っているからこその、感情。

 

 

 

 

 

 

 

 

麗羽を路地裏に連れだす。不思議と頭は冷静だった。

 

――いや。もしかしたら一周回って冷えているだけなのかもしれない。

 

でも今の私にはどっちでもよかった。

 

 

「それで、なんですの白蓮さん?私も暇ではないのですけれど」

 

「……麗羽、この戦を仕組んだのはお前か?」

 

「……!?な、何を言っていますの?この戦は洛陽で悪政を敷いている董卓さんを――」

 

「この都のどこに悪政が敷かれてる?……街の人にも話を聞いた。宦官達の横暴は確かにあったらしい。でも、その話のどこにも“董卓”なんて名前は出てこなかった」

 

「だ、だからなんですの?」

 

「私はこの戦そのものが、董卓を陥れた誰か“達”が画策したものじゃないかって思ってる。……麗羽は、どう思う?」

 

「わ、私は……」

 

 

麗羽の眼があらぬ方向へ彷徨う。ちょうど麗羽は壁を背にしている状態。

 

私がその眼の前に立ち塞がってる以上、逃げ場なんてものは無い。

 

誤魔化しているつもりかもしれないけどな、麗羽。お前、凄く分かりやすいんだよ。

 

私も同じだから、よく分かるんだ。

 

 

「……聞き方を変える、麗羽。お前はこの戦の裏に関して、何か知ってるのか?」

 

「も、もし……」

 

「……?」

 

「もしそれを知っていたなら……ど、どうだと言いますの?」

 

「――!……そっか。否定、しないんだな」

 

 

怒りから一周回って冷静に。そして冷静からもう一周回った先にあったのは、悲しみだった。

 

もしかしたら私は袁本初という人間を見誤っていたのかもしれない。

 

どこかで思っていたんだ。――私の友達はそんなことに加担していない、と。

 

 

私は麗羽の何を知っている?……自分勝手にも程がある。

 

 

「そ、それにもし董卓さんが悪政を働いていないのであれば、自分から名乗り出ればよかったのですわ!」

 

「――お前!!」

 

 

そして悲しみから一周回った更に先にあったもの、それは最初に感じたものより強い、怒りの感情。

 

無意識の内に勢いよく、麗羽の後ろにある壁に向かって手を叩きつけていた。

 

麗羽の顔の横を、私の腕が塞ぐ形になる。

 

 

「それをお前が言うのかよ!そうせざるを得なくしたのはお前らだろ!!

最初っから戦が起きててその中で謀略を使うなら私だって割り切るさ!

でも今回は違うだろ!なんでわざわざ戦を起こした!ちょっと頭の回る奴だったら誰でも分かる!

もしその対象が董卓じゃ無かったとしても!自分が言われの無い嫌疑に掛けられて!

いつの間にか自分を討伐する為の軍が出来上がって!それが攻めて来て!名乗り出る時間も奪われて!

戦うしか無くなって!それを言うに事欠いて“名乗り出れば良かった”だ?」

 

 

あまりにも膨大な感情が渦巻いていて自分が何を言っているのかが分からない。

 

麗羽が驚きに眼を見開く表情も、この感情のうねりを止める材料にはならない。

 

自分でも止められない。次々と感情が溢れだし、一気に

 

 

 

 

 

「――ふざけんな!!!!」

 

 

 

 

 

噴出した。

 

 

 

はあはあ、と誰かの荒い息が聞こえる。一拍遅れてそれが自分の呼吸だと気付いた。

 

それでもまだ、怒りは収まっていないようだった。

 

視界が明滅する。空気が足りない、とかそういうことを考えている余裕もなかった。

 

 

麗羽、こいつは……こいつらは――!!

 

 

「――その辺りにしておきなさい」

 

 

なぜかその声で、頭に上っていた血が少し下がるのを感じた。

 

私のでも麗羽のでもない声、第三者の声だったからだろうか。

 

同時に、その声が酷く冷めたような冷静な声色だったからだろうか。

 

どちらにしても今の私には判断できない。

 

振り向くとそこには、曹操がこちらも見ずに壁に背を預けていた。

 

 

「曹操……なんでここに」

 

「どうでもいいでしょう、そんなこと。……それで?」

 

「それでっ……て?」

 

「まだ他に何か言いたいことがあるのかしら?一応止めたけど、別に私には貴女に命令する権限もなにも持っているわけじゃないのだから。続けたいのなら好きになさい」

 

 

言葉ではそう言っていても、向けられた視線は侮蔑。

 

その眼を見て急速に、麗羽に対する怒りが萎んでいくのを感じた。

 

いつの間にか壁に叩きつけていた手を戻して麗羽の前から退く。

 

まともに麗羽の顔を見られなかった。

 

 

「……言いたいことはそれだけだよ、本初」

 

 

吐き捨てるような台詞。負け犬の遠吠えみたいな言葉。

 

今の私にはそれぐらいのことしか言えなかった。

 

雰囲気でなんとなく、麗羽が驚きから我に返ったのを悟る。

 

 

「ぱ、白蓮さん!あなた連合の盟主の私に向かって――」

 

「貴女もそこまでにしておきなさい、麗羽」

 

「華琳さんは黙っていて下さいます?これは私と白蓮さんの――」

 

「へえ……この反董卓連合の盟主であり、尚且つ三公を輩出した名家の長、袁本初ともあろう者がまさか“あの程度”のことで処罰でも与えるつもりなの?……器が小さいわね」

 

「なっ――!?」

 

 

二回も台詞を遮られた挙句、矜持を試すような言葉。

 

普段なら苦笑していたかもしれないが、そんな余裕は無い。

 

麗羽が絶句しているのが伝わって来ていた。

 

それからしばらくの沈黙。

 

「……そ、そうですわね。袁家の長、袁本初があの程度のことで腹を立てるなどありえませんわ」

 

「そう。さすがは袁家の長というだけはあるわね。公孫賛、もう話は終わったのかしら?」

 

「……ああ。もう、何も言うことは無いよ」

 

「らしいわよ、麗羽。貴女も自分の仕事に戻りなさい。“反董卓連合の盟主”様」

 

「華琳さん如きに言われなくても分かっていますわ!まったく……ぶつぶつ」

 

 

麗羽の足音が遠ざかっていくのが聞こえる。

 

 

「……一つだけ言い忘れてた」

 

 

無意識に口から言葉が零れ落ちた。足音が止まる。

 

 

「……なんですの?私とていつまでも暇ではないのですけれど」

 

「董卓、探してるんだろ?」

 

「ええ。当たり前でしょう?この騒動の首謀者なのですから」

 

「その董卓な。……私の軍のやつが斬った」

 

「なんですって!?」

 

「へえ……」

 

二者二様に反応する曹操と麗羽。

 

麗羽はともかく曹操は、この状況を楽しんでいるかのような声色だった。

 

 

「そ、それを早く言いなさい!どこで斬りましたの?生死は!?」

 

「街の東側にある水路の近くだ。抵抗したから止むを得ずに斬った、って報告があった。生死は不明。身に着けていた物の豪華さから董卓なんじゃないかって話だ。……髭面の脂ぎったオッサンだったってよ」

 

「こうしてはいられませんわ!」

 

 

今度こそ、麗羽は去っていった。バタバタと五月蠅い足音を残して。

 

 

 

 

 

 

色々な感情がごちゃまぜになった溜息を吐く。

 

少し落ち着いてはきたけど、もう少しここで心を落ち着けないと

 

戻ってから皆に心配させちゃうからな。……心配してくれてるかな?

 

 

「随分と仕事が早いのね、あなたの部下は」

 

「曹操。まだいたのか」

 

「あら、ご挨拶ね」

 

「……ごめん」

 

「別に構わないわよ。その程度のことを気にしていたらそれこそ器が知れるわ」

 

「あと、止めてくれてありがとな。あのままじゃ私、本初のこと殴るくらいはしてたかもしれない」

 

「……失敗したわね。止めなかった方が面白い物を見れたみたい」

 

「あのなあ……」

 

「冗談よ」

 

 

不敵に笑う曹操。ちょうどいいし、曹操にも聞いといたほうがいいか。

 

 

「なあ曹操。お前はこの騒動の裏、知ってたのか?」

 

「なんとなくキナ臭いとは思っていたけれど、私も全てのからくりを知ったのは虎牢関の戦いの後よ」

 

「虎牢関の後……?」

 

「私があの戦いで誰を捕虜にしたか忘れたの?」

 

「あ、そっか。張遼に聞いたのか?この騒動の概要」

 

「ええ。とは言ってもそれも張遼自身の主観でしかないから、あくまで客観的に把握しただけに過ぎないけれどね」

 

 

そう言って肩を竦める。同時に意地悪な笑いを私に向けた。

 

 

「それにしても“脂ぎったオッサン”ね。中々面白かったわよ?」

 

「知ってるのかよ……。董卓の容姿まで張遼に聞いたのか?」

 

「いいえ。そこまでは聞いていないわ。私が知っているのは董卓が女であることだけ。言いたくないことは言わないでも良い――それが張遼の条件だったもの。あれほどの将をそんな条件で旗下に加えることが出来たのだから。まったく、私は幸運ね」

 

「そういうことか……。なあ、曹操」

 

「なに?」

 

「なんで私の言ったことが嘘だって分かってて、本初に言わなかったんだ?」

 

 

その問いかけに、曹操は呆れたように溜息を吐いた。

 

 

「告げ口は趣味じゃないのよ。なにより、私のところにも似たような境遇の三姉妹がいてね。巻き込まれただけの不幸な人間を更に蹴落とそうなんて考えないわよ。……実際、この連合に参加したことによって名声と一人の素晴らしい将を手に入れたのだから、私はそれで満足よ。珍しくね」

 

 

曹操は不敵に笑う。自然と、私の口角も少し上がっていた。

 

目の前にいるのは自身の塊。私とは大違いの。

……別にこうなりたいとは思わないけどな。

 

 

「これで借りは返したわよ、公孫賛」

 

「借り?それってもしかして雛里が言ってた……」

 

「誰がそう言っていたのかは知らないけれど、中々の観察眼ね。私の性格も見抜いているのかしら」

 

「いや、うちの軍師が言ってただけだから……」

 

「ふうん……まあいいわ。それより公孫賛。あなた、その迂闊さはなんとかした方が良いわよ。味方でもなんでもない、たまたま連合で同じ側だった程度の仲の相手に、そうなにもかも話すべきではないでしょう?私みたいに借りがあったならともかくとしてね」

 

「あ、ああ。ありがとう。その忠告受け取っておくよ。……なあ曹操」

 

 

話は終わり、と断定するかのように路地に向かって歩き出していた曹操が振り返る。

 

 

「なに?」

 

「お前、良い奴だな」

 

「……はあ。あなたは私が言ったことをひとつも理解していないようね。そんなことじゃその内、寝首を掻かれるわよ」

 

 

今度こそ本気で呆れた表情を向けられる。不思議とそこに侮蔑の色は無かった。

 

 

「いや、少し曹操の印象が変わったなって思ったから。お節介……とはまた違うけど……世話焼き?」

 

「勝手に言ってなさい」

 

 

殆ど吐き捨てるように言って、曹操は路地に消えていった。

 

最後の最後に嫌われちゃったかもな。でも曹操って元々私のこと歯牙にもかけて無かったから、少しは進歩か?なんて前向きに考える。

 

それでもまだ、心の中に残ったしこりのような物は消えない。

 

どうしてもあの時、怒りを抑えきれなかった。

 

自分が何に怒りを覚えてるかなんて、自分が一番よく分かってる。

 

麗羽――もちろんそうだ。

 

加担している他の諸侯や宦官――当たり前だ。特定できていないのが口惜しい。

 

でも、だけど。何より私が怒りを覚えているのは……そう、私自身。

 

 

 

何も知らずに董卓を討伐しようとしていた――私自身。

 

 

 

 

 

 

「……私ってこんなにお節介だったかしらね」

 

 

 

 

 

 

 

【 あとがき 】

 

はい。今回は白蓮さんオンステージでした。

かなり悩みましたけどね、どう怒らせようか。

 

 

前にゲームとかの脚本の人の話を聞いた時に

『キャラ作りが一番難しい。でも一回キャラを作ってそのキャラの根底みたいなものを決めてしまえば後は、“こいつだったらこう動く”“こいつだったらこう考える”みたいにネタが出て来るから、それを取捨選択する』と言っていました。

 

そう考えると二次創作って案外難しい。

自分の作っていないキャラクターの心情をトレースしなければいけない。

トレース出来てるかは別として。

 

すいません、少しマジレスしました。お目汚しかな?

 

予想外に伸びている反董卓連合編。

いつになったら終わるのか、作者自身も分かりませんがコンゴトモヨロシク……。

 


 
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